恋姫外史アナザー・とりあえず一刀最終話
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武道大会は終了した。

 

蓮華は意識を失くしたまま、思春に抱えられて試合場を去った。

 

立ち去る時、観客たちから多大な拍手を受けて。

 

優勝した季衣と流琉は、試合直後は微妙な顔をしていたが、

 

「納得いかないんだったら、次はいくようにすりゃあいい。今は結果だけ素直に喜んでおけよ」

 

一刀が二人の頭を撫でながらそう言い、いくらか困惑していた二人だったが、表彰式の時には素直に喜びの表情を浮かべていた。

 

そして、それから一週間後・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

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「「「「カンパーイ!!」」」」

 

杯をぶつけあう音が次々と響く。

 

今日は各国の将そろい踏みで、武道大会の打ち上げを行っていた。

 

本当はその日に行うのが良かったのだろうが、蓮華などの少々重めの怪我人が出たため、数日伸ばす事と相成ったのであった。

 

「はぐはぐはぐ!」

 

「もぎゅもぎゅもぎゅ!」

 

「がつがつがつ!」

 

「はむはむ・・・」

 

大食いの少女たち(恋含む)は一心不乱にごちそうを喰らっていた。

 

「はは・・・凄え・・・」

 

一刀は苦笑いを浮かべながら、山のように積まれたごちそうがあっという間に減っていく様子を見ていた。

 

昨日まで一刀は、たびたび例の発作に悩まされていた。

 

回数も増えており、昨日は五回も発症していた。

 

周りの人間は心配していたが、一刀は風邪だと言い張って、寝台に横になっただけだった。

 

しかし、今日は一度も発症していない。

 

嘘のように落ち着いていた。

 

そして、一刀は勘付いていた。

 

これは嵐の前の静けさ。

 

今日が、最後だと・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

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「一刀〜〜、飲んでる〜〜〜?」

 

酒の入った杯を片手に話しかけてくる雪蓮。

 

「ん〜〜、ぼちぼち」

 

「何よそれ〜〜。こういう席ではどんどん飲まないと〜〜〜」

 

立ち上がり、一刀に文字通り絡んでくる雪蓮。

 

酒臭い息と、柔らかな感触が一刀に伝わる。

 

「お姉ちゃん!一刀はアタシの!」

 

すぐ側で飲んでいたシャオがガバッと立ち上がり、一刀の左腕を引っ張る。

 

「何よ〜〜。少しくらい良いじゃな〜〜い」

 

引き剥がされそうのなった雪蓮は、右腕を取って引っ張った。

 

「駄目!」

 

ぐいぐいと左右から引っ張られる一刀。

 

「いでででで!は、離せ〜〜〜!!」

 

大岡裁きの体勢となってしまった一刀。

 

しかし、哀しいことにどちらも離すどころかさらに力を込めて腕を引いてきた。

 

「はっはっは、これはいい」

 

「うむ、良い酒の肴じゃのう」

 

星と祭が酒を飲みながら笑っている。

 

「どちらが勝つか賭けますか?」

 

「乗った。ワシは小蓮様に」

 

「私は雪蓮さんかしら?」

 

「ウチも賭けるで〜〜〜」

 

祭、紫苑、霞と次々と賭けに乗っていく。

 

「誰か助けろ〜〜〜!!」

 

一刀は痛みに耐えながら、そう叫んだのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

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「いてて・・・酷い目にあったぜ」

 

何とかあの場から抜け出した一刀。

 

「あれ〜〜?一刀さん〜〜?」

 

声のした方に目を向けると、そこには桃香が、

 

・・・華琳に絡みながら飲んでいた。

 

「ちょっと桃香!放しなさい!」

 

「えへへ〜〜、華琳さんって肌すべすべですね〜〜」

 

「ひゃん!?ど、何処を触っているの!」

 

身体をまさぐられ続ける華琳。

 

「うわあ・・・・・・」

 

日常では考えられない攻守逆転の図に、思わず声が漏れる一刀。

 

ここまで酒乱とは知らなかった。

 

「何を見ているの!助けなさい一刀!!」

 

「・・・たまには攻められる方の気持ちを知れば?それに、んな事したら今度は俺が絡まれるじゃねえか」

 

「貴方にとっては幸せでしょうに!」

 

「そういう時は自分で決める」

 

「私だってそうしたいわよ!!」

 

「じゃ、そういう事で・・・・・・」

 

「か、一刀〜〜〜!!」

 

華琳の叫びを背に、一刀はその場から離れた。

 

ちなみに、華琳の危機にすぐかけつける二人は、

 

「くーー・・・・・・」

 

桂花は酔いつぶれて寝ており、

 

「春蘭様、無理は・・・」

 

「凪は心配しすぎや。それ一気!一気!」

 

「んっ、んっ、んっ・・・ぶはーーー!」

 

「良い飲みっぷりなの〜〜〜」

 

「・・・ひっく」

 

春蘭は少し離れた場所で、三羽烏たちに囲まれ一気飲みをしていた。

 

華琳の危機に気付かないほど酔って・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

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「お?一刀じゃないか」

 

「おう。ちょっと失礼するぜ」

 

白蓮にそう言って、すぐ横に腰を下ろす。

 

「ここはそんなに騒いでないんだな」

 

「ん〜、ここはゆっくり飲みたいやつらの集まりっていうか・・・」

 

白蓮の言葉に一刀が周りを見渡す。

 

白蓮以外に周りにいるのは秋蘭、月、詠、風、朱里、雛里。

 

確かに大騒ぎする面子では無かった。

 

「そりゃいいや。おれも少し静かに飲みたかったんだ」

 

そう言って酒ビンに手を伸ばそうとすると、

 

「あ、私が注ぎましょうか?」

 

月がそんな事を言った。

 

「お?いいのか?だったら頼むわ」

 

「はい」

 

トクトクと杯に酒が注がれる。

 

「月に感謝しなさいよ」

 

詠が口を挟む。

 

「ありがとよ」

 

一刀は礼を言い、ゆっくりと酒を飲み干した。

 

「ふう・・・」

 

一息ついて、杯を置く。

 

「ところで秋蘭。華琳と春蘭放っておいていいのか?」

 

「うむ。まあ、身の危険に陥っているわけではないしな」

 

「いや、華琳はある意味危険だろ」

 

「ふふ、あのように慌てている華琳様など滅多に見られんからな。良い目の保養だ」

 

「・・・・・・さよけ」

 

常識人だと思っていたが、結構タチが悪いな・・・と一刀は思った。

 

「風の相方はどうした?」

 

「稟ちゃんでしたら、お酒を飲んで頭に血が昇った所に、華琳様が襲われている所を目撃して大量に・・・・・・」

 

「あ〜〜、もう分かった。鼻血出して倒れたんだな」

 

「いつもの三倍は出てましたかね?」

 

「それ致死量じゃね!?」

 

「大丈夫ですよ。稟ちゃんはこれくらいで死んだりしませんから」

 

「・・・・・・」

 

アイツは本当に人間か?

 

一刀は疑問に思わざるを得なかった・・・・・・

 

 

 

 

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その後も宴会は続いた。

 

「おーっほっほっほ!」

 

「七乃〜〜・・・」

 

酔ってご機嫌の麗羽に捕まった美羽が、半泣きで七乃に助けを呼ぶ。

 

「お嬢様可愛い・・・」

 

その美羽の姿をうっとりした顔で眺める七乃。

 

「くっ!血が足りない!このままでは・・・」

 

会場の隅では、華佗が貂蝉、卑弥呼と共に瀕死の状態の稟を必死で治療している。

 

「ならば応急処置としてワシらが気を送り込もう!」

 

「そうねん。まずは身体を密着させて・・・」

 

やめてあげて!稟のライフは零よ!!と叫んでくれる人は残念ながらいなかった。

 

・・・本当に死ぬかもしれなかった。

 

「・・・ヒック」

 

「れ、蓮華様。その辺で・・・」

 

優勝を目前にして耐え切れなかったのがよっぽど悔しかったのだろうか?

 

いつにも増して、蓮華は飲んでいた。

 

「暑いわね・・・」

 

そう言いながら服に手をかける蓮華。

 

「れ、蓮華様!」

 

慌てて思春が止めに入った。

 

「だ〜って!暑いんだもの〜〜」

 

「蓮華様、お気を確かに!!」

 

「・・・思春」

 

「は、はい?」

 

じーっと思春の顔を見る蓮華。

 

「・・・ゴメンね〜〜」

 

じわっと蓮華の目に涙が浮かぶ。

 

「れ、蓮華様!?」

 

「私のせいで負けたのよね〜〜。ごめ・・・グス・・・うええ〜〜ん」

 

今度は泣き始めてしまった。

 

思春もどうすればいいか分からず、おろおろするだけであった。

 

「・・・くく」

 

周りの騒ぎを見ながら、つい笑いが漏れる一刀。

 

「一刀?」

 

白蓮の言葉に一刀は笑みを浮かべたまま、

 

「・・・楽しいよなあ」

 

「・・・ああ」

 

「いつまでもやっていたいぜ。終わらせるのがもったいねえ」

 

「またやればいいじゃないか。いくらでも理由は作れるだろ?」

 

「・・・そうだな」

 

それだけ言って、一刀は酒を煽った・・・・・・

 

 

 

 

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「ちょっと小便」

 

「早く行ってこいよ」

 

一刀は席を立ち、会場の出口へ向かった。

 

その途中、

 

「あれ?一刀何処行くの?」

 

「もうすぐちぃ達の舞台なのに・・・」

 

三姉妹と出くわした。

 

「・・・お花摘み」

 

「もう!早く行って来なさいよ!」

 

「へえへえ」

 

地和の怒声を背に、一刀はすたこらと走って行った。

 

「まったくもう!天和姉さん、人和。さっさと準備すませちゃいましょ!」

 

そう言って会場へ入っていく地和。

 

「「・・・・・・」」

 

しかし、天和と人和は行こうとせず、一刀の去った方向を見つめていた。

 

先程の一刀の後ろ姿を思い出すと、何故か胸騒ぎがした。

 

そのまま、何処かへ行ってしまいそうな・・・・・・

 

「・・・行きましょうか」

 

「・・・うん」

 

気のせいだと自分を納得させ、二人は宴会場へ入っていった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一刀はそのまま城を出た。

 

歩いて、歩いて、

 

着いた先は、いつもの釣り場。

 

そこに

 

「遅かったな」

 

河原で酒を飲む華雄の姿があった。

 

「・・・何でここに?」

 

「何となく、ここにお前が来そうな気がしてな」

 

そういえば、華雄は宴会場では見かけなかった。

 

「座らないか?」

 

「・・・ああ」

 

そう言って、一刀は華雄と背中合わせに座った。

 

「「・・・・・・」」

 

二人は無言だった。

 

互いに背中ごしに、相手の体温を感じるだけ。

 

どれくらいそのままでいただろう。

 

ふと、華雄が口を開いた。

 

「・・・今日なのか?」

 

一刀は少しだけ驚いて、

 

「多分な。知ってたのか?」

 

「大会の時、廊下の角を曲がろうとした時にお前たちの声が聞こえて、偶然な」

 

「・・・そうか」

 

「詳しい内容はさっぱりだったが、お前がいなくなる、と言う事だけは分かったよ」

 

「・・・ああ」

 

背中合わせなのでお互いの顔は見えない。

 

「随分あっさり受け入れていたようだが、悔いはないのか?」

 

「あるに決まってんだろうが」

 

一刀は即答した。

 

「だろうな。正直お前らしくないと思ったよ。では何故?」

 

「決まってんだろ?」

 

一刀は一度深呼吸して、言った。

 

「また戻ってくるからだ」

 

「ほう、そんな方法があるのか?」

 

「知らん。でも戻ってくる」

 

「・・・・・・」

 

「例え次に目覚めたのが死後の世界でも、どんな事してでも戻ってきてやる。んで、もう一度お前たちと生きるんだ」

 

「・・・そうか」

 

「ああ」

 

一刀の声には確かな意志があった。

 

「では、少しの別れだな」

 

「おう。ちいと時間かかるかもしれねえけど、待っててくれるか?」

 

「・・・無論だ」

 

華雄の背中ごしに感じる重みが、少し軽くなったように感じた。

 

一刀はふと、自分の手を見る。

 

・・・うっすらと透けていた。

 

「ふう・・・」

 

一刀は一度ため息をつくと、歌い始めた。

 

ひと時の別れの曲を・・・・・・

 

 

 

 

 

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眩く輝くひと時みんなと一緒だった

 

 

かけがいのない時と知らずに私は過ごしていた

 

 

今はただ大切に偲ぶよう

 

 

I fill unblessed feeling

 

 

君はね確かにあの時私のそばにいた

 

 

いつだっていつだっていつだってすぐ横で笑っていた

 

 

失くしても取り戻す君を

 

 

I've never leave you・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

その歌が終わったとき、華雄の背中の感触は消えた。

 

 

 

 

重みも、暖かさも。

 

 

 

 

「・・・待っているぞ、いつまでも・・・」

 

 

 

 

華雄は空を見上げて言った。

 

 

 

 

その目から

 

 

 

 

一筋の涙を零して・・・・・・

 

 

 

 

 

恋姫外史アナザー

 

 

 

 

とりあえず一刀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-10ページ-

どうも、アキナスです。

 

色々考えて結局消失エンド。そして今回でアナザーは終了です。

 

更新速度がまばらになる中、長い間おつきあいありがとうございました。

 

思えば、無茶なイベントの連続でしたね。

 

しかし、一度当初の作品から見てみたけれど・・・成長してね〜〜〜。

 

百回超えてるのにこの始末。

 

・・・まあ、思いつきでやってる訳ですから成長のしようがないんですがね。

 

さて、これからの予定ですが・・・どうしよう。

 

やってみたいと思ってるのはあるんですが、まだ明確には決めてないので・・・

 

次の更新待ちと言う事でここは一つ・・・

 

それでは、とりあえず一刀最後の・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロスファイヤーハリケーン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
祭りは始まり、そして終わる・・・・・・
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6944 5511 57
コメント
最後のキミの記憶は反則だよ(泣)(teati)
シリアスが行方不明(ボブ)
ファイズさん:むむ、問題はどうやって戻ってくるか・・・(アキナス)
後日談を書くならちゃんと戻ってきたというオチもお願いします(ファイズ)
瓜月さん:どうもありがとうございます。さて、次の外史はどんな事になるやら・・・・・・(アキナス)
転生はりまえ$さん:最後まで読んでいただきありがとうございました。後日談ですか、それもいいかも・・・・・・(アキナス)
お疲れですこのあとも後日談的なものがあるのでしょうか?あればいいなぁ、ついでにこの技の元ネタはJOJO?ならばSPがあってもいいはず!!(黄昏☆ハリマエ)
jonmanjirouhyouryukiさん:どうもありがとうございます。一回しか出せなかったのは惜しい気もしますがね・・・(アキナス)
readmanさん:最後までお付き合いいただきありがとうございます。また別の外史でお会いできたらいいなあ・・・(アキナス)
cupholeさん:消失と言う単語で、ヴァニラアイスに消されたアヴドゥルが思い出されたからです(笑)(アキナス)
sugaさん:ここまで読んでいただきありがとうございました。必殺技へのコメはこっちとしても嬉しいんで、どんどんしてください。(アキナス)
連載お疲れ様でした。 最後まで一刀らしくて格好良かったです。(readman )
なんで最後がアヴドゥルなんだよwww(cuphole)
最終回おつかれさまでした、大変面白いシリーズが終わってしまうのは少し寂しいです・・・私が始めてコメントを書いた作品でしたが、作品自体よりも最後の「」の必殺技に反応したコメントが多かった気が・・・すいません  では次回作をお待ちしています、お疲れ様でした(suga)
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