IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ 第一話
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『プロローグ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、そこは真っ白でどこまでも続いていそうな空間だった。

 

 

 

 

 

「う……。こ、ここ…は?」

 

 まだぼやける視界の中、周囲を見渡す。

 が、何もない。真っ白な空間が続くだけ。

 

「ここは、どこ……だ?」

 

 不安に駆られ、鼓動が早くなるにつれて息が荒くなる。

 どこを見ても自分以外のものは存在しない。

 それが、さらに不安を増長させていく。

 

「なんで、どうしてこんなとこに……」

 

 ここに来てしまった理由を思い出そうとしても、何も思い出せない。

 俺はただ、出かけるために家を出て……。

 

 

 

 ――と。

 

 

 

「ほっほっほ。目が覚めたようじゃな■■■■」

 

 バッと背後を振り向く。

 そこには…………

 

「気分はどうじゃ?」

 

 荘厳な空気を纏った、老人が居た。

 いつの間に、俺の後ろに出てきたんだ?

 ……いや。

 よく見てみれば、老人の背後には白い空間が裂けてできたような切れ目がある。

 俺は、頭の中にまず出てきた疑問を口にした。

 

「あなたは?」

「ん? わしか? わしは――神、と呼ばれる存在じゃ」

 

 目の前の老人は、そんなことをさりげなく言ってくれる。

 でも、そこらへんに居る老人とは全く違う空気をその身に纏っていた。

 とはいえ信じられるかといえば……。

 

「あんた、ふざけてるのか?」

 

 百歩、いや、一億歩譲って神だとしよう。

 だとしたら神に会って会話をしてる俺は何だ?

 この空間に来たときから混乱している頭が、一つの答えを導き出す。

 

「夢……なのか……」

 

 そう、夢だ。

 夢なら何があってもおかしくは無い。

 日本のサブカルチャーに汚染され始めた俺が、勝手な妄想でこんな夢を作り出したとすれば納得できる。

 ……ったく、少なくともいい夢じゃない。

 だが、目の前に居る老人がそんな俺の回答をバッサリと排除してくれやがった。

 

「残念じゃが、夢じゃないぞ?」

「は?」

 

 断言されたそれに、ついポカンとしてしまった。

 いや、まて。まだ確証を得たわけじゃない。

 

「つまり、証拠が欲しいと?」

「ああ、そういうこ――?」

 

 返答の途中で、俺は違和感に気付く。

 いま俺は、確証がないと口に出したか?

 まさか――

 

「『心を読んだのか』、とな? そうじゃよ。この空間に居る限り、お主の考えたことは全て読み取れる。意図的に読まないことはできるがの」

 

 おいおいおいおい、どういうことだ?

 くっそ、夢なんだろ? 早く覚めろよ。

 ……どうせ目が覚めたところで、つまらない学校に行くだけってのはわかってるけどさ。こんな夢を見てるより、友達と駄弁ってたほうがずいぶんマシだ。

 

「はて、どうすれば信じてもらえるかの?」

「だから、証拠が欲しいんだよ、もっと明確な!」

「ふむ……」

 

 何か考え込むそうな素振りを見せる自称神。

 次の瞬間には、元通りの姿勢に戻っていた。

 

「なら、こんなのはどうじゃ? ――◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆――」

 

 自称神のうちから放たれたのは、全く理解のできない『音』。

 英語とか、外国の言葉を聞いたときに感じる『理解できない』ではなく、その存在自体を理解できないような、本当に音なのかすらわからない言葉。

 でも、それのどこが証拠だと……、

 

「――さて、今のを理解できたかの?」

「無理だったに決まってる。なんだよ、いまのは?」

「ほら、それが証拠じゃ。夢なら、お主の知らない情報が出てくることはおかしいのじゃよ。夢はあくまでも想像や幻想の類。夢を見た当人に理解できぬモノは出てこないものじゃ」

 

 たとえば――と前置きをおいて、 もう一度口を開く。

 

「家に恐竜が住み着いていた夢を見たとするぞい?」

 

 なんか、突拍子もないものが出てきたな。

 

「それを『恐竜』と、『家』と、お主は理解できるじゃろう? あくまでも、知っていることを組み合わせて考えたことで構成されるのが夢じゃ。そこに、先のような根本から理解不能なものが出てくることは無い。……これでいいかの?」

 

 ……本当に、夢じゃない?

 確かに、夢にしてはきちんと出来すぎてる。

 目の前の、知らないはずの人物がぼやけたりすることもない。

 言っていることも、自分の記憶と照らし合わせれば理にかなっている。

 自分の体を見下ろしても……記憶に残っている、俺の服だ。

 

 

「――わかった。認めたくないが認めるよ、神さま」

 

 結局、俺はそれを認めた。

 その瞬間から、頭の中でこれは現実に起きていることとして処理され始める。

 だがそうするると、新しい疑問が浮かび上がってくるのも不思議なことじゃない。

 

「じゃあ、何で俺はこんなところに?」

「ここは、わしが作った極小の世界じゃよ。いらんものは全て排除した、広さもほとんどない部屋のような場所じゃ」

 

 だから、何で俺はここに……。

 

「率直に言おう。お主は"死んだ"」

「は?」

 

 俺はまた、呆けたような顔をしているだろう。

 だって突然『お前は死んだ』って言われたんだぞ?

 

「そして、輪廻の輪に戻るはずだったお主の魂を掬い上げてここに連れてきたのじゃ。今のお主の姿も、魂に残っている生前の姿を表面化しているに過ぎん」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 死んだって、どうして?」

 

 一旦は鳴りを収めた心臓が、バクバクと嫌な鼓動を再開させる。

 冷たい汗が、首筋を伝った。

 

「それも、『そう思う』ことで感じているように思っているに過ぎんよ。死因、聞きたいかの?」

「そりゃ、もち……ろ、ん……」

 

 ちょっとまて、聞いてどうするんだ?

 というか、聞いちゃいけないって本能が叫んでる。

 

「あ、や、やっぱりいい。聞かない」

 

 それを聞いてしまったら……俺は絶対それを脳内で再生する。

 自分が死ぬところなんて、見たくもない。見たら気が狂いそうだ。

 

「まともな判断じゃな。聞いて思い出して、発狂した人間を何人も知っておるよ」

「でも、本当なのか……俺が死んだって」

「うむ。残念ながら、じゃ」

 

 ここが夢じゃない。なんて、もう理解してる。

 最初にあんなことを言ったのだって、ただの現実逃避だ。

 そんなはずは無い、あり得ないっていう。

 

 ……あーあ、やり残したことなんて大量にある。

 軽いところで見てないアニメを撮り溜めてたし。重要なところだと、まだ彼女とか作ったことないんだけどなぁ……。

 まだ二十年生きてない歳だぞ? やれてないことが多過ぎる。

 

「そこで、お主には提案があるのじゃよ」

「――そういえば、心は読まれるんだったっけ……」

 

 ここ、プライバシーもなんもない空間だな、本当に。

 

「ほっほっほ、そんなに気にするでない」

「流石に気になる。で、提案って?」

 

 

「転生、じゃよ」

 

 

「転生?」

 

 転生って、あの転生か?

 違う世界に行くっていう……。

 

「うむ、その通りじゃ」

 

 この提案受けるか? ――その問いかけに、俺は。

 

「……受けるよ、神さま」

 

 少し考えた後で結論を出した。

 正直なところ、違う世界に行くことに夢を見てないとは言えない。

 それに一度死んだ身だ。少しくらい自分の欲に素直になってもいい気がした。

 

「行く世界ってのは、決まってるのか?」

「いや、特には決まっておらんよ。ただ――」

「ただ?」

「死ぬ直前のお主と関係ある場所でなければならん」

 

 神さまが手を差し出すと、その上によく見覚えのあるバッグが現れた。しかも浮いてる。

 俺の使っていたバッグだ。勝手に開き、中身が出てくる。

 財布、ゲーム機、そのソフト、IS〈インフィニット・ストラトス〉7巻、遊戯王カード etc……。

 

「さて、どうする?」

 

 その物一式が、俺の前まで浮遊してきた。

 目の前でズラリと並ぶ。

 ゲーム……ソフトは某超有名狩ゲーと神狩りゲー。小説と遊戯王は言わずもがな。カードスリーブはけいおん。

 つまり、

 

「狩ゲーの世界か、ISの世界か、遊戯王の世界か、けいおんの世界ってことか」

 

 まず狩ゲー2種は候補から消した。

 だれもあんな常時危険いっぱいの世界に行きたくは無い。文化レベルも違いすぎるし。

 となるとISか遊戯王、けいおんなんだが……。

 

「ISで」

「ふむ? いいのかの?」

「ああ。好きな世界だしな」

 

 メカ系統は大好きだ。

 なら、それが達成される世界はそこしかない。

 

「わかったぞい。それでは次じゃ。なにか、欲しいものはあるか? 物でも能力でもなんでもいいぞ」

 

 ISの世界で必要なもの……。

 

「まずは、『ISの才能』」

 

 せっかくなのに、見てるだけはつまらない。

 

「他は?」

 

 他、か。

 くれるならもらっておくほうがいいな。

 

「なら、『最高の身体スペック』を」

「ほっほっほ。意外と強欲じゃのぉ。次、言ってみぃ」

 

 そういえば、よく忘れるけど心って読まれてるんだった。もういまさらだけどな。

 

「それじゃあ、ガンダム00の機体全てになれる俺専用ISが欲しい」

「わかった。ただ、機体は段階的に開放されるようにするがかまわないな? まずは第三世代機までからじゃ」

「それ以降はセカンドシフトで、と?」

「うむ。それで第四世代が開放される。第五世代はさらにその先じゃ。名称は好きにしてもらっていいぞい。あとは……」

 

 神さまは一度目を瞑って思案すると、目を開きながら続けた。

 

「AIをつけるとしよう。人格はティエリア・アーデじゃ。さて、他には?」

 

 ほか、か。

 もうあんまり思い浮かばない。

 魔法とかを要求しても、ISの世界だとどうしようもないし。

 技術は……さっき言ったISさえあればいい。別にあの世界を発展させてやるっていう感じの野望は持ってない。

 

「よし、わかった。『ISの才能』『最高の身体スペック』『ガンダム00の全ての機体になれる専用IS』……なにか間違いは無いな?」

 

 俺は一度だけ頷く。

 

「あとはおまけも付けさせてもらうぞ? さて、では早速じゃがあちらの世界に行ってもらうぞい。時間は原作の始まる三日前。世界も『男性操縦者は二人』に改変済みじゃ。いくぞ」

 

 神さまの口から流れ出したのは、さっき聞いた『理解不能な言葉』。

 何十秒の間それを聞いていただろうか、神さまはもう一度こちらをに向き直る。

 

「これで準備は完了じゃ。そして、最後に一つ忠告がある。今から行く世界は原作に99%近い世界。ほぼ差異はない。じゃが、お主が入ったことによる1%のズレで何が起きるかわからん。じゃが、それに対してはこちらは介入できんことを憶えておいておくれ。お主が対処するのじゃ。……最後に、何かあるか?」

 

 なら、

 

「感謝を。掬い上げてくれたことに加え、願い付きの転生までさせてもらえることに対する感謝です。……ありがとうございました」

 

 慣れない敬語を使ってみた。

 でもその価値はある感謝だ。

 消え行く俺の魂を救ってくれた……それだけでも十分なのに。

 

「なに……わしの気まぐれじゃよ。行った後についてはそれを頼るといい」

 

 神さまが指差すのは俺の首。

 そこには、ソレスタルビーイングの紋章を象ったネックレスがあった。

 

「頼んだIS……?」

「うむ。ではな、さよならじゃ」

「……はい」

 

 次の瞬間、俺の意識は白に包まれて――

 

 

 

 

 

 ◇

 

「行ってしまったの……」

 

 ワシは、いまこの空間に居た少年を見送った。

 今回彼が死んだのには、本当に誰も関与しておらん。

 ただ、そういう運命だった。……それだけの話。

 しかしながら、わしは彼の魂を掬い上げ、別の……新しく創った世界に送った。

 

「ミカよ……これでよかったのじゃろうか? わしから唯一してやれることだったんじゃ……」

 

 そう。彼はわしとミカ……神と人間の間に生まれた子。

 人間界に残っていたミカは、少し前にこちらに来た……つまり人間界で死んだ。

 わしは『わしらの仲間……神になることが出来る』と提案したが、彼女は断った。その代わりに……、

 

「あなたはあの子を見守ってください。それが、あなたの責任でもありますから」

 

 そう言って、輪廻の輪に戻っていった。

 じゃから、彼が人間界死んだとわかった瞬間にこの場所に呼んだ。

 願いを叶えてやるために。いままで何も出来なかったわしからの唯一できた事じゃ。

 

 

「がんばるのじゃぞ『((拓神|たくみ))』。わしらはいつでも見守っておるから……」

 

 わしはその空間にその言葉を残すと、その空間から立ち去った。

 

 

説明
――俺は、幸せを手にする権利があるのかな?

――俺の幸福は、君のために。

ガンダム00の機体を扱えるIS、「マイスターズ」と最高の身体スペックを神様からもらった少年のIS世界への転生物語、始まります。

にじファンからの移転作品です。
まんまコピーではなく改稿しながら投稿していくので、よろしくお願いしますm(_ _)m
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