魔法少女さや☆マギカ6 終局
[全1ページ]

 『ドウシテ、ミンナワタシヲキョゼツスルノ……』『ドウシタラミンナハワタシヲウケイレテクレルノ』『ワタシガナニヲシタノ』『ダレカタスケテ』

 「杏子っ!!!!!!!!!」

 

 彼女の家は巨大な大木に蹂躙されていた。そしてその木の中心には杏子の姿があった。木に飲み込まれ絶望の涙を流しながら周囲を見つめている。

 

 『神滅の魔女』、別名シュヴァルツシルトの闇。何処までも深く人間を喰らい成長する恐ろしい魔女。

 

 生まれてから今まで杏子に巣食っていた果てしない絶望がこの魔女を呼んだのだ。ワルプルギスの夜亡き今、最強と呼べるにふさわしい存在であった。

 

 「私の声が聞こえる!!!?? 私よ、沙弥よ!!!!!!」

 『サ、ヤ……』

 「ごめん、私魔法少女なの。私と関わるとロクな事にならないから今までずっと避けてたけど……私、貴方の事が大好き、何時だって一緒に居たかった、友達で居たかったの!!!!!!!」

 『サ、ヤ……ワタシ、ワタシ……』

 「もう杏子は一人じゃないよ。何時まででも私が傍にいるから。独りぼっちは……寂しいもんね」

 

 『ウグゥッァアァアアアアアアアアアァアアアアアーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 魔女が咆哮する。枝を覆う無数の葉が宙を舞い、沙弥に襲いかかった。すでにコントロールは杏子から離れている。

 

 「くそっ……はぁあああっ!!!!!!!」

 

 連接剣を抜く。鞭のように暴れまわる刀身が木の葉の刃を切り裂き道を作る。沙弥は剣を元の長さに戻し、大樹に接近した。

 

 「杏子を……返せぇええええぇッ!!!!!!!!!!!!!」

 

 渾身の力で幹に斬撃を叩きこむ。しかし巨大なそれはびくともしない。その間にも地中から飛び出した根と上空から降り注ぐ葉を彼女は回避しながら切り刻んでいく。

 

 何十回腕を振っただろうか。沙弥の剣がついに杏子と木の結びついた部分を切り離した。しかし安堵した瞬間に地中の根が彼女の足に絡みつき地上へ引きずり下ろす。

 

 そのまま触手のように絡みつく無数の根。沙弥はそれを自分ごと切り裂いた。そして魔力を用いて肉体を修復する。治癒の能力に関して、彼女は天才的な才能があった。彼女の願いの根幹にあるのは『復讐』だったが、治癒の力に特化したのは別の理由があるらしかった。

 

 「杏子の事を思えば……痛みなんて感じないっ、まだまだぁぁあああっ!!!!!!!!」

 

 魔力を全開放し、連接剣を巨大化させるとともに最長の長さにまで伸ばす。そのまま幹に捲きつかせ、思い切り引いた。

 

 表皮に無数の傷が入る、だがそれでも簡単にやられてはくれなかった。流石は最強の魔女、簡単に死んではくれないらしい。

 

 沙弥は地に落ちて行く杏子を空中で抱きかかえ、安全な場所に寝かせる。その衝撃からか彼女は目を覚ました。

 

 「さ、沙弥……オレ、何て事を……」

 「聞いて、杏子。私はあの魔女を倒す……だから、普通の生活に戻るって約束して。決して魔法少女になったりとかしないで……」

 「……分かった。だったら約束してよ、絶対に死なないで戻ってくるって」

 「勿論……また一緒に、おにぎり食べよ」

 

 二人はにっと笑う。沙弥は空を蹴り上空を取り、連接剣を構える。横の攻撃が効かないなら縦、重力による加速も利用して一気に決める。

 

 「負けてたまるか、私にだって、誰かを守れるんだから……杏子はこれからもずっと友達なんだ、死ぬなんて、そんなの、あたしが許さない!!!!!!!!!!!!」

 

 巴マユの笑顔が頭に浮かんでは消えて行く。沙弥は剣先を真下に向け、剣を伸ばした。葉の密集した枝を貫き、魔女の核にそれは命中する。弱点を発見した沙弥は再び剣の長さを元に戻し、至近距離から核を砕いた。

 

 グォオオーーーーーッと言う断末魔の叫びと共に葉が枯れ枝が折れ巨木が崩れて行く。これで終わる、沙弥がそう確信した時だった。

 

 「えっ、嘘っ……うぐっ、んぁあああっ!!!!!!!!」

 

 砕けた核が自動修復した。まさか、ここが弱点じゃ無かったのか……根が無数に枝分かれし沙弥を襲う。肉体を修復できると言っても、再生が新たに出来る傷に追いつけない。

 

 「サヤァアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!」

 「……私が死ねば、こいつはまた杏子を絶望に堕とす、私が勝っても、多分私は魔女になってしまう……だったら、私がこいつと相打てばっ!!!!!!!!」

 

 残りの魔力全てを込め、力を利き手である左手に託した。そう……

 

 後悔なんて、ある訳ない。

 

 『天誅』

 

 核が修復不能なレベルまで粉々に砕け散る。それと共に、沙弥の肉体も粉々に砕け消え失せた。

 

 悪夢は終わったのだ。そして杏子にもたらされたのは……何よりも辛い現実。沙弥の居ない世界、何の希望もない世界。

 

 

 

 

 それでも、彼女は歩き出す。

 

 「交わした約束、忘れないよ……」

 

 目を閉じ確かめる。押し寄せた闇も振り払って進む。

 

 いつになったらなくした未来を見る事が出来るかは分からないけれど。

 

 空は綺麗な青さでいつも待っててくれる。丁度沙弥の髪のように深い青さで。

 

 だから怖くない。もう何があっても、挫けない……

 

 

 

 暁美ほむらと鹿目まどかの功績により始原の魔女とインキュベーターもろとも時空のかなたに自らを凍結させた事で、世界は滅びの未来から一時的に逃れる事が出来た。しかし、インキュベーターは次元の凍結から脱出し、再び絶望の種をまいたのだった。

 

 「全く、魔女を倒した魔法少女が魔女になって、その魔女をまた別の魔法少女が倒す、絶望の輪廻を断ち切るなんて……くそがき共が余計な事を」

 

 白い悪魔は闇夜に消える。再び次の絶望の種をまき散らすために……

説明
お前本当に杏子好きなの? と聞かれましたが、大好きです。
遅くなりましたが、読んで下さった方ありがとうございました。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
523 520 0
タグ
魔法少女 魔法少女まどか☆マギカ 二次創作 美樹さやか 巴マミ 佐倉杏子 的な何か 

羅月さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com