サテライトウィッチーズ 外伝1
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 外伝1「アフリカの悪魔」

 

 

※この話は本編9話の数日前に起ったある出来事の話になります。

 

 

1944年アフリカ、ここでも人類とネウロイによる激しい戦闘が行われていた、そして人類側には501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」のようなエース部隊が存在していた、その部隊の名は……第31統合戦闘飛行隊「ストームウィッチーズ」!

 

 

砂漠のとある場所にあるストームウィッチーズの基地、そこに建てられたいくつものテントのうち一つの中で、ストームウィッチーズの隊長加藤圭子は机の上である報告書を読みながらふうっとため息をついていた。

 

「最近ネウロイとの戦いが厳しくなっていくけど……まさかこんなことがあったなんて……」

 

圭子の手元には二種類の報告書があった、一つはストライクウィッチーズが遭遇した巨大な機動兵器「ガンダムDX」のこと、そしてもう一つはスオムスで起こったあるウィッチの襲撃事件について事記されていた。

 

「『8月20日……ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン曹長が仮面を付けた所属不明のウィッチに襲われる、曹長は負傷しつつも仮面のウィッチを撃退して難を逃れる、なおその仮面のウィッチは2日前に501で襲撃が報告された仮面のウィッチと酷似しており、上層部は関連性を調べている』……か、ウィッチがウィッチを襲撃するなんて、世の中も変わってきているわねえ」

 

そう言って圭子は体をうんと伸ばし、カメラを持ってテントの外へ出て行った。すると次の瞬間、基地中にネウロイ襲撃を告げるサイレンが鳴り響いた。

 

「ネウロイ!? 出撃しないと……!」

 

 

 

数分後、圭子はカメラを手に出撃した三人の隊員の後ろに付いていくように飛んでいた。

圭子は現在25歳でウィッチとしてのあがりを迎えており、普通に戦うことはできなくなっていた、そして今はかろうじて残っている魔力で空を飛び、ストームウィッチーズの隊長として指揮を行っているのだ。

 

「この辺なんですか? 第10小隊の人たちが行方不明になったのって……」

「ええ、司令部が10小隊の救援要請の通信を受けた直後、彼らと連絡が取れなくなった……おそらくもう……」

 

ストームウィッチーズの一員で同じ扶桑出身のウィッチ、扶桑猫を使い魔とする稲垣真美の質問に圭子は少し悲観気味に答える。

 

「なあに、彼らの仇は私がとってやるさ!」

 

そう言って加速して前に出たのは大鷲を使い魔にしているハンナ・ユスティーナ・マルセイユ、通称「アフリカの星」と呼ばれるカールスラントのウルトラエースである。

 

「マルセイユ! 隊列を乱さないで! まだどんなネウロイかはわかっていないのよ!」

「はいはい、ケイは真面目だなあ」

 

そう言ってマルセイユは元の位置に戻っていった。

 

 

 

数分後、圭子たちは行方をくらませた第10小隊がいたと思われる地点に着陸する、そこには破壊された戦車や銃器の残骸が散らばっていた。

 

「ひどい……」

「こりゃ手ひどくやられたな、でも遺体がないのはどういうことだ?」

「まさかネウロイに食べられたとか……」

「こ、怖い事言わないでくださいよペットゲン少尉!」

 

真美はマルセイユの従卒、ライーサ・ペットゲンの冗談とも本気ともとれる言葉に恐怖する。

 

「何にせよまだネウロイが近くにいるかもしれないわ、警戒は怠らずに……」

「シッ! 静かに」

その時、マルセイユは何かを感じ取ったのか他の隊員たちを黙らせる。

 

「ど、どうしたんですか中尉?」

「何か聞こえてくる……下だ!」

 

その瞬間、マルセイユ達は一斉に空へ飛び上がる、すると約コンマ1秒遅れで地面の中から役30体ほどの小型ネウロイが飛び出してきた。

 

「まさか待ち伏せしていたの!?」

「第10小隊は餌、私達はまんまとそれに食いついた魚ってわけか……最近のネウロイは頭を使うんだな!」

 

そう言ってマルセイユはMG34の標準をネウロイに向け、引き金を引いた。それに呼応するかのようにペットゲンと真美も向かってくるネウロイを次々と落していく。

 

「数が多い! 密集して互いの背中を守るのよ!」

 

圭子の指示で三人は圭子を背中で囲むような隊列を組み、迫ってくるネウロイの大群を一機ずつ落していく。

 

「このままじゃ数で押し切られる……!」

「ならば!」

 

戦況はこちら側が不利だと判断したマルセイユは、ペットゲンと共に隊列を離れてネウロイの大群に突っ込んでいく。

 

「大尉!? 何を!?」

「私達が敵を引き付ける! その間に二人は援軍を呼んできてくれ!」

「で、でもお二人を残しては……!」

「ふん……私はエースだぞ、簡単にやられたりしない」

 

そう言ってマルセイユはペットゲンと共に次々とネウロイを落としていく、するとサッカーボールほどの大きさのネウロイが一匹、マルセイユに向かって突進してきた。

 

「ふん、そんな攻撃に当たる訳……」

 

だがその時、マルセイユの背中にシールド越しに大きな衝撃が走る。彼女の背後からもう一匹、先ほどのネウロイより一回り大きい個体が彼女にぶつかってきたのだ。

 

「く……!?」

「大尉!」

 

マルセイユは衝撃に顔を顰めながらも体当たりしてきたネウロイを押し出そうとする、しかし相手ネウロイは予想外のパワーを発揮し、逆にマルセイユを押し出していた。

 

「大尉!」

「ハンナさん!」

「は、早く行け! ここは任せろといっただろう!」

 

自分を心配する圭子と真美を突き放そうとするマルセイユ、そうしているうちにもネウロイのパワーは徐々に上がっていく。

 

(こ、これは少しまずいか……!)

 

マルセイユは久しぶりに感じる命の危機に冷や汗をかいていた……。

 

 

 

『いけ! ビット!』

 

その時、マルセイユの周りにビームの雨が降り注ぎ、すべてのネウロイがそれに巻き込まれて落とされていった。

 

「!? なんだ!?」

「このビーム……ネウロイのじゃない!?」

 

その様子を見ていた圭子は、ビームが放たれた上空を見る、そこには数基のポットのようなものが浮いていた。

 

「何でしょうアレ……軍の新兵器とか?」

「いや、あんな物開発されているなんて聞いたこと無いわよ」

「……! アレを見ろ!」

 

ふと、ペットゲンが何かを発見して指をさす、その先には砂漠を走る巨大な戦艦と、一機の白くて巨大な人型兵器がこちらに向かっていた。

 

「な、なんでしょうアレ……!?」

「あの巨人、まさか報告にあったDX……?」

 

その時、白い巨大兵器から声が発せられた。

 

『すみません、あなた達はストームウィッチーズの方達でしょうか?』

「……そうだけど何か?」

 

圭子は隊長として代表して白い巨人の質問に答える。

 

『僕達は負傷した第10小隊の人達を保護しています、できれば引き取っていただきたいのですが……』

「「「「へ?」」」」

 

予想外の返答にストームウィッチーズの四人は顔を見合わせた……。

 

 

 

 

 

数分後、四人はその戦艦の中にある医務室に案内された、そこには……。

 

「た、隊長! ご無事で!」

「あなた達……!」

 

負傷した第10小隊の隊員達が一人の医師による治療を受けていた。

 

「君達が彼らの上司かい? 偶然彼らがネウロイに襲われている所に遭遇してね……成り行きで助けたのさ」

「あ、ありがとうございます……」

「所でここまでの戦闘で疲れているだろう……どうだい? コーヒーでも?」

「え? そ、その……」

 

医師の勧めに戸惑う圭子達、そこに、15歳ぐらいの金髪の少年が医師の元にやってきた。

 

「テクスさん、その前に艦長が彼女達と話があるそうです」

「だ、そうだ、私達の事についてはジャミルから聞いてくれ」

「は、はい……」

 

 

 

そして圭子達がその場から去ろうとした際、マルセイユは自分たちを呼びに来た少年にある質問をする。

 

「おいお前……もしかしてさっきの巨人に乗っていたのか?」

「はい、カリス・ノーティラスといいます」

(こんな少年が……あれだけのネウロイを一瞬で……)

 

マルセイユはカリスの圧倒的な戦闘力に、少し対抗意識を燃やしていた。

 

「ふん、あの時は余計な世話を……あの程度の数の敵、私にとってはピンチでもなんでもなかったんだ」

「ふふふ……そうですか」

 

カリスはマルセイユの挑発に対し、余裕そうに微笑であしらった。その態度がマルセイユの心を刺激する。

 

「なっ……! なんだその余裕は!? ほ、本当だからな!」

「はいはい、とっとと行くわよ」

 

その様子を見ていた圭子は呆れた様子でマルセイユの首根っこをつかみ、ずるずると引っ張っていった。

 

「は、離せ隊長! こいつにはまだ話がー!」

「先方を待たせるわけにはいかないでしょ? 早く行くわよ」

 

 

 

数分後、圭子達は他の乗員によって今度はブリッジに連れてこられた、そこには黒いサングラスを掛け、青いコートを着た30代程の男がシートに座っていた。

 

「あなたが艦長ですか?」

「ああ、私はジャミル・ニート……このフリーデンの艦長をしている、君が隊長かね?」

「はい、第31統合戦闘飛行隊ストームウィッチーズの隊長、加藤圭子です……あの、一体あなた達は何者ですか?」

「あの白い巨人は何ですかー?」

 

圭子や真美は自身の中の疑問を次々とジャミルにぶつけていく、するとジャミルはやはりかといった様子で深くため息をついた。

 

「MSを知らない……やはりここは我々のいた世界では……」

「我々の世界?」

「こちらの話だ、残念だが君達の質問には答えられない、いや……答えても信じてもらえないだろう」

「そうですか……」

 

圭子はジャミルの考えを理解し、それ以上の詮索をすることはなかった。するとジャミルはおもむろにコートから二枚の写真を取り出した。

 

「次いでで悪いのだが……我々は人を探している、この二人を見たことはないか?」

 

その写真には15歳ぐらいの少年が、もう一枚には同い年ぐらいの少女が映っていた。

 

「ガロード・ランとティファ・アディールという……ここに来る際、はぐれてしまったのだ」

「ガロード・ラン……?」

 

圭子はガロードという名前を聞いて、先ほど読んだ報告書にそんな名前が載っていたのを思い出した。

 

「もしかしてあなた達は……DXのパイロットの関係者なんですか?」

「!! ガロードの事を知っているのか!?」

「え、ええ……ブリタニアにいる第501戦闘航空団が白い巨人を保護したという報告が……」

 

するとブリッジにいた操舵手らしき男と、オペレーターらしき金髪にウェーブがかかった女がジャミルに嬉しそうに声をかける。

 

「やった! ようやく手がかりが掴めましたね隊長!」

「そうか……あの子もここに来ていたのね……」

 

そしてジャミルは改めて圭子達にお礼を言った。

 

「すまない、貴重な情報をありがとう……お礼にこのまま君達の基地まで送ってあげよう」

「そ、そんな! こちらこそ仲間を助けてくださったのに……!」

「何、遠慮することはない……けが人だって多いしな」

 

こうして圭子達は保護した第10小隊の隊員達と共に白い戦艦……フリーデンに乗って無事基地に帰還することができた……。

 

 

 

そして基地に着きフリーデンから降りた第10小隊の面々は、去っていくフリーデンに手を振っていた。

 

「ありがとー!」

「今度礼はたっぷりするからなー!」

 

一方一緒に降りた圭子は他の隊員達と共に手を振りながら、はあっとため息をついた。

 

「はあ……報告書になんて書こうかしら……“巨大な白い戦艦と巨人に助けられた”なんて上層部が信じてくれるかしら……」

 

そう言って圭子は去っていくフリーデンの勇姿を、持っていたカメラのバインダーの中に収めた……。

 

 

 

 

 

一方フリーデンのブリッジでは、主要のメンバーが集まって今後について話し合っていた。

 

「我々の次の目的地は決まった……ブリタニアの第501戦闘航空団の基地だ」

「あの圭子って人から地図も貰ったしな!」

「ネウロイの巣に近付かずに最短ルートを通れば一週間ぐらいで付くはずだ!」

 

フリーデンの整備兵キッド・サルミサルとパイロットのパーラ・シスは圭子から貰った地図をジャミル達の目の前で広げながら今後のフリーデンの航海ルートをペンで描いていく。

 

「そこにガロードが……あんにゃろう、心配かけやがって!」

「DXまで一緒とはね、できればティファも一緒にいてくれればありがたいんだけど……」

 

そう言ってフリーデンの雇われMS乗りのウィッツ・スーとロアビィ・ロイは楽観的な憶測を立てる。

 

「それはまだわからないだろう、この世界にはウィッチやネウロイといった我々にとって未知の存在があるのだから……何が起こっても不思議じゃない」

 

そんな二人の憶測を戒めるように、フリーデンの船医テクス・ファーゼンバーグはコーヒーを啜りながら自分なりの意見を言う。

 

「キャプテン……ガロードとティファは大丈夫でしょうか……?」

 

フリーデンの副艦長、サラ・タイレルは不安そうにジャミルに話しかける。

 

「私にもわからん、なぜ我々が破壊された筈のフリーデンに乗っていつの間にかこの世界に来たのかもわからないのだから……」

 

 

そしてフリーデンは進んでいく、仲間がいるというブリタニアに向かって……。

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ストパン公式同人誌のアフリカの魔女(総集編)を読んだ影響で書いた作品です。

面白い作品ですので機会がありましたら是非読んでみてください。

 

 

説明
ガロードと合流する前のジャミル達の話になります。
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コメント
>>FDPさん:ありがとうございます、今回の話はいろいろと伏線になっているんですよね。(okura)
アフリカではこんなことが・・・でしたら、二期の第10話「500 overs」の話が楽しみです。(FDP)
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サテライトウィッチーズ クロスオーバー ガンダムX ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 

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