真・恋姫†夢想 呉√外史 一輪の蓮は天より来りし刀と翔ぶ 第6席
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真・恋姫†無想 呉√外史 一輪の蓮は天より来りし刀と翔ぶ

 第6席 一刀、孫権と会うのこと。

 

 

 

 

 

 

 

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−孫権side−

 

   「・・・・ま、・・さま。蓮華さま・・・黙り込んでおられましたがどうかなされましたか?」

   思春に声を掛けられて私は考えごとに集中し過ぎたことに気づいた。

孫権 「ごめんなさい。冥琳からの召集状のことを考えていたの。」

   私達は兵達を連れて曲阿から姉様達の居る建業に向かっている途中

   数日前、冥琳から召集状が届いて慌てて出立した

   正直、召集状より驚いた腑に落ちない報告があった。

   『天の御遣いが孫呉に舞い降りた』

   だった。

   母様が生還されたと聞いた時はすぐにでも建業に行こうとけれど、思春や亞莎に止められた。

   今回の報告は母様が生還した時には知らされていない内容が召集状と一緒に来たみたい

   そしてもう一つ。

   気になる言葉があったわね・・・

   『彼は孫呉の婿になる者でもある』

   と言うことは私たち三姉妹の誰かの伴侶になること。

   普通なら姉様なのだけれど、そうなるのならわざわざ報告したりしないはず。

   孫家の一員として夫は母様が決めると思っていたし、当然だと思っているから不満は無い。

 

   不満はないけれど、母様や冥琳、姉様まで認める男に興味がないとは言えないわ。

   どんな男なのか少し気になるわね

 

甘寧 「蓮華様。もうすぐ建業が見えてきます」

   母様が死んだと聞いて悲しんだのも、母様が亡くなって弱った私たちが袁術に頼って

   各地に飛ばされたのもつい最近のことなのに・・・・

   こんなに早く集まれるなんて。

孫権 「わかったわ、兵達に建業で狼藉を働いたものには罰を与える。そう伝えておきなさい」

   孫家の評判を落とすような行為をする者は断じて許さない

甘寧 「御意」

   思春に伝令を任せ、少し後ろで呆気に取られている少女の傍に行った。

   亞莎は初めて見るものね・・・・

孫権 「どう?私たちの『家』を間近で見た感想は」

   私は亞莎の緊張を解すように話しかける

呂蒙 「わ、私などがこのような所に居てよろしいのですか?」

   本人は『わ、私には知の欠片すらありません!!』と言っていたのだけれど

   文官の仕事を教えてみると恐ろしい速さで吸収して行ったのには驚かされた。

   そろそろ城門ね・・・・

   私は気持を切り換えて兵に向かって声を上げる    

 

   「孫家の誇りを胸に抱き、建業だからと気を緩めずに堂々と入場する・・・心せよ!!よいか!!」

 

   「「「「おおぉ!!!!」」」」

 

   その後、私たちは城門を抜けて母様達の待つ城へと向かった。

 

 

 

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−一刀side−

 

 

   袁術に面倒なことを押しつけられて数日。

   俺は将になった。兼任で軍師になったものの兵を持つことにはいなっていない。

   俺の勝手な推測だけど、暫くは隠密として動くことになるからだろう。

   以前俺の過去を話したからなんだけど、隠密って苦手なんだよなぁ・・・・

   (いつも撤収時の囮にさせられてたからなぁ・・・・)

 

   今は皆に招集がかかって王の間に来ている。

   入って目に入ったのは見知らぬ顔ぶれだ

   王の間に入ったのは俺が最後らしく見知らぬ者たちの視線が俺に向けられてきまづかった。

   俺、遅かったのかな?

   見知らぬ者達からの視線が今も刺さり続けてるわけなんだけど。

 

雪蓮 「皆揃ったわね。なら冥琳?早く進めてくれるかしら〜」

   相変わらずの丸投げだな。ここの王様は・・・・

冥琳 「・・・はぁ。皆と顔を合わせるのも久しぶりなのだからもう少しちゃんとしてくれぬか?」

   その気持ちよくわかるよ。・・・冥琳

   さて、冥琳の心配より面子の確認だな。

 

冥琳 「皆、良くぞ集まってくれた。これで我ら孫家は独立への大きな一歩を踏み出すことになる。

   我等が孫呉の宿願を果さんが為にその力を振るってくれる事を願う」

 

   ここに居る面子の配置と顔ぶれだ

   玉座:孫伯符こと雪蓮、その右に周公謹こと冥琳、

   下段右に降りて上座から順に、孫文台こと翔蓮さん、黄公覆こと祭さん、陸伯言こと穏、周幼平こと明命、そして俺だ。

   下段左、同じく上座から多分・・・と言うかほぼ確実に孫仲謀、・・・・もの凄い睨みでくるのは恐らく甘興覇、

   片眼鏡に長い袖でミニスカ・・・誰だ?わからん・・・

   ただその娘(こ)は何故か顔を必死に隠していた。

雪蓮 「さてと・・・・堅苦しいのはここまで!久しぶりに会ったんだし、飲みま『(冥琳)まだしなければならん事があるはずだが?』し・・・・・冥琳の意地悪」

   いや、毎度のことだけど冥琳の方が正しいだろ?

   いい加減学習しろよ王様。

   毎度のことだけど早く酒を飲みたいだけなんだと思う。

冥琳 「皆もお待ちかねのようだな。翔蓮殿」

   ま、そうなるよな?

   死んだと思っていた人物が生還したんだ。挨拶くらいあるだろう

翔蓮 「冥琳の伝令と一緒に報告したはずだし面倒だから前置きは無しね?皆ただいま〜・・・我が天命此処にあり。よ♪」

   ・・・・あんたもかい!

   ついつい関西弁が出てしまうが仕方ないだろう

   今の王様とそっくりで虎の威厳が全く感じられないからな

   周囲からは少しばかり歓声も上がったけど。

 

冥琳 「・・・・さて、堅苦しいのは終わりにして『(雪蓮)さぁ!みんなで酒盛りしましょ〜!』・・・するわけがないだろう!」

   冥琳が言おうとした時だ雪蓮が痺れ切らせて言ってしまった

   多分、素人が見ても冥琳の怒りの内容がわかると思う

雪蓮 「ぶぅ〜・・・・・まだなにかあるの?」

   さっき、雪蓮が『酒盛りをする』なんて言いださなければ早く終わってたのに・・・

   多分冥琳の言葉の続きは俺の紹介だろう

   言い放つときにこっちを見てたからな。

冥琳 「北郷を皆に知ってもらわねばならんな。その逆もだ。」

   ほら来た。

雪蓮 「・・・一番肝心なことを忘れてたわ」

   忘れるなよ・・・

冥琳 「まずは北郷。ここに来い」

   冥琳とは反対の玉座右手、つまりは雪蓮の左だ。

   ここに立って見る風景は一味違うな・・・

冥琳 「ある程度は分かっていると思うが改めて紹介しよう。翔蓮殿を連れ帰ってくれた者だ、『天の御遣い』とも呼ばれている。」

   冥琳が俺に名乗れと目で告げてくる

   当然俺は俺にできる最敬礼を取り名乗った。

一刀 「俺は姓を北郷、名を一刀、字と真名を持たない世界から来た。以後お見知りおき下さい。」

   俺の挨拶のあと真っ先に孫仲謀だと思う女の子が名乗った。

 

   「姓は孫、名は権、字を仲謀と言う。母様を連れ帰ってくれたこと感謝する」

 

   予想通りだな

   ただ一つ言えるのは、翔蓮さんや雪蓮と違って真面目そうな娘だということ。

   目が合うとすぐに逸らされた。自分で言うのも悲しいけど俺、十分怪しい人ですからね・・・グスン

   

   「次は私か・・・姓は甘、名は寧、字を興覇という。孫堅様を連れ帰っていただいたこと、心から感謝申し上げる。」

 

   こっちも予想は的中。

   その睨みがとても怖いです・・・・ハイ。

   背中がゾッとする感じの殺気も少し混じっている気がする

 

   「・・・せせ姓は呂、名を蒙、あ字は子明と言います。御遣い様!!お目にかかれて光栄です!」

 

   こんな娘があの呂子明だと?

   片眼鏡に長い袖が特徴だな・・・あとはミニスカなのか?あれ。

 

一刀 「孫権、甘寧、呂蒙、よろしく。冥琳が言うような俺は大層な人間じゃないしこの国の事もまだ詳しく知らない。

    でも皆の、孫呉の力になれたらと思ってるのは事実だ。改めてよろしく」

   そういって俺は頭を下げた。

冥琳 「そう謙遜することはない。磨けば光るものをお前は持っているのだからな。」

祭  「そこがお主の悪いところじゃ。儂を打ち負かす程の武を持っている者のどこが大層でないのじゃ?」

   祭さんと冥琳からフォローが入る。

孫権 「今の話は本当なの?姉様、冥琳」

   何も知らない皆は驚くだろう。

   素人や新人に宿将が負けることは滅多にないからな。

   でも俺は祭さんの言葉を否定しなくちゃいけない

一刀 「祭さんを『打ち負かせた』ってのは本当は違うよ・・・・次に戦えば間違いなく負けるから」

   俺の戦い方の本意を知っている人はここに居るはずがない。

   翔蓮さんなら勘付いてるかもしれないけど・・・

   「「「それはどういう意味(じゃ)(なの)?」」」

   皆が同時に疑問を口にする。

   言葉より実際に見てもらうか・・・

一刀 「百聞は一見に如かずだね。孫権と甘寧、悪いれど少し手合わせ願えるか?」

   俺の戦い方を知らない二人なら大丈夫だろう。

   実力は恐らく甘寧が上・・・か

   先に甘寧と手合わせすることになるな

孫権 「構わないわ」

   孫権は即答してくれた

   甘寧は少し考えているようだ

甘寧 「・・・実力を見定めるには丁度いい機会かも知れん。いいだろう。どちらが先だ?」

   実力を測られてもですね・・・

   御三方以外もう知っているのですが?

一刀 「突然の頼みを聞き入れてくれて感謝する。先に甘寧で頼む・・・・・誰か弓と矢を。鏃は潰しておいてくれ」

   突然の申し入れを素直に聞いてくれたことは有難かった。

   俺の戦術は一度しか通用しない事が証明できる。

甘寧 「私が先か。・・・理由を問いたいのだが構わんか?」

孫権 「・・・私も聞いておきたいのだけれど」

   順番に意味があるのか気になるのは仕方がない

一刀 「・・・二人に聞くけど、実際の実力が上なのはどっちだ?」

   これでわかってくれるとありがたいんだけど。

   冥琳、穏、呂蒙は順序の意味を理解できたみたいだな

甘寧 「そういうことか。なら文句は言えまい」

   理解が早いね〜と関心してると孫権は首を傾げて難しい顔をしていた。

孫権 「・・・・今一理解ができないわ。実力は思春の方が上だけど・・・」

   説明してあげて欲しいと軍師二人にアイコンタクトを送る。

兵  「弓矢をお持ちしました!」

   弓矢が届いた事だし、中庭あたりが無難な場所かな?

   孫権には冥琳が説明してくれるみたいだし、俺は弓の癖を見ますか

一刀 「早く雪蓮が酒盛りしたいみたいだし、早く始めよう。中庭で構わないか?」

   雪蓮の都合はこんな時に便利だな。

孫権 「私は構わない」

甘寧 「中庭か・・・・いいだろう」

   訓練場とかだと遠いだろうし

一刀 「じゃあ、冥琳に立ち会って貰いたいんだけどお願いできる?」

   雪蓮と翔蓮さんは先にお酒を盛ってもらおう。

   試合中に野次が飛んできても困るし

雪蓮 「じゃ先に飲んでるわね♪」

   言うと思った・・・・

   孫権や冥琳が呆れてる・・・わかるよその気持ち

冥琳 「言われなくともそのつもりさ。では蓮華さま、思春、北郷中庭に移動しようか」

   そのままお酒馬鹿を放置して俺達は王の間を出た。

 

 

 

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−甘寧side−

 

黄蓋 「そこがお主の悪いところじゃ。儂を打ち負かす程の武を持っている者のどこが大層でないのじゃ?」

   黄蓋様を打ち負かしただと?!

   こんな男が・・・・

孫権 「今の話は本当なの?姉様、冥琳」

   蓮華さまも気になるらしい

   私としては実際に見せてもらいたいところだが

北郷 「祭さんを『打ち負かせた』ってのは本当は違うよ・・・・次に戦えば間違いなく負けるから」

   次に戦えば負ける?

   一度しか戦えないということか?

   「「「それはどういう意味(じゃ)(なの)?」」」

   皆が同時に疑問を口にしていた

   私も今一理解しかねるな   

北郷 「百聞は一見に如かずだね。孫権と甘寧、悪いれど少し手合わせ願えるか?」

   己が身で実証しようというわけか

   私の返答は蓮華さま次第だな

孫権 「構わないわ」

   蓮華さまは即答していた

   蓮華さまが受けるなら私も受けるに決まっている

甘寧 「・・・実力を見定めるには丁度いい機会かも知れん。いいだろう。どちらが先だ?」

   そのついでに黄蓋様を打ち負かした実力を見定めてやる

北郷 「突然の頼みを聞き入れてくれて感謝する。先に甘寧で頼む・・・・・誰か弓と矢を。鏃は潰しておいてくれ」

   礼儀は重んじるようだな

   弓を扱うのか。

   黄蓋殿を上回る技量を持っているとは到底思えんのだが

甘寧 「私が先か。・・・理由を問いたいのだが構わんか?」

孫権 「・・・私も聞いておきたいのだけれど」

   この手合わせにどんな意味があるのかだ。

   もし一度見せた相手には通用しないのなら、私より少しばかり実力の劣る蓮華さまに負ける可能性があるのだろう

北郷 「・・・二人に聞くけど、実際の実力が上なのはどっちだ?」

   この一言でわかってしまった

   この男は一度戦った相手には勝つ術を持ち合わせていないのだろう

甘寧 「そういうことか。なら文句は言えまい」

   理解できたことを裏腹に伝える

孫権 「・・・・今一理解ができないわ。実力は思春の方が上だけど・・・」

   蓮華さまはまだお解りになってないようだな・・・

   周喩様が説明してくれるみたいだな

兵  「弓矢をお持ちしました!」

   獲物も届いたようだし早く始めようではないか

北郷 「早く雪蓮が酒盛りしたいみたいだし、早く始めよう。中庭で構わないか?」

   孫策様の都合を引っ張り出すとは・・・

孫権 「私は構わない」

甘寧 「中庭か・・・・いいだろう」

   この際どこでも構わないのだ

   早く実力を見たい。ただそれだけで

北郷 「じゃあ、冥琳に立ち会って貰いたいんだけどお願いできる?」

   周喩様が立会なら文句はないな

孫策 「じゃ先に飲んでるわね♪」

   正直あの方なら言うと思った・・・・

周喩 「言われなくともそのつもりさ。では蓮華さま、思春、北郷中庭に移動しようか」

   そのまま私たちは王の間を出た。

 

 

   所変わって中庭。

 

周喩 「北郷の矢数は30、甘寧の刃は刃引きしてある。制限時間は最大四半刻(約30分)だ。双方用意はよいか?」

   こちらは模造刀、向こうは鏃を潰した矢で数に制限ありか。

   私にとって有利なのは矢数が30しかないことだ。

   制限時間内に終わらせてやろう

甘寧 「私はいつでも構わない」

   北郷はいつになれば構えるのだ?

   獲物を全く構えていないのに

北郷 「俺もいつでもいいぞ?」

   なんだと?!

   そんな構えで戦えるのか?

 

周喩 「では・・・仕合――――」

   構えてもいなければ矢さえ番えずに

周喩 「―――はじめ!!」

 

   合図と同時に突っ込んだ。

   番えてから放つまでの隙が弓の最大の弱点だからだ

   私は先手を取った・・・・筈だった

   筈だったのに3歩目を踏み出した瞬間、左の脛と右の手首に向けて矢が飛んできていた。

   前進することを前提に3歩目を蹴りだしたために当然避けれない

甘寧 「ぐっ?!・・・」

   北郷を見ればすでに弓が引かれて・・・・

   そう思った時には既に矢が数本飛来している。

孫権 「なんという番えの速さ・・・・」

   初めて見る者はそう思うだろう。

   蓮華さまの呟く瞬間、何故二度目がないかわかった

甘寧 「・・・もう戦う必要はないのだろう?」

   攻めることを止め、北郷に問う。

   矢で翻弄されているが攻めなければ避けれる速さだ

   放つのを止めるまで避け続ける

北郷 「ある程度分かってもらえた?」

   北郷は番えるのを止め、こちらに寄ってくる。

   おそらくこいつの武は相手を倒すのではなく『自分が逃げるための時間稼ぎ』だろう。

甘寧 「・・・北郷。隠密の経験でもあるのか?」

   そんな戦い方をする者はだいたいそうなるのだ。

   相手の足を傷めつけ失速させ、自分はそのまま撤収する

   無駄な時間を取りたくない者が身につける部だ。

北郷 「やっぱりわかったか。冥琳達にはもう話したんだけどね」

   やはりそうだったか

   通で足の運びが静かだと思った

   ようやく全てに納得がいった。

甘寧 「蓮華さま、もうお解りのはず。北郷と手合わせする必要はないでしょう」

   一度見せられれば始めから警戒し、足・利き腕への攻撃を防げる。

   が、初めてなら隙だらけと勘違いして突っ込む。そこに漬け込んだ武というわけだ

孫権 「理由は冥琳から聞いたわ。確かにあれを見たあとなら私でも勝てるわね」

   北郷は否定もせずただ弓を張りなおしていた

 

 

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−孫権side−

  

   王の間で北郷と顔を合わせたあと、北郷の戦い方が気になって実証してもらうことになった。

 

冥琳 「北郷の矢数は30、甘寧の刃は刃引きしてある。制限時間は最大四半刻(約30分)だ。双方用意はよいか?」

   冥琳から北郷の弓は兵装のものと聞いた。

   弦を張りなおしてあるからあのような形だとも

   あんな弓で思春に勝てるとでもいうの?

   精々制限時間を耐え抜くのが関の山じゃ・・・

甘寧 「私はいつでも構わない」

   北郷はいつになれば構えるの?

   ただ突っ立っているだけね

北郷 「俺もいつでもいいぞ?」

   な?!

   それが構えだとでもいうの?

 

冥琳 「では・・・仕合はじめ!」

 

   思春が合図と同時に突っ込んでいった

   番えてから放つまでの隙が弓の最大の弱点なのは弓を扱うなら分かっているはず

   思春が先手を取った・・・・ようにみえた

   が、3歩目を踏み出した瞬間、2本の矢が飛んでいた。

   地面を蹴りだした直後の思春は避けれない

甘寧 「ぐっ?!・・・」

   北郷を見ればすでに弓が引かれて・・・・

孫権 「なんという番えの速さ・・・・」

   私はそう思った。

   冥琳は

   『一度見れば恐ろしくはありません。が、初めて見る者はどうでしょう』

   隙だらけと勘違いして突っ込むわね。

   初めてなら私もそうしてたでしょうから・・・と冥琳に返す

   やっと北郷の言っていた意味がわかった

甘寧 「・・・もう戦う必要はないのだろう?」

   思春は攻めを止め、放たれた矢をやり過ごすだけだった

北郷 「ある程度分かってもらえた?」

   北郷も番えるのを止め、こちらに寄ってくる。

   思春が答え合わせをするように聞いた

甘寧 「・・・北郷。隠密の経験でもあるのか?」

   私もそう思わざるを得ないことがあった

   足の運び方、呼吸の静かさなんかがそうだったから

北郷 「やっぱりわかったか。冥琳達にはもう話したんだけどね」

   やはりそうだったのね。

   これで全てに納得がいったわ

甘寧 「蓮華さま、もうお解りのはず。北郷と手合わせする必要はないでしょう」

   一度見せられれば警戒し足や腕への攻撃を防げる。

   初めてなら隙だらけと勘違いして突っ込む。そこを逆手にとる戦い方ね。

孫権 「理由は冥琳から聞いたわ。確かにあれを見たあとなら私でも勝てるわね」

   北郷は特に言い訳をするわけでもないようね

北郷 「今の俺には孫権に勝つことは難しいだろうね。ただ俺の言いたいことがわかってくれればよかっただけだよ」

   北郷の笑顔を見た瞬間、自分の胸が騒ぐのがわかる。

   何?この感覚は・・・

冥琳 「蓮華さま、北郷の言いたいことが理解できたのであれば戻りましょう。早くしないと宴の酒がなくなりそうですから」

   母様に姉様、祭が先に飲んでいるのを忘れてたわ!

   私も飲みたいもの!

孫権 「北郷!思春!早く戻るわよ!冥琳も!」

   

   「御意(はいはい・・・)(わかりました)」

   北郷が何か呟いたように思えたけど、聞き取れなかった

 

   私たちは急いで王の間に戻った

 

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−一刀side−

 

 

甘寧 「・・・北郷。隠密の経験でもあるのか?」

   そりゃバレるか

   さっきからずっと睨まれてたんだし

北郷 「やっぱりわかったか。冥琳達にはもう話したんだけどね」

   二人の表情が納得したものに変わった

甘寧 「蓮華さま、もうお解りのはず。北郷と手合わせする必要はないでしょう」

   甘寧が突っ込んでくる間に冥琳が説明しててくれたみたいだ

孫権 「理由は冥琳から聞いたわ。確かにあれを見たあとなら私でも勝てるわね」

   言い訳するつもりは毛頭ない。

   事実祭さんに勝てたのは偶然も混じっているから

北郷 「今の俺には孫権に勝つことすら難しいだろうね。ただ俺の言いたいことがわかってくれればよかっただけさ」

   自然に笑顔が零れた

   ん?一瞬孫権が赤くなった気がしたけど・・・

   気のせいか

冥琳 「蓮華さま、北郷の言いたいことが理解できたのであれば戻りましょう。早くしないと宴の酒がなくなりそうですから」

   まぁあの大酒豪3人なら足りないかもしれないだろうな。

孫権 「北郷!思春!早く戻らないと飲めなくなるわ!冥琳も!」

   「御意(はいはい・・・)(わかりました)」

   酒の心配とは・・・

   流石翔蓮さんの娘だな。

冥琳 「・・・北郷、先に言っておく。蓮華さまに酒を飲ませるなら量を加減しろ。いいな?」

   孫権が居なくなってすぐ、冥琳がそんなことを言ってきた。

   俺は無言で首を縦に振って後を追った。

 

   

 

   王の間に入ると意外な光景が広がっていた

   「「「・・・・・あれ?」」」

   皆が首を傾げる。

   そりゃそうだ。大酒豪3人が未だに酒瓶を開けてないのだから

一刀 「3人ともまだ飲んでなかったの?」

   3人は真面目な顔でさっきの立ち位置に居た

冥琳 「何か言い忘れたことでもあるの?雪蓮」

   さっきの立ち位置に外していた俺達4人が戻る

雪蓮 「えぇ。言い忘れてたわ」

   何をだ?

   肝心なことを忘れてる気がするんだけど思い出せない

雪蓮 「蓮華。冥琳の召集状と一緒に報告があったと思うけど、あれは簡単に要約したもの。今から言うのがあれの本意よ」

   おい・・・・まさか

孫権 「本意って?姉様」

雪蓮 「孫家の姫としてちゃんと聞きなさい」

   なんだかすごい嫌な予感。

   つい先日のような爆弾が投下されそうな気が・・・

雪蓮 「あの言葉の意味をちゃんと言い直すと『孫家だけじゃなくて、誰でもいい』のよ。私や冥琳、甘寧や穏でも構わないわ」

   ・・・・・やっぱり

   『孫呉に天の血を入れる』

   って言葉には納得したんだけど何か引っかかってた。

   それが『誰でもいい』ってことだった。

   よく考えてみれば、『孫家』じゃなくて『孫呉』だったよな・・・

孫権 「それはどういう・・・・・・姉様。一つ確認してもよろしいですか?」

   孫権も勘付いたかな?

雪蓮 「私に答えられることならね」

   大方、孫権が聞きたいのはわかるけど、雪蓮の性格からして即答だろうな

   『孫家以外、つまり祭や冥琳も可能性があるのかどうか』

雪蓮 「もちろん♪強制はしないからね。あなたが一刀を気に入れば嫁候補として立てばいいのよ」

   ちなみに祭と母様は立候補してるみたいだけどね。と付け加える雪蓮

孫権 「そうですか・・・・では」

   なにかに納得したような表情で少し頬を赤く染めてこちらを向く

孫権 「北郷・・・いえ・・か一刀。あなたに我が真名を預けたいのだけれど受取ってくれるかしら?」

   あの〜雪蓮や翔蓮さんの視線がものすごく怖いのですが・・・

   俺、もしかしてブラックボックスでも開けちゃいました?

一刀 「・・・あぁ。謹んで預からせて頂こう」

   ・・・明らかに笑ってるよな?あの連中。

   後で部屋の前に悪戯用の罠を用意しておこう

孫権 「では改めて名乗るわ・・・・我が名は孫権、字を仲謀、真名は蓮華という。これからもよろしく」

   蓮華(れんげ)と書いてレンファか。

   いい名だな。

一刀 「俺も改めて名乗ろう。姓は北郷、名は一刀、字も真名もない世界から来た。北郷でも一刀でも好きに呼んでほしい。よろしく蓮華」

   俺が右手を出すとしっかりと握り返してくれた。

   ただし顔を赤く染めて

 

 

   「ほぉ、あのカタブツをもう落としたか・・・」

   「これからが楽しみじゃのぉ」

   「いいなぁ〜蓮華。私も早く一刀とイチャイチャしたい〜」

   「鉄の扉をこうもあっさり開けるとは〜・・・天性の女たらしかもしれないですねぇ〜」

 

   俺が蓮華と握手しているときに聞こえた会話だ。

   後で激辛スープでも作って差し入れに持っていこうかな?

 

雪蓮 「さて!みんなでパァ〜っとやりましょ!!」

翔蓮 「今夜は皆で飲みつぶすわよ〜」

 

   その夜は俺も大量に飲まされた。

   酔った勢いで真名を預けてくれた思春はそのまま蓮華に連れて行かれたり・・・

   飲みすぎて暴走した蓮華の対処に困った。

   冥琳、君の言っていた意味がわかったよ・・・

   その冥琳は既に酔いつぶれている

 

   その後、酒に潰れていなかった俺が全員を部屋に運ぶことになったのは東の空が明るくなったころだった

 

 

 

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あとがき

 

 

霧龍「第6席いかがだったでしょうか?」

霧龍「だんだんと長い文章になってきましたね・・・」

霧龍「第1席の約2倍の文字数です!」

霧龍「今回のゲストは三国一のお尻と言えばこの方!どうぞこちらへ!」

蓮華「どうしてどこの外史でも私の紹介はお尻なの?!」

霧龍「知りません!ただ一つ言えるのは見事な形だということですね」

蓮華「いい加減にしないと斬るわよ?・・・思春!」

思春「・・・ここに」

霧龍「いつの間に・・・って当たってますよ!思春さん?」

思春「当てているのだ」

霧龍「まだ死にたくないです!この外史も完結してないのに!」

蓮華「なら次回からは私たちが書こうかしら?」

思春「妙案です。ここで外史を乗っ取れば・・・ブツブツ」

霧龍「それはだめ!!」

思春「煩いぞ」

 

蓮華「これは・・・次回予告のカンペかしら」

蓮華「えっと次回、『真・恋姫†無想 呉√外史 一輪の蓮は天より来りし刀と翔ぶ』第7席 お楽しみに〜ですって」

思春「毎回毎回全く同じ終わり方だな・・・」

蓮華「こんなんじゃ読者様が飽きるわよ?」

霧龍「放っておいてください!」

 

蓮華「じゃあ次回も外史の本編で逢いましょう」

思春「ではな」

 

 

 

 

 

 

霧龍「少し切れちゃってるよ・・・イテテ」

思春「今度は首を斬り飛ばしてやろうか?」

説明
一輪の蓮は天より来りし刀と翔ぶ 第6席
 第6席 一刀、孫権と会うのことです

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コメント
西湘カモメさん >前者(下)のご意見は確かにそうですね・・・言われて気づきました。 後者(上)は一概に言えないかと思います。ただ重なる範囲が広いと読みにくくなるのは事実でしょうけれど(霧龍)
それと視点を変えるのは良いが、同じ台詞を書くことは無いと思う。各人の心情を著す為に書いたと察するが、それなら台詞無しの方がすっきりすると思う。(西湘カモメ)
冥琳の翔蓮に対する呼び方は「殿」で、蓮華には「様」はおかしくね?先代の王なのだから最上の敬意を持って接する表現じゃないと違和感有り過ぎだ。(西湘カモメ)
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