二度目の転生はネギまの世界 第四話
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第四話「そういえば、真祖殺しって可能なのか?」

 

 

 

Artorius’s Diary

 

一年目 事件当日&収穫祭直後

 

 これから真祖殺しの魔法を開発する。その記録として日記を書くことにする。

 それに先立ち、永久凍結魔法処理したレナ・ノースライトとアリステル・シュナイダー両名を、リロイの所持しているダイオラマ魔法球内に保存することとなった。このダイオラマ魔法球、スノーグローブサイズと結構小さいが、墓地としてしか使用することはないだろうからそこはどうでもいい。

 リロイ自身もそのダイオラマ魔法球内に篭っているが、どうせ自責の念に駆られているのだろう。

 

 まずは開発にあたり、真祖化の魔法を調べつくすことにする。

 理由としては、

1.真祖化のメカニズムから、真祖の弱点を探る。

2.真祖化の解除方法の模索。

3.真祖の再生能力の限界を知る。

 以上三点があげられる。

 

 次に、存在する魔法を可能な限り調べることにする。

 理由は、

1.真祖殺しを可能とする魔法が存在するかどうかの確認。

2.存在する場合、それを発動するのに必要な魔力がどれくらいかを調べる。

3.存在しない場合、効率よく真祖を狩るための新魔法を開発する基礎とする。

 以上三点があげられる。

 

 

一年目 もうすぐ年が明ける

 

 真祖化の魔法を調べ、本日発見したことがある。

 本来の肉体と魂の関係は、『肉体とは魂を入れる器であり、器が破壊された場合、特殊な才能と状況がないと魂をこの世に維持できないため死に至る』ものである。

 この原則があるため、通常ではどれだけ超再生を誇ろうとも、魂を留める核たる脳が破壊されると再生不能に陥るのである。

 しかし真祖化すると、全身の細胞一つ一つが魂を留める核になる。事実上、細胞一つでは魂の維持が不可能なので、数十から数百の細胞が残っていると全身の復元がなされるということが分かった。

 ここから、細胞を一つ残らず破壊すれば真祖を殺せることとなる。

 

 しかし、同時に見つけたものが厄介である。それが真祖流の自己保存である。

 先ほども記述したが、真祖は細胞がある程度存在していれば、時間はかかるが完全再生することが可能である。そして生物全てが所持する自己保存が、真祖では厄介なものとなってしまう。それは、生命の危機に瀕している際、無意識下で自らの一部をコウモリとして分離するというものである。

 つまり、小規模魔法で滅ぼそうとすると、滅びきらない肉体の一部が勝手に分離し、新たな肉体を勝手に組み上げてしまうということだ。大規模魔法でも、万一肉体の一部が吹き飛ばされて放置されるとそこから再生してしまう。これらから真祖殺しは難しいとされているようだ。

 過去の真祖殺しは、多くの魔法使いが逃げ道を塞ぐように広域殲滅魔法を使用することで成していることから、難易度の高さは一級であることが分かる。

 

 この村には高位の魔法使いは少ないため、内々に処理するには新たな魔法の開発がほぼ必須であることが証明された。

 この日記においては、年が明けた時に何年目かを変えることとする。よって数日後からは二年目と記述することになる。

 

 

二年目 夏の盛り

 

 今日は久々にリロイがダイオラマ魔法球から出てきたが、日光に焼かれて苦しがっていた。どうやら伝承にあるように、吸血鬼は日光に弱いようだ。

 さらに詳しく調べるためにリロイに協力を依頼したところ、快い返事が得られた。ここからはリロイを用いた人体実験の様子を記す。

 

実験1 日光でダメージを受けるが、なぜランプの光は大丈夫なのか

 ■■■の利点としてある程度の知識があるので、それを用いて実験を行う。

 光の■■を少しずつ変えていき測定したところ、■■領域に至ってしばらくしたところで強いダメージを受けていた。

 ここから、吸血鬼が苦手とする光はUV、すなわち■■■であることが分かった。

 そこで咒式を用いてリロイの腕に強力な■■■を浴びせたところ、ダメージを受けて苦しむようだが、肉体的にはわずかな変化しかなかった。それもすぐに再生して消失した。

 リロイに聞いたところ、真祖化したばかりのころは今よりも変調があったようだが、今ではそれほどでもないそうだ。

結論:■■■では真祖に嫌がらせはできても殺害に至ることは不可能。時間がたてば、純粋■■■でも嫌がらせをすることは不可能になるかもしれない。

 

実験2 吸血鬼の代表的弱点、ニンニクの効果はあるのか

 嗅覚が鋭くなっているためか、拒否反応を示したが、それだけであった。葱も同様であることが判明した。

結論:これも嫌がらせの域を出ない。

 

実験3 吸血鬼は流水を渡れない。これは真実かどうか

 リロイを水に入れてみたところ、リロイが虚脱感を感じたと報告。さらにリロイからの魔力流出を確認できた。

 どうやら真祖の魔力は水に対して親和性が高く、触れているだけでどんどん魔力を失ってしまうようだ。

 しばらく放置したら水への魔力流出は確認されなくなり、リロイの虚脱感も消失した。どうやら水が保持できる最大魔力量に達したものと思われる。

 近くの湖に突き落とすと長期間にわたり魔力流出が続いた。この状況下でリロイの体を破壊してみたが、水に触れている場所・触れていない場所問わずコウモリに変わり、水上にて再生を行った。

 水属性の魔法使いに水球を作成してもらいリロイを入れたが、変化はなかった。しかし咒式では効果はあった。

結論:流水もしくは湖や海のような莫大な水に落とせば、真祖から魔力を奪うことができると同時に反撃を封じることができる。しかし殺害には至らないため、これも嫌がらせの域を出ない。魔法的に生み出した水では元々魔力が満ちているためか効果は得られないため、真祖殺害に水属性は無意味である。咒式の水は非魔法的であるためか、魔力はないようだ。

 

実験4 白木の杭を心臓に打ち込む・銀の銃弾といった、伝承の確認

 どちらも、通常の武器でのダメージと同じであった。

結論:やはり真祖の再生メカニズムからして、致命的ダメージは期待できなかった。真祖ではなく通常の吸血鬼に対してなら、退魔に特化させた聖銀(ミスリル)でのダメージは期待できるのだろうが……残念ながら、現状では作成不可能であるので検証不能である。

 

 以上で今回の実験に関する記述を終了する。

 

 

三年目 そろそろ収穫祭

 

 あの事件から二年が経った。さまざまな情報を整理してみれば、火属性魔法が最も真祖狩りに適していると断言できる。

 真祖流自己保存を無効化するには氷属性魔法が適しているし、永久石化状態で完全破壊という手もあるが、どちらも理論上復活の可能性がある。(以下、十数行に渡り復活の可能性が示唆されている)

 

 上記の理由も含め、火属性を採用することにする。しかしどうにも新たな魔法を構成する方向性が定まらない。真祖にコウモリ化することをさせず、細胞を一定以下に減らすなど、どういった魔法を使えばいいというのだろうか。

 

 

三年目 翌日

 

 今朝、リロイに魔法が定まらないことを告げたところ、おもしろい答えが返ってきた。曰く『永久石化魔法みたいに相手に作用し続ける、永久燃焼魔法は無理なのか?』だ。これは盲点だった。永久石化のように全身を蝕む炎であれば、たとえコウモリになって逃げたところで、逃げたコウモリごと燃やし続けることができる。

 これで魔法の方向性は定まった。火属性の永久魔法。これだけではまだ足りないが、リロイに言われて思いついた、さらに属性を足すことで逃げを封じる方法を取り入れよう。

 そのためには闇属性だろう。しかし――(以下、書き殴られていて判別不能)

 

 

五年目 収穫祭翌日

 

 ようやく魔法が完成した。闇属性の『侵蝕』の概念を火属性の『燃焼』と『高熱』の概念と組み合わせた新たな魔法、『蝕みの焔』だ。

 机上の空論でだが、発動時の攻撃性が高すぎるので、そう簡単に発動できないように呪文を長めに設定した。これならば誰にも使用できないだろう。念のため、呪文は日記にも書かないことにした。万一知られて広められたら厄介だ。

 次に発動時の消費魔力を計測する。(以下、書き込まれた形跡はない)

 

 

五年目 翌日

 

 ディートリッヒが火傷を負って倒れている俺を発見したらしい。らしいというのは、俺は『蝕みの焔』を使用して魔力が空になって気絶してしまったから、本当は誰が発見したのか分からないのだ。

 今回の実験でこの魔法の欠点がはっきりした。消費魔力が多すぎる。いや、正確には消費魔力量は少ない。無駄な機能を省いたおかげで、単位時間当たりの単位面積の破壊では。しかし、永久燃焼は永久石化と違い、常に魔力を注がなければ途中で炎が消えてしまう。通常の魔法は発動時に魔力を込めれば終わりなのだから、これでは効率が悪い。さらには、蝕みという効果が後押しをしてしまう。魔法が広がるにつれて消費魔力が侵蝕した体積に比例して上がっていくため、恐ろしい魔力消費量になってしまう。これではどうにもならない。

 魔法に慣れ、ついでに効率化することで消費魔力を減らしてみるか。

 

 

六年目 雪がようやくなくなった

 

 駄目だ。どれだけ消費魔力を減らしても、人間を焼き尽くす、つまり真祖を殺しきるために必要な魔力が、どう考えても俺の所持する魔力では足りない。リロイで実験したが、俺はぶっ倒れてしまい、リロイは時間をかけて再生してしまった。状況を鑑みるに、現在の五倍はないと人を完全に灰にすることはできないだろう。

 俺の魔力成長という■■■■■■■才能も、年成長は約1%。人の寿命では、どう考えても現在の五倍には到達できない。

 くそ、どうすればいいんだ……?

 

 

六年目 涼しくなり始めた

 

 リロイから面白い事を聞いた。真祖化で、魔力量が増えたというのだ。

 そうだ、■■で■■■の魔力量はかなり多かったはずだ。それが偶然ではなく、それなりに多かった子供を選び、さらに真祖化の影響で倍増したとすれば、俺も同じことをすれば何とかなるかもしれない。

 リロイは体感で十倍はなくとも五倍以上に増えたと言っていたから、机上で必要とした五倍を確実に超える。真祖殺しは可能になる。だが……いや、これも予定調和だろうな。

 あの事件からもうすぐ五年。俺も二十歳になった。ちょうどいいだろう。

 収穫祭の翌日。あの事件からちょうど五年。それが、俺が人間をやめる日だ。

 

 

以下、白紙のページが続く

説明
俺はリロイを殺す決意をした。そしてリロイを殺すその日までを、日記に付けることにした。
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