ゲイム業界へようこそ!その4
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「ところでこの後はどうする予定?」

 

 

 

「特に考えていなかったな。」

 

 

 

「本当に何しに来たのよ、あなたは……。」

 

 

 

イカン、変な目で見られているぞ!まだここに来て間もないのに、いきなりモンスターに襲われたり、彼女に怪しい人と思われたり。なんだろ…無性に泣けてくる……。

 

 

 

「死にたくなってきたよ…。」

 

 

 

「えっ!?何いきなり恐ろしいこと言ってるのよ!?」

 

 

 

心の言葉のはずが、思わず口に出ていたようだ。まず現在の状況を打開しなければ。この後、俺はどうするべきか?街に行こうにも出口が分からない。足だけは自信があるので、敵から逃げつつ出口を探すのも一つの手だな。

 

 

ここで一つの名案を思いついた。

彼女に付いていくことで、ここから安全に脱出することが出来ると思うのだ。ふむ、我ながら良い案である。

 

 

そのためにはまず彼女の目的を聞かなければ。

 

 

 

「君はその…この後どうする予定なんだ?」

 

 

 

「私?私の目的はここのボスモンスターを倒しに来たのよ。」

 

 

 

「君一人でなのか?」

 

 

 

「問題ないわ、こっちは結構慣れているし。今までも一人で倒してきたから大丈夫よ。」

 

 

 

少し心配だな、手を貸すべきなのか俺は?こっちはまだ先ほど初めてモンスターと戦ったばかりの素人さんだが。

 

 

ここでふと思い出す。俺が存在しない世界で彼女はラスボスであるマジェコンヌまで問題なく生存している。故に俺が手助けせずと彼女はここボスとやらを倒せるのだ。

 

下手に手助けしようとして邪魔しては悪い。ここは大人しく傍観するに限るな。

 

 

 

「そうか、君は頑張ってるんだな。」

 

 

 

「私がやらないと駄目だからね。」

 

 

 

さすがは女神様だな。前世の俺なんかとは比べ物にならない…。むしろこの世界に来た俺も前と何等変わっていない。なるがままに、身を任せて生きていた。

 

 

いや、それで生きていけたのだから良かったはずなのだ。別に無理をして苦労する必要もない。

 

 

 

 

「私がやらないと、人々が危険になるから…。私が頑張らないとね……。」

 

 

 

 

 

 

なんでそんなに悲しい顔をするんだよ…、君は……。

 

 

 

 

 

ゲームをする側だった俺は、二次元の存在である彼女をいつも前向きで誰にも負けない、強気な女神様として捉えていた。そんな彼女の本質に俺は惹かれてさえいた。

 

しかし実際はどうだろうか?目の前にいるのは、俺の思い描いていた女神様とは全くと言っていいほど、かけ離れていた。

 

これではどこにでもいるただの女の子ではないか?

 

 

 

ふと彼女の上の方へ目を向けると、俺の能力でレベルらしき数値が見えた。書いてあった数字は「10」。先ほど聞いたここのダンジョンの目標レベルは確か「6」だったはず。

 

これだけ見れば余裕なのではと思うだろうが、それは大きく間違っている。これは言わば、パーティーの目標レベルが「6」ということなのだ。

 

 

 

一人で戦ってきた彼女にとって、パーティーと呼べる仲間はいない。いくらレベル差があったとしてもこれでは苦戦を強いられるに決まっている。

 

それでも彼女は戦うのだろう。そうしなければ街に住む人々がモンスター達によって危険に晒されてしまうからだ。

 

 

 

「馬鹿げているな、本当に…。」

 

 

 

「何?私の行動を馬鹿にしてるの?」

 

 

 

「いや、これは褒めてたんだよ。」

 

 

 

「ん?そうなの?ならいいけどさ…。」

 

 

 

 

 

 

 

ここで自分自身に問いかける。

 

 

(目の前に苦しんでいる女の子を置いて、俺は放ってのおくか?それでも男か?)

 

 

何を分かり切ったことを聞くのだ。答えなどすでに出ているのに。

 

 

(ならやるべき行動は決まっているな。)

 

 

……。

 

 

 

 

 

 

「手伝ってもいいか?」

 

 

 

「えっ?いらないわよ、別に。言っとくけど私これでも一度も相手に負けたことのないのよ?」

 

 

 

「女神を除いてだろ?(小声)」

 

 

 

「聞こえてるわよ!なんでそこまで私のこと知ってるのよ!」

 

 

 

今の声が聞こえてしまうのか…。彼女らの前では自分の言動に注意しなければならないな。

 

 

 

「聞こえてたのか。まぁ、この話は置いておくとして。」

 

 

 

「後でもう一回このことについて問いただすからね?」

 

 

 

「…とりあえず俺が付いていくと行った理由は、実は出口がどこか忘れてしまってな。君について行けばいずれこのダンジョンを脱出出来るだろうと思ったからだよ。」

 

 

 

「さっきは出口知ってる素振りじゃなかった?」

 

 

 

何故そんな些細なことまで覚えているんだ…。女神ってだけで性能凄すぎだろ…。

 

 

 

「とにかく!俺もモンスターとの戦闘ならいくらか手助けが出来る。そっちとしても損はないだろ?」

 

 

 

ぶっちゃければ、さっき初めてモンスターと戦ったばかりだが。

 

 

 

「まぁ、さっき見た限りでは確かにそこそこはやれそうだったから問題はなさそうだし。分かったわ、短い間だけどよろしくね。」

 

 

 

そして彼女は手を出してくる。はて、何をしろと?

 

 

 

「握手でしょ?短い間だけど、私とあなたはパーティーになるのだから握手くらいのことして当然でしょ?」

 

 

 

「そうだな。こちらこそ、よろしく頼むよ。」

 

 

 

 

この時に彼女が見せてくれた初めての笑顔を俺は一生忘れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は女神である彼女と仲間になったのだ。

ヒロイン達との関わり合いを出来るだけ避けようと考えていた俺はどこへ行ってしまったのだろうか?

 

 

 

でもこんな自分にどこかホッとしてしまっている。まぁ、成るようになるだろうさ。

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