君とワルツを踊ろう
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「助………けて」

 

美し過ぎる彼女は僕にそう言った。そんな彼女に見惚れて、僕は動けなかった。

 

いや、動かなかった、というよりは動いてはいけないと、僕の桃色なステキ脳は叫んでいた。

 

そして、彼女が首筋に噛み付いたところで僕の意識はブラックアウトしていった。

 

 

 

何故、名も知らない女性(ヒト)にこんなこと―吸血行為―をされているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おはよう、気分はどう?」

 

例の彼女(名前はリルーナフというらしい)が僕が目を覚ましたことに気付き、話しかけて来た。

 

「余り良い気分じゃないかな」

 

こう、僕は答えた。

 

「そう、私はもう下に行くけど、貴方も一緒に行く?もう少し寝てる?」

 

「今何時?」

 

「7時よ」

 

「ならもう少し寝てるよ」

 

「わかったわ、9時ぐらいになったらバスガイトさんに呼んでもらうわね」

 

そういうと彼女は外に出て行った。

 

 

 

 

 

あぁ、何故こうなったか思い出したぞ。

 

話は日本時間より20時間前まで遡る。

 

 

 

「では、此処を集合場所として2時間後までに集まってください」

 

バスガイトさんがこう告げた。

 

そう、今の僕は旅行に来ている。それもイギリスの。

 

「貴方、結構若いのですね。どうしてこの旅行に?」

 

バスガイトさんがこう尋ねてきた。十七歳の人間が一人でぽつんと立ってれば声もかけてくるか。

 

「家族が亡くなったのでその傷を癒しに」

 

「すっすみません!変なこと聞いてしまって」

 

「いえ、いいですよ、謝らなくても。事実ですから」

 

「でっでは、ごゆっくり」

 

そういうと、バスガイトさんは離れて行った。

 

 

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「しかし、大きい教会だ。何のために此処まで大きいんだ?」

 

バスガイトさんが集合場所といった所から少し離れた教会をほっつき歩いていた。何の意味もなく。

 

「此処の礼拝堂ってのは気味のいいところじゃないな」

 

こう言って辺りを見回した。僕はあることに気付いた。

 

教会の入って左の壁から風が吹いてくることに。

 

「(なんの変哲の無い壁から、風?)」

 

本来なら有り得ないことだ、石積みの壁から風が吹いてくるなんてことは。

 

その壁に歩み寄る。

 

触れる。

 

ナニかに触れる。

 

操られるように。

 

ナニかを押す。

 

壁が開く。

 

中に入る。

 

階段があった、地下に行くための。

 

ナニかに引っ張られるように階段を降り始める。

 

 

 

 

何百段降りたか解らない。もしかすると何千段かもしれない。

 

そんなあいまいな意識の中下に着いた。

 

四方を赤いレンガで囲まれた部屋の中には一つの石の棺があった。

 

棺に近寄る。

 

その棺の蓋に多分イギリス語であろう字で書かれた文字があった。

 

僕には読めるはずがないのに、

 

(我が娘、リルーナフ・マシードに捧ぐ、我ら一族の夢を覚めるべきものにせぬように。

 

孤を知る人よ、隔たりを外せるなら外せ)

 

読めた。

 

「(な……んで?)」

 

文を読んだ瞬間に自分の意思と関係なく腕が延びた。石の蓋へと。

 

ガコォン!

 

と、重いものが落ちた音がこの部屋一帯に響く。

 

蓋を開けたその中にあったモノ。それは、人形に程近い肌の色をした涙を流している少女だった。

 

それは、美しくて儚くてそれでも此処に居ると叫んで呼んでいるようだった。

 

多分この時からの行動は自分の意思でやっていたのかもしれない。

 

「(なぜ、泣いているの?)」

 

こんなことを想いながら彼女の顔に手を伸ばす。

 

指が顔に触れた瞬間、彼女に手をゆっくりと掴まれた。

 

掴まれた、と言うよりは手を重ねられたに近い。

 

そして、彼女は言ったのだ、

 

「助………けて」

 

と。

 

 

 

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コンコン

 

「神嶋 義彦(かみしま よしひこ)様起きていますか?」

 

バスガイトさんの声だ。

 

「あ、はい。今起きたところです」

 

服を着替え、外に出る。

 

「下で可愛い彼女さんがお待ちですよ」

 

バスガイトさんのテンションが異常だ。

 

「え、はぁ」

 

「貴方もロマンチックなことするんですねぇ。旅行先で出会った人と恋に落ちるなんて」

 

凄い早口の言葉。

 

何と言うか、うん。

 

「とりあえず案内してもらえますか?」

 

「あ、私としたことが。それでは案内しますね」

 

 

 

移動の際、昨日のことをバスガイトさんから聞かされた。

 

時間になっても集合場所に来ない僕を探しに行ったところ、貧血で(何故に貧血を?)倒れた僕とそれ

を運ぼうとしている彼女を発見したそうだ。

 

「で朝まで起きなかった、と」

 

ん?夜中に目が覚めて、なにかをやった気がする、けどなぁ。まぁ良いや。

 

「はい、そうです。あ、着きましたよ。此処から窓際をたどっていけば彼女さんの所に着きますよ」

 

「ありがとうごさいます」

 

「では、ごゆっくり〜♪」

 

 

 

バスガイトさんと別れ窓際を少し歩くと彼女、リルーナフはいた。

 

「二度目だけれど、おはよう。気分はどう?」

 

僕が来たことに気付くと彼女はこう聞いて来た。

 

「ああ、最高だよ、色々と」

 

「そう、それはよかったわ。さぁ、座って?一緒に食べましょう?」

 

「ああ、わかったよ」

 

 

 

朝食を半分程食べたところで僕は彼女に尋ねた。

 

「なぁ、今日で旅行も終わりなんだが、一緒に日本に来ないか?」

 

すると、

 

「何を言っているの?行くに決まってるじゃない。仲間が居ない時点で此処に居る道理は無いわ、………」

 

彼女はさも当然のように答えたが、最後の方は声が小さく聞こえなかった。

 

 

 

「最終日は自由行動です。時間に間に合うように行動してください」

 

バスガイトさんからの連絡は終わった。

 

「何処へ行く?」

 

僕はリルーナフに尋ねる。

 

「そうねぇ、変わってしまった町並みでも見に行きましょう」

 

「町並みを見るか、なかなか乙なものだな。うん、それが良い。そうしょう」

 

ちょっと街を歩いたところで、リルーナフが、

 

「そうだ、役所に行きましょう」

 

と言った。

 

「へ?何で?」

 

つい反射的に聞いてしまった。

 

「貴公は私を日本へ行かせないつもりなの?」

 

呆れたように彼女は返して来た。(実際呆れているのだろう)

 

「ん?あ、そっか。パスポートなんてないもんな」

 

「えぇ、そういうこと」

 

役所に行って、名前を継げた後の重役の慌しさにはひどく驚いた話はまた別の機会に。

 

 

あのあと二週間ほど滞在し、日本に帰った僕を慌ただしい日々が襲ってくることなど知らずに旅行は終わった。

 

「あの時僕は彼女の瞳の奥に人に知られず輝く星の光を見た。」

 

 

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〜あとがき、というか言い訳〜

 

まず初めにごめんなさい。

 

あっちのほうを楽しみにしてた方は少ないかもしれませんが、ごめんなさいでした。

 

えっとですね、コズミックブレイクをやっていたら何時の間にやら数日期限が過ぎているというね、

 

事態を引き起こしていまして……。はい、すみませんでした。

 

ん?あっちは進んでるのかって?

 

……、す、進んでないわけが、ななななあななな無いじゃないですか。

 

ダイジョブです。進んでます、はい。数日中に上げます。

 

一応だけどこれは一度ピクシブにも上げたものです。

 

ではいろいろなコメント、待ってます。

説明
これは高校一年の夏、暇すぎて作り上げたものです。
出来れば、最後まで見ていってください。
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