ウチとアキと3人でお出掛け
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ウチとアキと3人でお出掛け

 

 今日ウチは妹の葉月とアキと3人でお出掛けすることになった。

 そんな訳でウチらは今、葉月がよく遊んでいる児童公園に3人でいる。

 なんでそうなったのかと言うと長くなるのだけど、まあ学園長に頼まれた召喚獣の実験絡みの話。

 ウチとアキのデータを併せ持った召喚獣はどんな感じになるのか話し合っていたら葉月と出会った。

 で、アキは葉月がその召喚獣だと言った。

 言い換えればウチとアキの間に子供ができたら葉月みたいな子ができるということ。

 アキには全然そんな意識はないみたいだけど。

 でもそれを聞いてウチはとても嬉しくなった。

 それで3人でのお出掛けを提案してみた。

 ウチとアキと葉月での3人のお出掛け。

 アキとウチとウチらの子供の3人でお出掛けする未来の為の予行演習。

 ウチとアキの将来の為の大切な第一歩。

 

 ……の、筈だったんだけど。

「わ〜い、バカなお兄ちゃん。今日は葉月をデートに誘ってくれてありがとうなのです♪」

「はっはっは。葉月ちゃんに喜んでもらえて本当に良かったよ」

 何かウチの思っているのと違う方向に話が流れている気がする。

 アキの隣にはベットリと葉月がくっ付いている。

その葉月は思いっきりアキの手を取って腕なんか組んじゃってる。

 一方ウチはそんな2人から2歩下がった地点から見ている。

 何かおかしくない、この構図?

 今日のメインはウチとアキのデートで、ウチらの子供である筈の葉月を楽しませるのがあるべき姿なのに。

 アキとウチの中間に葉月がいて、お手てを繋いで3人で親子っぽくするのが本来じゃないの?

「あっ、そうなのです。バカなお兄ちゃんに予め伝えておくのですよ」

「何かな、葉月ちゃん?」

 アキが背を屈めながら葉月の顔をジッと見る。

「今日のお出掛けは保護者同伴でのデートの予行演習なのです」

「保護者同伴でのデートの予行演習?」

 何でかしら?

 額からとても嫌な汗が流れてきた。

「葉月とバカなお兄ちゃんが交際を重ねれば次の段階は家族への紹介なのです。そうしたら葉月のパパとママはバカなお兄ちゃんの人となりに鋭くチェックするに違いないのです。だからバカなお兄ちゃんは葉月とのデートを楽しみつつ親代わりのお姉ちゃんに粗相のないように接するのが今日のお出掛けの目標なのです」

「おおっ、なるほど。葉月ちゃんは小学生なのにとても難しいことを考えているんだね」

「そこは納得する所じゃないでしょうがっ!」

 アキに大声でツッコミを入れる。

「大体アキと葉月が交際を重ねて家族に紹介って何よ? ウチはそんなの絶対に認めないからね!」

 葉月がアキとデートだなんて、姉としても女としても認められない。

 葉月はまだ小学生なのだし、相手がアキだなんて絶対に認められないっての。

「あはは。お姉さんに怒られちゃったね」

 爽やかに笑ってみせるアキ。

 葉月とデート云々を本気にする気はないみたいでちょっとだけ安心する。

「そこで引き下がってはダメなのです、バカなお兄ちゃん!」

 けど、それで大人しく引き下がるような葉月じゃなかった。

 天真爛漫にして、その奥に秘めている権謀術策は坂本以上なんじゃないかとさえ思うことがある妹が引く筈はなかった。

「恋人の家族に少し交際を反対されたぐらいで引き下がっているようでは結婚なんか一生できないのです。ここで戦わなければ寂しい老後が待っているのですよ!」

「おおっ、それは大問題だっ!」

 アキの頭じゃ葉月の相手になる筈がなかった。

「さあ、バカなお兄ちゃん。葉月とバカなお兄ちゃんの結婚を前提にしたお付き合いを認めてもらうようにお姉ちゃんに訴えるのです。そうでなきゃ孤独死が待っているのです!」

「それは嫌だっ! よし、頑張ってみるぞ」

 葉月の口車にすっかり乗せられたアキがウチに近付いて来る。

 アキらしいと言えばそれまでだけど、改めてバカだなと思う。

 まあ、そんな所も魅力だったりするのだけど。

「美波っ! 大事な話があるんだ」

「何よ?」

 不機嫌オーラを隠さずにアキの顔をジッと見る。

 こうするとアキは途端に弱気になる。

「あの、えっと、だから……」

 案の定、アキはしどろもどろと要領の得ない喋りを始めた。

「バカなお兄ちゃん、しっかりするのです! バカなお兄ちゃんの老後の安泰は今、この瞬間に掛かっているのですよ」

「う、うん……」

 葉月はアキをけしかける。

 けれど、アキはまごついている。

 

「甘いわね、葉月」

 やはり葉月はまだ小学生。

 アキとの接し方がまだ掴み切れていない。

 ここでアキに掛けるべき言葉は応援なんかじゃない。

 それをウチは今から証明してみせるっ!

「アキったら、そんな小さい子と遊んでいないでウチと大人のお付き合いをしましょうよ」

 妖艶な笑みを浮かべながらアキの左腕を掴む。

 そして胸元に手繰り寄せながらウチの両手でギュッと挟んだ。

「み、美波っ!?」

 アキったら目を白黒させながら焦っちゃって可愛いんだから。

 ウチのことも一応ちゃんと女の子として見てくれているようで安心する。

 でも、本番はこれから。

「そんな子供と付き合っていないでウチと大人のデートをしましょう♪」

 玲さんを見て学んだ大人の女スマイルを保つように注意しながらアキに流し目を送る。

「いっ、一体どうしちゃったのさ、美波っ!?」

 アキは普段とは異なるウチの態度に焦っているようだった。

「こっ、これは、ギャルゲーによくある危険パターンなのです。ヒロインの最大のライバルはヒロインの妖艶な姉。年上お色気パワーで主人公を圧倒し、隙あれば本気で盗ってしまうという清純派ヒロインの最大の敵なのです。清純派葉月の大ピンチなのです!」

 アキの影響で最近はゲームをよくやるようになった葉月は何だかよくわからない解説を述べながら焦っている。

 でも、ここで手は緩めない。

「姉属性を身に付けるなんて、いつの間にかできるようになったのですよ、お姉ちゃん」

「ウチだって、いつまでも葉月に後れを取っているつもりはないんだからね」

 葉月と視線を合わせながら密かに火花を散らす。

「あ、あのさ、2人とも。腕を左右から引っ張られると痛いなあなんて思っちゃったりするんだよね。それに、何だか人の視線も痛いしさ。その、一度放してもらうってのは?」

「ダメっ!」

「ダメなのですっ!」

 葉月と声を合わせてアキの提案を却下する。

 ここで腕を放したらウチは葉月に負けを認めてしまうことになる。

 妹は可愛い。

 でも、それでも譲れないことはある。

 アキだけは絶対に、誰にも譲れない。

「さあ、アキっ! このまま出掛けるわよ!」

「そうなのです。バカなお兄ちゃん。3人でお出掛けレッツゴーなのです♪」

 アキと腕を組んだまま歩き始める。

「嫌ぁああああぁ! 僕、完全に引きずられているよぉおおおおぉっ!」

 ずるずると地面を引きずる音を奏でながらアキが何か言っている。けれど、そんなものは無視する。

 だって今、ウチは念願だったアキと腕を組んでお出掛けしているのだから。

「まるで僕、捕らえられた宇宙人みたいな扱いになってるよぉおおおぉっ!」

「女の子2人、しかも美少女姉妹に腕を組んでもらっているのだから文句言わないの!」

「バカなお兄ちゃんはこれ以上ないぐらいの幸せ者なのです♪」

 アキを引っ張りながら葉月と顔を合わせる。

「ウチ、負けないからね。妹が恋のライバルだって全力で行くから」

「葉月はお姉ちゃんが手強くなってくれて嬉しいのですよ。ライバルは手強ければ手強いほど良い。それが葉月の覇王道なのです♪」

 フッと2人で唇の端を微かに歪めて笑い合う。

「あの、2人とも一体何を言って?」

 ウチらの話を理解していないおバカさんが1人。

「今日のお出掛けを通じて、ウチらが何の話をしているのかアキにもきちんとわからせてあげるんだから」

「バカなお兄ちゃんにも葉月たちの熱い想いをいっぱいいっぱい届けるのです」

 アキは鈍い。

 だから、その鈍い人に精一杯の想いをぶつけてみようと思う。

 それが、今日のお出掛け。

 葉月とアキの3人でのみ味わえる心高鳴る瞬間。

「さあ、アキ。今日のデートではウチたちをどこにエスコートしてくれるのかしら?」

「へっ? デートって? エスコートって何? 今日のお出掛けってもっと気楽なものじゃなかったの?」

 アキが間抜けな声を出す。

「年頃の男女が一緒にお出掛けするんだからこれはデートに決まっているでしょ」

「バカなお兄ちゃんは葉月とお姉ちゃんとダブルデートの真っ最中なのです」

「えっ? これ、3人でお出掛けだったよね? どうしてダブルデートになってるのぉおおおおぉっ!?」

 アキを真ん中にして腕を組みながら葉月と一緒に歩く。

 今日はとても良い1日になりそうな気がした。

 

 了

 

 

 

 

説明
以前書いて放置していた作品です。3期はやらないだろうしなあ。取っておいても
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コメント
tkさまへ きっと明久くんはこの後FFF団かピンク髪の人に捕まって遠い世界に旅立ったことと思います。合掌(枡久野恭(ますくのきょー))
明久君。ダブルデートとは男女二組がいて成立するのであって、君の状況は単なる二股なのだ。つまり爆発しろ。あ、美波さんが幸せそうなのは良い事だと思います。(tk)
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