そらおと/ZERO 第二章「戦争」
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「どうぞご命令ください。((私の鳥籠|マイ・マスター))」

「………え?」

 命令? 俺が? このよくわからない綺麗な女の子に?

 

 

 めい‐れい 【命令】

[名](スル)

1 上位の者が下位の者に対して、あることを行うように言いつけること。また、その内容。「―を下す」「―に従う」「部下に―する」「―一下」

 

 以上、コトバンクより一部抜粋。

 

 

 つまり俺ご主人様? この子を好きにしていいの?

「………いやいやいや、落ち着けよ俺」

 相手は羽生えてるんだぞ? 

 いくら綺麗でスタイルが良くて桜色の髪からいい匂いがして初めて親鳥をみた雛鳥のような目をしていてもだな…!

「マスター?」

 …ああ、そういう風にちょこんと小首を傾げられるともう今までの事とか別にどうでも―

 

「―良い分けあるかっ!」

「ごべばっ!?」

 

 突然背後からの一撃を受けて倒れ伏す俺。すっげー痛い。

 ああっ! しかも蹴った背中をぐりぐり踏まないでっ!

「まったく、急いで来てみればなにイチャイチャしてんのよ」

 私が馬鹿みたいじゃない、とぼやくこの声はついさっき聞いたような…?

「お、お前は確かニンフ…」

「あれ? なんで私の名前を知ってるの?」

「いや、さっき見月が呼んでたから…」

「あ、そりゃそうよね。それが順当か」

 おかしなやつだな。初対面なんだから他に理由なんてないだろうに。

「ニンフ、マスターに乱暴は…」

「これくらいはいつもの事でしょ? アルファーが過保護すぎるのよ」

 このニンフという女の子の中では俺が踏まれる事はデフォルトらしい。

 当然ながら誤解だ。俺はマゾヒストなんかじゃない。

「というか、お前ら何者なんだ…」

 真っ先に浮かぶべき疑問に辿りつくのにずいぶん遠回りした気がする。

 一気に和やかな雰囲気になったおかげで少し落ち着けたからいいけど。

「それは…」

「待ったアルファー。私たちが説明するより早くて確実な人がいるわ」

 どうやらニンフには考えがあるらしい。

 それにしてもアルファーか。確かこいつ、さっきはイカロスって名乗ってなかったけ?

「アルファーとかイカロスとか、お前って名前がいっぱいあるのか?」

「いえ、アルファーは私達の型式です。どうかイカロスとお呼びください」

「そっか。さっきはありがとなイカロス」

 ずいぶん遅れたけど、ようやくお礼が言えた。

 こいつがいなかったら今頃どうなっていた事か、考えただけでもゾッとする。

「いえ、私がマスターを守るのは当然の事ですので」

 言葉こそ冷淡だけどイカロスはわりと嬉しそうだ。羽がピコピコ動いてるのは多分そういう意味なんだろう。本人の名誉のために指摘はしないでおくけど。

「だ・か・ら! なにイチャイチャしてんのよ、さっさと行くわよ!」

 そしてニンフはたいそうご立腹の様子。そんな事を言われてもだな。

「行くって、どこ行くんだよ?」

 それすら分からないんじゃ、俺にはどうしようもないんだけど。

「トモゾウもよく知っている人の所よ。ソアラともそこで合流するわ」

 そう言ってずかずか歩き出すニンフ。俺の都合なんてお構いなしらしい。

 うーん、こんなおかしな事態に関わっている知り合いなんて見月以外にいないんだけどな。

 いや、それよりもなんでコイツは俺の名前を知っているんだ? もしかして見月から聞いていたりするんだろうか。

「参りましょう、マスター。どうかニンフを信じてください」

「仕方ねえなぁ…」

 イカロスに促されてニンフの後を追う。

 またいつあの連中に襲われるかと考えば、イカロスとニンフについて行く方が安全だろう。

「で、誰に会うんだよ」

 俺の問いかけにニンフはにやりと笑って。

「五月田根美佐子。会長といった方がアンタには分かりやすいかしら?」

 俺が最も苦手とする人物の名前を口にした。

 

 

 

 

 そらおと/ZERO 第二章「戦争」

 

 

 

 

 会長の住む五月田根の屋敷は広大だ。その入口である家門は古城の門にも等しい印象を受ける。

 そこで待っていたのは見知った人物だった。

「こんばんは桜井君。もっとも、良い夜ねとはいえないけど」

「そりゃ同感。今でも夢だと思いたいくらいだぜ」

 見月はいつも学校で話す時と同じようにかすかな微笑を向けてくれた。

 よかった、彼女の無事も含めて少し安心する。

「夢、か。巻き込まれた桜井君からすればそう思うわよね」

「…見月は違うのか?」

 少しだけ霞んだ見月の笑顔に不安を覚える。まさか見月はこんな事に自分から関わったのか、と。

「それも含めて話は後でしよ? 会長が待ってるから」

「あ、ああ」

 見月の後に続いて大きな門をくぐる。

「ん? お前らは来ないのか?」

 気が付くと、イカロスとニンフは門の前で佇んだままだ。

「ええ、私たちに説明なんて今更だし。アルファーともちょっと話しておきたいしね」

「私たちはここで外敵を警戒しています。マスター、どうぞお気をつけて」

「分かったけど。気をつけろって言われてもなぁ」

 一緒にいるのは見月で、これから会うは会長だ。確かに会長は苦手だが別に取って食われるわけじゃないし。

 まあ、いつもいわれなのない事で酷い目に遭わされているは事実だ。

 あの人は俺をいじめる事を趣味の一環にしているという、外道一歩手前の性格破綻者なのであった。

 ………あれ? イカロスの言うとおり最大の警戒をもって会うべき相手じゃね?

「…何かあったら呼ぶから、その時は頼む」

「はい、お任せください」

 イカロスの返事は実に頼もしい。そして俺は実に情けない。

「どこまで行ってもそういう関係なのね、アンタ達って」

「悪かったなヘタレで。じゃあ行ってくる」

 ニンフの皮肉が妙に実感がこもっているのは気のせいなんだろうか。

 そんな事を考えつつ、改めて見月の後を追うのだった。

 

 

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「なんか、今日は誰かの後を追いかけてばかりだ」

 見月の後に続いて板張りの廊下を歩く。その左手には手入れがされているだろう整った庭が見える。

「桜井君はいつも走り回っているくらいだから、たまにはいいんじゃない?」

「そうか?」

「そうだよ。ついていく風音さんはいつも大変そうだったんだから」

「む」

 そう言われてみれば、風音は子供の頃から俺の後をついて来ていたような。

「お前がこっちに来て半月しか経ってないけど、そこまで分かるもんか?」

「分かるよ。むしろ分かんない桜井君の方が重傷」

 なぜかこれ見よがしに溜息をつく見月。よく分からないけど風音を心配させるなって事か?

「さて、無駄話は終わり。この部屋で会長が待ってるから」

「おう」

 いよいよか。この屋敷の厳格な雰囲気のせいなのか、少し緊張するな。

「失礼します。桜井君を連れてきました」

「ええ、入っていいわよ〜」

 返事に従って見月がふすまを開けると、行灯が置かれた薄暗い部屋に黒い影が見えた。会長だ。

「待ってたわ。最後のマスターが貴方だなんて予想外というか予想通りというか、複雑な気分ね〜」

 悠然と微笑む浴衣姿の会長は、暗がりという事もあって妙に艶っぽい。って何考えてんだ俺は、相手はあの会長だぞ?

「うふふ〜。そんな顔してると隣の見月さんがへそを曲げちゃうわよ〜?」

「んなっ!? どんな顔っすか! 俺は別に…!」

「はぁ、桜井君ったら動揺しすぎ。会長の冗談くらい流さないと身が持たないよ?」

「う、分かってるって」

「見月さんの方がこっちに来てからの日は浅いのに適応が早いわね〜。会長、ちょっと寂しいわ〜」

 見月の言うとおりだ。俺だけ慌てるなんて馬鹿みたいじゃないか。

「会長、桜井君に説明をお願いします。すみませんけど、彼には余裕がありませんので」

「そう。もう少し桜井君をからかいたかったんだけど、仕方ないわね〜」

 そう言って姿勢を正す会長が凛々しい表情に変わる。それに倣って俺たちも正座して。

 

「さて、どこから説明しようかしら。まずは空見町に古くからある口伝からかしら」

「口伝って事は、会長の家に伝わってきた話ですか?」

 会長の家はこの町ができた時から続く名家中の名家だ。そんな大昔の話が一つや二つあっても不思議じゃないだろう。

「そう、この町は昔から一定の周期で天使が降臨するの。それがどんな存在なのかは、桜井君達の方がよく知っているんじゃないかしら?」

「それがあいつらだって言うんですか…」

 天使。確かにあいつらには分かりやすいくらいに天使としての特徴がある。

 あの大きな羽はそれだけでも天使という印象を相手に植え付けるだろう。

「でも、あいつら頭に輪っかとかありませんよ? 特にニンフの方は天使っつーか妖精みたいな」

 さっきまでの乱暴さとか刺々しい態度とかはどっちかというと悪戯好きな小悪魔みたいな。さすがにそこまで口にしないけど。

「そうねぇ。実は本物じゃなくて『天使を模した存在』らしいから」

 会長の言い方はいまいち曖昧だ。会長自身も言い伝えを聞いただけで確かな事は知らないのかもしれない。

「とにかく。彼女たちは自身をエンジェロイドと名乗り、己が契約したマスターを守護する存在なのよ」

「そこですよ、なんでマスターが俺なんですか? そして俺が狙われなきゃいけない理由はなんですか?」

 肝心なのはそこだ。正直な話、俺はこの町の昔話とかに興味が沸かない。今は自分の事だけでてい一杯なのだ。

「桜井君がマスターに選ばれた理由はわからないけれど、狙われた理由は明白よ。エンジェロイド達の降臨と同時に始まるこの戦いは、ある願望器をめぐる戦争なの。いかなる願いも叶える万能の器、人はそれを―」

 会長はにっこりとほほ笑み、

 

 

「聖なるパンツ。略して聖パンと呼んだわ〜」

 ―そんな単語を、のたまいやがりました。

 

 

「………見月」

「言わないで。桜井君の言いたいことはわかってるから」

 見月の鎮痛な表情は、『嘘だと思いたいけど嘘じゃない。嘘であって欲しかったわよどちくしょー』と明確に物語っていた。

「会長、冗談じゃないんですよね?」

 もしや今夜の出来事は全部会長の仕込みで、盛大なドッキリだったんじゃないだろうかという希望も込めて聞いてみる。

「残念だけど冗談じゃないわ。実際に前回の戦いで勝利した鳳凰院家は没落寸前から一気に隆盛を極めたそうよ」

 もう三十年も前の話だけど、と会長まで苦笑しているという珍事。ふざけた名前は置いておくとして、どうやら万能の願望器という話はマジモンらしい。

「前回の結果の噂は都会にまで伝わったらしいわ。だからこそ見月さんという外来のマスターまで来たんでしょうね」

「…は? 見月、お前…!」

 なぜか自分でもよくわからない怒りがこみ上げた。いや、落ち着けよ俺。

 それはそうだ。見月がニンフと一緒にいたという事はマスターだという事。

 つまり見月がこの町に来て俺たちのクラスメイトになったのは―

「…謝っても仕方ない事だけど、ごめん。でも桜井君や風音さんと一緒の学生生活は楽しかった。学校に戦いを持ち込む気はなかったし、桜井君たちを巻き込みたくなかったのは本当なの」

 申し訳なさそうに顔を伏せる見月の顔は、俺からじゃわからない。

「そういう事だから怒らないであげて。見月さんに悪意が無かった事は会長が保証してあげる」

 …落ち着け、会長の言うとおりだ。ここで俺が怒るのは筋違いで、むしろ気を遣ってくれた見月に感謝するべきだ。

 ただ、自分がクラスメイトだと思っていた相手に隠し事をされていた事に腹を立てただけ。こんなのは自分勝手な被害妄想だ。

「…そうっすね。こっちこそすまん、ちょっとカッとなった」

「ううん、ありがとう桜井君」

 ホッとして顔を上げる見月の表情には安堵があった。

 これは後で会長にお礼を言わないと。もう少しで見月を傷つける所だった。

 

「話を戻すけど。つまり理由はさておき俺はイカロスっつーエンジェロイドと契約したから、頑張って一緒に生き延びろと?」

「おおざっぱに言うとそういう事ね。でも、聖パンという願望器を求めるなら積極的に戦うべきなのよ? 聖パンはエンジェロイドとマスターが最後の一組になった時に現れるという話だから」

 どうも会長は俺にこの戦いへ参加してほしいらしい。けど、それには頷けない。

「それはパス。そもそも俺には願い事なんてないんすよ」

 つまりそういう事だ。俺には命を懸けてまで欲しい物なんて無いのである。

「意外だわ〜。桜井君ならこの世すべてのパンツを集めるとか言いだすと思ったのに」

「同感です。全世界から女の子を集めてハーレムを達成するんだとか言うと思ってました。桜井君、色々と大丈夫?」

「お前らの発想の方が大丈夫じゃねぇよっ!?」

 会長も見月も酷すぎる。普段の俺はそういう風に見らているというのか。

「そもそも、そういうものは一生をかけて積み重ねていくもんでしょう。俺、自分ならできるって信じてますから」

 俺ならきっとこの世すべてのパンツも世界中の女性もすべて自分のものにできる。だから胡散臭い願望器とやらに願う必要なんで無い。ただそれだけの話だ。

「良かった。その言動、いつもの桜井君だわ〜」

「平常運転ですね。あんな目に遭ったのに、桜井君って精神的にタフだよね」

 …フフフ。その時は君らも標的にしてあげるカラネ?

「そう言う見月はどうなんだよ。わざわざ戦いに来たって事はちゃんと願い事があるんだろ?」

「うん、私はもう少し体を丈夫にしたいなって」

 ………ほうほう。転校初日にセクハラしようとした俺をチョップで地に這わせた君が、もっと強くなりたいと。

「つまり見月は人類の限界を突破したいんだな?」

 きっとそのうちチョップで地球を割ったり相手を成層圏の彼方へ吹き飛ばしたり、果ては((約束された勝利のチョップ|エクスカリバー))とか呼ばれるに違いない。凄いぞ見月、お前がナンバーワンだ。

 そしてそんな事を考える俺に対して見月はすっごい不機嫌そうに睨んでくる。さっき俺に謝った時のしおらしさはどこにもない。

「…桜井君の言いたい事は何となくわかるけど。私、これでも呼吸器系が弱いの。つまり持久力がないのよ」

「そういえば、マラソンとか長距離走とか見学ばっかだったな」

「そういう事。こっちの空気は綺麗だから持ち直してるけど、向こうにいた頃は走るのだって辛かったんだから」

 なるほど。今の医学じゃ治せない難病でも、その願望器とやらが本物なら治せるに違いない。そういう意味ではきっと見月の使い方が一番正しい。

「うーん。なら俺は見月に手を貸すって事でいいか?」

「え、ええ!? 桜井君それ本気?」

 いや、なんで驚くんだよ。

「本気っつーか他に無いだろ。さっきも言った通り、俺には願い事なんて無いし」

「それはそうだけど… なんでも叶う万能の器なんだよ?」

「だからいらないって。見月の願い事の方がよっぽどまともだしな」

 他のマスター連中が誰だか知らないけど、見月の願い事が一番平和的だろう。

 平穏を願う俺は歪んだ願望を許さず、クラスメイトに力を貸すのである。うむ、今の俺って格好いい。

「ふふ、桜井君らしい考え方ね〜」

 さっきから会長はニコニコしっぱなしである。俺を戦いに誘ったくせに、この回答に満足したらしい。

「あー、それともニンフの奴が反対するのか?」

「うーん、それは無いと思うな。なんかニンフさんって桜井君を気にかけてたみたいだし、現にさっきも仲良くしてたじゃない」

「いや、蹴っ飛ばされたり怒られたり嫌味言われたりしたんだが」

 それともあれか、あれがあいつなりの愛情表現だというのか。

 ならば交渉は決裂だ。日々繰り返される暴力と暴言なんてノーサンキューである。

「大丈夫、セクハラしなければうまくやってけると思うよ。セクハラしなければ」

 つまりセクハラすんなって事ですね? 分かりました、心に留めておきます。多分ナチュラルにやっちゃうと思いますけど。

 

「とりあえず桜井君もマスターとして戦うと決めた以上、これを渡しておくわね」

 会長は自分の豊かな胸元から小冊子を取り出し、俺の前に差し出す。

 少し古ぼけた冊子は、年代物だという事を容易に想像させた。

「なんすかこれ?」

「マスターである以上、自分と敵のエンジェロイドの情報管理はしっかりしないとね〜。とりあえずめくってみなさい」

 会長に言われるまま表紙をめくる。するとそこには―

 

 クラス:アーチャー

 マスター:桜井智蔵

 真名:イカロス

 属性:秩序・善

 

 筋力:C

 耐久:B

 敏捷:C

 演算:B

 幸運:C

 武装:A

 

 スキル

 飛翔:A

 空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。

 

 自己修復:A

 自身の傷を修復する。

 Aランクの場合は戦闘中にもダメージが回復し、戦闘不能に陥っても約半日で復帰可能。

 ただし完全に破壊された場合、ダメージを継続的に受け続けた場合は発揮されない。

 

 千里眼:B

 遠距離のおける視力の良さ。

 遠く離れた敵を視認し、射撃兵器の命中率を補正する。

 

 単独行動:F

 クラス別能力。マスターを失っても行動可能。

 ただしイカロス自身がそれを望まない為、ランクダウンしている。

 

 武装

 永久追尾空対空弾「Artemis」(アルテミス):B

 外敵を鋭く貫く殺傷力と、地球の裏側まで届く射程を併せ持つ主兵装。

 可変ウイングから直接発射するので使い勝手が良く、出力調整可能。

 

 絶対防御圏「aegis」(イージス):A

 あらゆる攻撃を防ぐ全方位バリア。

 非常に高い防御力を持ち、その特性を生かして周囲を巻き込まず攻撃する際にも併用される。

 ただしAランク以上の攻撃は防ぎきれず、ダメージの軽減のみになる。

 

 超々高熱体圧縮対艦砲「Hephaistos」(ヘパイストス):A

 圧縮したエネルギー弾を撃ち出す大砲。

 大気圏を越える程の指向性エネルギーを放出し、敵を蒸発させる。

 起動と発射には数秒のチャージが必要となる。

 

「―おお?」

 ずらずらとイカロスの事が書き込まれていた。

「へー、これがイカロスさんのステータスなんだ。やっぱり強いね」

「それぞれのランクはAがほぼ最高、Fが最低の評価よ〜」

 つまりイカロスの武装は最高クラスの物で、能力も全部標準以上なのか。そりゃ強いな、あのハーピーとかいうやつらが逃げるわけだ。

 あ、それとは別に気になることが一つ。

「会長、このクラスってなんすか?」

「あら忘れていたわ。エンジェロイドはそれぞれ得意とする分野があって、クラスで表されているの」

 

 ((弓兵|アーチャー))

 ((魔術師|キャスター))

 ((剣士|セイバー))

 ((騎乗兵|ライダー))

 ((衛生兵|メディック))

 ((狂戦士|バーサーカー))

 ((暗殺者|アサシン))

 

「名は体を表す。クラスを知れば相手の得意分野も分かりやすいでしょう?」

「なるほど、イカロスはアーチャーだから…」

「距離を置いた戦いが得意だね。私のニンフさんはキャスターだからこっちも後衛向きなんだ」

 そうか、ニンフはキャスターか。確かに見るからに華奢なイメージだよな。

「となると前衛が欲しいなぁ」

 どっちも敵と離れて戦うスタイルだから、相手を食い止める役目が必要だ。残りのクラスで前衛ができそうなのは…

「組みたいのはセイバーかバーサーカーだな」

「セイバーを味方にできれば最高だよね。口伝によると最優良のクラスらしいよ?」

 イカロス以上に強いやつもいるのか。それはなんとしても平和的な交渉で話をつけたいもんだ。

 

「さて、そろそろ帰るか」

 随分と長い話になったけど、ようやく現状を理解できた。とりあえず見月に協力しながら様子を見るという事で。

 その先はイカロスに相談してみよう。あいつは命の恩人だし、これからも助けてもらうんだからちゃんと話をしておかないとな。

「あら、もう帰るの? せっかくだから泊まっていかない〜?」

 いつも通りのんびりした雰囲気に戻った会長が提案してくれるが…

「お断りします。そんな事したら会長に寝首をかかれそうなんで」

 会長の毒牙にかかれば戦いに参加する前にその執拗な虐めでノックアウト、そしてリタイヤ間違いなしだ。

「信用無いのね〜。見月さんはどう〜?」

「あはは、ニンフさんに要相談という事で」

 見月もそれをよく分かっているらしく、どうやらうまく逃げる方針のようだ。

「そういえば、あいつら今頃どんな話してんだろ?」

 確かニンフがイカロスに話があるとか言ってたっけ、と俺が二人について素朴な疑問を口にしたと同時に―

 

 ―家門の方から大きな爆発音が響いてきた。

 

「な!? なんだ!?」

「…迎撃に出ます! 会長と桜井君はここにいて下さい!」

 慌てふためく俺とは対照的に、見月はすぐさま事態を察して走り出す。

「おい見月!」

 俺の静止が聞こえないのか、見月はそのまま庭先を渡り家門の方へと消えてく。

「さて、桜井君はどうするのかしら? どうやら貴方たちを狙った襲撃みたいだけど?」

 見れば会長も落ち着き払って事態を分析している。

 そうだ、落ち着け。巻き込まれたとはいえ、俺はさっき見月に手を貸すって言ったばかりじゃないか。

「俺も向こうに行きます! 会長は家の人の避難を!」

 俺にだって何かできる事があるかもしれない。今はとにかくできる事をやるだけだ。

「気を付けるのよ。人生死んだらそれまでだから、みっともなくてもちゃんと生き延びなさい」

「はい!」

 それは会長なりの激励だったのかもしれない。俺はその言葉に頷いて見月の後を追って走り出した。

 

 

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 数分にも満たない距離を走りぬけ、さっきあいつらに見送られた家門にたどり着く。

 そこには、

「………なんだよ、これ」

 粉々に粉砕された家門と、倒れ伏すイカロスの姿があった。

「イカロスっ! おい!」

 イカロスは見るからに重傷だ。血こそ流れていないけど、人間ならとうに死んでいるほどの深い傷である事が素人の俺にも分かる。

「…マス、ター。離れ、てください」

「馬鹿言うんじゃねぇよ! くそ、これは病院でいいのか!?」

 いや、人間じゃないんだから病院は駄目なんじゃないか? ええと、じゃあどうする? とりあえず戻って会長に聞いてみるか? 

 待てよ、そもそもニンフと先に行った見月はどこに―

 

「ふむ、遅かったな。もしや来ないかと思ったぞ?」

「…っ!?」

 

 背後からかけられた声の方に振り向く。

 そこには前時代的な肌着を身に着けた長身の男が佇んでいた。まるで紀元前の地中海に面した都市に住まう貴族のような優雅さと奔放さを内包した容貌。俺はそれに理由のない不穏を感じた。

「…誰だよ、お前」

「なんだ、ハーピーから聞いたのではないか?」

 くつくつと笑う長髪の男。まさか、こいつが。

「私が奴らのマスターだ。いや、だったというべきか。喜べダウナー、この私が自ら殺しに来てやったぞ?」

 俺を殺そうとした他のマスターなのか?

「見ろ、向こうのショータイムも佳境に差し掛かってきたぞ?」

 男の視線の先を追うと、そこには猛然と手刀を振り回す見月の姿が見えた。

「うふふ。私と正面から戦えるなんて、凄いのねお姉ちゃん」

 そして、それを迎え撃つ幼い少女がいる。

 黒いフードのせいで顔はよく分からないが、言葉の端々に滲む愉悦がこっちにも伝わってくる。

「…すげぇ」

 間違いない、あのフードの少女もエンジェロイドだ。

 彼女はイカロスやニンフと違った禍々しい翼はそのものを刃にし、変幻自在に見月へと襲い掛かる。

 それを防ぐ見月の手刀。両者はいくども激突し甲高い金属音が響く。

 いや、そもそも人外染みたこいつらとガチンコできる見月の方が異常だ。それはあの手足から発する青白い輝きが関係しているのか。

「くぅっ…! ニンフさん、もう一度((強化|ブースト))を!」

「我、ここに主の比肩無き比翼を望む…! これがせい一杯よ!」

 ニンフの言葉に応えるように見月の手足は輝きを増す。

 そうか、ニンフが何かしているおかげで見月は敵のエンジェロイドと拮抗できているのか。

「はっ! …はぁっ!」 

 烈火のごとき気迫と共に進む見月は止まらない。

 その手刀は少女の鋭利な翼に阻まれているはいるが、じりじりと間合いを詰めている。

「いける、のか…?」

 このままいけば見月は勝てる。もう少しで敵の首筋に手刀が届く…!

「ふむ、ダウナーのわりには健闘したな。カオス、そろそろ遊びは終わりだ。『その気』でやれ」

「ええ、分かったわマスター」

「―っ! くっ、ぅ…!」

 カオスと呼ばれた少女は男の声に応える様に見月の前進を押しとどめ、見る間にそれを後退へと変えてく。

 見月の眼前で荒れ狂うカオスの羽刃はもはや台風のよう。見月はその暴風に吹き飛ばされようとしている。

「だ、駄目だ…!」

 あのままだと見月はきっと殺される。何とかしないと。

 俺にできる事は? 何かできる事はないのか?

「…マスター」

「イカロスっ!?」

 ゆらり、と。俺の背後でイカロスが立ち上がる。

 ボロボロの体で、その両手には見たことのない兵装を手にしている。

 

 いや、俺は知っている。

 さっき会長に渡された冊子で読んだからか。それが今、イカロスの持ち得る最高の一撃だと知っている。

 その名はヘパイストス。圧縮したエネルギー弾を撃ち出す常識外の超巨大砲。 

 

「そあらさんを、お願いします」

 俺にそれだけを告げて、イカロスは発射体勢に入った。

 それだけで十分だった。今の俺にできる事をこいつは確かに伝えてくれたのだ。

 

「見月ーーー!」

 あの暴風の嵐に飛び込んで見月の手を引く。

 どんな奇跡か、俺への刃はことごとく方向を変えていく。

「………トモゾウ、早くっ!」

 俺に激を飛ばすニンフは苦悶に表情を歪めていた。

 なんだ、奇跡でもなんでもない。これもニンフのおかげなんだろう。

 多分見月にしたのと似たような事を俺にもしてくれただけの事。今はそれが何よりもありがたい…!

「さくら、い、く…」

「黙ってろ! イカロスっ!」

 息の上がった見月を思い切り引っ張ってカオスから距離を取る。

 そして―

 

「((超々高熱体圧縮対艦砲|ヘパイストス))、発射…!」

 イカロスの必勝の一撃がカオスへと放たれる。

 それは、

 

「((超高熱体圧縮発射砲|プロメテウス))、発射」

 カオスが手にする別の形の巨大砲で迎撃された。

 

 

 人間が感じられる許容量を完全に超えた音と光が、俺の意識を彼方へと吹き飛ばした。

 

 

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「う…?」

 真っ白だった視界に色が戻ってくる。どうやら、俺は生きているらしい。

「あ、れ…?」

 なんか、やわらかくて暖かいものに包まれているような。

 ぼやけた頭がようやく正常に戻ってきてくれて、

「………イカロス?」

 イカロスが、

「…おい、嘘だろ?」

 俺を抱きかかえたまま、

「イカロスっ!」

 カオスから守ってくれていた事を理解した。

 

 俺が動いたからなのか、ぐらりとイカロスの体が崩れ落ちる。

「気が付いたか。いや、実に涙ぐましい光景だったぞ? 気を失った貴様を必死に庇うとは見上げたものだ」

 にやついた誰かの声が聞こえる。

 どうでもいい。

「お姉様ったら凄かったわ。でも、これで止めね」

 カオスの声には感情というものがない。

 どうでもいい。

「その次は貴様だダウナー。少々興ざめだが、これが貴様と私の差という事だ」

 だから、そんなことはどうでもいいんだって。

 重要なのは― 

 

「てっめぇぇぇぇ!」

 

 ―こいつらが許せないという事だけだ。

 

 男の顔めがけて思い切り拳をふるう。奴はそれを数歩退いただけで軽々とよけやがる。

 畜生、こいつタッパあり過ぎなんだよ! 

 俺の背が低い事もあるけど当たらねぇっつーかよけんじゃねぇ!

「単細胞め。カオス、先にこちらを始末しろ」

「ええ、分かったわマスター」

「ざけんな! 簡単に―」

 

 ドシュ

 

「―あ、う?」

 やられない、と思ったん、だけど。

「ご、ふ」

 見月とガチンコでチャンバラしていたカオスの鋭い羽が、いつの間にか腹に刺さってやがる。

 そうか、さっきはニンフのおかげで避けられたんだった。

 うん、だよな。俺だけでどうこう出来るわけないじゃないか。

 なんか腹が痛いっつーか熱いなこれ。やべ、体からみるみる力が抜けてくぞ…?

「終わ―だな。あっ―ものだ」

 

 あれ、いつの間に倒れたんだ俺。

 くそ。しかも耳がいかれたのか、ほとんど聞こえやしねぇ。

 

「カ―ス?」

「私、殺したんだ。―ちゃんを。でも、―の命令だし、でも、お兄―は私―愛を愛を、あああ愛を―」

 

 なんだ、あいつらの様子がおかしいな。

 ああでも、もうどうでもいいな。俺、ここで死ぬっぽいし。

 

「ちぃ…! 命―したなダウナー。今宵は―を預けてやる」

 

 おお、なんか逃げてくぞ、あいつら。

 俺だけ殺してやり逃げかよ、ちくしょう。

 

「―! ―――!」

 

 ………揺さぶってくるのは、ニンフか? 良かった、無事だったんだな。

 これなら、俺はともかくイカロスは、助かるかもしれない。

 

「―――」

 

 あ… いよいよ朦朧としてきた。

 これで終わりか。ごめんな見月。俺、さっそくリタイヤだ。

 すんません会長、死ぬなって言われたのに、さっそく死にそうです。

 風音は、どんな顔すんなのかな。泣かれるのは、勘弁なんだけどな。

 すまん、イカロス。お前だけでも、無事に―

 

 

 そんな事を漠然と考えながら、俺の意識は闇に落ちていった。

 

 

 

 

 To Be Continued

 

 

 

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 interlude

 

 

「ふぅ」

 居間に座り込んで息をつく。これだけで今夜の生還を感じる事ができた自分は幸運だろう、と見月そあらは嘆息する。

「………これが桜井君の家、か」

 彼女が腰を下ろしたのは桜井家の居間である。

 家主が絶賛昏睡中につき無許可なのだが、文句を言われないくらいの恩はあるはずと結論付けた。

「まあ、恩を受けたのはこっちも同じなんだけど」

 カオスの猛攻は彼女の命をあと一歩の所まで追い詰めていた。

 あの時、ここの家主が手を引いてくれなければ危なかっただろう。

 

「落ち着いた、ソアラ?」

 廊下から自分の相棒であるエンジェロイドが顔を出す。

「ええ、ニンフさんこそ大丈夫?」

「私は平気。それほどダメージも無かったし」

「そう。不幸中の幸いだね」

 あれだけの激戦。否、死線をくぐってなお彼女たちは健在だった。

 もっとも、それは自分たちの幸運と。

「アルファーは朝まで目覚めないでしょうね。トモゾウも同じだと思う」

 本来負うべき負債を彼らが肩代わりした結果でもある。

「そっか。それでも、二人とも無事でよかった」

「オレガノに借りができたのは癪だったけど。ま、仕方ないか」

 口をとがらすニンフだが、その表情は安堵の色が濃い。

 彼女も智蔵の無事を喜んでいるのだと察して見月は頬を緩めた。

 

 ((衛生兵|メディック))のクラスのエンジェロイド、オレガノ。

 彼女はバーサーカーを連れ去ったマスターの後に現れ、瀕死の智蔵に常識外の治癒を施したのだ。

 おかげで智蔵は死の淵から生還し、今は自室でイカロスと共に静養中。

 彼女こそ智蔵を救った文字通りの『救いの天使』だったのである。

 

「あいつ、絶対出待ちしてたのよ。自分がカオスに敵わないって分かってから隠れてたんだわ」

 ぷう、と頬を膨らませるニンフだったが、その判断は正しかったと見月は考えている。

 オレガノの後に現れた彼女のマスターの性格を考えても、心算知謀を持ってこの戦いにあたる事は容易に想像できた。

「それにしても、メディックのマスターがあの人だったなんてね」

「別に意外でもないわ。オレガノと相性がいいマスターなんて限られてるもの」

「確かにマスターとエンジェロイドの関係としては理想的、なのかな?」

 エンジェロイドは基本的にマスターに絶対服従である。

 オレガノは自己主張が少なく、彼女のマスターは判断に迷いがない。そういう意味では理想的な関係なのだろう。

「自分のエンジェロイドがやられたからって、激昂して殴りかかる馬鹿よりはマシよね」

 ニンフの言葉には隠す気のない棘が込められている。そこには自室で眠りこけている彼への苛立ちが見て取れた。

「でも、桜井君らしいとも言えるよ」

「なに? ソアラもトモゾウを気に入ったの?」

「え? いや、そういう意味じゃないよ。誰かに本気で心配して、怒ってくれる人って凄いなって」

 見月の暮らしてきた都会では久しく目にしなかった人物。

 そういう意味で物珍しいという事だと彼女は結論づけていた。

「それよりニンフさんこそどうなの。私『も』って聞こえたんだけど」

「ふ、ふん。別に他意はないわ。あいつの感性は私たちにとっても珍しいだけよ」

 顔を赤くするニンフの反応はひどく分かりやすい。要するに彼女は智蔵を好ましく思い、同時にイカロスへ嫉妬しているんだろう。

 自分の相棒は本当に人間染みていて好ましいと見月は思った。彼女にとって、機械のような人形を相手にするよりずっと精神的に楽なのだ。

「で、これからどうするの? 私としては桜井君の面倒をみたいんだけど。協力するって言われたしね」

「それで良いわ。こっちもその方が都合がいいから」

 

 こうして、キャスターのエンジェロイドと見月そあらは一時の共闘関係を桜井智蔵に求める事を決めた。

 共闘を最初に求めたのは彼の方だったのだが、順序など元から意味がなかったとも言える。

 

「あーあ、風音さんとは喧嘩したくないんだけどな」

「致し方ない事よ。そう遠くない内にこうなるかもって思ってたしね」

 彼女たちは元から少なからず彼に好意を抱いていたのだから。

 

 

-6ページ-

 

 

 

「ニンフと!」

「アストレアの!」

 

 

 

  教えて! エンジェロイ道場!

 

 

 

「はい、やってきました第二回。今回は前に言った通り、私たちのステータスについて解説するわよ」

「………ニンフ先輩」

「なによ、青い顔して」

「カオス強すぎですよっ!? イカロス先輩が敵わない相手にどうしろってんですか!?」

「あー、あの状況じゃ仕方ないのよ。アルファーの状態は酷いものだったし、前衛ができるアンタもいないし」

「むむむ。つまり私がいれば何とかなったんですか?」

「善戦できたと思うわよ? それでもカオスに負ける確率の方が高かったと思うけど」

「そんなぁ。三対一でも勝てないなんておかしいですよ〜。なんでこんなに差がついてるんですかぁ?」

「さて、それを説明するためにもカオスのステータスを見てみましょうか」

 

 クラス:バーサーカー

 マスター:シナプスマスター

 真名:カオス

 属性:混沌・中庸

 

 筋力:B(A)

 耐久:A(A+)

 敏捷:B(A)

 演算:A(A+)

 幸運:D

 武装:A

 *()内は狂化による補正値

 

「………うわぁ」

「カオスの戦闘能力はバーサーカーというクラス補正で強化されているのよ。これが私たちの勝てない大きな要因ね。アルファーのステータスは本編中で描写があったから割愛。あとは私とデルタのステータスね」

 

 クラス:キャスター

 マスター:見月そあら

 真名:ニンフ

 属性:秩序・中庸

 

 筋力:D

 耐久:C

 敏捷:C

 演算:A

 幸運:B

 武装:C

 

 クラス:???

 マスター:???

 真名:アストレア

 属性:中立・善

 

 筋力:B

 耐久:C

 敏捷:A

 演算:E

 幸運:B

 武装:A

 

「その他スキルと武装は割愛したわ。後で別のページにまとめて置くから暇な時に読んでみて。本編で陽の目を見ないであろうちょっとしたネタスキルもあるわよ?」

「それよりもどうしましょうニンフ先輩! カオスに勝ってるところがほとんどありません!」

「勝ってるのは幸運くらいかしら。それも直接戦闘に影響しないしね」

「こんなの無理! 無理ゲーです! 智蔵さんの未来はデッドエンド確定ですぅ!」

「ラスボスなんだからこれくらい差がないと駄目なのよ。でないとアルファー無双で終わっちゃうでしょ?」

「う、それはそうですけどぉ…」

「安心しなさい、ちゃんと勝算だってあるんだから。それはおいおい本編で見えてくるわ」

「なら安心です! あとは私の出番がいつになるかですね!」

「………ふ」

「んな!? なんですかその見下すような勝者の笑みは? もしかして、まだ私の出番は無いんですか?」

「ちゃんとあるわよ。ただ、メインヒロインと端役の差はどうしても埋まらないものなのよ?」

「むかつくー! 今日のニンフ先輩はムカつきます! 出番が多いからっていい気になってー!」

「どうどう。あんたにもちゃんと見せ場は用意されてるから安心しなさい。………後半でだけど」

「本当ですね!? 嘘だったら泣きますからね! ガン泣きしますからね!」

 

「そんなところで、今回はこれまで。次回は私たちエンジェロイドのキーワードの一つ、インプリンティングについて解説するわ」

「まったねー」

 

 

 *エンジェロイドのステータス情報が解放されました。

 

 

-7ページ-

 

 

各エンジェロイドステータス

*本編で解明されていない個所は伏せられています。

 

 

 

クラス:アーチャー

マスター:桜井智蔵

真名:イカロス

属性:秩序・善

 

筋力:C

耐久:B

敏捷:C

演算:B

幸運:C

武装:A

 

スキル

飛翔:A

空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。

 

自己修復:A

自身の傷を修復する。

Aランクの場合は戦闘中にもダメージが回復し、戦闘不能に陥っても約半日で復帰可能。

ただし完全に破壊された場合、ダメージを継続的に受け続けた場合は発揮されない。

 

千里眼:B

遠距離のおける視力の良さ。

遠く離れた敵を視認し、射撃兵器の命中率を補正する。

 

単独行動:F

クラス別能力。マスターを失っても行動可能。

ただしイカロス自身がそれを望まない為、ランクダウンしている。

 

武装

永久追尾空対空弾「Artemis」(アルテミス):B

外敵を鋭く貫く殺傷力と、地球の裏側まで届く射程を併せ持つ主兵装。

可変ウイングから直接発射するので使い勝手が良く、出力調整可能。

 

絶対防御圏「aegis」(イージス):A

あらゆる攻撃を防ぐ全方位バリア。

非常に高い防御力を持ち、その特性を生かして周囲を巻き込まず攻撃する際にも併用される。

ただしAランク以上の攻撃は防ぎきれず、ダメージの軽減のみになる。

 

超々高熱体圧縮対艦砲「Hephaistos」(ヘパイストス):A

圧縮したエネルギー弾を撃ち出す大砲。

大気圏を越える程の指向性エネルギーを放出し、敵を蒸発させる。

起動と発射には数秒のチャージが必要となる。

 

 

 

クラス:キャスター

マスター:見月そあら

真名:ニンフ

属性:秩序・中庸

 

筋力:D

耐久:C

敏捷:C

演算:A

幸運:B

武装:C

 

スキル

ハッキング:A

生物、機械に干渉する能力。

対象の性能及び機能を強化もしくは低下させる。

高ランクになると対象の電子頭脳を破壊する事も可能(ただし相手の演算能力を上回る必要がある)

また、ハッキング中は自身のステータスが低下する。

 

飛翔:B

空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。

 

陣地作成:B

クラス別能力。自分に有利な陣地を作る。

ハッキングを主としたトラップ陣地を作成できる。ただし対象の選別は困難。

 

道具作成:D

クラス別能力。有用な道具を作成する。

大抵の事をハッキングで済ませしまうニンフはこのスキルの使い道を把握しきれていない。

 

 

武装

超々超音波振動子(パラダイス=ソング):C

口から発する超音波攻撃。

数少ないニンフの武装だが、エンジェロイドに対する攻撃力は低い。

 

 

 

クラス:???

マスター:???

真名:アストレア

属性:中立・善

 

筋力:B

耐久:C

敏捷:A

演算:E

幸運:B

武装:A

 

スキル

飛翔:A+

空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。

事実上、空中戦でアストレアを捕えられるエンジェロイドはいない。

 

怪力:C+

一時的に筋力を増幅する。

感情の起伏による怪力を発動。つまり馬鹿力。

過去にインプリンティングの鎖を力ずくで引きちぎった事からも、その腕力は他のエンジェロイドと比べても破格。

 

騎乗:F−

クラス別能力。乗り物を乗りこなす。

家電の操作(テレビのリモコン等)が限界なアストレアにとってまったく有用性の無いスキル。

逆に操作を誤って事故を起こす可能性が上がる。

 

勇猛:D

精神干渉を無効化し、格闘ダメージを上昇させる。

アストレアの場合は勇猛というよりただの猪突猛進だが、結果は大差が無い。

Dランクは若干の補正値にとどまる。

 

武装

???

 

 

 

クラス:ライダー

マスター:???

真名:???

属性:中立・中庸

 

筋力:?

耐久:?

敏捷:?

演算:?

幸運:?

武装:?

 

スキル

???

 

武装

???

 

 

 

クラス:メディック

マスター:???

真名:オレガノ

属性:秩序・中庸

 

筋力:D

耐久:D

敏捷:C

演算:C

幸運:A

武装:D

 

スキル

医療技術:A

シナプスで従事していた医療知識。Aランクは適切な医療器具さえあれば瀕死の重傷さえも治療可能。

ただしシナプスの器具が地上に無い為、普段は腕のいい外科医程度の能力(Bランク相当)にとどまる。

シナプス製の医療器具は彼女が保有する物のみであり有限。それを消費した時に限り本来のランクへ上昇する。

 

火器管制:C

銃火器を扱う技能。

五月田根美香子が直伝した為、拳銃から機関銃、戦車に手榴弾と豊富な技術を持つ。

ただし扱えるのは地上の火器に限り、シナプス製の兵器は扱えない。

 

飛翔:C

空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。

医療用として活動してきたオレガノは戦闘用の飛行を苦手とする。

 

単独行動:C

シナプスでは医療用としてマスターから離れて行動していた為、ある程度離れても活動に支障が出ない。

ただし現界の為にマスターの存在そのものは必要不可欠である。

 

武装

なし

 

 

 

クラス:バーサーカー

マスター:シナプスマスター

真名:カオス

属性:混沌・中庸

 

筋力:B(A)

耐久:A(A+)

敏捷:B(A)

演算:A(A+)

幸運:D

武装:A

*()内は狂化による補正値

 

スキル

飛翔:A

空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。

 

戦闘続行:B

大きな傷を負っても戦闘が可能。

精神的な高揚により痛覚が麻痺し、痛みを感じずに全力を発揮できる。

ただし自身の保身がおろそかになる為、回避にマイナス補正がつく。

 

自己進化プログラム「Pandora」(パンドラ):A++

エンジェロイドの自己進化プログラム。他の生物やエンジェロイドを取りこむ事で最適な機能を獲得する。

カオスはこのシステムに一切の制限がなく、常に最適な機能を模索する事が出来る。

これによりカオスは戦闘中1ターンごとに相手より1ランク上回る性能を獲得する。

 

狂化:B

クラス別能力。全ステータスをランクアップさせる。

元々情緒不安定な面のあるカオスだが、狂化によってさらに不安定になっている。

マスター以外の存在は敵という認識しかなく、イカロス達の事を知識で理解してもそれ以上の思考がされない。

ただし智樹とそれによく似た智蔵は例外。彼らを認識すると著しい精神的負荷が起こる。

 

武装

対認識装置「Medusa」(メデューサ):A

敵エンジェロイドの電子制御機能に介入し、幻惑する。相手の攻撃や回避にマイナス補正を与える。

油断するとニンフですら幻惑されるほどの性能があり、抵抗にはAランク以上の演算能力が必須。

 

硬質翼:A

自身の翼を変幻自在に操る。

筋力ステータスに依存した威力を発揮する。

 

炎弾:B

遠距離戦闘用の射撃兵装。

複数の弾頭を連続発射する事が可能。また、チャージする事で威力がランクアップする。

 

超高熱体圧縮発射砲「Prometheus」(プロメテウス):A

アサシンを取り込んで獲得した武装。カオスの能力に追随してランクアップしている。

Aランク以下の防御及び耐久を貫通し、同ランクの攻撃を相殺する。

 

 

クラス:アサシン

マスター:シナプスマスター

真名:ハーピー

属性:秩序・悪

 

筋力:C

耐久:C

敏捷:C

演算:B

幸運:C

武装:B

 

スキル

飛翔:B

空を自在に飛行する。ランクが高いほど空中戦で有利になる。

 

二身同一:B

二人で一つの役割を負う為の機能。

離れていても互いの意思疎通を可能にする。

 

気配遮断:C

クラス別能力。隠密行動の適正を上げる。

ただし直接攻撃をする際には大きくランクが低下する。

 

武装

超高熱体圧縮発射砲「Prometheus」(プロメテウス):B

摂氏3000度の気化物体を秒速4kmで射出する。

Bランク以下の防御及び耐久を貫通し、同ランクの攻撃を相殺する。

 

説明
『そらのおとしもの』の二次創作になります。 
 今回の目標:バトルものシリアス、および中編への挑戦。
       完全オリジナルが困難なため、某作品をオマージュ(パ○リ)して練習する。
       ただし練習といっても基本全力で。自分がどこまでシリアスに迫れるかを探究する。

*某作品を思わせる設定やストーリーがありますが、クロスオーバーではありません。
 つまり青剣さんとか赤い悪魔さん達は出てきません。

 これまでのあらすじ
 桜井智蔵という少年はある夜、背中に羽の生えた美女に殺されそうになる。
 それを救った少女もまた、背中に羽を持つ美少女だった。
 彼女は自分の事をイカロスと名乗り、智蔵の事をマスターと呼ぶのであった。

 第一章:http://www.tinami.com/view/363398
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コメント
枡久野恭様へ ここだけの話、当初の予定ではアストレアさんがヒロインでした。ただ彼女だとシリアス方向へ話をもっていくのが難しくお蔵入りに。機会があれば書いてみたいのですが…(tk)
BLACK様へ そらおとに言峰さんみたいなダンディな男キャラがいない以上、致し方ない事です。ギル様の役所はシナプスのマスターがちょっと引き継いでますが。(tk)
全く予想が出来ない展開ですが……途中で主人公がアストレアに変わるのではないかとドキドキです(枡久野恭(ますくのきょー))
カオスバーサーカーがラスボスですか・・・。つまるところ言峰みたいなやつやギルガメッシュのような存在もいないというわけですかな。fateだと二人がラスボスですから・・・。(BLACK)
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そらのおとしもの エンジェロイド シリアス fate の皮をかぶったなにか 

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