星降る夜に願う事 3
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今、其処に飛び込んできた存在。

それがいつもと同じ幻影だろうと、一瞬そう思った。

鮮やかでいて、けれど優しいその色。

花びらのように、揺れて舞った髪。

相も変らぬ朱色の服に・・・。

けれど、記憶とはやや違うその凛々しい体躯は?

 

「アンタっ・・・一体何が狙いなのッ!?」

 

・・・もしかして・・・これは幻ではない?

 

そこにヘタレこんでいたチンケな男の胸倉を掴み、『彼女』はいきなりそうまくし立てた。

変わらないその声が、妙に耳に馴染んで聞こえる。

そう、今、其処に居るのは・・・!?

 

「私たちを何度裏切れば気が済むのよッ!?」

「サクラ・・・か。」

「ッ・・・!?」

 

その白くて細い肩がビクンッと小さく震えたのが、遠目にもハッキリと分かった。

そうして緩やかにその顔がこちらを向いて、碧色の双眸が俺を捉える。

さ・・・す・・・け・・・くん・・・?

読唇術を使ったわけではない。

ただ、己の中に彼女の声無き声が聞こえたのだ。

驚きに打ち震えたか細く高い音で・・・。

 

まるで時が、僅かに過去へと遡るかのよう。

そうだ、遥か2年前のあの時に・・・!

この胸の中、感情がグルリと渦を巻いた。

 

 

 

 

 

星降る夜に願う事・・・  3

 

 

 

 

 

自分の名を呼ぶ声が聞こえた。

それも遥か上空、眩い陽光の射す方角から。

私の中、鼓膜が打ち震えて、そしてドクドクと心臓が鳴りだす。

まさか・・・まさか・・・まさ・・・か!?

見上げた光の先、その中に黒いシルエット。

それは・・・!?

 

・・・さ・・・す・・・け・・・くん・・・!?

 

その頭髪、鼻筋、頬筋、いや何よりも雰囲気が私に知らせる。

そう見上げている断崖上に居るのは、間違いなく『彼』であろうと。

だが・・・幾分か?

いや、顔つきが大分凛々しく野性的になっていて・・・。

その時、自分の傍へと駆け寄ってくる足音が聞こえた。

そうして・・・同じく息を呑む気配。

 

「ナルト・・・か。」

「・・・サ・・・スケ・・・っ。」

 

あぁ、ついに?

ようやく?

私達は、彼に辿り着けたの・・・よね?

仲間であり、友達であり、そしてそして・・・!

 

・・・サスケ君・・・!!

 

『ありがとう・・・サクラ。』

 

あの日、あの晩、私の背後でそう囁いた彼。

忘れ得ない声、言葉!

あれから2年もの月日が流れてはしまったけれど、私達は辿り着く事が出来た!!

彼との再会・・・それは、自分とナルトにとっての目標。

サスケ君を求めて、サスケ君を取り戻す為に、サスケ君を・・・!

 

「ッ!?」

 

だが、直後に崖の上にあった彼の姿は消え去っていた。

ハッと驚き、だがすぐ其処、ナルトの眼前に感じた気配!

 

・・・いつの間に・・・!!

 

本当に瞬きをしただけ。

その僅かな間に、まるで突風の如く移動した!?

神業の如きスピードに、私はハッと両目を見開く。

同時に、ドクドクと荒い音を立てだすこの胸。

 

・・・この速さは・・・何!?

 

「お前には・・・火影になるっていう夢があったんじゃなかったのか?」

 

数メートル先にある、彼の姿。

伸びた背丈、逞しくなった筋肉、そして・・・感じるこの威圧感!

 

「俺を追い回す暇があるならば、修業でもしてりゃ良かったのにな?」

「・・・。」

「だから・・・今度は俺の気まぐれで、お前は命を落とす事になるんだぜ・・・?」

 

・・・ッ・・・サスケ・・・君!?

 

両目を見開いたまま、私は愕然としていた。

緩やかに背の刀を抜いていく彼。

ピクリとも動かず、ただ静かにナルトの肩を抱きそんな事を呟いて・・・!

 

「・・・仲間一人救えねえ奴が、火影になんてなれるわけがない。」

「・・・。」

「そうだろ・・・サスケ?」

 

対したナルトの言葉、それがこの胸を打った!

込み上げてくる切ない感情。

そうよ・・・ね!?

ようやく・・・ようやく私達は、追い求めていた貴方を見つけた!

なの・・・に!?

それなのに!?

 

「ッ・・・サスケ君ッ!?」

 

・・・嘘・・・でしょ!?

 

ナルトに向かい振り下ろされていく刃。

それは躊躇う筋も無く、その背に迫る・・!!

 

・・・こんな事に・・・なろうとは!?

 

止めてッ!!

まるで、いつかの光景のようだった。

二人を止めたくて、でも止める術もなくて、ただ我武者羅に叫び間に入ろうとしたあの時と同じ・・・!?

あまりの衝撃に固まる身体!

大切な仲間が仲間を殺ろうとしているのに、私は動けず息を呑むだけ!

 

・・・お願いッ・・・誰か!!

 

胸の中で大きく叫んだその直後、サイがナルトの背後へと回りこんでいた!

それにホッとして・・・一旦膠着したかのように見えたその場。

だがそこですかさずナルトがサスケ君の片手を封じようとする!!

 

「よし!今だ!」

 

更にヤマト隊長が木遁術を使った。

サイとナルトに両手を取られ、身動きが出来ない状態の彼。

その身に、スルスルと伸びて迫り行く木片!

 

・・・これで、終わる!?

 

彼を拘束出来たならば、このまま木の葉に直行で帰るのだ!

ずっとこの胸に抱えていた自分の願いが、ようやく成就するのかもしれない!?

そう思ったのだけれど・・・!?

 

「千鳥流しッ!」

 

サスケ君の叫びが聞こえたのと同時に、私は思わず『うっ!?』と身を引いていた!

辺りを占めるは小鳥のさえずりの如き音。

眼前では煌く青い光線。

それはサスケ君の身体を中心として、辺りへと広がっていく!

衝撃で吹き飛ばされたナルトとサイ。

驚き、立ち尽くすヤマト隊長。

そして・・・私も。

 

・・・何て力なの・・・!?

 

こんなに大量の千鳥を発生させられるなんて、自分の記憶の中にある彼の強さを遥かに超えている!

あの大蛇丸の下、彼は一体どんな修業をしてきたというのだろうか!?

凄い・・・もう、この一言だ。

 

・・・でも、このままでは!?

 

そうだ、これではサスケ君を木の葉へと連れて戻る事が出来ない!

怯んでいては、また・・・彼をみすみす見送ってしまう事になりかねないのだ!!

ならば・・・?

私は、あの時の私じゃあない!

弱くて人に頼ってばかりだった、あの頃の自分ではない!!

何の為に綱手師匠に弟子入りしたのか!?

 

・・・サスケ君を里に連れて戻すのだ!!

 

ギュッと握り締めた拳に意識を集中させた。

右手に漲っていく己のチャクラ。

たとえ、サスケ君が如何に強くなっていようが・・・ぶつかるのみ!

 

・・・私が、なんとかしてみせる!

 

高めた戦闘意識。

同時に、フッとこちらを向いた紅い瞳。

其処に・・・私は刹那の愁いを見た気がしたのだった。

説明
サスケとサクラ、2年ぶりの再会
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