ハフマン島
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私は今、飛行機の窓から流れ行く雲の間に見えるハフマン島に目を奪われていた。

 

蒼く美しい海と、深緑のエメラルドを思わせる密林、三つの山々にかかる白い雪と南部の砂漠地帯。

 

その全てが美しく、この島がいったい何であったのかをしばし忘れさせた。

 

ポーン、

 

アナウンスが鳴り、着陸準備に入った飛行機は高度を落し、ゆっくりとハフマン島に近づいていった。

 

フライトアテンダントがシートベルトの確認に来て、シートベルトを締めている間にも、私はずっとハフマン島を眺め続けていた。

 

 

 

 

 

 

飛行機を降りてまず最初に私を出迎えたのは、眩しい太陽の日差しと、各国報道関係者が焚くフラッシュの光、そして一目連邦の首相を見ようと集まってきた支持者達と野次馬の集団の歓声であった。

 

にこやかに手を振りながらマスコミや民衆に答えつつも私はタラップを降りていった。

 

「ようこそハフマン島へ、歓迎いたしますゴップ首相。」

 

出迎えに来た州知事と握手をしながらにこやかに肩を組み、マスコミ受けをした後私は州知事とボディーガードと共に迎えに来た車に乗り込んでいった。

 

空港を抜け、交通規制され、前後を左右を固める護衛車両と私たちが乗る黒塗りのリムジン以外走るもののない道路で、やっと私は息をつく事が出来た。

 

「ゴップ閣下、お疲れのようでしたらこのままホテルの方に向かいますが?」

 

車内で向かい合うように座る州知事のアレクセイ・スミノルフスキー君が、そう言ってくれるが、私は固辞して言った。

 

「なに、それには及ばんよ。このまま官舎のほうに向かってくれ。」

 

「判りました。っとそうそう、実は.......。」

 

防音の車の中で、彼と会談をしつつ私はふと、窓の外に見えるビルの頂上に目を奪われた。

 

「知事あれは。」

 

「ああ、あれですか。いやお恥ずかしい、連邦の統治の下比較的平和を保ってはいますが、まあ未だにハフマン島は戦時というわけですよ。」

 

一定の高さのビルの上に見える高射砲陣地の群れを見ながら、私は何時かこの島に真の統一と平和をもたらそうと強く思った。

 

官舎に着き、車を降りて表敬訪問を受けた私は、その後州知事や地元の名士等と共に昼食をし有意義な時間を過ごした。

 

滞在は一週間を予定しており、その間に様々な人間が私の泊まるホテルに訪れた。

 

いやはや、政治家先生は本当に大変だな。

 

漸く今日の訪問が終わり、持ち込まれた政務も粗方済ませた私は、ホテルのスイートでゆっくりと寛いでいた。

 

......明日は確かペセタの農業視察か......。

 

最近フリーダム郊外で不穏な空気が漂い始めていたな....。

 

なにもなければよいのだが.....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイウェイから望むペセタの耕作地帯は、常夏の日差しに青々と茂った米や野菜が何処までも続いていた。

 

車を降り、地元で一番の土地を持つ地主の家に招かれての昼食会に参加しつつ、のどかな田園風景に心和ませていた。

 

「やはり米はいい、心が安らぐ。」

 

振舞われた家主自慢のコーヒーの豆に舌鼓を打ちつつ、ソーサーにカップを置いた私は、ふと気になって空を見上げた。

 

何処までも青く、澄んだ空に幾筋もの飛行機雲が....飛行機雲?

 

嫌な予感がする。

 

私は家主に席を外すといい、そのまま付近の空軍基地に付近で演習を行っているのかと問い合わせた。

 

答えは「否(ノー)」

 

となるとあれは.....いったい何だったのだろう。

 

方角からするとルービディスに向かっていたが......急がなければ、なにか大変な事が起きたらしい。

 

私はズキズキと痛む頭に手を当てながら急いで州都に戻ることにした。

 

急いで官庁に連絡を入れるも返事はなく、私は自身の嫌な事がおきたと確信する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後になって知ったことだが、この時みた飛行機雲の正体は、合衆国から打ち込まれたミサイルでその目標が州都であったことを。

 

後に幾たびも繰り返されてきた不毛な争いはこう名付けられた、

 

『第七次ハフマン島紛争』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
連邦の野望の続きです。

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連邦 機動戦士ガンダム 宇宙 原作崩壊 ゴップ IS 地球連邦 

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