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「うわっ!?さむっ!」

 

夜半過ぎに甲板に出たナミは体を震わせた。

 

 

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薄着で外に出た事を少し後悔しながら部屋には戻らずメインデッキの階段を上り食堂へ向かう。

主のいないキッチンはガランとしていたがテーブルには毛布とバスケットが一つ。

 

中を覗くと酒瓶と魔法瓶にコップ。

それと食べ易そうなつまみが入っていた。

 

「うーん流石だわサンジ君」

 

料理人の心遣いに感嘆しながらもナミは魔法瓶をバスケットから取り出し

代わりに小脇に抱えて自室から持ってきた酒瓶と入れ替えた。

 

「ごめんね」

 

ペロリと舌を出してからちょっと考えてコップももう一つ追加して

毛布を肩に掛けバスケットを手にメインマストに向かった。

 

「くあーあっっ」

 

その頃見張り台に座った本日の当番のゾロはじっと座っている事に飽きて

胡座をかいて大きな欠伸とともに船をこぎ始めていた。

 

この海域は比較的安全な為、

夜は船を停泊して一晩毎に交替で見張りをたてているのだ。

 

「ちょっと!寝たら見張りの意味ないでしょ」

 

もう諦めて寝てしまおうと思った瞬間に怒鳴られて

ゾロは思わずビクリと驚いて振り返るとナミが顔を覗かせていた。

 

「はいはい、ちょっと避けてよね」

 

メインマストをよじ登りナミが見張り台までやってきたのだ。

そしてその場を占領しているゾロを追いやりスペースを空けさせ見張り台に入ってくる。

 

「ほらっ!いい加減覚えなさいよね」

 

舌打ちしたくなるのを堪え押し黙ったゾロに

隣に座ったナミは追い打ちをかける。

 

改めてメリー号のクルーとなったナミは

ここの所ナミ以外の全員に毎晩のように天文航法を教えているのだ。

 

グランドラインに入ってすぐのため今の内にある程度夜間航行を習得するのが目的だ。

昼間はまだいいのだがこう毎晩停泊していては距離が稼げない。

ログポースを指針に船を進めることは可能だが

近辺の海図を手入れてあるので

現在地を把握して海の深度や暗礁や障害物を避けなければいけない。

 

1人が見張りに立ち1人が操舵に回るツーマンセルで航行計画を立てるつもりだったのだが

船の操縦はキャラベルの操作性の高さから全員ある程度合格だが

星から現在地を割り出すのはなかなか骨が折れる。

しかし航海士ナミが1人毎晩見張りに立つわけにはいかない。

 

仕方なくナミは夜の当番の者に簡単なレクチャーしているのだった。

 

しかし問題のある男が一人。

ナミの隣で顰めっ面をした剣豪だった。

この剣豪の迷子っぷりは半端ない。

北と言えば上を見て南と言えば暖かい方だと言い張る。

 

「じゃあ大剣豪の星はどれ?」

 

ナミはほとほと疲れ果てて最後に質面すると

ゾロは空に一際輝く大きな星を指差した。

 

「はいはい、よくできました」

 

学説的な物や世間一般的な星の呼び名で説明しても全く覚えないため

とりあえず一番目印になる星だけでも叩き込むための苦肉の策だった。

 

ちなみにルフィの場合は一番肉星だ。

 

ウソップとサンジはちゃんと覚えていて

既にある程度はなんとかなりそうな目処はたっているのだが

問題児2人に頭を悩ませるナミは今日はもう諦めようと

バスケットから酒瓶を取り出し栓を抜いた。

 

「お。酒か」

 

先程までげんなりしていたゾロも酒を見てぱっと顔が輝いた。

意外に現金である。

 

クルー全員そこそこ酒は飲むが好んで飲むのはゾロとナミだった。

 

「次はもう少しくらい覚えなさいよね」

 

ナミはお小言を言いながらもゾロに渡したコップにも酒を注いでやる。

 

「おう」

 

ゾロは返事しながらも嬉々として苦手なことから解放された事に喜び

酒をグビグビと煽っている。

 

結構なペースで何杯か飲んだナミも

毛布を被っていたとは言え冷えた体にアルコールが染み渡る。

 

ふと空を仰ぐと澄んだ空気に星が一際輝いて見えた。

ほろ酔いとまでは到底足りないまでも気分が良くなって

ついでに自分のために天体位置表を改め出す。

 

暫し沈黙。

 

偶にコップが空になった時にだけお互い自分で酒をつぐ音がする。

トクトクと心地良い。

 

ビュッ

 

そこに太刀振るいの音がしてふとナミが視線をあげると

隣に座るゾロは刀に打ち粉を叩き刃の手入れをしていた。

 

月明かりに照らすように刀身を見据えると

スラリと音がしそうに煌めいたのを確認したゾロは

その刀を白い鞘に収め傍らに立てかけた。

 

次にもう一本を手に取りまた手入れを始める。

 

ナミは手入れが済んだ白塗鞘を見た。

刀は詳しくないが泥棒時代に何点か売り捌いたことがあった。

それらはどれもこれも黒塗り朱塗りで白漆はお目にかかったことはない。

 

ついつい昔の癖(さほど昔でもない)か価値が気になってしまう。

 

「年代ものとか??」

 

少し手を伸ばしてその鞘を手にしてみれば

かすかな明かりの中でも年期が入っているのはわかった。

ゾロは一度ちらりとナミの方を見てまた視線を戻し

3本目の手入れを続けるだけで何も言わない。

 

「ふーん」

 

改めて両手で重さを確かめてみると思ったより重くはない。

でもけして軽くはない。

 

「命の重みだ」

 

ゾロはポツリと零した。

ナミはゾロを見るがゾロは真っ直ぐに前を見据えたまま

最後の太刀を振り先程と同じように確かめた後それを鞘に収めた。

 

それを見てナミも白鞘の太刀を元の場所に置き

バスケットからもう一本酒瓶を取り出した。

 

「もうちょっと付き合う?」

 

ナミが酒瓶を見せるとゾロはおっ?と言って目を丸めた。

先程まで飲んでいた瓶は早々に空になっている。

 

「いいもん持ってんじゃねえか」

 

ゾロはうれしそうにコップを差し出すので

ナミは封を切って栓を抜き注いでやる。

自分のコップにも手酌で注ごうとするとゾロが手を出すので瓶を渡すと

ナミのコップに並々と注いでくれた。

 

ニヤリと顔を見合わせて乾杯とコップを改めてあわせて酒を口に含む。

 

「うめぇな」

 

鼻を抜ける芳醇でまろやかな喉ごしにゾロが驚いてコップの中を覗き込む。

ふふん♪とナミが鼻を鳴らし、でしょう?と同意する。

 

「有り難く飲んでよね」

 

ナミの持ち込んだ酒は先程の物よりも味も格別だが

アルコール度数も格別だった。

ゾロは旨い酒に舌鼓をうちながら空をもう一度見上げると

先程までナミに教えられた星がキラキラと瞬いていた。

 

説明
酒飲み仲間ゾロナミ。
薀蓄は嘘八百(笑)
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タグ
ワンピース ナミ ゾロ 

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