全ての終焉 56
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第56話『学園祭編その21 武道会G 楓VSクウネル、ネギVS明日菜』

 

木乃香の所へ向かっていた明日菜さんだが、僕は立ち止まる。

 

「これ、護る為に手に入れたんだけどまさか、こんな事に使うとは思いもしなかった。聖なる鎖、極移」

 

明日菜さんが転移されてきて、鎖が体中に巻きつく。

巻きつき方が胸の谷間やら微妙にエロいけど。

 

「ちょ!」

「明日菜さん、困ります。こんな事されたらせっかくの計画がパーになってしまう」

「計画?」

「そうです。だからバラすのはやめてくれません?」

「理由はよくわかんないんだけど」

 

理由なんてそんなものはない。

ただ気になることは謎の声、僕の進化、ガノードを狙っていた龍、魔法世界に転移した何か、だ。

さらに、リイスが言ってた真格者とやらも気になるからハーレムや暇つぶしの目的(2話参照)が消えるな。

それよりも明日菜さんに言っておく事がある。

 

「明日菜さん」

「何ってそうじゃなくてこれ解いて! 変な所が絡んできて変な気分になるってば!」

「あ、ああごめんなさい」

 

指を弾くと聖なる鎖が消えた。

縛られていたせいで体力が減った明日菜さんは地面に膝を付く。

 

「……う〜ん、木乃香にはだめなの?」

「木乃香さんの近くに夕映さん達がいるじゃないですか」

「じゃあ木乃香だけにならいいのね?」

「……計画を変更せざるを得ないかな? ちゃんと人の居ない所ならいいですよ」

「計画って何よ」

「それは秘密です。一つだけのヒントを出すならそうですね。世界の安定のための対策でしょうか」

 

僕の世界じゃあ既に麻帆良しか存在しないから星とは言わない。

この世界の未来で僕の世界になってもしょーがない、そもそも人類滅んでるわけだし。

みんなみんなガノードのせいだけど。

だから僕は一つの計画を考えた。それは魔法世界に行かないと実行する気が無いから今は内緒。

 

「それってどうしてもしなきゃいけないの?」

「そうしないと魔法世界が消えてなくなりますよ?」

「それは、困るわね。って記憶だけしかないから実感無いけど」

 

元はアスナの記憶だからこの世界の明日菜さんが知るわけが無い。

魔法世界の消滅、あの世界では権限の鍵で全てを修復したから消え去るという事はなかった。

しかしガノードが置き土産として魔法、発達した技術を世界のお偉いさんに情報提供。

すぐに作れるわけも無く年月が経過したけど、その後戦争となり、2つの世界が滅亡した。

麻帆良領地しか存在しないあの場所は戦争した後の未来だ。もちろん火星も無い。

 

「慣れていくしかないですよ。元々ありえない現象なんですから」

「そうよね。一つ聞きたい。木乃香には話してもいいわよね?」

「……未来から来た程度は構いませんが、ちゃんと木乃香さん限定で話してくださいね」

「わかったわ」

「それじゃあ戻りましょうか」

「そうね」

 

明日菜さんと僕は会場に戻った。

 

選手席に戻ってみると、エヴァと愛衣さんが互いに見ていた。

見ていたというよりも睨み合いっぽい。

高音さんがその様子を見て困惑しているが、何があった?

僕は溜息を吐き、2人に尋ねる。

 

「何してるんですか?」

「ネギさん、聞いて下さいよ! エヴァンジェリンさんが駄目って言うんですよ!?」

「いきなり過ぎて訳が分からない。ちゃんと説明してくれません?」

 

エヴァが僕の方を見てあきれた表情で説明をする。

 

「この小娘が私に修行してくれと頼んでくるから断っただけだ」

「理由も無く断るなんてひどすぎませんか? 私がネギさんのために強くなろうとしてもですよ!」

「それが駄目なんだ! ただでさえ近衛木乃香が強敵なのにこれ以上増やせるか!」

 

愛衣さんに向け、怒鳴るエヴァ

修行ぐらい良いと思うけど、3人だと厳しいのか? あ、夕映さん達も含み5人以上か。

小太郎も予定だし、エヴァなら10人までなら鍛えるなんて造作も無かろうに、しょーがない。

 

「エヴァンジェリンさん」

「な、何だ?」

 

僕の言葉に動揺しながらもこちらを見る。

それは気にせず説得してみるか。僕的には愛衣さんも強化したほうが良い。

 

「鍛えてあげてくれませんか? 足手まといがいるとさすがに鬱陶しいから、強化すればそれなりに使えるようになりますし」

「はぁ……わかった。佐倉愛衣、貴様を鍛えてやろう」

「本当ですか!!」

「ああ。ただし学園祭が終わったらな」

「わかりました」

 

嬉しそうだな。愛衣さん

小太郎に向けてたはずの笑みが僕に、複雑な気分。

エヴァを見ると、めんどくさそうに愛衣を見る。

 

「炎が得意だったな。燃える天空まで習わせて、基礎も叩き込むか。これぐらいしないと駄目だな」

「燃える天空、がんばります!」

 

エヴァと愛衣さんの問題はこれで終わったな。

それより次の試合まだぁ?

僕は自分の席に座ると、朝倉さんが出てきてマイクでしゃべる。

 

『次の試合はどう見ても忍者の長瀬楓VSクウネル=サンダース選手です。両者出てきてください!』

 

相変わらず観客が、もういいか。

楓さんとクウネル、アルが見合わせる。

お互い警戒しているのか気と魔力が膨れ上がる。

 

『両者、準備は良いですね? 開始!』

 

試合のコングがなると同時に楓さんから動いた。

クナイを握り締め、飛びながら突っ込む。

アルはゆっくりと手を肩ぐらいの高さまで持っていき、下に振ると楓さんが地面に屈した。

範囲を自分周辺にした重力が発生したみたいだ。

しかし楓さんもこれぐらいで倒れるほど愚かではない。

地面に屈した楓さんは白い煙と共に消えた。

 

「ほう、分身ですか。これほどの精密された分身を見たのはいつぶりでしょう」

 

嬉しそうに呟くが、背後に楓さんが現れ気を練った攻撃を繰り出す。

あっさりと前方に吹き飛ぶけど、予想していたのか受身を取り、体制を戻した。

 

「ダメージが無いでござるな」

「私も本気でやりましょうか。いや彼のお願いもありますし、ここは一つこれで」

 

懐から本を取り出し、本を開き、ところどころに挟んでいる栞を一つ取り本を閉じる。

アルから光が走った。楓さんも光に目を閉じてしまう。

光が止むと、アルの気配が変わっていた。

それに気づいた楓さんも警戒し、分身の術を使い突進する。

アルはニヤッと口だけ歪ませるというか見えるのは口元ぐらいだからな。

接近してきた楓さんの分身だけ先に拳一発で片付け、本体の首を絞める。

何かしゃべっているようだが、小声だから聞こえない。聞こうと思えばできるけど面倒だ。

アルはそのまま横にぶん投げ、少しだけ上昇。右腕にまで魔力を覆わせてからレーザーみたいに斜め下へ解き放つ。

当然、あまりの速度で回避行動が取れない楓さんはそのまま直撃し、水の中に落ちた。

魔力が含まれてる分、それも爆発した後、水飛沫をあげる。

 

「えげつないな」

「なんか人が変わったかのように感じますが」

「あれはアルのアーティファクトだ。説明は面倒だから本人に聞くがいい」

「イノチノシヘンですか」

「ネギ、知ってたのか?」

「カードの部分見えましたから」

 

カードを取り出した所で文字見えてたし、過去で一度説明聞いてたから。

エヴァは腕を組み、ふむ、と頷く。

何を納得してるのやら

飛び出してきた楓さんは試合場の地面にしゃがみ込む。

ものすごく気が弱くなっている。うん、これだけ低いと無理だね。

アルも感知したのか、アーティファクトを解いて、楓さんに近づき何かつぶやいていた。

数秒後、楓さんの表情がいつものニンニンへ変わり、朝倉さんに言う。

 

「降参するでござる」

『楓選手、敗北宣言! これにより決勝進出はクウネル選手に決定だ!!』

 

これでクウネルと僕が戦うのは確定したのか。

前は憧れで戦ってたけど、今度は違う。

一人の戦士として限度にとどめて戦う事になる。

 

「さてと、ちょっと様子見いってきますか」

 

僕は席を立ち、楓さんの所へ向かった。

 

 

試合場の反対側に楓さんはいた。

反対側って言うけど、実際は建物の裏側にある通り道だけど。

構造が変わってる? 僕の気のせいかもしれないので突っ込まないでおく。

 

「楓さん、お疲れ様」

「ネギ坊主、やはりあの御仁は只者ではござらんよ。そうだ。伝言があったでござる」

「え?」

「決勝で待つ。そう言ってたでござる」

「わかりました」

「人を待たせてるから失礼するでござる」

 

上にある屋根に飛び、そのまま去ってしまった。

去った方向をじっと見ていると背後から気配を感じた。

 

「ネギ」

「明日菜さん」

 

次の試合は明日菜さんだっけ?

ああ、めんどくさいな……無詠唱でも僕の魔法無効化できないから相手にならない気がする。

数秒で終わるのか、と哀れな視線を向けてみると、明日菜さんは表情を変えた。

 

「ネギ、できるだけこの場で出せる全力で戦って!」

「つまり死にたいと?」

「違うわよ! 過去の記憶みたいにって言ってるの!」

 

過去の記憶とは刹那さんと戦ったときのように?

あれ並みだと、明日菜さんに何秒で負ける事やら。

いや明日菜さんの実力より上程度にすれば問題ないか、でも残念。

 

「何だ……雷の暴風で次元切り裂きできる程の破壊力とか咸卦法による放出はできるんじゃないかと思った」

「そんな事したら次元の殻が破れて宇宙が……咸卦法はこの学園どころか日本が終わるわ!」

 

青ざめながら違う違うと否定する涙目の明日菜さん

記憶持ってるから僕の言ってる意味理解できるんだろうな。

 

「わかりました。じゃあ手は抜きますけど、賭けをしましょう」

「賭け?」

「明日菜さんが勝ったら僕を一日好きにしてください」

「本当!?」

「ただし僕が勝ったら……そのときに決めましょうか。フフフ」

「わ、わかったわよ! それでいいわ」

 

引きつったような表情で肯定する明日菜さん。

さて、明日菜さんに施さないと駄目な事あるからって過去の記憶があるんだからあの時もあるよね?

確認するしかないか。

 

「ところで明日菜さん」

「何?」

「過去の記憶、この世界で言うと未来だけどそれがあるという事は魔法世界の記憶は?」

「……そこだけないわ。小さいころの記憶がないのはそのままだけど?」

 

アスナ、全部渡してないんだ。

小さい頃の、黄昏の姫御子の時の記憶を、とすると一つじゃなく2つになってしまうな。

それはそれで別にいっか。フェイトに捕まって記憶復活より僕が施した方がいい。

僕は明日菜さんに笑みを浮かべると、明日菜さんも釣られて笑顔になる。

 

『次の試合、ネギスプリングフィールド選手VS神楽坂明日菜の試合がまもなく始まります』

「呼ばれましたね。行きましょうか」

「よし! 絶対ネギに勝ってやる!!」

 

僕と明日菜さんは試合場に向かった。

朝倉さんの声と共に僕と明日菜さんは移動し、向かい合う。

向かった先には先ほどよりも観客が増えていた。おまけに

 

「明日菜さん、あやかさん達が屋根の上にいます」

「え? ほんとだ。何やってんのよ」

「多分、見に来てくれたんだと思います」

 

明日菜さんは頬を膨らまし、拗ねた声色で呟く。

 

「どうせネギの応援でしょ」

「そんなことないと思いますが」

「絶対そうよ。過去でもそうだし」

 

僕はその一言で黙った。

過去でも僕しか応援してなかったし、何も言い返せない。

 

『お二人さん、準備はいい? じゃあ準決勝戦第2試合、はじめ!』

 

その瞬間、明日菜さんは咸卦法を解放した。

記憶の影響で魔力と気の密度が上がっている。

 

「はあっ!」

 

いきなり瞬動で僕の目前に接近してきてハリセンを振り落とす。

当たる寸前に数メートル下がり、魔法の矢1本を放つ。

 

「えい!」

 

速度重視のため、放ったら既に相手の目前だった。

しかし、すぐさま反応した明日菜さんは振り落としていたハリセンを振り上げる。

魔法の矢が消えた。

 

「咸卦法使ってなかったら完全に防げなかったわ」

「じゃあこれならどうですか?」

「えっ!?」

 

接近し、打撃の残像を繰り出す。

明日菜さんはわけもわからず適当に防いだり回避したりするが、時々頬を掠る。

 

「くっ! はあ!!」

 

後方に下がり、咸卦法の出力を強くした。

あの追加使わないなら問題ないな。

右手に魔力を覆わせながら発射の準備をする。

近づいた瞬間、追撃できるように充填しておく。

左も同じように充填しようとしたけど、後ろに下がったはずの明日菜さんがハリセンに千の雷クラスの魔力を込めて、こちらに接近してきた。

 

「はああっ!!」

「っ!?」

 

右手に充填していた魔力を解き放つ。

放たれた魔力はレーザーのように鋭く向かっていく。

明日菜さんはそれを撃退せず上にジャンプして僕を狙うように向かってくる。

 

「よし、ネギ!」

「くっ! なんてね」

「え?」

 

僕はニヤッと口を歪ませ、右手の人差し指を曲げる。

観客に当たる寸前、いきなり逆の方向へ急転回する。

明日菜さんは厳しい表情をしたが、ハリセンを僕に振り落とす。

当たる寸前、左手に充填し、解放したと同時に急転回してきた魔力が一斉に明日菜さんへ直撃する。

明日菜さんは一瞬でハリセンの勢いを止め、体を捻じ曲げ回転斬りをするが、魔力とハリセンの魔力が衝突し爆発が起こる。

お互い後ろに吹き飛ぶ。

僕は直にバランスを取り戻す。しかし、明日菜さんはバランスを保てず、そのまま倒れてしまった。

 

「朝倉さん、判定」

『神楽坂明日菜選手ダウン、1.2.3』

 

審判である朝倉さんのカウントが始まる。

ダメージが大きいから立ち上がれないどころか動いていない。

 

『4,5,6,7,8、きゅ! おおっと神楽坂明日菜選手、立ち上がりました!』

 

明日菜さんはハリセンを杖代わりにしてフラフラしながら立つ。

疲れたように呼吸が荒い。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……う〜ん、これは無理だわ」

 

そして、また倒れる。

朝倉さんは倒れた明日菜さんに近づき、マイクを向ける。

 

『明日菜選手、降参ですか?』

「私の負け、降参」

『神楽坂明日菜選手の降参宣言により、この試合の勝者はネギスプリングフィールド選手に決定しました!!』

 

僕の勝利を会場に伝わると、観客から盛大な歓声が響き渡る。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお! 子供先生が勝ったぞ!」

「キャアアアアアアアアアアアアアア!」

「すげえじゃねええええええええか!」

「俺を抱いてくれええええええええええええ!」

 

最後誰だよ、変なこと言ったやつ。

そんなもん最初から無視して明日菜さんに近づく。

 

「大丈夫ですか?」

「え、ええ。ネギが手加減してくれたから」

「でもあれ? まだ力残ってるんじゃあ」

「咸卦法の使いすぎ、後日頃からの疲労みたい」

 

本当に疲れたような声色だった。

拾うって僕関連のせいだよね、ツッコミ等やってるから

なんか申し訳ないと思った僕は明日菜さんをお姫様抱っこする。

 

「え? ネ、ネギッ!?」

「さて、ここだと直せないから休める所に行きましょうか」

「ちょっと待って、ネ――」

 

僕はお姫様抱っこしたまま、試合場を後にし、奥の部屋へ向かった。

その際、朝倉さんが『おおっとネギ選手、明日菜選手をお姫様抱っこで……』と言ってたけど無視した。

 

 

『……ネギ・スプリングフィールド、真……まで、後 48%』

 

 

 

next 第57話『学園祭その22 武道会Hラスト、ネギVSナギ』

 

説明
第56話
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