WvsA's  ビギンズナイト 第1話【Fとの遭遇・出逢いはいつも突然・・・?】
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「あぁ、いけない!!遅刻しちゃう!!」

 

ある日の朝、必死で道を走る一人の少女、左舷翔子。頭には白い帽子を被り、制服も白だ。一応、小学生なのだが制服だ。

 

「あ〜もう間に合わ無いかな…」

 

そんな事を思っていた時…

 

カサカサ…

 

 

「?」

 

何かうごめく音がした。辺りを見渡しても特に何も無い。

 

「気のせいかな…」

 

 

カサカサ…

 

 

やはり、なんか聞こえる。

 

「もしかして…お化け?」

 

いや、でるにしてもこんな朝から出ないだろう…。

 

(なんかあそこから聞こえるような…)

 

近くの茂みが何やら動いてる。どうせ遅刻するのだ…正体を確かめてからでもいいだろう。

 

 

カサカサ…

 

 

ゆっくり近づいて見る…。

今のところ変化は無い。

 

 

カサカサ…

 

 

結構近くなってきた…。

音が少しずつ大きくなっていく…

 

 

カサカサ…

 

 

そして、彼女が見たのは…

 

「恐竜のロボット?」

 

それはちょうど手のひらに乗る位の大きさの白いティラノザウルスのロボットだった。

 

「なんか、可愛い…。」

 

翔子が手を出すと腕を伝って彼女の右肩に乗った。

 

「えへへ…ん?」

 

そして、もう一つの存在に気づく…。

 

「なにこれ?」

 

一見するとUSBメモリのようだが、そのわりには大きい。色は紫色で何やら文字が書いてある…。

 

「『J』かな?」

 

かなりアレンジのかかっている字体だがかろうじて読める。

 

『クワッ!!』

 

「え?ちょっと!?どうしたの!?」

 

突然、ロボットが翔子の肩を下り、道を駆け出す。翔子も謎のUSBメモリを持ったままその後を追う。

 

「待って〜」

 

もはや学校の事など忘れ駆けていく翔子。ロボットも時々、翔子を待つかのように後ろを振り向きながらも走る。そして、道を左に曲がり、次に右、また右、またまた右、真っ直ぐ進んで次、左に曲がる。

 

「どこまでいくのよ…。」

そんな翔子の前に巨大な建物が現れた…。確か途中で建設が見合せていたビルだ…。剥き出しの鉄骨が所々錆びている。

 

『クワッ!!』

 

そして、ロボットもビルの敷地に入っていく…。

 

「あ!こら!危ないよ!!」

 

後を追う翔子。どんどん奥に入っていくロボット…。

「もう…」

 

そして、彼女らの目の前にビニールシートの塊が現れる。ロボットもその周りで飛び跳ね回る。

 

「これを剥がせばいいの?」

 

正直、怖いがどんどん心の底から好奇心が沸いてくる。

 

(ちょっとだけなら大丈夫だよね?)

 

そして、シートの端を掴み少し捲ってみると…

 

「!!」

 

その中にくるまれていたのは自分とさほど年端の変わらぬ少年だった。

 

「きゃ!?」

 

思わず後退りしてしまう。

 

(は、早く…救急車呼ばないと…)

 

一目散に駆け出す翔子。

 

 

 

 

 

これが彼女の始まりの夜の始まりだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翔子が少年を見つけてから数時間後…

 

 

 

海鳴病院…

 

「うーん…」

 

一人の少年が目を覚ます。

 

「うっ!?」

 

痛みを感じた自分の体を見てみると腕や至るところに包帯やガーゼがつけられている…。

 

(ここは…)

 

ふと、自分が寝ているベッドに女の子が突っ伏しているのが分かる。それと、その隣に…

 

『クワッ!!』

 

「ファング!」

 

小さな恐竜のロボットが飛び跳ねていた。その横で少女が突っ伏している。

 

「むう?うーん…あ!起きた?」

 

声を張り上げてしまったためか少女が目を覚ましてしまった…。

 

「あぁ…ええと……君は?」

 

「自己紹介する時は自分からってママに習わなかった?」

 

頬を膨らませる少女。少年は慌て自分の自己紹介を始める。

 

「ぼ、僕の名前はフィリップ…。フィリップ・ライトだ。これでいいかな…?」

しかし、少女は依然として頬を膨らませたままだ…。

(不味かったかな…?)

 

そう不安に思った瞬間…

 

「よく出来ました♪」

 

そう言ってニコッと笑うとフィリップの頭を撫でる。

 

「あの…ちょっと……」

 

「ウフフ♪私の名前は左舷翔子。よろしくね。」

 

フィリップを撫でながら自己紹介をする翔子。とても嬉しそうだ…。

 

(結局、やられちゃったんだ…。)

 

そう自分は負けたのだ…。運良く見つからなかったものの、その場で力尽きてしまい結果、翔子の世話になってしまったという訳だ。

「そう言えば、この子『ファング』って言うの?」

 

「え?あ、うん…。」

 

翔子が飛び跳ねている恐竜型ロボットを指差す。物思いにフケっていたフィリップは面食らう。

 

「へえ〜よろしくね!ファングちゃん!!」

 

『クワッ!!』

 

機嫌良さそうに吠えるファング。

 

「そうだファングちゃん。学校に来てみる?」

 

『クワッ?』

 

首を傾げるファング。

 

「ん〜用は私についてくる?って事。」

 

『クワッ…』

 

どうやら迷っているようだ…。そして、フィリップを仰ぐ…。フィリップも少し考えると…

 

「行っておいでファング。その代わりあんまり遠出しちゃダメだよ。」

 

『クワッ!!』

 

あっさり了承。ファングも嬉しそうに飛び跳ねる。

 

「ありがとうフィリップ。さぁ、行こう!ファングちゃん!!」

 

『クワッ!!』

 

再び翔子の肩に乗るファング。二人とも嬉しそうだ。

「あ!そう言えば…」

 

フィリップが何かを思い出したようだ…

 

「銀色のトランク知らない?こんくらいの…」

 

手振りを使って翔子に聞いてみたが…

 

「え?知らないよ?」

 

顔がみるみる青ざめていくフィリップ。

 

「平気、平気!大事な物だったら私も一緒に探してあげるから。今は安静にしてるのよ。」

 

それを慰める翔子。

 

「じゃあ、私は学校に行くから。またくるからね。」

 

そう言って翔子は病室を出て行った。

 

「ふぅ…」

 

息をつき、再びベッドに寝転がるフィリップ。医者などが来て色々聞かれると面倒だから毛布にくるまる。

(ドライバーとメモリが見つから無いのは不味いけど今は休もう…。でも、管理局よりは早く見つけないと…)

 

毛布の中で物思いにふけるフィリップ…。そのうち、眠気が襲ってきてまた眠ってしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼は気がついてなかった…。病室の出入口の影に赤毛の少女が様子を伺っていたことを…

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