Destiny/Domhan Eagsula(デスティニー/ドムハン エアグスラ)  第10話    闇の影
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朝になる。

 

「………」

 

恵生は起き上がった。

 

「今日はどうすれば……」

 

いい加減宝石剣を作らなければ間に合わないかもしれない。

そんな時ふとあることを思い出す。

それは賢蔵が恵生に言った言葉である。

 

『右策の体に入った時璽石はもう完全に右策の内臓だけでなく神経にも浸透しておる。

埋め込んだ儂でも除去は不可能な程にな……』

「…………」

『儂が右策に入れた時璽石、あれの一部にはな、前の聖杯のかけらを使って作ったものじゃよ。

つまりは即興で作られた聖杯と言っても過言ではない。アンベルツインの小僧が白い聖杯なら右策は黒い聖杯じゃ』

「………もしかして!」

 

恵生はすぐに立ち上がり、朝食を作り、さっさと一人で食べ、残りは彬渡や右策やフィリーのために残して出かけていくのであった。

 

 

 

第10話    闇の影

 

 

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恵生はあるところの扉を開ける。

 

「八子空恵生か」

 

そこにいたのは裏影終死郎、つまり恵生が訪れたのは教会であった。

 

「裏影終死郎、あなた知ってたわね、右策が今回の聖杯の一つだってことを……」

「ああ知っていた。何せ時璽石の取り除き作業をしたのだからな。それくらい分かったさ」

「それじゃああのこの町を襲っている黒い何かが右策の影だってことも……」

「うん? それは誰から聞いたんだ?」

 

後ろを向いていた終死郎がようやく恵生の方を向く。

 

「あの賢蔵よ」

「ほう、あの老人からか……。あの老人、嘘はついてないが真実も言っていないようだな」

「真実?」

「あの黒い何かは右策の影と言うのは正しい言い方ではない。

あれは真浦右策そのものだ。聖杯の中身の呪いを受けたな……」

「聖杯の中身の呪い? 聖杯の呪いってその中身に問題が…」

「中身のことまでは知らされてないのか。まああれを知っているのは片手で数えられるほどしかいないからな。

お前には少し話をしておこう。聖杯と言うのは二種類ある、一つは願望機としての聖杯、そしてもう一つはサーヴァントの魂を完全にとどめたりする大聖杯。

その大聖杯と比べると最初に話した聖杯は小聖杯、つまりは真浦右策とルフィリーヤス・アンベルツインのことだ。

そして俺の言う聖杯の中身と言うのは大聖杯の中にいる奴のことだ」

「大聖杯の中にいる……」

「そのことについてはアンベルツインの小僧に聞くと良い。俺以上に知っているぞ」

「じゃああなたもその中身を…」

「知っているが、俺の口から言うことではないな。

聞きたければ小僧の方にしろ。

それともう一つ教えておいてやろう。真浦右策は真浦の家に向かっているぞ」

「え?」

「先ほどそこら辺を散歩していたが、たまたま真浦右策を見た。

何をしに行ったかは知らんが、気になるなら行ってみるがいい」

「!!」

 

恵生は急いで教会から出て行った。

 

「さて、これからどうなるか……」

 

終死郎は一人でつぶやいた。

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恵生は真浦家にやって来る。

 

「右策! 右策!」

 

真浦家になんのためらいもなく入る。

 

「右策ーーーーー! どこーーーーーーーー!!」

 

恵生は右策の部屋を見つける。

 

「そう言えば右策の部屋に入るのって何年ぶりなるんだろう……」

 

恵生はそう思いながら部屋の扉を開ける。

 

「右策ーー……」

 

恵生が静かに部屋の扉を開ける。

 

「いるの?」

 

恵生が部屋を進んでみるとベッドで倒れている者を見つける。

 

「これは……茜雫!?」

 

そのベッドには血を流し、死んでいた茜雫がいた。

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幕間

 

 

 

 

 

 

恵生が真浦家にやって来る数十分前のことであった。

右策はふと自分の家にある部屋を訪れていた。

 

「帰ってたのね〜、右策……」

 

右策の部屋に茜雫が入ってくる。

 

「義姉さん……」

 

茜雫の様子はとてもおかしかった。

 

「あなたは良いわよね〜、あなたは私が得たかったもの得ていて、私はそれを得られなかった」

 

茜雫は気が狂っていた。

 

「なんであなたには魔術回路があって私にはないのかしら!?」

 

茜雫は無理矢理右策をベッドに押し倒す。

 

「ねえ、なんでよ? なんで、あなたはお爺様に認められて私は認められないの!?」

 

茜雫が右策の手を掴む。

 

「こうなったらあなたの魔術回路を無理にでも奪うわ。そして八子空を殺す!」

「恵生先輩を?」

「ええ、これも全部あいつが悪いのよ! そう! あいつがいなければ私はこんなことしなくていいのに!」

 

茜雫の言っていることは滅茶苦茶だった。

 

「あなたは今まで通りに私の言うことを聞いていればいいのよ……早く魔術回路をよこしなさい!」

「ね、義姉さん……」

「さあ! さあ!」

 

茜雫は狂気に満ちた顔で右策に迫った。

その時である。

 

「…っかは!」

 

茜雫の口から血が吐かれる。

茜雫はなぜ血を吐いたのかのと思い、痛みを感じる腹を見てみる。

すると腹には右策の影から出ていた黒い触手に腹を突き刺されていた。

 

「…な、なによこ……」

 

新しく出た黒い触手は茜雫の喉を突き刺した!

 

「…れ…………」

 

茜雫はそのまま息絶え、ベッドに倒れた。

 

「義姉さん………」

 

右策は絶句したが、それもすぐに終わった。

 

「な〜んだ、簡単に殺せるじゃないか……」

 

右策は茜雫の死体を見て笑い出す。

 

「ふふふふふははははははははは!!!

な〜んだ、こんなに簡単な事だったんだ!

それじゃあ今いくよ、兄さん」

 

右策は黒い影と共に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

幕間終了

 

 

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「刺し傷……、しかもよく見たら黒い……これって……」

 

黒い何か、つまりは右策がやったのだと恵生はすぐに分かった。

 

『来るのが少し遅かったな』

 

部屋に突然賢蔵の声が聞こえてくる。

 

「賢蔵! どこ!? どこにいるの!?」

『儂はここにはおらんよ、ここから遠く離れた場所で魔術を通して見て、話しているだけじゃよ」

「くっ……」

『お主、そんなところで油を売っていていいのか?』

「どういう意味よ?」

『右策の奴は既にこの家にいないぞ。奴は殺しに行った、奴の兄をな……』

「小坂を!?」

『早く戻らんと本当に取り返しがつかんことが起こるかもしれんぞ……』

 

賢蔵の声が途絶える。

 

「右策が小坂を………早く戻らなきゃ!」

 

恵生は急いで家へと戻るのであった。

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幕間

 

 

 

 

 

 

「あいつら、どこ行ったんだ」

 

彬渡が恵生と右策を探していたが見つからない。

そんな時、彬渡の前に黒い何かが現れる。

 

「こいつは!」

 

黒い何かが黒い衣のようなものを解く。

するとそこから右策が姿を現した。

 

「右策……なるほど、まさかとは思っていたけどあれがお前だったとはな……」

「兄さん……」

「なんだ? 俺に用があるのか?」

「ああ、用はあるよ。あそこにいる聖杯にもね……」

 

右策がフィリーがいるであろう方を指差す。

 

「ふぅ〜ん、随分侵されてるって感じだな」

「ああ、とてもいい気分だ。

それと同時に嫌な気分でもあるけどな……兄さん、あんたのせいでな!」

「は?」

「兄さんは本当に何でもできた。小さいころから俺が出来ないことも出来たし、出来なかったこともすぐに出来るようになった。

そして兄さんは小坂家の長兄であると同時に嫡男、だから俺が真浦家にもらわれた。

そして俺はいつも人体改造を受けていた。毎日、毎日、兄さんがのんびりと暮らしている間、ずっとね……」

「…………」

「それでも魔術師としては兄さんの方が上だった。

けどそれは数十分前までのことだ、今の俺はもう……違う!」

 

右策の足元から黒い泥が流れ出し、屋敷の中庭のほとんどを覆う!

 

「とおっ!」

 

彬渡はジャンプして避ける。

その彬渡を追うように黒い泥から触手が現れ、彬渡を襲おうとする。

 

「てゃあ!」

 

彬渡は指先から魔力を溜めた魔力弾を撃ち、触手を撃ち落す。

 

「そこっ!」

 

彬渡はすぐに後ろから攻めてこようとする触手を宝石魔術で破壊する。

 

「甘いよ、兄さん」

 

右策はすぐに新しい触手を作り出し、上に飛び上がっていた彬渡の足首に絡みつく。

 

「なっ! ぐはっ!!」

 

彬渡は思いっきり地面に叩きつけられる。

地面はご丁寧に黒い泥が引いていて、普通の芝生の上に落とされた。

 

「この泥……、英霊にはかなりのもので少しでも触れたらだめだけど、人間にはそこまでの力はないんだよね。

まあやばいものであるのは違いはないけど……」

「っ………」

 

彬渡は叩きつけられた痛みもあるがそれ以上に黒い触手に捕まれた足の方が痛かった。

 

「そっちが痛いのか……、だったら……」

 

右策は新しく触手を生成し、その触手で彬渡の両太腿と両腕の所に触手を突き刺す!

 

「ぐああああああああ!!」

「痛い? 痛いでしょ? でも俺の痛みはこんなもんじゃない。もっと味あわせてあげるよ、兄さん」

「やめなさああああああああああい!!!」

 

 

 

 

 

 

幕間終了

 

 

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恵生は急いで家へと戻って来た。

 

「はあ……はあ……」

 

恵生は息を切らしていた。

 

「とりあえず家の中に……」

「ぐああああああああ!!」

 

彬渡の叫び声が聞こえてくる。

 

「これは……」

 

恵生は急いで中に入って中庭の方を見る、そこには黒い触手に両腕と両足を刺されていた彬渡がいた。

 

「痛い? 痛いでしょ? でも俺の痛みはこんなもんじゃない。もっと味あわせてあげるよ、兄さん」

 

右策が新しい触手で彬渡を襲うおうとした時…。

 

「やめなさああああああああああい!!!」

 

恵生が大声で右策を静止させる。

 

「あ、先輩……帰って来たんですか」

「ここは私の家よ、帰ってきて…当然でしょ」

「それもそうですね」

「右策…本当に……汚染されている……」

「先輩、俺、今すごく気分がいいんですよ。

先輩を殺したいくらいに……」

「…………」

 

恵生は何とか投影をしようとする。

 

(未来の私の腕を使わないような投影……、今の私じゃ未来の私の武器は難しそう…。

となると……マシンガンくらい…)

「投影でもするんですか? でもそんなことさせると思いますか? セイバー……」

「え?」

 

恵生の後ろから右策とは全く別の影が現れる。

恵生はわずかな風の動きと直感で後ろから攻撃が来ることを察知した。

 

「くっ! 投影!」

 

恵生は盾などは魔力を非常に使うため何とか武器の方を投影し、とても脆いマシンガンを投影した。

そして恵生はそのマシンガンで後ろから来る攻撃を何とか防ぐもそれと同時にマシンガンは壊れ、恵生自身も後ろに吹き飛ばされた。

 

「!」

 

恵生が自分を攻撃してきたものを見る。

そこにいたのはゼロであった。

 

「ゼロ…」

 

しかしそのゼロは恵生の知っているゼロとは見た目が少し変わっていた。

目の前にいるゼロは体が黒色であった。

そして手に持っていたゼットセイバーも緑色ではなく紫色であった。

 

「久しぶりだな、恵生」

「でもなんで……」

「今のセイバーは俺のサーヴァントなんだよ」

 

右策の体全体が令呪で光る。

 

「令呪……」

「そうだよ、セイバーはまだ使えると思って完全に取り込まずにとっておいたんだよ。

セイバー、先輩をやっちゃいな」

「ああ、飛燕脚!」

 

ゼロが一気に恵生に近づく。

 

「終わりだ!」

「月光・烏!」

 

ゼロがゼットセイバーを振り下ろすよりも先に横から槍が飛んでくる。

槍はゼットセイバーに命中し、その場で爆発を起こす。

 

「!」

 

爆発の煙が止むとそこには恵生がいなかった。

 

「そこか!」

 

ゼロがゼットバスターである方向を攻撃するもそこにいたものはすぐに移動して彬渡の所に移動していた。

 

「ライダー……」

 

恵生を助けたのはジュディスであった。

 

「ライダー、お前、俺を裏切るのか?」

「右策、これはあなたが私に令呪を使って命じたことよ。

何があっても恵生を守れって言う。

その相手があなただとしても令呪は働くのよ」

「そうか……ふふふ」

 

右策は笑う。

 

「じゃあ、ライダーもきちんと取りこんでやるよ!」

 

右策の体から黒いオーラのようなものが放出される。

 

「………」

「待て!」

 

そこにある者の声が聞こえてくる。

その者とは家の廊下の方ですべてを見ていたフィリーであった。

 

「フィリー…」

「マウラウサク、お前は自分が真の聖杯としていたんじゃないのか?」

「まあこんな体になった以上、そう言う欲はあるな」

「だったら僕の城にきなよ、聖杯とあらんための正装も城にあるからさ。

ただし取り出せるのは僕だけ……」

「つまりは先輩達に手出しさせない代わりに人質になると……」

「…(コクッ)」

 

フィリーは黙って頷いた。

 

「だ……ダメよ、フィリー……」

 

疲れが原因なのか、はたまた中庭に充満している泥が原因なのか恵生の意識は朦朧としていた。

 

「ごめんね、エミ………さようなら」

 

フィリーは自分から中庭の泥の中に入り、消えた。

 

「フィリー!」

「大丈夫ですよ、先輩。ちょっと移動のために消えてもらっただけですから……、行くぞ、セイバー」

「ああ」

 

ゼロも泥の中へと消え、右策も消えた。

右策が消えたと同時に中庭を敷き詰めていた黒い泥はすべて消えた。

 

「フィリー…ゼロ……右策………」

 

恵生の意識はなくなった。

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今回明らかにされた情報

 

 

サーヴァント名「セイバー(オルタ)」

マスター     真浦右策

真名      ゼロ(出典作『ロックマンX』シリーズ)

男性

 

クラス保有スキル

 

「対魔力」C          魔力の乗った攻撃に対して防御が働く。対魔力はランクと同格以上でないとダメージを与えることは難しい。(魔力が乗ってない攻撃でダメージを与えることは不可能ではない)

 

個人スキル

 

「魔力察知」C         魔力反応を察知することが出来る。ランクCなら半径10メートル内の魔力反応を感知可能。

 

所有宝具

 

「ゼットセイバー」       宝具ランクA+

 

ゼロの持つ剣。その剣から魔力を込めた攻撃を何通りも持っている(例として魔力波をそのまま飛ばしたり、炎や氷を纏うことが出来る)。

また刃の形をある程度変えることが出来る。

 

「ゼロバスター」      宝具ランクA

 

ゼロの右手をバスターに変えることで出来る。バスターから魔力を込めた魔力弾を打ち出せる。

 

 

必殺技

 

飛燕脚

 

ランクC  簡単な高速移動をする技。飛距離は短いが相手の後ろや上に回り込みやすい。

 

 

閃墜斬

 

ランクB  ゼットセイバーに魔力を纏わせ、敵に向かって下に突撃していく。

 

 

双幻夢

 

ランクB+ 一時的に自身の分身を作り出す。

 

 

裂光覇

 

ランクA  地面に力強く魔力を込め、上空から魔力波の雨を降らせる。

 

 

 

備考    状態としてはロックマンX5に出た「覚醒ゼロ」の状態であるが、原点とは違い通常のパワーアップの姿(通称「黒ゼロ」)の姿で本作は登場している。(原点では紫色のオーラを纏っている程度)また説明には書いていないがスキル以外の身体能力は通常時よりも上がっている。

説明
この物語は作者が「Fate/Zero」を見た影響で「Fate/Stay night」の話を基に作った作品です。
基となった話はアニメ化されてないルートをメインとしているため、ネタバレが嫌な人はあまりお勧めできません。
また話によっては原作のシーンなどを見ながら作っている場面もあり、原作で出てきたセリフと全く同じやほとんど同じなところもあることをご了承ください。
なお、サーヴァントにつきましてはクロスオーバー的にまったく別の作品からの参加となっています。
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タグ
Destiny/DomhanEagsula Fate 第10話 八子空恵美 クロスオーバー ロックマンX テイルズオブヴェスペリア 

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