ISジャーナリスト戦記 プロローグ1
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―――それは、今も世界の何処かで繰り広げられているであろう紛争地帯での出来事だった。

 

発展途上国だということをまじまじと見せつける建物の間の大通りでは幾重にも爆発音が鳴り響いており、壁をそして地を鉛の弾で削るような決して良い音色には聞こえない音が聞こえていた。・・・何を隠そう、そこは紛れもない紛争の真っ只中。二つの勢力が言葉すら交わさずに黙々と銃口を相手へと突きつけているのだ。

 

そんな危険と隣り合わせの地で、二人の男が古めかしい建築物の影に隠れ何やらやりとりを交わしている。見たところ、片方の男の足からは夥しい量の紅い液体がジーンズを侵食しあともう少しで紅と青の奇妙な組み合わせのジーンズを作り出そうとしていた。

 

「・・・ははっ、まさか流れ弾を喰らった挙句に無防備だった太ももをやられるとはな。今回の仕事はやっぱりちとハード過ぎる・・・」

 

血を今も失いかけて僅かに意識が朦朧としながらも、己の失態に対し毒づく男は背を壁に預け簡易処置を施したにしてもまるで変化のない右足を見つめ乾いた笑いをこぼす。

 

「撤収用の車が近くに来ているそうだが・・・動けるか?」

 

負傷した男とは長い付き合いのある強面(こわもて)の同業者が同じように座り込むと周囲を警戒しつつ声を男にかける。彼と男は今回共にある企業が開発したと噂の生物兵器の情報を探っていて、ほぼ同一の情報を手中に収めていた。

 

「無理をすれば何とか行けるかもしれないが・・・その分危険だ。手負いの俺を連れて逃げるのはリスクが大きすぎる。単体で逃げた方が確実に此処から脱出できるよ」

 

「しかしそれでは・・・・・・」

 

男は自身を見捨ててまで逃げろと最も生き残る確率の高い選択を彼に突きつけた。だが、友人のその言葉を素直に「はい、わかりました」と受け止めて逃げるなど簡単には出来はしなかった。迷う彼に続けて男は語りかける。

 

「今回手に入れたネタは俺を見捨てても充分価値のある情報なのは分かっているだろ?例えるなら、お釣りがわんさか返ってくるローリスクハイリターン・・・生き残って然るべきところにお前が伝えてくれ」

 

背負っていたバックを痛みに耐えながらゆっくり降ろすと、わざわざ防弾仕様にしておいた小型のケースを問答無用で彼の前に突き出す。中には男が独自で危険を承知で集めた資料が大切に保管されており、信憑性のあるものばかり含まれていた。

 

「『バイオハザードはゲームの中だけでいい』と、そうお前は此処に来る前に言っていたな。俺が生き残る保証は何処にもないがいいのか?」

 

「いいよ、いいよ。・・・ほら、時間が押しているし、家族や友人達に可能な限り遺言を言ってやりたいからさ。早う行ってくれ」

 

ジャケットの内側から取り出した携帯を持ちつつ、しっしっと追い払うように仕草を男はとる。そんな様子に若干呆れるも彼は溜息を軽くついた後で、背を向けると静かに歩きだした。

 

 

「・・・じゃあな、相棒」

 

「・・・ああ、先に来世で暴れてくる」

 

二人の男の別れは、あっさりとこうして終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

「・・・さてと、ホラーみたいな現象になるかもしれないけど遺言残すか」

 

男に既に実の家族は存在しない、両親ともに病気で他界済みだ。しかしそれでも『家族』に呼ぶに等しい者達が男の周りには存在していた。自重しないコール音を耳に最後に言葉を残したい相手を待つ。

 

だが、無常にも繋がったかに思われた電話は淡々とメッセージを残すようにと男に通達してきた。これにはもう苦笑するしかない。合図の音と共に男は残された時間を精一杯に使い言葉を紡いだ。

 

 

 

 

そして最後に男は『こんな自分を拾ってくれてありがとう』と澄み切った声で口にし―――息を引き取った。

 

 

まさか、本当に来世で暴れることになるとは露知らずに・・・

説明
今も何処かで繰り広げられているだろう戦いの真実を突き止めたジャーナリストの男は、友人に全てを託して息を引き取った。しかし、神を名乗る女性にISという女尊男卑の馬鹿げた世界へ転生させられた挙句、世界を変えてくれと言われ、彼は己のジャーナリスト魂を駆使してIS世界に喧嘩を売ることになった。・・・これは一人の馬鹿と彼を取り巻く女性達の世界への挑戦の物語である。(独自設定部分があるのでそれが嫌な方はバックしてください)
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