魏アフター 愛する者達を支える外道 二話
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「いたたた……何かすげぇいてぇ……」

 

あの女(?)から受け取った銅鏡を叩き付けた後意識を失った

かと思うと体中に激痛が走って意識を取り戻した。

 

「本当に戻れたんだろうな……」

 

もしかしたら騙されたのではないかと言う疑惑が俺の中で生まれ始めた。

状況確認の為に周りを見渡すと……

 

「完全な荒野だな」

 

前にも見た様な完全な荒野だった。

と言うことは……

 

「戻って来れたってか……?」

 

いや、荒野だとしてももしかしたら違う確率もある。

ここはそのあたりのことを頭に入れて行動する必要があるな……

そんなことを考えていると俺の近くにある物が目に入った。

 

「これは……聖フランチェスカ学院の制服と『月斬』じゃないか何でここに?」

 

月斬は俺が継承した北郷家の宝刀。

何でも昔月は二つあったがその内の一つが地上に落ちてきたらしい。

その時に北郷家の開祖がこの刀でその月を粉々にしたらしい。

祖父ちゃんに聞いた時に『嘘だろどうせ』とか言ったら祖父ちゃんが目の前で山を一つ粉々にしたのは驚いた。

 

「でも、何でこれがここにあるんだ?それに聖フランチェスカ学院の制服だって……あれ?」

 

持った時に違和感を感じて良く見てみると制服は改造されていて武器がところどころに隠せるようになっていた。

 

「でも、今俺ナイフ持って無い……ってナイフも落ちてるし……

ご都合主義臭がすげぇする……」

 

そんなことを呟きながら俺がいつも愛用しているナイフを隠して制服を着てみる。

すると全くの違和感がなかった。

 

「制服じゃなくてもコートじゃ駄目だったのか?」

 

まぁ、そこら辺は大人の事情だと思いながらもこれからどうするかを考える。

 

「ここってどこなんだ?」

 

俺が分かるのはここが荒野だと言うことだけだ。

それ以外のことは全く分からない。

 

「他に何か分かることは……お?」

 

良く目を凝らして周りを見ると遠くに村が見えた。

 

「あそこに行くかな。

他に行くとこ無いし」

 

俺はそう呟きながらその村に向かって歩いた。

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「こりゃぁ、一体どういうことだよ……」

 

村に向かう途中から異変に気付いて走ってきた俺が開口一番に言った言葉はそれだった。

家は焼かれところどころから悲鳴が聞こえる。

 

「うぅ……」

 

生きている人を見つけ俺はその人に駆け寄る。

 

「おい!大丈夫か!これは一体どうしたんだ!」

 

「盗賊が……この村を……」

 

その人はそう言って何も言わなくなった。

俺はゆっくりとその人を横たえて無言で月斬を抜く。

すると盗賊らしき男が俺に近づいて来て俺に剣を突きつけてこう言って来た。

 

「おい、そこの兄ちゃん。

珍しい服を着てるじゃねぇか。

それに珍しい剣も持ってるじゃねぇか。

その二つを俺によこしな」

 

「……一つ、尋ねても良いか?」

 

「あ?」

 

「何でこんなことをした?大陸はもう平和になった。

なのに何でこんなことをした?」

 

「そんなの楽に生きてぇからに決まってるだろうが。

真面目に仕事して生きるだなんて馬鹿馬鹿しいぜ」

 

「そうか……」

 

そんなことで……

 

「この村の人達を殺したのか……!」

 

「はぁ?兄ちゃん何言って……え?」

 

男は自分の右腕に違和感を感じたのか右腕を見る。

そこには……右腕があった。

でも、そこにあった右腕には……手首から先が無かった。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!てめぇ!何しやがった!」

 

俺は月斬に付いた血を振り払いながらこう言った。

 

「殺し事態は俺も否定しない。俺もたくさんの人を殺してきたからな。

だが俺が殺してきたのは悪だけだ、

悪を滅ぼせば争いがなくなると分かっていたからな。

だが、お前達のしていることは憎しみの連鎖を生みだすと言う三流の外道がする愚かな行為だ。

俺はお前達の様な三流とは違う。

真の外道と言うのがどう言うものか………お前達に見せてやろう」

 

俺はそう言ってその男に近づき両足を切断した。

 

「ぐあぁぁぁぁぁっ!」

 

「真の外道とは三流の外道共を常に監視し光の住民達に危害が及ぶのを防ぐ役割だ。

もし、三流達が光の住民に危害を及ぼせば容赦なく裁く。

光の住民達の恨みを全て受け取れ」

 

俺はそう言ってその場から離れた。

あの男を殺さなかったのは殺せなかったからじゃない。

あの男を殺すのは俺では無く光の住民の憎しみだからだ。

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第三者視点

 

一刀が最初の男を殺してから少し経って地獄絵図は少し変わった。

人が悲鳴をあげているのは変わっていない。

変わっているのは悲鳴をあげているのが民では無く盗賊になったということだ。

盗賊達からは死人は出ていない。

だが、最初の男と同じように右腕と両足を切断されている。

何人か逃げようとしているが一刀はそれをさせない。

斬りかかってくる盗賊達の攻撃を上手く避けて逃げようとする者達の右腕と両足を切断する。

もう、彼の姿からかつての彼を想像することは不可能だ。

 

「ようやく終わったか……さて、これからどうするかな」

 

少なくとも一刀は魏にはいかない。

人を殺しても何も感じなくなってしまった自分を華琳達には絶対に見せたくない。

 

「蜀か呉か……と言ってもここがどこだか分からないとどう行けば良いのか分からないんだけどな」

 

そう言いながら適当に歩くすると遠くに旗が見えた。

 

「ん?あれは……」

 

旗には『孫』の文字。

孫策か孫権か孫尚香かは分からないが呉の王族であることには変わりないだろう。

 

「そうだ。呉に連れて行って貰うか。あ、でもな……黄蓋の件があるか……

もし、俺が策を見破ったって伝わってたら俺斬り殺されるかもな……

でも、他に頼りが無いからな……」

 

斬り殺されるのだけは勘弁願いたいと思いながらゆっくりとその旗の方に向かった。

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一刀side

 

「何でこうなったんだ……」

 

俺の後には怯えている孫策。

そして、前には青筋を立てている周瑜。

事の始まりは俺がここに来たことから始まった。

来た最初は孫策に剣を突きつけられる程警戒されていたが孫策は消える時の俺の顔を覚えていたらしく

俺が天の御遣いだと言うと『ああ、確かにあの時の御遣い君だわ』と言って歓迎してくれた。

孫策の記憶力は中々のものらしく周瑜も信用してくれた。

そして、色々あって建業に向かうことになったのだがそこで孫策が

 

『呉に御遣い君の血が欲しいなぁ』

 

とか言って来た。

つまり、俺に呉の重鎮を抱けと言うことだ。

そこで周瑜が大激怒し今に至るのだ。

 

「孫策、もう諦めろって……」

 

もし、俺が華琳達以外の女を抱いたと華琳達にばれたら何をされるか……

 

「(ガクガクブルブル)」

 

「一刀、どうしたの?」

「北郷、どうしたのだ?」

 

「い、いや何でも無い」

 

すごく簡単に想像出来た……

 

「兎に角俺は死にたくな……俺に呉の重鎮達は抱けないんだよ。頼むから諦めてくれ」

 

「雪蓮、北郷の意思を尊重しろ」

 

「う~………」

 

雪蓮は何とか俺に呉の重鎮を抱かせようと思案している。

このままじゃ『抱かないと建業に連れて行ってあげない』とか言い出しそうだな……

 

「俺が呉の重鎮に惚れたら抱くかなぁ……」

 

「(ピクッ)」

 

「まず惚れる為には重鎮達に会いに建業に行かなくちゃなぁ……」

 

これで孫策も建業に連れて行ってくれる筈だ。

 

「冥琳!まずは健業に行くわよ!」

 

孫策が乗りやすい性格で良かったよ。

そんなことを思っていると

 

「中々の腕だな」

 

周瑜が俺にしか聞こえない声でそう言って来た。

俺も小声で話す。

 

「何が?」

 

「あのまま放っておけば雪蓮は『抱かないと健業に連れていかない』と言い始めただろう。

それを察知してお前はああ言ったんだ。抱くつもりなど毛頭も無い癖にな」

 

「さ~て、それはどうかな?」

 

流石美周郎だな……

俺なんかの考えは全部お見通しってか。

 

「……魏に帰らないのか?」

 

「帰らない」

 

俺の言葉に周瑜は驚愕の表情を浮かべる。

俺はゆっくりと帰らない事情を説明する。

 

「俺は自分の世界で力を求めたんだ。

祖父ちゃんに剣を教えてもらって祖父ちゃんを超えた。

次に俺は軍のことを学ぶ為に自分の世界の軍に入ったんだ。

それから俺は軍で優秀な成績を修めて秘密部隊に入ったんだ。

その秘密部隊は命令があれば何でもする部隊だった。

俺はその部隊に入ってから暗殺任務であれば対象の一家全員を殺した。子供でもな。

俺はそんな外道なんだよ。その外道が華琳達と並んで幸せになっても良いと思うか?

駄目なんだよ。皆は良いって言うかもしれないけど俺自身が駄目なんだ。

幸せになることを拒絶するんだ。

だから、俺は帰らない」

 

「北郷……」

 

「さて、さっさと馬に乗って行こうぜ。

さっきから孫策がこっちを見てる」

 

俺はそう言ってある方向を指す。

そこでは雪蓮がじーっと俺達を見ていた。

 

「北郷、一つだけ聞かせてくれ。

お前は先程任務ならば対象の家族全員を殺すと言っていた。

どうしてそこまでした?

華琳殿から聞いたお前はそんな非常なことが出来る男ではないと聞いた。

何か理由があるのか?」

 

俺はその言葉を聞いてゆっくりと上を向く。

そこにはどこまでも蒼い空とその空を泳いでいる雲があった。

俺は周瑜に視線を戻しこう答えた。

 

「あるけどその理由は答えられない。

答えれば言い訳になってしまうから」

 

俺がそう言うと周瑜は『そうか』と一言言ってそれから何も聞かないでくれた。

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後書き

 

一応捕捉説明なのですが盗賊達の処理は呉軍がちゃんとしました。

それと明日は『学園?無双』を更新します。

これからも応援よろしくお願いします。

説明
何だかこの作品を投稿したくなりました。
気まぐれですいません……
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コメント
誤字:非常→非情(sonron)
k.m様ご指摘ありがとうございます。すぐに修正します。(DOWANNGO)
【悪を滅ぼせ争いがなくなると分かっていたからな。】→【悪を滅ぼせば争いがなくなると分かっていたからな。】なのでは?(k.m)
ケンケン☆様コメントありがとうございます。確かに一刀はまだ真名を許されてませんでしたね。すぐに修正します。(DOWANNGO)
あれ?一刀がいつのまにか孫策の真名を呼んでるような・・。呉の重鎮達とどう絡むのかも楽しみです。(ツクモ)
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