東方壊変録
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俺は羽鳥裕平。外の世界から来た。今は紆余曲折あって命蓮寺に居候している。そして、ふとしたことであの人を思い出す…

 

 

神霊異変開始まで…1日

 

「おはよーございます!」

俺は思わず飛び起きた。

もう朝か?時計を確認すると…

 

「まだ3時じゃないか…」

 

 

「あっ!やべ!今日の掃除当番俺じゃん!」

 

もちろんただで居候なんかしない。掃除や料理なんかは俺の仕事だ。

朝は響子と一緒に落ち葉掃き。夜はムラサと一緒に料理を作る。それが今までの仕事だった。でもその日は違った。そう…その日は…

 

〜神霊異変当日〜

 

 

「遅いです!遅いですよ!裕平さん!」

響子が大声で言う。

「響子。そんな大声じゃなくても聞こえる距離だから。あとまだ3時だから。みんな寝てるよ。静かにな。」

「心配ないよ」

鼠耳の少女が眠そうに言う。

「ゴメンな、ナズ…」

「慣れてるから平気さ。しかし人間である君はどうなのかな?」

「え?」

「顔が青い。風邪でもひいてるかもね。ご主人に頼んで漢方でも出してもらおう」

「あぁ、ありがとう」

「なに、礼には及ばないさ」

「あのー…掃除…」

あ、そうだった。すっかり掃除忘れてた…

「そうだな…早く済ませちゃおうか」

響子の頭を撫でながら言う。

響子は目を細めていたが、ハッとしたようになった。うん、犬耳フサフサ気持ちいいね。

「じゃあ、俺はこっちやるから響子は向こう頼む」

「はい!」

こうしていつも通り掃除を始めた。

 

「ふわぁぁあ…眠ぃな…」

「ばぁっ!驚けー!」

「……わー驚いたー…」

「…いい加減驚いてよ」

「ワンパターンなんだよ、小傘は」

一応紹介しよう。この子は小傘。特徴はナス色の唐傘とオッドアイ。どっからどう見ても中二病全開だ。

「驚かし方変えた方がいい?」

「うーん…そうだな」

「わちきね…裕平のこと好き!」

「ぶっ!!!」

「ねー驚いた?」

「ものすごくな!」

「わーい!お墓で実践してくる!」

「心臓に悪ぃ…」

小傘が走り去った方を見る。

〜もしこの時…追いかけていれば…あんなことは起きなかったのかもしれないな…〜

「おっと…掃除掃除…」

〜だけど俺はあんなことが起きるなんて…考えてなかったんだ…〜

2時間後

 

「ふぅ…疲れた…」

「お疲れ様でした。お茶はいかがです?」

「あ、ありがとう」

お茶をくれたのは一輪だった。

尼のような衣装。もう一つの特徴は…

「雲山もおはよう」

「…(こくり」

入道と共にいること。雲山は頑固親父とか言われているが根は優しい…と思う。

「いつもお疲れ様ね」

「さすがに慣れたけどね」

お茶を啜る。あぁ…美味いなぁ…

「お茶、ありがとう」

「いえいえ。あ、あともうすぐ朝ごはんだから響子呼んできてね」

「分かった」

 

「響子ー!ご飯だぞー!」

「あ、はーい!…ん?」

響子の耳が動く。

「どうした?」

「『どこなんだ、ここはぁぁぁ!』」

「うわっ?!」

響子がいきなり叫ぶもんで尻餅ついちまった…いてぇ…

「なんか裏のお墓から聞こえました!」

「墓から…?今はまだ5時ちょい過ぎくらいだし…墓参りって訳じゃないよな。後で見に行くか…」

 

〜…この時…もしすぐに見に行けば…回避出来たのかもしれない…それを思うと…すまない×××…〜

 

〜30分後〜

俺は墓に来た。勿論一人では危険ということで(生身の人間だからな)ムラサに同行を依頼した。

「響子によるとこの辺らしいんだよね?」

「あぁ…」

「誰もいないよね?」

「だな…」

ムラサ言う通り誰もいなかった…

そんなとこに…

「あ、ムラサ。あと裕平。」

「小傘?!ちょうどいい!誰か墓にいなかったか?!」

「いたよ?多分…外の人かな?」

「その人は?!」

「それがさぁ…また例のキョンシーが来ちゃったからさ…」

「あぁ…」

遅かったか…遅かれ早かれ巫女が異変解決に乗り出るだろう。

あとは任せるか…でも…一体どこに…?

 

〜さらに1時間後〜

 

「ぎゃわん!」

響子の声だ!参道から…?

駆けつけると…地面に突っ伏していた。

「響子?!大丈夫か?!」

「うぅ…」

多分…博麗や霧雨だろう…随分と手荒いな…

 

〜この時…博麗や霧雨を追いかければ良かったのだろうか…?今となってはもう遅いのだろうか…〜

 

結局俺は響子を優先した。

俺は響子を空部屋に連れて行き休ませた。そして命蓮寺の全ての人間(?)を集めた。一応分かることは全て聖には教えた。話は聖からあるだろう。

「皆さんも知っているように…響子が博麗の巫女にやられました…」

みんなの様子を窺うと神妙な面持ちだった。

「なぁ…それは博麗の巫女が異変解決に乗り出したって考えてもいいのか?」

「はい。そう考えて間違いないでしょう」

「…そうか」

「まさかとは思いますが敵討ちなんて考えてませんよね?」

「考えてはいないよ。負けるのがオチだ。でも…」

「?でも?」

「異変解決に協力するのは構わないよな?」

「え?」

「響子があんな目にあったのは異変が起きたから。ならば博麗に黒幕をやっつけてもらえばいい」

「なるほど…そいつは名案だね…」

ナズが同意してくれた。

その後は意見もまとまり解散した。

 

〜その日の夜〜

風呂で俺は思った。もし、万が一にも博麗がやられたら…

誰が異変を解決するのだろうか…

八雲か?西行寺か?守矢か?紅魔組か?古明池か?永遠亭組か?

代わりはいくらでもいるのだろうか?俺は他人に頼るしかないのか?もし…万が一にも博麗がやられたならば…俺は…

 

どうすればいいんだろうか…?

 

 

〜翌朝〜

「じゃあ、いってくる」

「あ、裕平。これ。もしもの時の為に」

そういいながらぬえがくれたのは…

「…なにこれ?」

黒い物体X

「それはねー『正体不明の種』」

…え?What is that?

「緊急時にその辺のモノにつければ囮かなんかになるよ」

アバウトなんですねっ!よくわかりません!

「あ、ありがとう」

こうして俺は命蓮寺をあとにした。

 

とりあえず墓に来たはいいが

「どうすりゃいいかな…」

少し歩くと違和感を覚えた。

なんだろうか…この違和感は…

気配を感じ振り向くと少し離れたところにムラサがいた。

「なにやってんだ?」

「聖に護衛頼まれた」

「それは…すまん」

「気にしないでー暇してたからさーそれよりさぁ…キョンシーいないね?」

「!」

違和感はそれか!いつも来ると「ちーかよーるなー!」とか言ってくるもんな。

「ねぇ裕平。これってなんの足跡?」

「足跡?」

確かにところどころに足跡がある。小傘は下駄だろ?それにこの墓には滅多に人は近寄らない。つまりは…

「これはキョンシーの足跡!」

俺は走り出した。

 

 

 

しばらく走るとある墓に辿り着いた。その墓とは…

「草とか生えすぎだろう…」

草を取り払っていくと…

「聖……子………眠…」

と出てきた。残念ながらところどころはかすれて分からない。

なにか絡繰でもあるのか?探していると…突然足元の土が陥没していった。

「ムラサ!」

まわりを調査していたムラサを呼ぶ。

ムラサは最初呆然としていたが事態の深刻さに気付くと駆け寄ってきて手を伸ばした。

しかし…手を掴むことはできなかった。

目の前が真っ暗になった…

 

私は混乱していた。いや錯乱と言うべきかな?だってさ、目の前で知り合いが消えたんだ。錯乱するよ。手を掴もうとしたけどね。空を切るってあぁいう時に使うんだろうね。

とりあえず錯乱していた私を最初に見つけたのは星だった。

帰りが遅いから捜しにきたらしい。そして墓の前で錯乱状態にあった私を見つけたらしい。

私がうわごとのように「裕平が…」と繰り返してたらしいし星もただごとではないと思ったらしい。

そして「裕平捜索隊」が結成された。メンバーは星、ナズ、私、ぬえ。聖は異変解決に乗り出すと言っていた。

 

以下「裕平捜索隊活動日誌」より

 

一日目 有力な手がかり見つからず

二日目 墓に秘密があると思われる

三日目 ムラサが行方不明に現場は裕平失踪場と同じ。やはり墓に?

……

十日目 ついに秘密が分かった。墓の前に一部の地盤が不安定なことが判明。神霊も同じ場所からと思われる。

 

〜翌日〜

「ここが例の場所ですね?」

「はい。」

「結界が張られてますね」

「え?」

「これは私にも破れません」

「そんな…彼らは…」

「裕平さん達の意思次第でしょう…」

 

〜大祀廟〜

「……!……!……裕…!裕平!しっかりして!」

…俺を呼ぶ声が聞こえる。

目を開けたいがなかなか身体がいうことを聞かない。

そしたら…

「とりゃ」

「ぐは」

鳩尾に肘鉄を喰らった。

痛みで強制的に意識が覚醒する。

「あ、気が付いた?」

「ムラ…サ?」

「良かった良かった」

周りを見渡す。地下みたいだ。

「…ここは?」

「わからないよ…」

「だよな…」

途方に暮れる。

ズゴゴゴゴ…

「「?!」」

なんだ?!今のは!

「地震…?」

とりあえず外に…

 

外に…

 

外…

 

あれ…?出口…?何処…?

 

「ムラサァ…」

「裕平ぇ…」

 

「「もう人生終わり…?」」

 

………って…

 

 

「ムラサァァァァァァァ!お前死んでる!船幽霊!死んでる!」

「あぁっ!確かに!でも裕平死んじゃう!」

…出口は…

 

「何処なんだァァァァァァァ」

 

 

ドゴッ

 

「何の音…?」

 

奥で眩しい光が見えた。

 

「出口?!」

 

行かなきゃ!

 

俺らは走り続けた。音のなる方へ。光が差す方へ。

やがて辿り着いたのは…

 

魔理沙、博麗の巫女ともう一人…

あれは誰だろうか…ヘッドホン?をした女性。いや少女か?まぁいいが…そばには明らかに元・外界人と思われる青年。元をつけたのは…彼がお札を額に貼り付けていたからだ。俺は知っている。キョンシーに襲われた者がキョンシーになることを…俺は気付いてしまった。あの朝に聞こえた声は…彼のものだと…あの時…すぐにいけば…助けられたのか…?

 

どうやら戦いが始まったらしい…危ないが彼を助けなければ…それがせめてもの罪滅ぼし。許されないだろう。なにを今更と罵られるだろう…でも…

「過ちは二度も繰り返してはいけない」

「えっ?」

呆然とするムラサを背に俺は彼を助ける為に走り出した。

時折弾幕が頬を掠める。

気にする暇などない。

彼の元に着いた。

彼はこちらを向き口を開ける。

「あの大丈夫ですか?!血が出てるじゃないですか!」

「君か?」

「え?」

「あの朝早く墓で大声を出したのは君だろう?」

「あ、はい…すみません」

「すまなかった…あの時早く駆けつければ巻き込まれなかったのにな…」

「…あぁ…でも…巻き込まれて大切なモノが出来たんです」

「なにはともあれここは危険だ。外に避難しよう」

「あ、はい」

 

走りながら俺は尋ねる

 

「君名前は?」

「透といいます」

「透君…君は外界人かい?」

「え?」

「俺も外界人だったんだ」

 

走りながら俺らは話をした。どれも下らない話だ。でも…それが大切なんだ。

 

(今はもう…ゴメン)

 

 

しばらくして巫女たちが出てきた。

 

異変は幕を閉じた。

 

俺らは彼らを寺に匿った。

 

そして数日後…透君は息を引き取った…

 

思い出す日々…彼の知り合いの話だと彼を大祀廟に埋めるらしい。

 

俺は人の死を経験した。

 

また新しい日々が始まる…

 

説明
異変録の続きです。 
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東方 命連寺 神霊廟 続編 

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