真・恋姫無双 三人の天の御使い 第二部 『一刀くん』参上! 其の一
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「沙和、凪、ちょ〜っと協力して欲しいことあるねんけど、ええか?」

晴天の午後。

都の茶屋の屋外に用意された卓で、お茶と甘味を前に真桜がいつものように笑顔で同じ卓を囲んだ二人に話し出した。

「なになに真桜ちゃん。」

「・・・・・用件しだいだな。」

何か新しい遊びと決め付け乗り気の沙和とは対照的に、これまで色々と苦渋を舐めさせられた凪は返事に慎重だ。

「我らが隊長に関することやで。」

「隊長ではなく陛下とお呼びするべきだろ!真桜!」

凪は立ち上がって抗議した。

「凪、硬いこと言いなや・・・」

「そうなの〜。隊長だって公の場所以外では前のまま呼んで欲しいって言ってたの。他の二人も好きなように呼んでいいって言ってくれてるし〜。」

「しかし・・・・」

沙和の言ったことは確かに三人の『北郷一刀』の言葉通りだったので反論に詰まる。

だが真面目な凪はいくらそう言われたからといって素直には頷けない。

相手は漢王朝の後を継ぎ新帝国「晋」の皇帝となった男なのだから。

「それにやな凪、こないな処で『陛下』の話なんかしとってみい街のみなさんも驚くし、どっかの浣腸・・・間諜が居るとも限らへん。」

「・・・何故、間諜を二回繰り返したかわからんが・・・なるほど、隊長と言っておけば撹乱にもなるか。」

凪は感心してうんうんと頷いた。

「せやろ!で、本題なんやけど・・・・・・」

真桜は真剣な顔で卓に身を乗り出し、

「隊長のちOこの形を調べたいねん。ヘブ!」

凪の手刀が真桜の頭頂に振り下ろされ、真桜は卓に突っ伏していた。

「まじめに聞いた私が馬鹿みたいじゃないか!」

凪が顔を真っ赤にしている。それは怒りからか恥ずかしさからか。

「・・・・イタタ。いやな凪、冗談や好奇心やないねん。これは華琳さまをはじめ、魏、呉、蜀のいろんな人からの依頼でな・・・・・二人とももっと耳寄せて。」

凪と沙和は真桜に耳を近づける。

(張り型を作ってほしいってことや。しかも隊長のイチモツそっくりのやつ。)

(・・・そ、それは・・・・?)

(は〜、なるほどなの〜。)

(流石は沙和。今ので理解できたようやな・・・凪は・・・・まだよう判ってへんようやな。)

(むぅ・・・)

(つまりや、華琳様をはじめ魏呉蜀のお偉いさんたちは愛しい隊長のためこの晋建国に至ったわけやが、肝心の隊長とは離ればなれ、会って話ができるならまだしも遠く離れていては恋しさがつのるばかり・・・そんな女心抑えるためには何か必要!と、いうわけや。)

(し、しかし・・・それなら隊長からなにか贈り物をいただいたほうがよいのでは・・・)

(あかん!そないなモンで満足できるようならこないな依頼が来るわけない。大体隊長からの贈り物なんてもうみんな持っとるにきまってる。凪かて持っとるやろ。)

(あぁ・・・そうか、隊長のことだ・・・・そうだな、全員に贈られているだろうな・・・・)

(そこで隊長自身の移し身があればより隊長を身近に感じられるっちゅうわけや。)

(まさに隊長自身なの〜、真桜ちゃん上手いこと言うの〜。)

(さ、沙和!なんてことを・・・!)

(それにやな、この依頼断ってみい。この都に残って隊長たちの下で働けるウチらに対する風当たり、いや恨みがどんだけになるか・・・・・・・想像したくもないわ。)

(そ、そんなにいるのか?)

(極秘事項やから詳しくは言えんけど、華琳様ひとりでもうちはもう降参やで。)

(そ、それは確かに・・・)

(よ〜し。凪も納得してくれたっちゅうことで、今夜早速始めるで。)

(こ、今夜!?)

(実は朝のうちに隊長たちには了承得とるねん。但し三人揃って相手できるんは今夜を逃すと次いつになるかわからん。)

(しかも、三人同時に?)

(そうや!そうやなかったら詳しい情報収集ができへん・・・・だけどうち一人に三人同時に相手するんはさすがに・・・・興味はあるねんけど・・・・・情報収集なんかしとる暇ないやろ。)

(・・・隊長三人を一人で・・・・こ、壊れちゃうの〜・・・)

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

(そこでこっちも三人で相手すればまだなんとかなるっちゅうわけや。)

そんな訳で真桜、凪、沙和の三人による『北郷一刀ちOこ測定作戦』は開始された。

 

 

「あのさ・・・俺たち三人一緒じゃなきゃだめなの?」

「そう言うといたやないですか!今朝!」

「いや・・・そっちも三人だからもしかしてそれぞれ別の部屋で。って方がいいかな〜なんて・・・」

「なに言うてますの?こんな馬鹿でかい閨まで作っておきながら。」

「いや、作ったの俺たちじゃないし・・・・」

そう、ここは「北郷一刀」のハーレムの象徴とも云うべき五十畳はあろうかという閨。

但し、未だ一度も使われたことはなかった。

即位後は三人別々に魏、呉、蜀の王を相手にし、その後一人で何人かづつ相手にすることはあっても三人が同時に相手することは無かった。

しかし、今回は寝台の大きさが足りないということで初めてこの閨を使うこととなったのである。

「まあまあ、細かいことは気にせんといて・・・あ、隊長たちは冠はずさんといてください。見分けがつかなくなるから。」

「さいですか・・・」

「ほら、凪。そないなところでぼ〜〜とせんとはよ行き。」

「え?し、しかし・・・」

凪はやはり恥ずかしさでモジモジしている。

「あ〜〜、もうじれったい!凪、突撃―――!!」

真桜に背中を突き飛ばされ蜀の一刀に飛び込んだ。

「うわあ!・・・も、申し訳ありません・・・そ、その・・・」

「・・・凪、俺にとって君は初めてだし、君も複雑だと思うけど・・・よろしくね。」

「は、はい、隊ちょ・・・いえ、陛下・・・」

「凪が呼びやすいなら隊長でいいよ。」

「は、はい・・・」

一方沙和は、

「よろしくおねがいしますなの。呉の『隊長』さん。」

「ああ、よろしく。」

あっさりと呉の『一刀』下へ行った。

「さあて、隊長いっちょ始めますで〜〜〜!」

「真桜・・・お前ね、もうちょっとムードってもんが・・・っていきなり下を!」

「むーど?そないな天の言葉言われてもわからんわ。観念せーい・・・・おお、相変わらずごっついなぁ・・・」

「そんなまじまじと見るな!」

「ほな早速・・・はむ!」

「うお!」

「・・・・んちゅ・・・・んぐ・・・んちゅ・・・・・・・ぷはぁ・・・おお、流石隊長もう戦闘態勢完了やな・・・・って改めて見ると正に凶器やなコレ・・・こないなモン季衣や流琉にも入れたんかいな・・・隊長、あんた鬼や・・・」

「何がしたいんだお前は!?」

「ああっと、かんにんかんにん!」

真桜は素早く身に着けている物を取るとまた一刀のイチモツに手を伸ばした。

「隊長の好きなのしたるさかい堪忍して〜。」

そういうとイチモツを大きな乳房で挟み込んだ。

「おおぅ・・・やわらかい・・・」

「・・・ふむふむ、長さは・・・・太さが・・・・・・・・・こらぁカラクリの仕込み概がありそうやで・・・」

「・・・・は?なんだって?」

「いや、こっちのこと。気にせんといて・・・にはは・・・・れろ」

こうして『作戦』はお互い相手を変えながら朝まで続いたのだった。

 

 

「あ〜〜〜・・・・あの人ら底なしかいな・・・・・・」

「は〜〜〜・・・・『種馬』の異名は伊達じゃないの〜・・・・」

「う〜〜〜・・・・こ、腰が・・・壊されるかと思った・・・・」

「蜀の紫苑姐さんと桔梗姐さんはあの隊長を追い込んだことがあるっちゅう話やけど・・・・・どないな化け物やねん!」

まともに動くこともできなくなった三人は城内の一室で食事やお茶を運ばせて体力の回復をしていた。

「しかしこれで情報は揃った。後は作るだけや。」

「真桜ちゃん・・・よくそんな気力があるの〜・・・・」

「私もさすがに・・・今日はこのまま部屋に戻って休ませてもらう・・・」

「ウチのカラクリに対する情熱はこの程度では止められへんねん!」

そう言って真桜は席を立ち自室に向かった・・・が、その足取りは酔っ払いのおっさんよりへろへろだった

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そして数日後、完成した張り形を配達する日々が始まった。

真桜の工房で真桜、沙和、凪の三人が集まっている。

「さて、まずは手っ取り早く都におる人たちにお届けするわけやが、手分けするけど沙和、凪、誰のところに行きたい?」

「こ、これをお届けするのか・・・?三人で行くほうが良くないか?」

「さ、沙和も一人でこれを持っていく勇気はないの〜。」

部屋に山と積まれた化粧箱。その中には作り物のちOこ。

いくら綺麗で立派な箱に入っていようが中身を知っていればできることなら持って外を歩くなんてしたくはない。

「堂々としとれば箱の中身なんかばれる訳ないって。いや、むしろそのどきどきが快感に変わって新たな趣味に目覚め・・・・凪!拳に気ためんのやめー!」

「まおう〜〜〜〜〜!」

「冗談や冗談!これにはちゃんとした理由があんねん。」

「なんだ!」

「ええか?例えば凪が受け取る側だとしてみい。持ってくるのが三人と一人どっちがええ?」

「・・・・・・なるほど、その通りだ・・・・」

「沙和だったら恥ずかしくて死んじゃう〜。」

「と、いうわけでや。雪蓮さま冥琳さまのトコ、月ちん買駆っちのトコ、恋とねねんトコ。何処にする?」

「じゃあ・・・私は雪蓮さまと冥琳さまのところに。」

「沙和は月ちゃんと詠ちゃんのところにいくの。」

「決まりやな。」

 

 

雪蓮と冥琳は午後のお茶を楽しんでいるところだった。

「冥り〜〜ん。私はお茶よりお酒が飲みたい〜〜。」

「いきなりナレーションを無視した発言ね、雪蓮。」

「は?なれーしょん?」

「冗談だから気にしないで。」

そんな時侍女が来客をつげる。

「孫策様、周瑜様。武衛将軍楽進様がお見えになりました。」

「凪が?珍しいな、どうしたのだろう?」

「・・・ふ〜ん、もしかしたら・・・・」

雪蓮は口元に笑みを浮かべている。

「ん?雪蓮には何か心当たりがあるというの?」

「ん〜、ちょっとね〜。」

そうしている内に凪が侍女に連れられやってきた。

「ご無沙汰しております。雪蓮様、冥琳様。」

「ん。久しぶり〜、凪。で?ご用件はなにかしら?」

「は、はい。そ、その・・・・・人払いをお願いできますか?」

凪は顔を赤くしながら要求した。

「人払いとは穏やかではないな。」

冥琳が訝しげに聞き返す。

「まあまあ、冥琳。あなた達、少し外して頂戴。」

「はい。畏まりました。」

そう言うと侍女たちは部屋を後にする。

「で、その包みでしょう〜。例のモノ?」

雪蓮はニコニコと凪の持っている包みを指差す。

「は、はい・・・ど、どうぞ。」

「ん?なに、雪蓮。知っているの?・・・・箱?」

雪蓮が手渡された包みを解くと綺麗な装飾の施された箱が現れる。

「その紋・・・北郷からの贈り物か?」

箱には北郷一刀を示す十文字の紋が描かれていた。

それを見た冥琳は警戒を解いた。

「い、いえ!そういう訳ではないのですが・・・その・・・中身が中身だけにこの紋が必要というか・・・」

凪はますます顔を赤くして説明になってない説明をする。

「???」

「それじゃ、拝見させてもらいましょうかね〜。」

「こ、ここでお開けになるのですか!?」

「あら、こっちはそれなりの投資をしてるんですもの、当然確認するわよ。」

「それはそうですが・・・・」

「雪蓮〜、投資ってどういうこと?・・・もしかしてあの意味不明な『開発費』!?」

冥琳は眉間に皴を寄せ詰め寄るが雪蓮は無視して箱に手を掛ける。

「それでは御開帳〜〜〜〜!」

「!」

「・・・ん?なに?・・・スリコギ?」

「ぷ〜〜〜〜〜〜〜!!」

雪蓮は堪え切れずについに吹き出した。

「きゃはははははははは!す、擂粉木!!た、確かに大きさはそれくらいあるわ!!」

腹を抱えて涙を流して笑い転げる雪蓮を尻目に冥琳は箱の中身を更に確認する。

「これは・・・・・・・張りがっ!!」

冥琳は自分で自分の口を押さえなんとか叫びそうになるのを止めた。

「これは北郷自身の張り形か・・・成程、箱にその紋が入るわけだ・・・・・・・・っぷ、くくくく。」

ついに冥琳も笑い出した。

凪は二人の笑う様をおろおろと見守るしかできなかった。

「あ〜〜、おかしかった。」

雪蓮はようやく笑いが収まって涙を拭った。

「ああ、久々に大笑いさせてもらった・・・・だけど雪蓮、まさか笑いをとるためだけにあんな大金つぎ込んだ訳じゃないでしょうね。」

「あらやだ、お金出したの私だけじゃないわよ。華琳や桃香、他にも結構いるみたいよ。」

「しぇ、雪蓮さま!そのことは口外なさらないで下さい!他の方たちの・・・その、名誉の為にも。」

「成程、まあ北郷からしばらく離れて暮らさねばならなくなった者のことを思えば・・・・良い措置ではあるな。」

 

 

「こんにちはなの〜。」

沙和は本城のメイド長執務室に例の箱の包みを持ってやってきた

「あら、沙和じゃない。いらっしゃい。」

「沙和さん、いらっしゃい。」

メイド姿の月と詠が出迎える。

「相変わらずそのメイド服かわいいの〜。いいな〜。」

「みんなそう言うけどね、コレ初めて着せられたときは恥ずかしかったのよ。あのバカチOコの趣味に付き合わされて大変だったんだから。」

「詠ちゃん、今は皇帝陛下なのだからその言い方はつつしんでね。」

「はいはい。太尉と司徒と宗正を兼任している人間が陛下の悪口を言ってるのは不味いとはボクも思ってる・・・けど、つい口に出ちゃうのよねぇ。」

「え、え〜と、さっきの詠ちゃんの台詞でちょっと渡しづらくなっちゃったんだけど・・・」

沙和はオズオズと包みを差し出した。なにしろ中身は詠の言う『バカチOコ』そのものなのだから。

「前に真桜ちゃんが頼まれた物をとどけにきたの。」

「え?」

月は真桜の名前が出た瞬間に包みが何か理解し、急速に顔が紅くなっていく。

「真桜に頼んだ物?月そんなことしてたの?」

「へう〜、私が頼んだというか・・・真桜ちゃんがみんなから頼まれてるから私にもどうですかって・・・」

「ふ〜ん。で、どんなものなの?」

「そ、それは・・・」

「ちょ、ちょっと口に出しては言えない物なの〜。」

「・・・?気になるわね。確かめさせて!」

「あ!」

言うが早いか詠は包みを開けた。

「ちょっと、この箱の紋!あいつのじゃないの!?こういう物はボクの許可なく使用しちゃだめでしょ!」

「ごめんなさい詠ちゃん。私が許可出したの・・・・その、中に入れる物の事を考えたらやっぱり必要だろうと思って・・・」

「ゆ、月が許可を出したのならいいけど・・・ボクにも話しておいてよ、月。」

「う、うん。ごめんね。」

「で、箱の中身は・・・・って、うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

それが何か理解した詠は椅子から転げ落ちる。

「そ、そそそそ、それって・・・・張り形?・・・・しかもあいつの・・・・・」

「うわあ、本物そっくり・・・・」

月は冷静にその出来栄えに感心していた。

「ゆ、ゆえ〜〜〜。」

「は!ご、ごめんなさい・・・つい・・・」

「月ちゃんもそうだけど、詠ちゃんもそれが陛下のと同じだってよく判るの〜。」

「そりゃあ何回も見てれば・・・って、何言わせるのよ!・・・・しかし、こいつは正にバカチOコ。あいつの本性そのものだわ・・・」

「え、詠ちゃ〜ん。」

「でも、それが二つもあるってことは・・・・もしかして・・・」

「うん。一つは詠ちゃんの分だよ。」

月は嬉しそうに詠に未開封の箱を手渡す。

「は、ははは・・・・」

詠は引きつった笑顔で受け取るしかなかった。

「・・・あれ?そういえば沙和。あなたたち基本的には魏の陛下のお相手しかしてなかったわよね。」

「え?そ、それは〜・・・」

「あー!以前の大閨使ったのってこの張り形作る為だったの?」

「う、うん。実はそうなの〜。真桜ちゃんに手伝ってほしいって言われて・・・」

「は〜〜〜。準備はそうでも無かったけど、後片付け大変だったのよ。」

「それは沙和たちも同じなの〜。あの時は沙和たち三人とも壊されるかと思ったの。月ちゃんと詠ちゃんや他の人たちにも手伝ってもらえば良かったってすごく後悔してるの〜。」

「確かにあの部屋の惨状を見れば納得いくわ・・・そういえば貂蝉が『三人揃ったご主人様は三倍じゃなく三乗』って言ってたわね・・・・でもそこまでしてコレを作るなんて感心するというか呆れるというか・・・」

「それは真桜ちゃんの拘りなの。受け取る人の事を考えたら三人の陛下を直に比べないとって。」

「・・・それはつまりコレを頼んだ人が三国に亘って結構いるってことなのね・・・」

「そ、その辺は機密事項なので詳しいことは言えないの〜。」

「まったく。これじゃあ陛下がチOコで大陸を統一したって言われても反論できないじゃない・・・」

 

 

少府長官の執務室で音々音が書類仕事に追われているところに真桜がやってきた。

「ねね〜、おるか〜?」

「その声は真桜ですな。ここにおりますぞ〜。」

しかし、真桜には声は聞こえど姿は見えず。

「ほんにあんたは屁のような・・・・」

「人をオナラ扱いするのではないのです!」

机の上に山と積まれた書簡や竹簡の向こうから音々音が両手を振り上げて現れた。

「そないなとこにおったんか。例の物できたで〜。」

「ねねの背が低いからと馬鹿にしているのです・・・って、ついに完成したですか!?」

真桜の持っている包みを見た音々音はパタパタと真桜の傍に走ってくる。

「早速見せるのです!」

「はいよ〜。ウチが身を犠牲にして手に入れた実測値を基に様々な素材を吟味して完成した、その名も『からくり一刀くん壱号』や!」

真桜は包みを解き箱の蓋を外して見せる。

「おお!コレは正にあの男の・・・・・・・・箱にコレだけが入っている絵面はなんか不気味ですな・・・・」

「なにいうとんねん!ウチの最高傑作やで!みてみい惚れ惚れするやろ〜。思わず頬ずりしてしまいたくなるやろ〜。」

真桜は本当に箱から取り出し頬ずりしだした。

(ますます絵面が猟奇的になってきたのです・・・・)

「ええか?ここをこう回せば・・・ほれ!」

「う、動いたのです!」

真桜の手の中で『からくり一刀くん壱号』(以下『一刀くん』)は身をよじるようにうねうねと動き出した。

「ふっふっふ。この本物以上の能力を持った『一刀くん』は無敵やで〜。」

「・・・なんだか更に不気味になった気がしないでもないですが・・・・し、しかしこれさえあれば恋殿にとってあの男は不要となるのです!」

「・・・・なんか隊ちょ・・・やない、陛下の価値ってチOコだけみたいやな、その言い方やと・・・・」

「ですが見れば見るほど本物そっくりですな・・・・」

「あ〜、ねねも・・・その、陛下とはしとるよね?」

「え?・・・そ、それはその・・・・・恋殿を守るためにねねが身を挺して・・・その、してるのですよ!」

ねねは真っ赤になって言い訳をしているが真桜の関心事はそこではなかった。

(このちっこい体にこれが収まるて・・・正に女体の神秘っちゅうやつやな・・・)

「・・・ねね、なにしてるの?」

突然恋が現れた。

「おわ!恋!?」

「恋殿!?」

「・・・・・・・ん?それ・・・・ご主人様の?」

「こ、これは・・・・その・・・」

ねねがどう説明しようか考えているうちに恋の顔から血の気が引いていく。

「恋・・・・・・どの?」

次の瞬間恋は弾かれたように部屋を飛び出して行った。

「・・・・・・・・・・・どないしたんやろ?」

「・・・・はて?」

しばらくねねと真桜の二人が呆然としていると遠くから一刀の悲鳴が聞こえてきた。

『・・・・恋!こんなところでズボンを引っ張らないで〜〜〜!ぎゃあ〜〜〜〜・・・・・・・』

「まさかこれを本物と思い込んで・・・・・」

「確認しに行ったですか・・・?」

その後恋は三人の一刀にちゃんと付いているのを確認したのだった。

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真桜が『一刀くん』を完成させてから数日後。

蜀の武将、軍師たちが房陵の都にやってきた。

今回は三国会議を行うための来訪で、三国のなかで蜀が一番最初に到着したのだった。

「はわわ〜、そんなことがあったんですか。」

朱里は真桜から先日あった恋の騒動の顛末を聞き驚いていた。

お城の中庭にある東屋の一つで朱里、雛里、真桜の三人はお茶を飲みながら話をしていた。

「でも恋さんがそう思い込むほどの出来ということですよね。」

雛里も感心している。

「なるほど。そういう見方もあるわけや。職人冥利につきるな〜。」

真桜は満更でもないようにニヤニヤしている。

「ですけどこれは不味いですね。早急に計画を進める必要がありそうです。」

朱里は思案顔で呟く。

「せやな〜。陛下たちにばれたら本来の目的を達成できんようなってまうやもしれん。」

「ここは手分けして配るしかないですね・・・」

「明日にはうっとこの大将や呉の人らも到着してまうからな〜。まあ、魏の方はうちら三人で何とかなるけど・・・」

「蜀は私と雛里ちゃん・・・できればもう一人くらい協力してくれる人がいると助かるんですけど・・・」

「月さんと詠さんが一番だと思うけど・・・二人とも忙しいよね、朱里ちゃん・・・こういうときは消去法で考えてみようよ。」

「そうだね、雛里ちゃん。・・・えっと、桃香様にはそんなことさせられないし、愛紗さんは・・・怒られそうだし・・・鈴々ちゃんは・・・説明が出来なさそう・・・」

「星さんは・・・面白がってやってくれそうだけど、渡された人から恨まれそう・・・翠さんは・・・恥ずかしがってできないだろうし・・・たんぽぽちゃんは悪戯しそう・・・」

「桔梗さんと焔耶さんはこういう仕事向かないし・・・となると残るのは白蓮さんと紫苑さんか・・・あの二人なら渡されるひとにも納得してもらえそう!」

「蜀はそれでええとして、呉はどないするん?」

「そうですね・・・穏さんに相談してみようかと思います。」

「あ〜あののんびりした軍師の姉ちゃんか・・・確かに適任やろな」

「これで取り敢えずの方針は決まりましたね・・・はあ、早くしないと、うちには困った人たちがたくさんいますから・・・」

「あ〜、袁家の方々か・・・・難儀やなあ・・・同情するでホンマ・・・」

三人は深く溜息を吐いた。

 

 

 

「ほほう、これがお館さまの逸物を模した張り形か。」

桔梗は『一刀くん』を両手で持ってシゲイゲと眺めている。しかもその持ち方がなんとも艶めかしい。

朱里と雛里はその仕草にはわあわし、顔を真っ赤にしている。

「うふふ、本当にご主人様そっくりね♪これならご主人様と遠く離れていてもお側に感じることができそう・・・」

紫苑も優しく撫でる様に『一刀くん』を擦り瞳を潤ませている。

「そ、そうですよねぇ、私たちもここまでの物が出来上がるとは思ってもいませんでした。」

「真桜さんの職人技には脱帽です。」

雛里は言葉通り鍔広の三角帽子を脱いで顔を隠している。もっとも恥ずかしくて見ていられないせいなのだが。

四人は城内にある紫苑の居室で話をしていた。

「しかし欲を言えば玉の部分も欲しいところかのぉ。」

「そうねぇ。そこを触られているときのご主人様ってなんとも可愛い顔をなさって?」

「はわわ・・・そうなんですか?」

「おう、お館様の睾丸をこう・・・揉みしだいて・・・」

桔梗は『一刀くん』の根元あたりの空間をさも実際にあるような仕草でワキワキと指を動かした。

「舐めたり口に含んでもいいわねぇ。ころころ動いて可愛いのよ。」

「は〜〜〜・・・・」

「勉強になります〜・・・」

『女』としての先輩の話を感心し、聞き漏らすまいと真剣に耳を傾ける朱里と雛里。

「ところでお二人ともわたくしにお願いがあるって言っていたけど、ご主人様との睦事を聞きたい訳ではないのでしょう。」

紫苑は少し意地悪そうに話を本題に戻した。

「はわわ、そうでした・・・でもその話は後で詳しく教えて下さい!」

「しゅ、朱里ちゃん・・・」

「雛里ちゃん!ご本でのお勉強も大事だけど、目の前に素晴らしい先生がいらっしゃるのに教えを請わないなんて勿体ないと思わない!?」

「お、落ち着いて朱里ちゃん・・・今はそれよりもお願いのほうをしないと・・・」

「はわわ・・・私としたことが・・・あ〜、こほん。えっと、紫苑さんへのお願いというのはですね・・・・」

朱里は事情を説明した。

「成程。分かったわ、ご協力しましょう。」

「あ、ありがとうございましゅ。」

「・・・でしゅ・・・あうう、噛んじゃいました・・・」

「うふふ・・・それでわたくしは誰にお渡ししたらいいのかしら?」

「それはですね・・・桃香さまと愛紗さんをお願いしたいのですけど・・・」

「そうだ紫苑、すまぬが焔耶も頼めぬか?注文するときにあやつの分も頼んでおいたのだが、わしからでは受け取らぬだろうからな。」

「そうねぇ、焔耶ちゃん頑固だから・・・そうだ、桃香さまに協力してもらいましょう。」

「と、桃香さまにお願いするんですか!?」

「そこはわたくしにまかせてちょうだい。」

紫苑は悪戯を思いついた少女のような表情で請け負った。

「は。はい・・・」

「おかあさ〜〜ん、ききょうさま〜そろそろお昼のじかんだよ〜。りりおなかへっちゃった!」

突然扉が開かれ璃々が飛び込んでくる。

「こんにちは、璃々ちゃん。」

「こんにちは。」

朱里と雛里は笑顔で挨拶する。

「あ、しゅりお姉ちゃん、ひなりお姉ちゃん。こんにちは〜!あれ?そのきれいな箱なーに?」

璃々は目に留まった箱に興味津々である。この箱の中身は『一刀くん』が入っているので見せるわけにはいかない。

「こ、これは・・・その〜・・・・・」

「えっと・・・」

朱里と雛里が困っていると紫苑が箱を手に持ち璃々に真剣な表情で話し始める。

「璃々、これは武具なの。とっても大事なもので、いざという時はこれで己を刺し貫く為の物。」

(紫苑さん・・・確かにその説明は自決用の短剣のように聞こえるけど、それって本来の目的そのままですよぅ)

朱里が心の中でツッコミをいれる。

「今のあなたにはまだ危ないからこの箱を開けてはだめよ。・・・そうね、朱里ちゃんや雛里ちゃんくらいの歳になったらあげるから、それまで我慢なさいね。」

(それでもお館様のモノでは早いと思うのだが・・・まあ、目の前の二人に鈴々や魏にも呉にも受け止めとる娘どもがおるのだから案外大丈夫なものなのか?)

紫苑の話を黙って聞いていた桔梗だが少々疑問を感じないでもなかった。

「うん、わかったよおかあさん。そっか、ぶぐならしょうがないよね。」

「ふふ、璃々はいい子ね。」

聞き分けのいい璃々の頭を紫苑は撫でてあげた。

「で、では璃々ちゃん。ご主人様を探してご一緒にお昼にしませんか?」

「りり、ごしゅじんさまといっしょにごはんたべたーい!」

 

 

 

「紫苑さん、お話ってなんですか?」

「紫苑、私も一緒にという話だが・・・軍事に関することか?」

昼食後、紫苑は早速桃香と愛紗に『一刀くん』を渡すべく、内密の話と称して桃香の居室に赴く旨を伝えておいたのだった。

「いえいえ、そんな硬い話では・・・ある意味硬いモノの話しかしら?」

「「???」」

「実はこれをお二人にお渡しするよう頼まれまして。」

そう言って紫苑は『一刀くん』の入った包みを差し出した。

「これは誰から預かったものなのだ?」

愛紗は怪訝そうに包みを受け取る。

「そうですね・・・魏の真桜ちゃんからです。」

紫苑は朱里と雛里のことは敢えて伏せたほうが愛紗のためと判断した。

「真桜ちゃんから?・・・・・ええと・・・・・」

「はて?真桜から物を送られる・・・・など・・・・・・はっ!まさか・・・」

「愛紗ちゃん何か心当たりが・・・・って!ああああああ!もしかして!?」

二人の顔がみるみる紅く染まっていく。

「もう、お二人ともお寂しいからといってこのような物を真桜ちゃんに作らせるだなんて・・・」

紫苑の呆れたような困ったような物言いと仕草はとても芝居とは思えぬものだった。

「こ、これはですね〜・・・その・・・」

「そ、そうだ!これは真桜の方からこういった物を作るのを依頼されたから、もし良かったら我らの分もどうだと言われて!決して我らから進んで頼んだわけではなくてだな!わ、私もはじめは断ったのだぞ!だが、華琳殿や蓮華殿も頼んだというからその、対抗意識というか・・・その・・・」

紫苑は堪え切れずにくすくすと笑い出した。

「愛紗ちゃんったらそんなに慌てなくても大丈夫よ。」

「紫苑・・・?」

「紫苑さん?」

「じつはわたくしと桔梗も頼んだ人間の一人ですから。」

「紫苑さんひどい〜〜〜〜!」

「・・・・・し〜〜〜お〜〜〜ん〜〜〜〜!!」

「まあまあ。それよりも早速検分してくださいな。」

「え?けんぶん?」

「検分って!ここで開けるのか!?」

紫苑は二人の返事も聞かずに包みを解き箱から『一刀くん』を取り出した。

「うわああああああ!」

「きゃ!・・・・・・うわあ、そっくりだよ〜これ。」

飛びのいた愛紗とは反対に桃香は恐る恐る手を伸ばし紫苑から『一刀くん』を受け取った。

「と、桃香様!」

「そうでしょう。わたくしも先ほど初めて受け取って目にしたときは驚きましたわ。」

「だよね〜。ほら愛紗ちゃんもよく見てごらんよ。この頭の部分なんて特に良く出来て・・・」

「と・う・か・さ・ま!」

「ひゃあ!」

愛紗の怒りの声に驚いた桃香は思わず『一刀くん』を愛紗の目の前に突き出してしまった。

「こ、これは・・・確かに主人様のモノと瓜二つ・・・・ではなくて!」

「まあまあ、出来映えにご不満が無い様でしたらお納めください、桃香様。愛紗ちゃんも。」

「あははは・・・・・はい〜。」

「し、紫苑〜。」

「大丈夫よ。絶対に口外しないから♪」

「・・・・・・・・・・はあ〜。」

もうなにも言い返せず溜息しか出ない愛紗だった。

「あの、桃香様。実は折り入ってお願いしたいことが御座いまして。」

「へ?」

いきなりの話題変更に戸惑う桃香。

「実は焔耶ちゃんにもこれを渡そうと思っているのですが・・・」

紫苑は先ほどまでの笑顔とは打って変わって困り顔をしている。

「・・・意外だな。焔耶も・・・その、コレを頼んだのか?」

「ううん、そうじゃないの。桔梗が気を利かせて焔耶ちゃんの分も頼んだのよ・・・ほら、焔耶ちゃんってご主人様に対してまだ素直になれてないでしょう。だからこれがあればその手助けが出来るのじゃないかと思って・・・」

「うんうん。それはいい考えだよね。」

(なにか理屈がおかしいような気もするが・・・)

愛紗はそう思いながらもその手の話題に疎いのを自覚していたし、桃香が同意しているので口には出来なかった。

「でも、焔耶ちゃんも頑固だから桔梗や私が渡そうとしても意固地になって拒むと思います・・・・・そこで桃香様からなら焔耶ちゃんも素直に受け取ると思うのです。」

「え?私?」

「はい・・・桃香様にこのようなお使いみたいな真似をしていただくのは誠に申し訳ないと思うのですが・・・このままでは焔耶ちゃんを仲間はずれにするみたいで心苦しいですし・・・」

「・・・・仲間はずれ・・・分かりました紫苑さん!焔耶ちゃんには私が責任を持って渡しますね。」

「よろしいのですか?」

「まっかせてください!焔耶ちゃんに寂しい思いはさせません!」

「ありがとうございます、桃香様。」

愛紗を置き去りに盛り上がる桃香と紫苑だった。

後日、訳も分からず『一刀くん』を渡された焔耶は、桃香がどうしてこんなものをくれたのと一人悶々と頭を悩ませたのだった。

 

 

紫苑が桃香と愛紗に会っている頃、星は城壁の上で一人都の街並みを眺めながらちびちびと酒を飲んでいた。すると眼下に、朱里と雛里がぱたぱたと走っては立ち止まりきょろきょろあう〜と繰り返しているのが見える。そんな微笑ましい二人を肴に飲むのも一興かとも思ったが、二人の抱えている包みに興味を覚え声を掛けた。

「朱里―!雛里―!何をしておるのだー?」

頭上から降ってくる声に振り向き朱里と雛里は星の姿を見つけた

「星さん!そんなところにいたんですね!」

「やっとみつけました〜・・・」

二人は石段をうんしょうんしょと上って星の下へやってくる。

「なんだ私を探していたのか?」

懸命に石段を上る愛らしい姿を見て星はまた一口酒を飲むのだった。

「はあ・・・はあ・・・星さんに・・・はあ・・・」

「はあ・・・はあ・・・お渡し・・・はあ・・・はあ・・・」

「成程、お二人はこの趙子龍にはあはあされているのでお相手をすればよろしいのですな。」

「ち、ちがいます!!・・・・・はう・・・」

息が切れているところで大声を出したものだから朱里は卒倒してしまった。

「あわわ!朱里ちゃんしっかり!」

「うむ、ちとからかい過ぎたか。雛里、朱里を支えていてくれ。」

「はい?」

すると星は杯に満たした酒を朱里の口に含ませた。

「ひゃう・・・けほっけほっ・・・こ、これおしゃけれすね!」

「あっはっは!気付けにはこれが一番なのでな。」

「はわわ〜、あらまがくらくらしましゅ〜」

「ところで私に用事とはその包みのことですかな?」

「は、はい。魏の真桜さんに依頼していた例のものが届きましたので星さんにお渡ししようと・・・」

「せいしゃんおへやににゃかにゃかもろってこられにゃいんでしゅもにょ〜〜〜!」

「おお!朱里の可愛らしさが倍増している!」

朱里は汗を掻いて血行が良くなっていたので既に酔っ払い状態だった。

「せいしゃん!!」

「で、例のものとは・・・・ああ、主のちOちんを模した張り方の事か!」

「星さん表現が赤裸々過ぎます〜。」

「そうでしゅ!ごしゅじんしゃまのおちOちんでしゅ!こんなはぢゅかしいものをもってまちのにゃかをはしらにゃければにゃなくにゃったのも・・・ひっく・・・せいしゃんのしぇいにゃんでしゅかりゃね!」

言いながら朱里は『一刀くん』を取り出す。

「しゅ、朱里ちゃ〜ん・・・」

『一刀くん』を右手に持って采配のように星に突き出した。

「ほほう・・・これはなかなかの出来映え・・・」

星が手に取ろうとすると朱里は『一刀くん』を引っ込め、頬ずりするように抱え込んでしまう。

「え?・・・・」

「はうう、ごしゅじんしゃま〜〜!・・・・ちゅ、れろ」

ついには『一刀くん』に口付けをして舐め始めてしまった。

「あわわ!朱里ちゃん!こんなところでそんなことしちゃダメ〜!」

「こ、これは・・・なんとも倒錯的で個人的には素晴らしい絵面だが・・・流石に不味いな。雛里、城へ戻るぞ!」

「は、はい〜!」

星が朱里を抱え、走って城に戻ったがその間も朱里は『一刀くん』を放そうとはしなかった。

剥き身の『一刀くん』を曝したまま街中を走る事になったが、幸いにもそれが張り形と気付く人はいなかった。

 

 

「で、次は鈴々と白蓮殿に渡すわけだな。」

城に戻った星はそのまま朱里と雛里に付いて同行し、城内の廊下を歩いていた。

「そ、そうです。」

酔いの冷めた朱里は何事も無かったように振舞っていた。

が、実は先ほどの自分の行動はしっかり記憶に残っていたのだった。

「翠には渡さぬのか?」

「翠さんの分はたんぽぽちゃんに渡してあります〜。」

「なんだ、翠がこの張り形を見て慌てふためく姿が見られるかと思っていたのだが・・・・残念だ。」

「星さん、悪趣味ですよう〜。」

「しかたがない、ここは鈴々と白蓮殿の反応で我慢するとしよう。」

「私と鈴々がどうしたって?」

角を曲がったところで白蓮と鈴々に出くわした。

「おお、朱里と雛里と星を発見なのだ。みんなでお兄ちゃんのところに行こうと思ったのに誰もいないから探していたのだぞー。」

「あの、すいません。ご主人様のところに行く前に二人にお渡ししたいものがあるのですが・・・いいですか?」

「?・・・別に構わないけど・・・」

「その包みなのか?じゃあ、ここで貰ってしまうのだ。」

「そ、その・・・廊下ではなんですから白蓮さんのお部屋に伺ってもよろしいですか?」

「別にかまわないけど・・・?」

白蓮は訳が分からず同じ台詞を繰り返す。

「先ほどは城壁の上で開けて見せたというのにここでは開けられないのか。」

「ナンノコトデスカ?ワタシニハソンナキオクハアリマセンヨ。」

星の言葉に朱里は口元に微笑みをたたえ返事をしたが、その目は死んだ魚のように虚ろだった。

「・・・どうしたのだ朱里?」

「・・・しゅ、朱里?」

「き、気になさらずに早くお部屋へ・・・」

 

「確かにこんなもの廊下で渡されたらたまんないよ・・・」

白蓮は包みの中身を教えてもらい嘆息する。

「朱里〜、結局この中には何が入っているのだ?」

「ですから・・・・その・・・張り形だよぅ・・・・」

「はりがたってなんなのだ?」

「鈴々よ、分からなければ開けてみるがいい。そうすれば一目瞭然だぞ。」

星はにこにこと鈴々を促す。

「それもそうなのだ。」

鈴々は嬉々として包みを開けだした。

「ちょ、星!人の部屋でこんなもの開けさせるんじゃない!」

白蓮が怒鳴るが星も鈴々も聞いていない。

「あれ?箱にお兄ちゃんの紋が描いてあるのだ。で、箱の中身は・・・・なんか棒みたいなものがはいっているのだ。」

鈴々は少し拍子抜けしたのかつまらなさそうに箱の中身を見ている。

「棒・・・か。まあ確かにそうだよな・・・・」

白蓮は先ほどまでドキドキしていた自分が何か情けなく思えてきた。

「鈴々よ、よく見てみろ。この棒の形、見覚えはないかな?」

星が真面目な顔で促す。

「え〜と・・・・あれ?そういえば・・・・・・・・あ〜〜〜!お兄ちゃんのおちOちんなのだ!」

「り、鈴々ちゃん!声が大きすぎだよ〜!」

「はうう・・・・」

「よいか鈴々。張り形とはこの様にちOちんを模した道具のことをいうのだ。」

「へ〜そうなのか〜。あ、そういえば真桜が前にこんなの作るから鈴々も欲しくないか〜って言ってて、鈴々も頼んだのにすっかり忘れてたのだ。」

「ところでこれの使い道は分かるか?鈴々よ。」

「ほへ?使い方?」

「うむ。これを主と離れて寂しい時に手にしてみるといい。主がその場にいるように感じられるだろう。」

「おお、真桜もそんなこと言ってたような気がするのだ。」

「そうだろう。朱里など主そのもののように甘えだしたぐらいだ。」

「せ、星さん!」

朱里が真っ赤になってわたわたと抗議する。

「朱里・・・・・・・おまえ・・・・・」

白蓮にジト目で見られ窮地に追いやられた朱里は

「ええと・・・・ええと・・・・・・・ええとぉ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナニヲイッテルンデスカセイサン。ワタシハミニオボエガアリマセンヨ。」

殻に閉じこもったようだ。

「へえ、朱里もそうなっちゃうくらいだからスゴイものなのだなぁ。」

「その通り。だが今は主が直ぐそばに居るのだ、それは部屋に戻って置いて来るがいい。」

「うん。そうするのだ。ちょっとまってるのだ〜。」

そう言うと鈴々は『一刀くん』の入った包みを大事そうに抱えて部屋を飛び出していった。

「やれやれ。鈴々のやつ本当の使い道分かってないんじゃないか?」

「ふむ、もしそうなら私が手取り足取りおしえてやろう。」

「星・・・・おまえなあ・・・」

「あ、あの白蓮さん・・・折り入ってお願いがあるんですけど・・・」

「ん?どうしたんだ?雛里。」

「実はこの・・・は、張り形の・・・作ることになった本当の目的を説明しようとおもいまして。」

「は!そうでした!」

朱里が我に返って話しに加わる。

「本当の目的?」

「はい。その為にこの張り形をある方たちに渡すのを手伝ってほしいんです。」

「・・・なんか嫌な予感がしてきたな・・・・・・・・それって麗羽たちのことだろう?」

「そ、そのとおりです!」

「あの、白蓮さんは前の三国会議のとき麗羽さんたちを今後どう扱ったら良いかという議題が上がったのを覚えていますか?」

「えっと・・・そういえばそんな事があったような・・・確かあの時は雪蓮が首を刎ねちゃえみたいなこと言って桃香と北ご・・・いや、陛下が可愛そうだって反論して、結局今まで通りうちら蜀が飼う・・・いや、保護することで決着したんじゃなかったか?」

「ええ、あのときはそうだったのですが、あの後三国の軍師全員で協議して麗羽さん、斗詩さん、猪々子さん、美羽ちゃん、七乃さんに監視を付けまして。」

朱里の説明を雛里が引き継ぐ。

「監視役からの報告を基に再度協議した結果、麗羽さん達が今陛下の下を訪れると陛下の優しさに付け込んでどんな我侭をやりだすか見当も付かないという結論に達しまして。」

「あ〜、麗羽あたりはやりそうだな・・・無自覚で・・・」

「報告の結果、あの人たちは自分の意識の向いていない事にはとことん無頓着、唯一気が回りそうな斗詩さんは麗羽さんのお守りで最近は周りに目を向ける余裕がない。なにしろご主人様が皇帝に即位したこともまだ知らないんです。」

「はあ〜〜〜〜?なんだそりゃ!?・・・そういやあいつらと話しててもなんか違和感があると思ったら・・・」

「しかし、それもさすがにそろそろ気が付くでしょう。ですけどそれは私たちの引越しが終るまで引き伸ばしたいんです。そうすれば魏呉蜀何れかが気が付き未然に防ぐことができる。」

「まあ要するに連中にオモチャを与えておいてその隙に終らせようということだな。」

星が身も蓋もないまとめ方をする。

「で、与えるのが大人のオモチャかよ・・・なんか猪々子あたりが嬉々としてそれを振り回してる姿が簡単に想像できて哀れになってくるな・・・」

「白蓮さん!情けは禁物です!この作戦には私たちの未来が懸かっていると言っても過言ではないのですよ。白蓮さんはこれ以上ご主人様のお相手をする時間が減ってもいいとおっしゃるんですか!?」

「軍師殿、興奮して本音が漏れているぞ♪」

星が笑って朱里を制止する。

「朱里ちゃ〜ん・・・」

「コホン・・・とにかく、白蓮さんには是非協力をお願いしたいのです。」

「あ、ああ・・・わかった・・・協力するよ。」

白蓮は朱里の勢いに圧倒されて頷いた。

「ありがとうございます、白蓮さん!では、詳しい計画は成都に戻るまでに立てておきますから。」

そう言うと朱里は雛里とよかったねと喜び合った。

(なあ星。私にはコレが建前で張り形を作らせるのが目的だったように思えるんだが・・・)

(白蓮殿、それは言わぬが花というものだ。)

そこに鈴々が戻ってきて、全員で一刀の元に向かったのだった。

 

 

「おっねいっさま〜〜〜!これ預かってきたよ〜!」

蒲公英が例の包みを頭上に掲げて翠のいる部屋へ入ってきた。

「たんぽぽ、お前荷物の片付けもしないで何処に・・・って、預かり物?」

「うん♪中身はなんと・・・」

蒲公英は包みから『一刀くん』を取り出した。

「じゃ〜〜〜ん!どう?どう?お姉さま!?」

どうと言われても翠にはそれが何か判別できていなかった。

「なんだそりゃ?太鼓のバチか?」

怪訝そうな顔で訊いてくる翠に蒲公英はゲンナリして答える。

「太鼓のバチって・・・それじゃあお姉さまやたんぽぽは太鼓ってことになっちゃうよ・・・」

「???」

「ほら、よく見てよ!お姉さま!」

顔の前に突き出されたモノを凝視した翠は

「あれ?なんか見覚えが・・・・・・・・・・☆△□○★▼!!」

顔を一気に沸騰させて飛び退った。

「やっと判った?これって前に話してたご主人様のおちOちんを基にした張り形だよ!」

「な、な、なななな、なんてもん持ってくるんだ!おまえは!?」

「まあたあ、お姉さまってば照れちゃって〜。」

「だ、大体あたしはそんなもの要らないって言っただろうが!」

「お姉さまってば無理しちゃって〜。」

「無理なんかしてない!大体そんなもの持ってるなんてみんなに知られたら・・・」

「何だ、そんなこと気にしてたんだ。」

「そ、そんなことってお前・・・」

「だって、みんな受け取ったみたいだよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「だからあ、もうみんな持ってるんだってば!」

「みんなって・・・桃香様や愛紗や星も?」

「うん。魏や呉の人たちは到着してないからまだだけど、着いたら渡しにいくって言ってたよ。」

「そ、そうか・・・みんな持ってるんだ・・・」

翠は何やら複雑な顔をしている。

「あれ?今度は嫉妬?もう、お姉さまってば我侭なんだから。」

「ば、ばか!べつにそんなんじゃ・・・」

「はいはい。わかりました。そんなことよりもお姉さま、これで夜に一人で慰めるときももう寂しくないね?」

「たんぽぽっ!!お前なにいって・・・・・・・・・って、何でお前がそんなこと知ってんだーーーーーーー!!」

 

 

説明
第二部『一刀くん』参上! 其の一をお送りします。

この外史で四番目の北郷一刀とも言うべき『絡繰り一刀くん壱号』(真桜作)が、ある意味主役のお話。『一刀くん』がどのようなモノかは冒頭で分かりますのでお楽しみに。

今回の投稿分はTINAMI用に極わずかの修正が入っています。

ここでお詫びと訂正、「第一部 其の三 拾 蜀」で「袁紹、袁術ほか四名」という記述が有りましたが、「三名」の間違いでした。この外史で華雄は麗羽たちとは合流しておりません。現在は本文を訂正してありますが、既に読まれた方には今後混乱を招く恐れの在るミスでした。誠に申し訳ございません。
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コメント
文字通りち○こ太守になってて笑ってしまうw この発想はなかったw(はこざき(仮))
殴って退場様  ありがとうございます♪ 笑っていただけるのが何よりも励みになりますm(_ _)m(雷起)
カオス過ぎて笑えたwww(殴って退場)
イマ様  一刀は一人の時よりはましなはずなので、これからイロイロと頑張って貰いましょうwww(雷起)
一刀さんも大変だなあw(イマ)
スターダスト様 最高の褒めコトバです!ありがとうございましたm(_ _)m(雷起)
きたさん様 本当にすみません・・・「もしかしたら削除されちゃうかな〜?」と思いつつも投稿せずにはいられませんでした。(雷起)
アルヤ様 どうもすみません・・・おバカな話で・・・(雷起)
転生はりまえ$様 螺旋槍の技術を応用しているようです。いつか萌将伝の『お菊ちゃん』とコンビを組むと思いますw(雷起)
骸骨様 桃香はきっとハイテンションで言いたいことだけ言って帰っちゃったみたいですw(雷起)
こ・れ・は・ひ・ど・いwwwww(スターダスト)
・・・・さすが、ち○こ皇帝! でもこれを支援していいのだろうか?(きたさん)
なんというか・・・・・・何やってんだ(アルヤ)
ようは、マシーンだろ?慰めようの・・・・・(黄昏☆ハリマエ)
桃香は焔耶に事情を説明しないで渡したのかwww ちゃんと説明してから渡そうよ・・・(量産型第一次強化式骸骨)
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