詩画集3
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  「薔薇の枯れた日」

 赤い薔薇が枯れました

 鮮やかだった赤が色褪せ 薄汚れていました

 あたしの胸を抉るように いつか必死で生きていたはずの命は今 生きることを止めました

 いつまでも変わらない空色の花瓶から 命の抜け殻を抜き取るとき

 幸せだったであろう その人の 栄華の花びらが2枚 3枚

 あたしの裸足の足に触れ落ちました

 漆黒のぺディキュアで染め上げた いつだか誰かが不健康そうだと笑ったあたしの爪に

 その死の影はとても悲しくよく似合う

 あたしの手首の傷に似ているからでしょうか?

 枯れた薔薇の色を見たとき あたしの心もきっとこんな色だろうと思いました

 傷だらけの あたしの心

 陳腐な表現で悪いけど 今日も胸が痛みます

 

 枯れた君の花びらは軽く カラカラで あたしの掌の中でボロボロに崩れ落ちた

 命そのものの色みたいな 深い緑の茎は 水に触れていた部分だけが黒く腐れ

 君をいつも守ってきたその棘さえも今は あたしの指に弄ばれるほど弱り果てた

 それなのに まだ君は君の香り

 醜い姿に衰え果てても 薔薇は赤々と 明々と香っていました

 君は最後まで気高かった

 あたしもこんな風に と 思わずにはいられないほど

 君は最後まで美しかった

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  「夢空」

 信じて誰が救われた?

 自殺するなら跳び降りにしよう。

 そう決めたのは、小学4年の夏頃でした。

 その日見上げた青空には、雄大に飛ぶ1機の旅客機。

 憧れの空は高く、自由で、

 一生の最後に一度くらい、自分の力で飛べればいい

 と、幼い私は思ったのです。

 

 もう戻れないでしょう。

 死ぬことにさえ夢を見ていた。

 死ぬことにさえ希望を見ていた。

 あの幼い日には、

 もう戻れないでしょう。

 

 大地に縫いつけられて飛び立てない私と同じように、

 重たい空に捕らえられて逃げられない、哀れな旅客機。

 いつか目指した空は暗く、太陽だけが遠くにギラギラと輝き、

 自由など何処にも無い。

 

 あの頃の君がもういないように。

 あの日にはもう戻れないように。

 有限の宇宙を越えて、無限に広がる世界の果て迄。

 あの日の夢はもう見えない。

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  「Bird」

 空に憧れる僕を嘲笑う空へ

 殻々に干乾びた心が 冷たい風に飛ばされてく

 それは ずっと遠くに小さく見える

 どんなに手を伸ばしても もう届かない

 さあ こんな所にいちゃだめだ

 あの人はもう ずっとずっと遠く

 あの 空に近いとこ

 このままじゃ 僕の体もひからびてしまうよ

 走ればまだ間に合うかもしれない

 僕の心がもういなくても 足はまだ生きてるだろう

 走れ 鳥のように!

 ただひたすら走ればいい

 

 雨の降らないひび割れた大地を 少しずつでいい 進むんだ

 たとえ心を見失ったとしても いつか追いつける

 手を伸ばしている限り

 さあ あきらめるには早すぎる

 あの人はまだ遠い 僕は

 やっと 空が見えてきた所

 このままだと 僕の心は助からなくなるよ

 急げよ まだがんばれるんだろう

 僕のトコにはもういないケド 心はまだ生きてるんだ

 生きろ 鳥のように!

 神がその死を許すまで

 

 走れよ まだ僕は飛べないけど きっと翼を手に入れる

 心は空に近い所

 走れ 鳥のように!!

 いつか飛び立てる日が来るから

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  「虫空」

 ほら、誰も助けてくれない

 ベッドサイドの電球が

 まるで潰れた幼虫のように 黄色く輝いている

 闇を恐れるあまり 炎に身を焼かれた憐れな男

 唇の端で嘲り笑って 僕は膝を抱えて蹲る

 

 嗚呼 どうか存在すべき神よ

 どうか 僕を助けて下さい

 見下し嘲笑いながらでいい どうかその手を差し伸べて

 

 八本足の害虫が

 床と壁とを縦横無尽に 広く駆け回って逝く

 炎を恐れるあまり 闇に飲み込まれた滑稽な僕

 泥沼の中に肩まで漬かって 其処が楽園なのだと思い込む

 

 嗚呼 どうか見も知らぬ君よ

 いつか 僕に気付いて下さい

 道路の空き缶を蹴るように 一時の視線を僕に

 

 ひとりぼっちの教室で

 空と繋がるベランダの端に 見つけた子猫の死骸

 君を羨むあまり 手摺に手を伸ばし乗り越えてみた

 北風の歌に髪の毛が揺れた

 

 空は多分青いのだと思う

説明
詩にイラストを添えてみたもの。第三弾。
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