ハフマン島紛争
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急いで戻った州都は、見るも無残な姿に成り果てていた。

 

都市の彼方此方で黒煙が上がり、炎と瓦礫の下敷になった人々が怨嗟の声を上げる。

 

瓦礫の山と化した州都ルーピィディスは最早嘗ての面影は残ってはいなかった。

 

私は直に現状確認の為に官舎へと向かったが、広場は死傷者で覆い尽くされ、あちらこちらで助けを呼ぶ声が鳴り響いた。

 

仕方なく車を降りて官舎へと護衛されながら急いだ。

 

途中責任者らしき人物に現状を聞いてみると、どの病院も患者の収容人数をオーバーし、こうして外で診るしかないらしい。

 

州軍も、消防と警察と協力して瓦礫の撤去や被害者の捜索に当たっていた。

 

しかし、それでも手が回らないらしい、一部で暴動も起き始め町は危険な状態らしい。

 

官舎の中に入った私たちは、廊下に蹲る負傷者達の間を通るようにして州知事の部屋を目指した。

 

「おおお、ゴップ閣下、ご無事でしたか。いま軍のヘリを迎えに出した所ですが...。お怪我やお加減は悪くはありませんか?」

 

部屋の中は着弾の衝撃で物が散らかったままになっていたが、アレクセイ本人はいたって健康そうであった。

 

「いや心配には及ばんよ、それよりも現状を確認したい。いったい何が起きたんだ。」

 

私は半ば予想していた答えを思いながら、彼にそう尋ねざる終えなかった。

 

「アメリカが.....いえ合衆国駐留軍が国境付近で発砲、国境警備隊と銃撃戦になったようですがその直後に今度は中距離ミサイルが飛来、市街数箇所に着弾し昼間ということもあり大勢の市民に死傷者が出ました。更に火災とビルの倒壊による混乱で市民が各所で孤立、現在急いで救助に向かわせているところです。」

 

「判った、君もよくやった。合衆国の動きは?」

 

「情報が錯綜して今だ判明しませんが、どうやら向こうも混乱しているようです。」

 

口ごもるアレクセイの言葉に、私は疑問を覚えずにはいられなかった。

 

国境付近での小競り合いに目を向かせている間にミサイルでの先制、その後大規模な侵攻があっても可笑しくはないはずだ。

 

なのに何を躊躇う.....もしや....。

 

「今回の行動は合衆国の総意ではないのかもしれないな。至急大使館に連絡を、それと付近に展開中のE.E.M.F.に大統領命令で指示を出し二次攻撃への備えとヘリボーンによる救助支援を出せ。」

 

「大統領、合衆国大使館のマッキンリーに繋がりました。」

 

私は、受話器を受け取り、少しして心を落ち着けながら電話に出た。

 

「マッキンリー大使、私は地球連邦首相ゴップです、我々はいま酷く混乱しています。我々は貴方方から一方的に宣戦布告無しに攻撃を受け、大勢の市民に死傷者が出ました。これはいったいどう言う事なのです?明確な返答がない場合、あなた方が不当に宣戦布告無しに攻撃したとして我々も報復措置を取る用意があります。」

 

「ゴップ首相、こちらの情報では、先に貴方方から攻撃されたとありますが?当方にはそちらに対して攻撃を仕掛けたなどという証拠はありません。」

 

「なるほど、どうやらお互い現状がまだよく判ってはいないようだ。それではこうしましょう。我々連邦は合衆国に対し、今回の被害に対する賠償と遺族と負傷者への謝罪及びきちんとした説明をして頂きたい。そうでなければ、あなた方の祖先が築き上げたここ三十年の平和を無に帰す事になりかねない。その場合は、お互いに無事では済まなくなります。」

 

「...私を合衆国を脅そうというのですか。」

 

「いえいえ、我々はきちんとした証拠と説明と、謝罪に賠償をして頂けなければ当然の措置を取るまでです。....いまハフマン島に展開中の海軍の艦隊と空軍は既にあなた方の返答しだいでは、この悲劇を全土に広げる用意がある。」

 

「....判りました。少し時間を頂きたい、私の一存では決めかねます。」

 

「いいでしょう。しかし、あなた方が下手な時間稼ぎをするようであれば、お互いにとって大変悲劇的な事が起こるでしょう。」

 

そこで電話を切った私は、全軍にデフコン2を発令。

 

急ぎダーウィンへと空軍機に護衛されながら戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダーウィンに戻り、関係閣僚と専門家を集めた会議を行いつつも、私は合衆国大統領とホットラインで粘り強い交渉を続けた。

 

だが、両者の交渉の甲斐なく、暴発したした陸軍との間で戦闘が発生、なし崩し的にメール河を巡り両軍が合間見えることとなる。

 

互いに宣戦布告なしの戦闘で、混乱し、収集がつかなくなった情勢は、その後一年間余りの間、ハフマン島をかけての連邦と合衆国との紛争が繰り広げられる。

 

紛争中もゴップはその驚異的政治手腕とリーダーシップとで各党派を纏め上げ、紛争を一気に解決させる為に大規模な派兵を決定。

 

述べ三十万もの兵力をハフマン島へと送り込み、ハフマン島全島の制圧に乗り出した。

 

「首相閣下、国際社会から今回の紛争に対して非難が集まっています。このままでは連邦が孤立しかねません。」

 

「だからこそ、あの頑迷な大統領の頭を覚ます為に今回の作戦が必要なのだ。なに、心配はいらん。ステイツもそろそろ限界だ、国民には厭戦気分が広がり各地で反政府デモが起きてるじゃないか。」

 

「ソレはこちらも同じです首相閣下。お願いです派兵の件どうかご再考を...。」

 

「くどいぞ、君、既にこれは決定事項なのだ。な〜に、ちょっとばかし灸を据えてやるだけさ。」

 

陸と海と空の三者が連合してハフマン島全土で全面攻勢に打って出たこの作戦は、当初ゴップ首相の読み通りに進み、フリーダム市を攻略、ラークバレーをも手中に収めた連邦は一路グレイロックを目指す。

 

しかし、此処に来て国連が両者の間に立ち戦闘は中断、事態の解決は戦場ではなく会議場に持ち込まれた。

 

議会は平行線を辿りあわや再開かと危ぶまれたが、此処に来て常任理事国である中国とロシアが事態究明の為乗り出す。

 

この両者は、紛争前経済発展によって得たチャイナマネー及びロシアンマネーをこの膨大な資源が眠るハフマン島につぎ込んでいた。

 

今回の紛争で、利権や資金の焦げ付きを懸念した両国にとって、このタイミングでの調停は是が非でも成功させる必要があったのだ。

 

折角優位に立った連邦ではあったが、国際社会の後押しのある常任理事国二国相手では、妥協せざる終えなかった。

 

今回の紛争により、多大な被害を受けたハフマン島は以後国境警備を除き軍の駐留を禁止、国境は紛争前のメール河の境に戻されるも、連邦は合衆国に対し開戦の理由となったルーピディス無差別攻撃に対する賠償金を受け取り、以後ハフマン島は国連の監視下のもとに置かれることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

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第三話投稿
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連邦 機動戦士ガンダム 宇宙 地球連邦 原作崩壊 ゴップ IS 投稿 

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