サテライトウィッチーズ 第一話
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第一話「俺にも出来る事がある」

 

地球とよく似ているが、魔力が存在する世界、その世界は今戦乱の中にあった。

1939年。突如として襲来した異形の敵『ネウロイ』の前に、人類は多くの版図を失った。瘴気をまき散らし金属を吸いつくすネウロイに通常の軍隊は歯が立たず、唯一対抗できる存在は、新兵器ストライカーユニットで空を駆け、魔力を身にまとうウィッチのみ。だが彼女たちの奮闘もむなしく大国カールスラントは陥落し、人類の命運は風前の灯火に思えた。

そんな1944年の夏、はるか東方の島国扶桑で、ひとりのウィッチが戦いに身を投じようとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……んん……?」

 

ガロードはぼやける目をこすりながら、DXのコックピットの中で目を覚ました。

 

「あ、あれ? ここは……」

 

現状を把握するため消えていたモニターを再び点けると、そこには先ほどまでいた暗黒の宇宙ではなく、どこまでも広がる透き通るような青い空が広がっていた。

 

「? なんで俺地球に戻って……さっきまで月にいたのに」

 

不可解な事態に動揺しながら、ガロードは現状を確認するためコックピットのハッチを開いて外に出てみる、そして空気があるのを確認してヘルメットを脱いで辺りを見回した。

 

「ここは……無人島か? よく見るとMSの残骸が落ちてる」

 

DXは小さな島にしゃがんで着陸しており、周辺には地球軍や革命軍が使っていたMSの残骸が無造作に散らばっていた。

 

「あ! そうだフリーデン!」

 

ふと、ガロードはフリーデンの事を思い出し、コックピットに戻り彼らと交信を試みる……が、

 

「な、なんで通じないんだ……!? 俺どこに来ちゃったんだよ!?」

 

どこにも繋がらず、ガロードの頭の中は現状が把握できずにイライラと混乱が入り混じった状態になっていた。しかしそれではいけないと、すぐに冷静さを取り戻す。

 

「お、落ち着け、慌ててもどうにもならねえ、まずはここがどこか調べないと」

 

そう言ってガロードはDXを動かそうとする、しかしコックピットの画面にはいくつかエラーの文字が浮かび上がっていた。

 

「そっか……さっきの戦いでいくつか壊れたんだな、しょうがない修理すっか」

 

ガロードはため息交じりにパイロットスーツを上半身の部分のみ脱ぎながら、シートの裏にあった降下用ロープを使ってゆっくりとコックピットから降りた。

 

「えーっと、工具箱はどこやったかな……」

 

 

 

 

それから一時間後、DXの応急処置を済ませたガロードは再びコックピットに乗り込み、何か新しい発見はないかとレーダーで周辺の状況を確認する。

 

「うーん……周辺にはMSどころか人っ子一人いないのか、通信も繋がらないし……マジでやばいって感じ?」

 

そう言ってガロードはお手上げといった様子で天を仰ぐ、その時……レーダーにある物体の接近を告げる警報が鳴り響く。

 

「ん? なんだ?」

 

ガロードはモニターを見る、するとそこには漆黒の装甲を身にまとった飛行機のようなものがこちらに接近している様子が映し出されていた。

 

「もしかして救援? でも見たこと無いMAだな……」

 

その時、その漆黒の飛行機のようなものから赤い光線が数発、ガロードの乗るDXの横をかすめた。

 

「うわっ!? なんだいきなり……まさか革命軍!? それとも地球軍か!?」

 

攻撃を受けたガロードはすぐさまDXを起動させ、ブーストを吹かして空にいる漆黒の飛行機に向かって行く。

 

「やるってんなら受けて立つぜ! おらぁ!」

 

ガロードはビームライフルの標準を漆黒の飛行機の先端に合わせ引き金を引く、すると銃口から放たれたビームは漆黒の飛行機を見事撃ち抜いた。

 

「やりい! 百発百中……あれ!?」

しかし漆黒の飛行機はすぐさま撃たれた部分再生し、赤いレーザー光線で反撃してくる。

 

「のわっ! おっかしいな……あの辺が弱点じゃないのか?」

 

ガロードはすぐさま気を取り直し、飛行機の周りを飛びながらビームライフルの弾を確実に当てて行く、すると……飛行機の削られた装甲の中から赤い宝石のようなものが現れた。

 

「お!? あれが弱点っぽいな……そら!」

 

それを発見したガロードは持っていたビームサーベルを赤い宝石に向かって投げる、するとビームサーベルの刃は赤い宝石を見事貫いた。

 

「よっと!」

 

ガロードはそのまま漆黒の飛行機に高速で接近し、刺さったビームサーベルを引っこ抜く、すると漆黒の飛行機はガラス片のようにバラバラと崩れていった。

 

「な、なんだ? これMAじゃないのか?」

 

今まで見たことのない飛行機の特性に驚きつつも、ガロードはこれ以上ここに留まっても仕方ないと思い元いた無人島に戻ろうとした、その時……レーダーは再び未確認物体接近を告げる警告を鳴らしていた。

 

「なんだ、また何か来るのか? アレは……ええ!?」

 

ガロードはモニターに映し出される光景を見て驚愕する。

 

 

「お、女の子が……空を飛んでいる!?」

 

 

モニターには赤い髪の少女を先頭に、9人の少女達が銃を手に持ち足にはプロペラの付いた巨大なブーツのようなものを履いてこちらに向かって飛んできている様子が映し出されていた。

 

「え!? ちょ!? なんだアレ!? 戦わないといけないのか!?」

 

ガロードは流石に生身の人間にMSで戦うのは躊躇いを感じ、エネルギーも切れかけてこれ以上戦えるかどうか判らないのでビームライフルを構えたまま動けないでいた、対して少女たちもガロードと一定の距離まで接近すると銃を構えたままこちらの様子を窺っていた。

 

「……? もしかして俺が敵か味方か解らないのか? それなら……」

 

そう言ってガロードはライフルとサーベルをしまい、DXに手を上げさせマイクの音量を目一杯上げた。

 

「撃つなー! 俺は敵じゃない!」

 

少女達はDXから声が聞こえた事に驚いたのか、互いに顔を見合わせて話し合いを始めた。

 

「お、どうやら向こうも戦うつもりはなさそうだな……ん?」

 

すると9人の少女達のうち、戦闘を飛んでいた赤い髪の少女と、黒いリボンで結んだ深緑色の軍服を着た少女、そして白いリボンでツインテールの幼さが残る少女が接近してきた。

 

「こっちに近づいてくる……話がしたいのか? んじゃとりあえず」

 

ガロードは念の為安全装置を外した銃を懐に忍ばせた後、ハッチを開け放ちコックピットから出て少女たちに自分の姿を見せた。

 

「やあやあお迎えご苦労さん、とりあえずその銃をしまって……」

 

するとコックピットの中のガロードを見て、接近してきた三人の少女は驚愕していた。

 

「うわー! このネウロイ人が乗ってるー!!」

「これはネウロイじゃない……兵器なのか!?」

「何者なの貴方……? どこの軍の所属?」

 

少女達はDXに人が乗っているとは思っていなかったらしく、ガロードの姿を見て驚いた顔をしてそのまま質問攻めをしてきた。

 

「いや、軍隊には入ってないよ、フリーデンっていうバルチャーに所属していて……」

「ふりーでん? ばるちゃー? なにそれ?」

 

ガロードの単語に首を傾げるツインテールの少女、どうやらフリーデンはおろかバルチャーの存在すら知らないようだった。

 

「……とにかく私達の基地に来てもらいます、詳しい事情はそこで聞かせてもらうわ」

「わかった、それじゃ案内頼むよ」

 

 

こうしてガロードは少女達に案内され、青い海に浮かぶ半島の基地にやってきた。

 

 

 

 

「で……俺は何故か監獄に入れられてしまった」

 

ガロードは基地に着いた早々DXから降ろされ、そのまま独房らしき場所に入れられてしまった。

 

「おい! 俺は敵じゃないって言ったろう!? アンタ等新連邦なの!? それとも革命軍!?」

「ったくやかましいな〜、サーニャが起きちゃうじゃないか」

 

するとそこに白い長髪をなびかせた白い肌の少女がやってきた。

 

「お前……さっき空を飛んでいた子達の中にいた……」

「エイラ・イルマタル・ユーティライネン、お前の監視を任されたモンだ」

 

そう言ってエイラと名乗った少女は、近くに置いてあった背もたれのない椅子にどかっと座った。

 

「なあおいここから出してくれよ、俺はお前らと戦うつもりはないんだ、ていうかここどこ? 何者なんだお前ら?」

「質問は一個ずつにしろよ、ていうかまずはお前の事教えろ」

「そ、そうだな、俺は……」

 

ガロードはエイラに自分の名前、経歴、そして仲間達や自分の過ごしてきた世界について余すことなく説明した。

 

「第七次宇宙戦争? MS? ニュータイプ? どれも聞いたことのない単語ばかりだな」

「そんな筈は無いんだけどな……15年前のコロニー落としで地球全体が大変な事になったのに……」

「お前の話を聞くと、ウィッチやネウロイの事は知らなさそうだな」

「ん? なんだそれ?」

 

今度はガロードが首を傾げる、そんな彼にエイラはネウロイや自分達ウィッチの事を簡単に説明した。

 

 

「てことは……お前もウィッチってやつで、数年前からこの星を荒らしているネウロイって奴と戦っているのか、あの島で戦った黒いのがそうなのか?」

「まあなー、しっかしお前スゴイのに乗っていたな……どうやって作ったんだアレ?」

「作ったっていうかアレは奪った物っていうか……それより俺のDXはどこにやったんだよ?」

「格納庫で今ミーナ隊長達が色々調べ回っている、お前にも色々と話をしてもらうことになるぞ。ま、悪いようにはしないようミーナ隊長は努力するってさ、まあのんびり待っていろ」

 

そう言い残し、エイラは独房から出て行った。

そして一人取り残されたガロードは、周囲にもう人の気配が無い事を確認し、やれやれと深くため息をつきながらポケットの中を弄った。

 

「ヤバい感じだな……とりあえず逃げるか」

 

 

一方エイラは外で待っていた同僚のウィッチであるミーナ・ディートリンゲ・ヴィルケとゲルトルート・バルクホルンに先程のガロードの話の内容を伝えた。

 

「とまあ、そんな感じでべらべらと喋ってくれたぞ、宇宙で戦争してたとかホラばっかだったけど」

 

エイラはガロードの言っている事が到底信じられず、彼が嘘を言っていると思い込んでいた。

 

「そうか、奴がどこの軍の者か解ればよかったのだが……」

「仕方ないわね、私達でこの白い兵器の事を調べないと……何か判った?」

 

そう言ってミーナは寝かせられているDXのコックピットの中を調べていた整備兵達に話しかけた。

 

「ダメです、操縦桿らしきものを操作してみたのですがウンともスンとも言いません」

「これだけの大きさの物を魔力無し動かすなんて出来る筈ないのだけれど……」

 

ミーナもまた、DXがある意味自分たちのいる世界より遥かに進んだ未来の技術で作られたことに気付けず、魔力で動いているものだと信じ切っていた。

 

「ちょっと私達ウィッチの魔力で動かせないか試してみましょう、エイラさん……他のウィッチも呼んできてくれる?」

「へーい」

 

 

その頃ガロードは独房の扉のカギ穴に、懐にしまっていた針金を突っ込んで開けようとしていた。先ほどDXの整備をしていた際に工具箱に入っていたものを、もしかしたら何かに使うかもとポケットに入れっぱなしにしていた物である。

 

「もーちょい、もーちょい……お! いける!?」

 

数分間その針金でぐりぐりと鍵穴を弄繰り回す、すると手元でガチンという音が鳴った。

 

「よっしゃ! それじゃこんな所とはガンダムに乗っておさらばおさらば!」

 

ガロードは牢屋からこっそり出ると、DXを取り戻すためエイラが言っていた格納庫に向かおうとした……が、ある事を思い出し立ち止まってしまう。

 

「あ、そう言えば格納庫ってどこだ?」

 

 

 

そう言う訳でガロードは格納庫を探して基地の中を見つからないように、物音を立てないよう、そして誰にも見つからないようにコソコソと移動していた。

 

「どこだどこだ〜? 俺のガンダムはどこだ〜? おっと」

 

すると彼の近くを基地にいる整備兵が通り過ぎて行った、対してガロードはすぐさま物陰に隠れて見つからないようやり過ごした。

 

「ふう、あぶねえあぶねえ、見つかる所だった……(チョンチョン)ああ? なんだよ」

 

ガロードは自分の背中を誰かが突っついている事に気付き、自分の手でそれを払おうとする。

 

「今見つかったらやべえんだよ、だから要件は後で……(チョンチョン)だあもう!! しつこいな! なんだよ!?」

 

耐えかねたガロードは後ろを振り向く、するとそこには色い髪に白い肌の美少女が眠そうな目でガロードを見ていた。よく見ると丸っこくて青いペンギンらしき生き物のぬいぐるみを抱いている。

 

「あ」

「……」

 

ガロードはその時初めて自分が見つかった事に気付く。するとそこに……。

 

「サーニャー、ミーナ隊長が格納庫に集まれって……あ!?」

 

先程ガロードと独房で出会ったエイラがやってきたのだ。

 

「だ、脱走だ〜!! 捕虜が脱走したぞ〜!!」

「うげ!? にっげろ〜!」

 

エイラに大声を出され、ガロードはスタコラサッサとその場から逃げ出した。

するとエイラの大声に呼応して基地にいた兵達が集まってきた。

 

「いたぞ! 捕虜だ!」

「撃て撃てー!」

 

兵達は間髪入れずガロードに向かってピストルで銃撃する。

 

「あ、あぶねえだろ!? 当たったらどうすんだ!?」

 

 

一方、エイラと彼女にサーニャと呼ばれた少女はガロードの行方をタロットカードを使って占っていた。

 

「エイラ、あの人どこに行きそう?」

「このカードは……どうやら外に行くみたいだ」

 

 

「あれ!? ここ外!?」

 

案の定、ガロードはエイラの占い通り基地の外……何かを発進させる滑走路らしき場所に出ていた。

 

「待て―!」

 

すると数秒もたたないうちに、彼の後ろから銃を持った兵達が追いかけてきた。

 

「やべ!」

 

ガロードは兵達から逃げるため、自分が出てきた扉とは別の扉に入ろうとする。すると……。

 

「おいおい、なんの騒ぎだ〜?」

 

青い瞳に肩まで伸ばした茶髪が特徴的な少女が、ガロードの入ろうとした扉からヒョイッと出てきた。

 

「うわ!?」

「うひゃ!?」

 

突然現れた少女にガロードは対処しきれず、そのまま彼女とぶつかり勢いで押し倒してしまう。

 

「いたたた……急に出てく(ふにゅ)あれ? なんだこれ?」

 

ガロードは起きあがろうとして床に手を付けようとしたが、代わりに何か柔らかいものを掴んでしまう。

 

「おいおい誰だお前? いきなり大胆だな〜」

「え? うわー!?」

 

ガロードは押し倒した少女の胸をわしづかみにしている事に気付き、顔を真っ赤にして飛び退いた。ついでに補足すると少女、格好はビキニパンツ一丁である。

 

「っておまえ! なんで裸なんだよ!?」 「いや日光浴でもしようと思って水着に着替えようとしたら外が騒がしくて……」

「あー!!? さっきの白いネウロイに乗ってた人―!?」

 

するとそこに先程ガロードとDXのコックピットを開け放った際に顔を合わせたツインテールの少し色黒の少女が水着姿で現れた。

 

「お前はさっきの!?」

「何してんのシャーリー!? プロレスごっこ!?」

「いやいやいや!? コレはなんというか……」

 

ガロードが必死に弁解しようとすると、シャーリーと呼ばれた少女は舌をぺロリと出した。

 

「いきなり押し倒された上に胸揉まれちった」

「うひゃー!!? チカンだー!!」

 

すると追いかけてきた兵士達が追いついてきた。

 

「こんのやろう!! シャーリーさんに痴漢しただと!?」

「ハチの巣にしてくれるわふふははー!!!」

「うわああああ!!! 誤解だー!!」

 

ガロードは先ほどよりも多めの銃弾の雨に晒されながらその場を逃げ出した……と思いきや、突然バックして戻ってきた。

 

「そう言えば格納庫ってドコ!?」

「「あっち」」

 

ガロードの質問に格納庫の方向を指差して答えるルッキーニとシャーリー。

 

「サンキュー!」

 

そう言ってガロードはお礼もそこそこに再びその場から逃げ出した。

 

 

「なんだか面白そう! 私達も追いかけよう!」

「いや、その前にブラ付けさせて」

 

 

一方ガロードは後方から襲い掛かる銃弾の雨を掻い潜りながら基地の中を逃げ回っていた。

 

「あーびっくりした……とりあえず兵士達は撒いたな……」

 

そう言ってガロードは後ろを向いていた顔を前に向かせる。すると……。

 

「もう、何の騒ぎですの……ってきゃ!?」

「うわ!?」

 

角から現れたメガネを掛けた金髪の少女と衝突し、押し倒してしまった。

 

「ててて……またかよ(スカッ)」

 

ガロードは起きあがる為に床に手を置こうとするが、さっきとは違って何も掴めない事に気付いた。

 

「きゃあ!! どこ触って……!」

「うわまたかよ!? でもさっきのより大して大きくないな」

「人の胸揉んどいて何という暴言! 許せませんわ!」

 

思わず出してしまったガロードの暴言に、怒り心頭のメガネの少女はガロードにビンタを放つ。

 

「のわ!?」

 

ガロードはその攻撃を起きあがる事で紙一重で回避する。

 

「ご、ごめんよー! 俺格納庫に急いでいるから!」

「待ちなさいこの変態!」

 

そう言って逃げ出すガロードを、メガネの少女は頭から汽笛のように湯気を噴出させながら追いかけて行った。

そしてガロード達が先程までいた場所に、今度は金髪のショートヘアの少女が眠そうな目で現れた。

 

「ん……? なんか楽しそうな事やってる……」

 

するとそこにガロードを追いかけていたシャーリーとルッキーニと呼ばれた少女が現れる。

 

「エーリカ、さっき黒髪の男の子が来なかったか?」

「さっき向こうに行ったよー、ペリーヌも追いかけていった」

「さんきゅー!」

 

二人はエーリカと呼んだ少女に一言礼を言ってその場から去っていった。

 

「あ、私も行く〜!」

 

 

「格納庫……ここか!」

 

数分後、ガロードはメガネの少女に追いかけられながらようやく格納庫に辿り着いた。

 

「あった! DX……!」

「え!? ちょっと貴方は!?」

 

格納庫に入ると、そこにはDXの周りで話し合いをしているミーナとバルクホルンがいた、すると後ろからメガネの少女……ペリーヌとエーリカ、そしてシャーリーとルッキーニが追いかけてきた。

 

「隊長! その山猿を捕まえてくださいまし!」

「ねえねえ! 皆何してんの!?」

「さっきそいつ着替え中のシャーリーを襲ったんだよ!」

「だからそういう誤解を招く言い方すんな!」

「き、貴様〜! ウィッチを襲うとは……! 成敗してくれる!」

 

するとバルクホルンは体を発光させると頭から犬耳を、尻からは尻尾を生やしてガロードに殴りかかる。

 

「うわ!!?」

 

ガロードはバルクホルンのパンチを一歩二歩と下がって回避する、すると行き場を失った彼女の拳はそのままコンクリートの地面にたたきつけられた。

 

「げえ!? 地面が!?」

 

年端もいかない非力そうな少女がコンクリートの地面が粉々にするのを見て、ガロードは戦慄し背筋が凍るような感覚に見舞われる。

 

「ちっ! 外したか……!」

「こ、殺す気かバカ野郎! こんな所もうこりごりだー!」

 

そう言ってガロードはスタコラサッサとDXのコックピットに向かう。

 

「逃げるぞ! 誰か捕まえろ!」

「ま、待ちなさい!」

「へへん! 捕まってたまるかよ!」

 

ガロードは自分を捕まえようとするミーナ達の手を掻い潜りまっすぐにDXのコックピットに向かう、するとそんな格納庫にエイラとサーニャが遅れてやってくる。

 

「シャーリー! 回り込んで捕まえろ!」

「おっしゃ!」

 

エイラの指示に従い、バルクホルンらに行く手を塞がれてもたついているガロードの進行方向に回り込むシャーリー。

 

「もう邪魔すんなよ! とりゃ!」

「きゃ!?」

 

一方ガロードは止めようとしたミーナを押しのけてDXのコックピットに向かう、すると……目の前にシャーリーが立ちふさがった。

 

「捕まえた!」

「わぷっ!?」

 

シャーリーはそのまま突進して止まれなかったガロードを自分の胸に埋めるようにして抱きしめて捕えた。

 

「よくやったシャーロット! そのまま逃がすなよ!」

「あーんそこ私のポジション〜!」

 

そう言ってシャーリーに捕えられたガロードにジリジリとにじり寄るバルクホルン達。

 

「むが! もがもがっ!(な、何だコレ息が出来ないんだけど!?)」

 

割と本気で息が出来ずに命を危機を感じたガロードは彼女の胸の中で必死にもがいた。

 

「ちょ! あんまり暴れんなって!」

「もが!(あ、そうだ! そりゃ!)」

 

そしてガロードは腰を落としてシャーリーのホールドからすり抜け、彼女の股の下から抜け出してコックピットに向かった。

 

「うわわわわ!?」

「何をやっているのだリベリアン!?」

「まずい! あの子が乗り込むわ! あの中には……!」

そしてガロードはようやくコックピットの元に辿り着いた。

 

「よっし! 入っちまえばこっちのもんだ! ……え!?」

「はい?」

 

しかしコックピットの中には、髪を一本の三つ編みで纏めた少女がコックピットの中にいた。ミーナに指示されてDXが動かせないか調べていたようである。

 

「リーネ! そいつを追い出せ!」

「え!? え!? 急にそんな事言われても!?」

 

シャーリーの突然の指示に戸惑うリーネと呼ばれた少女。一方ガロードもどうしたらいいか解らなかった。

 

「え、えっと……とりあえずそこから出てくれな「隙有り! スゥゥゥゥゥパァァァァァァルッキーニキィィィィック!!!」ほげ!?」

 

するとガロードの後頭部にルッキーニの飛び蹴りがさく裂し、彼はそのままコックピットに入ってしまった。

 

「きゃあ!?」

「うわ!?」

 

そしてその拍子にコックピットのハッチが閉まってしまう。

 

「あ、はいっちった」

「な、何をしてますの〜!!?」

 

 

その頃コックピットの中に入ったガロードは中でリーネともみくちゃになっていた。

 

「いや〜!! 離れて〜!! どこ触っているんですか〜!?」

「ちょ!? こんな狭い所で暴れな(ベキッ!)おぶっ!?」

 

暴れまわるリーネを落ち着かせるのに四苦八苦するガロード、その時……基地に警報のサイレンが鳴り響いた。

 

「!? なんだ!?」

「この警報……ネウロイ!?」

 

ガロードはすぐさま懐にしまっていた操縦桿……DXを動かす為のGコンを取り出し、計器に差し込んで起動させる。

 

「まさか……その操縦桿で動かしていたの!?」

「ご名答、それにしても一体何が……」

 

そう言ってガロードはレーダーを操作し周辺の様子を確認する。

 

「この反応……さっきの黒い奴がまた現れたのか?」

「扶桑海軍の人達がネウロイに襲われているんだ……! 坂本少佐が乗っているのに……!」

「ん? お前の仲間が襲われているのか?」

「は、はい……扶桑から今日帰ってくる予定だったんですけど、早く助けに行かないと……!」

 

リーネはそう言って不安そうな顔で下を向いてしまう。ガロードはそんな彼女を見てしばらく考え込んだ後、決意に満ちた表情で操縦桿を握りしめる。

 

「……よし、俺に任せろ!」

「え?」

 

 

 

一方外のミーナ達も警報を聞いて慌てて準備を始める。

 

「おいおいまたネウロイかよ!? さっき出てきたばっかりだろ!?」

「文句を言っている暇があったらストライカーユニットを履け!」

「リーネとアイツはどうするんだ!?」

「しょうがないけど基地の兵達に任せるしか……!」

 

その時、突如DXからガロードの声がマイクを通じて大きめに発せられた。

 

『おいお前ら! DXから降りろ! 発進させるぞ!』

「え!? 何なに!?」

 

するとDXはズズズと腕を使って起きあがり始め、周りにいたミーナ達は慌ててその場から離れていった。

 

「お、起きあがりましたわ!?」

「すんごーい! かっちょいいー!」

 

 

そしてDXは起きあがり、歩いて格納庫の外にある滑走路にやって来た。

 

「ど、どうするつもりですか!?」

「俺がそのネウロイって奴をやっつけてやるよ、俺もアレの仲間に襲われた以上他人事じゃないし……」

「な、なんで……? 私達は貴方を……」

「困っている奴がいるのに放ってはおけないよ、これに乗っている以上……俺にも出来る事がある……と思う」

 

ガロードは生まれた時からずっと、あの世界で戦争によって蹂躙され悲しい思いをする人達を沢山見てきた、救いたくても救えなかった人もいた、だからリーネの言葉を聞き、ガンダムという力を持っている彼は自然と“ネウロイという驚異に蹂躙されている見ず知らずの人達を助ける”という行動に移っていた。

 

「貴方は……」

 

リーネはガロードのまっすぐな瞳を見て思わず黙り込んでしまう。そしてなんとなくだが彼が皆が怪しむような悪い人間には思えなくなっていた。

 

「それじゃ行くぞ! しっかり捕まっていろよ!」

「え!? あ、はい!」

 

ガロードに言われるがまま、リーネはシートの後ろに回り込みそれをしっかりと掴む。

 

「ガロード・ラン……ガンダムダブルエックス、行くぜ!」

 

そしてガンダムDXはそのまま勢いよく蒼い空へ飛び立っていった……。

 

 

「目標は……あそこか!」

 

数分後、ガロード達を乗せたDXは何隻もの軍艦が煙を上げて破壊されている海域にやってくる、そして空では……二人のウィッチがネウロイと戦っていた。

 

「坂本少佐! もう一人は……扶桑の人?」

「あの子達を助ければいいのか?」

「はい! ちょっと待ってください!」

 

そう言ってリーネはイヤホンのようなものを取り出し、それを耳に装着する。

 

「坂本少佐! 私です、リネット・ビショップです!」

 

するとリーネの耳にネウロイと戦っているウィッチの一人、坂本美緒から返信が来た。

 

『リーネ……!? それに乗っているのか!? なんだその兵器は!?』

「説明は後でします! それより戦況を教えてください!」

『あ、ああ……今私が囮になりながらあのネウロイのコアがある場所に宮藤が攻撃を仕掛けている、だが中々露出しなくてな……』

 

よくよく見るとネウロイに接近しながら銃撃しているウィッチ……宮藤は、どこか苦しそうに不安定な軌道で飛びながら、ネウロイに機関銃の弾を撃ち込んでいた。

 

「あんま持ちそうにないな……早く助太刀しないと」

「あ! 待ってください! コアが!」

 

すると宮藤の銃撃がネウロイのコアを露出させる事に成功する、しかし彼女は力尽きてそのまま海面へと落ちそうになっていた。

 

「そこか!」

 

ガロードは露出したコアをDXのバスターライフルのビームで撃ち抜いた。するとコアを破壊されたネウロイはガラス片のようにバラバラと散る。

 

「次はあの子だ!」

 

ネウロイの破壊を確認したガロードはDXを海面へと落ちていく宮藤の元に向かわせる。そしてDXは見事宮藤を空中でキャッチした。

 

「やった! やりましたよ少佐!」

『ああ……見事な手際だ』

 

そう言って美緒はDXの手の中で疲れて眠っている宮藤の元に向かう。

 

「ふいー、なんとか終わったな……ん?」

戦闘が終わりシートに背を凭れ掛らせるガロード、するとモニターにこちらに接近してくるストライカーユニットを履いたミーナ達の姿を確認した。

 

「あちゃー……もうDXのエネルギーも残っていないし、牢屋に逆戻りって訳ね……」

ガロードはこれからどれだけいるかも判らない異世界での生活を想像してやれやれとため息をついた……。

 

説明
第一話です、501のウィッチ達も全員登場します。
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