ささやかな日常。
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本当はいつであろうと

 

なんであろうと良かったんだ。

 

突然自分は宇宙人なのだと告げてきた友人を殴ってしまったのは

 

その発言のせいではなかった。

 

たとえば今僕は受験生で

 

将来の夢を語って笑う彼らをうらやましく思っていたとか

 

たとえば勇気を出して言葉にした夢の話を

 

「本気じゃないだろ」なんて言葉で返されたこととか

 

いろんなものがぐるぐると僕の中を這い回って

 

つまりはそう

 

八つ当たりだった。

 

これだから子供なんだ。って自分で自分を笑ってみても

 

とめられない涙が流れ落ちていくだけだった。

 

ごめんねと伝えられないまま彼は宇宙に帰ってしまった。

 

そんな夢を見て目覚めた朝は

 

どうにも怖くなって

 

布団の中に篭城した。

 

すぐに母親にたたき起こされて

 

妹の目があきれて僕を見ていた。

 

「おはよう」

 

それだけを言葉に出したら

 

「おそよう、遅刻だよおにいちゃん」

 

そんなそっけない返事が返ってくることに笑った。

 

いつものことで

 

いつでものことで

 

永遠が無いことを常識として知っているけれど

 

僕にはこの当たり前が突然に消えるなんて覚悟はできないから。

 

どんな凄い預言者が明日地球は終わるなんて言ったとしても

 

せめてこの日常に喜びと後悔をもつために

 

今日彼に「地球人として僕は、君を受け入れようと思うよ」

 

と笑って言おう。

 

 

 

 

説明
平凡な日常を切り取ったSS。
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コメント
コメントありがとうございます!!こういうのを書くのが好きなので大好きと言っていただけて嬉しいです。(とかげ。)
こういった切り口は大好きです。(華詩)
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平凡 SS 

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