けいおん!大切なモノを見つける方法 第20話 他人の幸せを願う方法
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 第20話 他人の幸せを願う方法

 

 

 

 

 

「あーあーあー、コホン。それでは、前回までのあらすじ。桜ヶ丘高校に在学中のごくごく平凡な少年である俺こと冬助。彼はこの夏、同じ部活に所属する平沢唯という名のド天然な女の子に恋をしてしまった。その恋が成就すると信じて疑わない冬助少年だったが、彼は唯少女が既に自分とは違うイケメンに想いを寄せているというショッキングな事実を目の当たりにする。軽犯罪ぐらいなら今の俺やれんじゃね?という思春期特有のヤケクソテンションになってしまった冬助少年に追い打ちをかけるかのように賭けのハーゲンダッツ1年分の料金を請求してくる極悪非道の元気爆発系少女、田井中律。冬助少年の口座の残高は如何に……!?」

 

「長い長い。0点」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唯先輩の衝撃的な事実を知った翌日、俺は某喫茶店に訪れていた。

 以前、憂たちと甘味処巡りツアーを行っている際に見つけた隠れた名店である。混み合うハズの昼過ぎにもかかわらず店内にいる客は疎らで、なかなかに落ち着いた雰囲気が漂っているのと同時にこの店の経営事情を心配してしまうような不安もあったりなかったり。ちなみにここのフルーツワッフルはすげー美味い。

 

「フユ、こっちはシリアスモード全開で来てるのにいきなりアホなあらすじで出鼻くじかれたわ……。つーか誰がいつハーゲンダッツたかったんだよ、人聞きの悪い。ちなみにアタシは抹茶味が好きだコノヤロウ」

 

「さりげなくたかってる律先輩、どうもありがとう」

 

 律先輩は腕を組みながら俺の正面の席に鎮座している。

 

「や、澪先輩にもどんな状況かってのを聞かせとかなきゃなって。……そもそもなんで澪先輩いるんスか?」

 

「……居て悪かったな」

 

 そう、何故か澪先輩もこの場に来ていたりする。律先輩の横で少し不機嫌そうにこちらを睨んでいる。

 

「ごめんっ、どーしても隠し切れなくて……澪にバレちゃった」

 

 両手を合わせて申し訳なさそうに謝ってくる律先輩を見て、まあ大方うっかり口を滑らしたとかそんなトコだろうなあ、と他人事のように思った。

 

「そら別に謝るこっちゃないんですけど、澪先輩なんでそんなにご機嫌斜めなん?」

 

「別に。……ただ、どうしてこんな大事なコト黙ってたのかなって。そんで私にはナニも言わなかったくせに律にはしっかり相談してるんだなって」

 

「えー……、そんなコトぐらいで」

 

 澪先輩は少し拗ねたようにティーカップの中身をティースプーンでかき回す。

 

「アタシにお姉さんポジションとられて嫉妬してんだよね、澪ちゃん?」

 

「うるさい!そんなワケないだろっ!?」

 

 声を荒げてどつく澪先輩とどつかれる律先輩。いつも通りの2人で安心する。

 つーかお姉さんポジションってなんだよ。気味悪い。

 

「ごめんフユ、私やっぱり来ない方が良かった……?」

 

「ぜーんぜん、来てくれて嬉しいよ俺は。そもそも隠すようなコトじゃないし」

 

 無理やりこの場に居るコトに負い目を感じていたらしい澪先輩は安心したように、そっかと呟いた。 言いづらいのは確かなんだけど、誰かに話を聞いてもらいたいってのも確かだ。

 

「つーかさっきまで友達に電話で話聞いてもらってたし。詳しいコトは言ってないけど、『俺フラれたから慰めて』っつってさ」

 

「その友達はなんて言ってたんだ?」

 

「んー、ポッチャリくんっていう仲良い友達なんだけどさ、もうヒデーんだぜ

 

『ざっまあ、ざまああああっ!!他人の不幸でメシがウマいっ、プギャアアっ↑↑↑』

 

……だってさ」

 

「…………」

 

「…………」

 

 おーい、ポッチャリくん、先輩方にドン引きされてんぞ。

 

「本当に友達なのかソイツは……」

 

「うはは、今度会ったらウエスタンラリアットしときます」

 

 律先輩の引いてる感じの声に苦笑いで誤魔化す俺。

 でもマジな話、今みたいにバカ騒ぎして笑い話にもっていってくれた方が気分が楽になるコトだってあるんだ。ポッチャリくんだってそんなコトぐらいわかってる。女の子にはちょっと共感しづらい感覚なのかもしれないけれど。

 

「んでね、ナカミっちゃんっていう友達には、説教されちった。

 

『フユはその子にちゃんと告ったワケでもないし、その子が現段階で別の人好きだっていうだけの話でしょ?そんなんでフラれただなんて笑かすなよ、腰抜け』

 

……みたいな感じで」

 

「うーん……」

 

「……まぁ、な……」

 

 先輩たちは物凄い微妙な表情でどう言ったらいいかわからないって感じだ。どうリアクションしたらいいんだよってね。

 恋愛経験豊富なナカミっちゃんだからこその言葉だと思う。そう悲観的にならずに頑張ってみろよってコトかなぁ。

 

「そーいや、俺が唯先輩のコト好きだって暴露したとき律先輩はえらい驚いてたけど、澪先輩はあんまりびっくりしてないね。ひょっとして梓みたいに知ってたんですか?」

 

「ううん、そんなコトないよ。律から聞き出したときはビックリした。でも、すごい納得したって言うか」

 

「納得?」

 

「うん、冷静になってみればそう不自然でもないなって感じ、上手く説明できないけど」

 

 そんな澪先輩に対してふーん、と鼻を鳴らしていると、先ほど注文したフルーツワッフルが店員さんによって運ばれてくる。

 俺が黙ってワッフルをもふもふ食っていると、律先輩はバッサリと本題に入ってきた。

 

「お前の友達の言い分じゃないけど、別に唯に告白してはっきりフラれたワケじゃないんだろ?こないだも同じこと訊いたけど、ぶっちゃけどーすんだ?」

 

 うん、昨日も全く同じコト訊かれた。でも、昨日とは心情が全く変わってしまっている。

 俺は実際のところ、その質問に対して何の答えも用意していなかった。考えるのが嫌で、つい逃げてしまっていたんだ、悪い癖だと思う。

 ワッフルを咀嚼しながら、どうしたもんかな、とここで初めて考える。

 そして、真っ先に思い付いたコトを言ってやった。

 

「唯先輩とその光さんって人が上手くいくように、力になりたいな」

 

「…………」

 

「…………」

 

 先輩たちはナニも言わない。

 俺は紅茶にミルクを入れたかったので、律先輩の手元にあるミルク差しを取ってもらおうとしたのだが、律先輩の言葉によって遮られてしまう。

 

「こンの……大ボケおっ人好しがっ!!なんでフラれた次の瞬間フった女の恋応援してんだよ、ヘタレフユがっ!」

 

「えー……」

 

「自己顕示欲ならぬ自己犠牲欲の塊だなぁ、この人生送りバント野郎!」

 

 律先輩は、唾を飛ばしながら超失礼なコト言ってきやがる。

 なんか俺も無駄にテンション上がってきた。

 俺と律先輩の茶番開始の合図である。カーン。

 

「じ、人生送りバントだと……っ!上手いコト言うのやめろやコラぁ!」

 

「フユにはピッタリだろうーが!」

 

「うるせえ、牽制球をホームランしそうなアンタにゃわかんねーんだよ、ガサツ女!」

 

「が、ガサツ!?お前が女々しいだけだっつの!アタシは普通の女だ!」

 

「なーにが普通の女だよ、笑かすなっ!普通の女はわざわざ喫茶店に来てまで無料のお冷飲まねえってんだ!観葉植物か、アンタは!?」

 

「金欠で人が水で我慢してんのになんつうコトを……!?先輩に気遣いゼロで目の前で美味そうなモン食ってんじゃねえよバーカバーカ!」

 

「そんで普通の女はいきなり三角締め掛けてこねぇよ、グレイシー一族の末裔だろアンタは!握力強すぎて、律先輩オニギリ物理的に握れねーもんな!解体屋ジョネスですか!?」

 

「うっさいわっ!つーかフユ、痩せすぎなんだよ炒めすぎたモヤシかおめーは!そんなんだからギター弾いてても蚊の鳴き声みたいなほっそいしょっぱい音しか出ねーんだよ!」

 

「ひ、人が気にしてるコト言いやがったな!?アンタの布団叩きの音みてーなバスドラよりマシだろうが!」

 

「布団叩きだぁ!?これ以上アタシの脚が太くなったらどーしてくれんだ!?」

 

「そしたらドラマーからキックボクサーにでも転向したらいいだろうがよ!あ、やっぱ無理か、りっちゃん短足だもんな、うははっ」

 

「ンなぁろぉ……!喧嘩売ってんのかゴラぁ!」

 

「あーあーあー、むしろ買ったるわ来いやオラぁ!」

 

「おっしゃ、表出ろやぁ!!」

 

 やばい、楽し過ぎる。俺も律先輩もそろそろ笑うの我慢できなくなってきた。

 

「いーーかげんに、しろーーーっ!!」

 

 澪先輩の怒号と共に、どごぉん!とギャグコミック調な効果音が俺と律先輩の頭の上で鳴り響いた。澪先輩のゲンコツ喰らって、俺たちは悶絶する。

 

「フユ、律、お前ら絶対楽しんでやってるだろ!?あと、……滅茶苦茶目立ってるから!」

 

 確実にタンコブができたであろう頭頂部をさすりながら周りを見ていると、確かに無駄に目立ってしまったコトがわかる。俺と律先輩の話を聞いていたらしい周りの席の家族連れやカップルのお客さんたちが、顔を伏せて爆笑している。あっちのウエイトレスさんたちは、トレイで顔を隠しながら笑いを必死に堪えている。

 

「あー、……俺たち何の話してたんだっけ?」

 

「澪の手がデカイって話だろ?」

 

「そうそう、そうだった。確かにデカイかもしらんね」

 

 そのデカイ手によって、再び振り下ろされる澪先輩の鉄槌。

 俺と律先輩は、二重のタンコブをつくりながら涙目で、ふざけてすいませんでしたと声を揃えて謝った。

 重ね重ね、馬鹿二人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく……。フユ、さっきからやたらと笑い話にもってこうとしてるけど、唯のコトもう話したくないのか?」

 

 澪先輩の、真剣な声。本当に、心配そうな声。

 俺は助けを求めるように律先輩に視線をやるが、もう律先輩は笑ってなんかいなかった。

 さっきまでの阿呆なノリでは、誤魔化しきれないコトを悟る。

 

「あー、や、別に話したくないってワケじゃないですよ。ただ、こういうときどういう感じの話したらいいかわかんなくて」

 

 本当のコトだ。だから、さっきみたいに馬鹿話している方が楽でいい。

 

「前にさ、律先輩が言ってくれたんだ、好きにやったらいいよって。俺、ソレすげえ嬉しくてさ、だから好きにやってみようって思う。ただ、自分がどうしたいかわかんないだけだよ。わかったらやりたいようにやるから。だから大丈夫」

 

 エゴイストみたいだけど、今の俺にはそういうのが必要なんだ。

 

「あ、でもこのコトはオフレコで。2人とも唯先輩に好きな人いるだなんて話聞いたコトなかったろ?」

 

 律先輩と澪先輩が、肯く。

 軽音部が、あんまりその手の話をしない傾向にあるってのも理由のひとつなんだろうけど。

 

「唯先輩も隠したいワケじゃないんだろうけど、このコト広まったら嫌な気持ちになると思うんだ。そんで唯先輩、いつかきっと先輩たちに相談すると思う。だからそのときまで黙ってて、相談に乗ってあげて欲しいんだ」

 

 そう遠くない内に、そのときがくるだろう。

 信頼できる仲間に、打ち明けてくれるはずだ。

 

「……お前さぁ、まったく」

 

 快くわかった、って言ってくれるモンだと思っていたが、澪先輩は恐ろしく深いため息をついて、悲しそうな顔でこう言った。

 

「なんでそんなに他人のコトばっかり優しくするんだよ?今つらいのはフユ、お前だろ?どうしてなんだよ……」

 

 顔を伏せて、澪先輩は続ける。

 

「ほんの少しでいいからさ。ほんの少しでいいから、自分自身のコトも心配してあげなよ……」

 

 自身を気遣っていないつもりは毛頭ない。でも、澪先輩たちは優しいからそう見えてしまうのかもしれない。

 いつだったか梓も言っていた、俺のこういうトコロは、周りの人間からしたら、よく思わない。不愉快に感じてしまう人もいるだろう。

 

「コレ言ったらさ、澪先輩たちは怒ると思うんだよな、無責任だとか勝手だとか言って」

 

 だけど。

 

「俺は俺の心配なんかしなくてもいーんだよ」

 

 自分は後回しにしても大丈夫なんだ。

 

「だって、今みたいに澪先輩や律先輩が俺のコト心配してくれるじゃんか」

 

 恥ずかしいけど、俺は続ける。

 

「だから、自分の心配なんてしなくてもいーんだ。そんかし俺は澪先輩や律先輩たちのコトを心配するよ。文句あるか」

 

 先輩たちの反応が気になって、視線を2人の顔へ移す。

 すると澪先輩の手が伸びてきて、優しく俺の頭を叩く、確かに無責任だな、と。

 律先輩は俺にデコピンかましてきやがった、勝手だっつの、と。

 だけど、澪先輩も律先輩も、嬉しそうに笑っていた。

 俺は顔が赤くなっていくのを感じながら、デコピンされた額をさする。

 

 餓鬼臭い考え方だけど、俺はそれでいいやって、確かにこの時はそう思えたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 澪先輩と律先輩の2人と別れてから、俺は平沢宅へ向かった。

 憂から、会心の出来のミートパイ焼けたから取りに来い、というメールを貰った。大方、昨晩光さんとの夕食用に作り過ぎて余らせてしまったんだろうと推察する。

 恐らくは唯先輩もいるだろう。唯先輩と顔を合わせるのが少し辛いけど、ここで行かないなんて選択はどう考えたって不自然だ。

 

「つーか、まだ唯先輩が家にいるって決まったワケじゃねーし。案外、普通にフラっと外出してるかも」

 

 腰の引けた独り言を呟く。

 どうか唯先輩と会いませんように、と信じてもいない神様に祈りながら、杖を鳴らして憂の家へと急ぐ。神様お願いしますよ。

 

 

 

 

 

 速攻、唯先輩に遭遇した。

 

「―――わ、ビックリしたっ!フーちゃんナニやってんの?」

 

「……神様って、やっぱり俺のコト嫌いなんだな。うん」

 

 家の前でインターホンを押そうと指を伸ばした瞬間、今から外出するらしい唯先輩が玄関から飛び出してきた。最低のタイミングである。

 

「カミサマ……?フーちゃん、どうして空睨んでるの?ハトさんのフン直撃した?」

 

「直撃してねーよ、……今度神様に会ったらブン殴る計画を企てていただけです」

 

「ヘンなのー」

 

 クスリと笑う唯先輩は、やっぱり超可愛いな、くそう。

 

「俺は憂に呼び出されたんス。唯先輩はどっかお出かけですか?もう結構いい時間ですけど」

 

「うーん、と、ね。……ちょっと、まぁ」

 

 珍しい、こんなに歯切れの悪い唯先輩は久しぶりに見る。レスポンスの良さは唯先輩の専売特許じゃなかったのか。

 

「……?どうしました、ナニかやらかしたとか」

 

「そうじゃなくてね。……えーと、えと」

 

 なんだかますますテンパっている。

 うーん、プライベートなコトだし、突っ込んで訊きすぎたな。だからデリカシー欠如野郎とか純に小馬鹿にされんだよな。

 話題を変えようと、俺はさっきから別に気になっていた疑問を唯先輩にぶつけるコトにした。

 

「ところでさ、昨日も思ったんですけど。唯先輩、服の趣味変わりました?」

 

「え?な、なんで?ドコが?」

 

「や、ドコがって……」

 

 唯先輩は普段からパンツルックを好むけれど、今日の唯先輩は違っていた。

 涼しげな空色のシンプルなダンガリーワンピースを身に着け、小さなメッシュバックを提げている。ウェッジサンダルの影響か、ちょっと背が高く見えて大人っぽい印象が前面に出ている。

 少なくとも今までに俺が見たことの無い唯先輩で、ダントツに可愛いと猛烈に思った。

 

「ど、ドコかヘンかな……?」

 

「すごい―――」

 

 すごい綺麗だ、って。

 

「光くんは、気に入ってくれるかなっ!?」

 

「…………」

 

 ああ、……そーいうコトね。

 急激に、自分の中でナニかが冷めていく感覚を覚えた。

 

「実はね、今から光くん家行こうかなって思ってたんだっ。フーちゃんはどう思う?」

 

 すごい綺麗だ、って言おうとしたんだ。

 

「―――別に。どうだっていんじゃね?なんか背伸びしてる感じしかしねーけどさ」

 

 でも、俺の口から出た言葉は、汚い言葉だった。

 

「え……」

 

 唯先輩はびっくりしたように俺の顔を見る。

 やめとけよ、もうこれ以上余計なコト言うなよ俺。やめとけって。

 

「つーか光さん本人に訊いたらどうですか?俺なんかじゃなくてさ」

 

「そう……だよね。……ごめんねっ、ヘンなコト訊いちゃって」

 

 唯先輩は、わかりやすく落ち込んでいた。

 俺の嫉妬にまみれた嘘の言葉を真実と勘違いして、落ち込んでいた。

 唯先輩は俺の言葉を信じてくれている。そんな信頼を、俺は今踏みにじっているんだ。

 

「……そうだね、ちょっと背伸びしすぎてたかもっ。なんか私には似合わないよねっ」

 

「…………」

 

「光くん、会うたびに大人っぽくなっていくんだぁ、だからスゴイ焦っちゃうの、私」

 

「……そスか」

 

「光くんね、大学でもモテモテなんだって。……ホントすごいよねっ」

 

 わざとらしいまでに明るい声でそう言う唯先輩の表情には、様々な感情が写っていた。想い人が誰かに取られてしまうのではないかという焦燥。自分がどういう風に見られているのかという不安。そして、ほんの少しの諦観。

 そんな唯先輩を眺めながら、俺は今自分がどうしたらいいかわからなかった。

 

「あの、唯先輩。1コだけ訊いていい?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「…………」

 

 この三点リーダにかなりの葛藤が込められているコトを強調しておくが、結局俺は空気を読まずに訊いてしまった。

 

「唯先輩はなんで光さんに告白しないんですか?」

 

 デリカシー欠如野郎ここに極まり。

 自分でも寒気がするほど不用意な質問だとは思ったが、今更後悔してももう遅い。

 当然ながら唯先輩は困ったように苦笑いをしていたが、意外なコトにポツリポツリと話し出してくれた。

 

「や、だから光くん大学でもすごい人気あるし……」

 

「…………」

 

「私のコトなんて、きっと妹ぐらいにしか思ってないだろうし……」

 

「…………」

 

「それに私、あんまり女の子らしくないし、子供っぽいし……」

 

 尻すぼみに小さくなっていく、唯先輩の声。

 唯先輩と知り合ってから、もう半年が経つ。けれども、こんなにも自信が無さそうにしている唯先輩を見るのは初めてだった。

 先輩だって、怖いんだ。拒絶されるのが怖くて、勇気が出ないんだ。あの唯先輩だって。

 

「あははっ、家の前で私たちナニ話してんだろう、おかしーねっ。……やっぱ、今日は会いに行かなくていいや。せっかくフーちゃん来てくれたしっ」

 

 唯先輩はやっぱりムリヤリな明るい声で、ウチでなんかして遊ぼうよっ、と言って俺の手を掴んで出てきたばかりの家の中に戻ろうとする。

 突然、どこからか醜い声が聞こえてきたような気がした。

 

 ―――言っちまえよ。

 

「唯先輩、ちょっと待ってや」

 

 腕に力を込めて、俺の腕を引っ張る唯先輩を強引に引き止める。

 

 ―――告白のチャンスは今しかないぜ?

 

 確かに、今の不安そうな唯先輩に告白すれば、ナニかが変わるかもしれない。

 ひょっとして、俺のコトをひとりの男として見てくれるかも。

 

 ―――そんなお高くとまったヤツ放っておいてさ、俺と付き合おうって言っちまえよ。

 

 上手くいくかどうかわからない素晴らしい男じゃなくて、俺みたいなやっすい安パイで妥協してくれるかもしれない。

 でもきっと、唯先輩を苦しませて、傷つけるような気がする。

 

 ―――律先輩だって好きにしろって言ってただろ?自分でもエゴイストになれって思ってたんじゃないのか?

 

 違う、律先輩はそんな軽くて安い意味で言ってくれたんじゃなくてさ。

 

 ―――グダグダ言い訳はいいから告白しろよ。その方が自分だって楽だし、幸せだろ?貧乏クジばっか引いてて、面白えのか?

 

 貧乏クジなんかじゃない。今回のコトも今までのコトだって。

 

 ―――言えよ。言えって。言え言え言え。言っちまえ!

 

 俺は、唯先輩の顔を真正面からしっかりと見た。

 唯先輩はとてもとても悲しそうな顔をしていた。

 最初から、決まっていたんだ。

 

「『楽しさ成分』が足りてねえな、唯先輩は!」

 

 あーあ、バカだ。と、溜息が聞こえてきた気がした。

 でも、知るかそんなモン。

 

「………へ?」

 

「へっへっへ、知らねーの?楽しさ成分があるとすっげー幸せになれんだぜっ」

 

 唯先輩はポカーン、だ。ものすげぇヘンなモン見るように、俺のコトをじっと見つめてくる。

 

「今さえ楽しけりゃイイんだよ。ソレを死ぬまで頑張りゃ、楽しさ成分満タンさっ!」

 

 唯先輩の大きな瞳をしっかり見ながら、俺は続ける。

 

「唯先輩は今ホントに楽しいか?そうじゃねえだろ。唯先輩はホントのホントに心底楽しいって思えるときは、きっと傍に光さんがいるはずだろーがよ」

 

 悔しいけれど俺じゃあ、駄目なんだ。

 俺なんかより、ずっとずっと圧倒的な適任がいる。

 

「今からでも遅くない。光さんトコ、行って来なよ」

 

「フーちゃん、私………」

 

「大丈夫!ビビる必要なんてこれっぽっちもねぇや、唯先輩の笑顔より魅力的なモンなんてねーよ、きっと光さんだって大好きさ!上手くいくよ!」

 

 なあ唯先輩、信じられるか?コレって、全部俺の本音なんだぜ?

 

「だからさ、頑張れ、唯先輩」

 

 醜い感情も矮小な感情も打算的な感情も、全部ゴミ箱に突っ込んで、本音を言った。

 唯先輩を、改めて見る。

 案の定というかなんというか、やっぱり唯先輩は笑った。

 目を細めてクスクスと笑い、次第に肩を揺らして嬉しそうに笑う。

 

「なんでだろね?フーちゃんと話してると、なんでこんなにもあったかい気持ちになるんだろう。……ありがとう、フーちゃん」

 

 元々落ち込ませたの俺じゃんスか、と軽口を叩いてやろうと思ったけれど、何故だか口が開かなかった。

 

「フーちゃんと話せて、ホントに良かった。……行ってくるね、私頑張ってくるからねっ!」

 

 そう言って、唯先輩は俺の手を握っていた手を離し、小走りで俺の横を通り過ぎて行った。

 

 俺じゃない、別の人のところへ。行ってしまった。

 

 本当の本当に、行ってしまった。

 

 走っていく唯先輩の背中に、ガンバレ唯先輩、と小さな小さな声で呟く。

 

 その小さな呟きは、誰の耳にも届くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唯先輩の背中が見えなくなるほど遠くに行ってしまった。

 カラン、と乾いた音が鳴り響いた。結構長い付き合いになる愛用の杖が、俺の足元に転がっている。

 平沢家の表札に背を預け、そのままズルズルと俺の体は崩れ落ちていく。家の塀にもたれかかりながら、ペタリと座り込む。膝の間に頭を入れて、唇を噛み締める。

 

「あーあーあー、うっせーよ」

 

 誰かが俺のコトを笑っているような気がしたので、おもむろに呟いてみる。

 笑っているのは神様だろうか。ばーかばーかええかっこしぃ、と神様はゲラ笑いをしている。

 

「だって、しょーがねーじゃん……。コレで良かったんだって」

 

 人ん家の前で座り込みながら、ブツブツと独り言をつぶやく俺は、相当に不審に思われるだろうが、構わず続ける。

 

「これが俺なんだよ、こーいう役回りのキャラなんだよ……。別にいいだろ」

 

 呟きながら、俺は完全に失恋したんだな、と改めて思った。

 唯先輩は、たくさん俺の名前を呼んでくれた。

 

『フーちゃんってさあ―――』

『へいっ、フーちゃん―――』

『フーちゃん、こっちこっち―――』

『そんなのフーちゃんなら―――』

『ねー、フーちゃん聞いてよ―――』

 

 いっぱい呼んでくれた。

 唯先輩の楽しそうな声が、溢れてくる。

 

「フーちゃん……か」

 

 呟いて、自分は失恋したんだな、と再び実感した。

 

「さびしい、なあ」

 

 口を突いて出た言葉は、今にも消えてなくなりそうだけど、確かな本音だった。

 気持ちを言葉にした途端、本当にとてつもないほどの寂寥感が襲ってきた。寂しくて寂しくて、仕方がない。

 こういうときは一人になりたくなるのがセオリーじゃないのか、と自分に訊いてみたが、やっぱり寂しくて、俺は今すぐ誰かに会いたいらしい。

 また律先輩に電話しようか。澪先輩とまだ一緒にいるだろうから、世間話でもしてもらおうか。それともムギ先輩のあのおっとりオーラで癒してもらおうか。梓にもちゃんと話さなきゃ、また怒られそうだ。純は何て言って優しくしてくれるかな。ポッチャリくんとナカミっちゃんたちとバカ騒ぎすんのも悪くないな。さわ子センセイは今日学校に来てるかな。

 様々な人が、頭に浮かぶ。

 でも。

 

「憂に会いたい」

 

 でも、何故だか迷うことなく、俺は憂に会いたかった。憂の声が無性に聞きたい。

 

「憂に会いたいよ……」

 

「私に?フユくんが?」

 

 頭上から、突然憂の声がした。

 顔を膝の間から上げると、目の前に憂が居た。

 不思議なコトに、少しも驚かなかった。むしろ、ドコか安心していた。

 

「憂、こんなトコでナニしてんの?」

 

「10:0でこっちのセリフだよ。人の家の前でうずくまって、ブツブツ呟いてるなんて、通報されても知らないよ。っていうかなんでウチ入って来ないの?」

 

「んー、と。なんかそーいう気分だった、から?」

 

「ヘンなのー、どういう気分―――………」

 

 憂は俺の顔を見ると、口をつぐんだ。相当にひどい顔をしていたんだろう。

 憂はそんな俺に対してナニも言わず、突っ掛けをカラカラ言わせながら俺の隣へ移動し、同様に自分の家の塀に背を預けながら座った。

 顔を見なくても、わかる。憂は今、きっと俺のコトをすげー心配してくれている。俺の表情を見ただけで、ナニかあったコトぐらいすぐにわかっただろう。

 でも、俺は今までのコトを話したくなかった。でも、寂しい、誰かと一緒に居たい。我ながら恐ろしいほどの支離滅裂っぷりだ。

 

「…………」

 

「…………」

 

 俺はナニも言わず、憂もナニも言わない。

 ただただ俺たち2人は家の前の道で、肩が触れ合うぐらいの距離で並んで座る。

 

「……ナニかあったか、訊かねーの?」

 

「訊かないよ」

 

「……なんで?」

 

「フユくん、聞いて欲しくなさそうな顔してるから」

 

「……そっか」

 

「だけど、寂しそうな顔してる。誰かと一緒に居たいって。だから私が傍にいるね」

 

「……マジ助かる」

 

 憂は俺をチラリと見ながら優しく笑った。

 

「憂、よくわかるね。そんなに面倒そうな顔してたかなぁ」

 

「わかるよ。私、フユくんなんかよりフユくんのコトわかるんだから。任せなさい」

 

「そら頼もしぃね」

 

 やっぱり、憂はいい。憂は優しい。話しているだけで、あったかい気持ちになる。

 

「なんか、どーでもいーお話、しよっか。話してるウチにフユくんの気が晴れるかも」

 

「そう、な。……しょーもねー話、したいな」

 

「じゃ、フユくんっ。今日は何月何日でしょう?」

 

 俺は手首に巻いているBaby-Gを覗いた。

 

「はちがつ、にじゅーくにち、ごじにじゅっぷん」

 

「そう、正解っ。……夏休み、あとちょっとしかないね」

 

「うん、ビックリだ。寂しいね」

 

 正直言うと、あと数日で夏休みが終わるだなんて信じられなかった。

 もっともっと、この夏が続くんだと思ってた。

 

「私たち、いっぱい遊んだね」

 

「そうな、夏休みの半分以上一緒にいたんじゃないか?」

 

 ほとんど毎日顔つき合わせて、何かしら遊んできたっけ。

 

「あはは、そーかも。……ねえ、フユくん覚えてるかな?夏休み始まる直前に、ウチでナニして遊ぶか計画立てたよね?」

 

「おぉ、覚えてんぞ。勉強合宿んときな」

 

 まるで小さい頃の子供に戻ったように、餓鬼丸出しで計画を立てた、楽しくて仕方がなかったあの夜。

 

「私たち、たくさんお祭り行ったね」

 

「飽きるほど花火見たし、やったよな」

 

「バーベキューパーティもやったよね」

 

「クラスの連中のほとんど巻き込んで、えらいバカ騒ぎしたな」

 

「遊園地も行ったよね。お買い物もたくさんした」

 

「おかげで俺たち散財しまくりで、財布軽くなっちったもんな」

 

「映画もたくさん観たね、ジャンル問わずに」

 

「映画館というより、憂ん家でのDVD鑑賞会ばっかだったけどな」

 

「フリーマーケットも楽しかったね、店員さんやるの面白かったー」

 

「売上はその日の打ち上げの焼肉代に全部消えたけどな」

 

「駅周辺の甘味処巡りツアーも無事終わったし」

 

「今度正式にランキング決めようぜ」

 

「天気良くて涼しい日多かったし、ピクニックも結構したんじゃない?」

 

「弁当食って、ずっといつもみたく駄弁ってるだけだったけどな」

 

「お料理対決もたくさんしたね、私の15勝っ」

 

「俺の15敗……」

 

 憂の言う通り、話しているだけで俺の気はどんどん晴れていった。

 憂と一緒に世間話をする。これだけのコトでこんなにも気分が楽になるなんて、やっぱり憂はスゴイと思った。

 

「私ね、もう何回も夏を経験してるけど、こんなに楽しかった夏は生まれて初めてだよ」

 

 憂は、心の底から楽しそうにそう言った。そんな楽しそうな憂を見ているのは、大変気分が良い。

 

「フユくんはどーだった?」

 

「憂と同じだよ、今まででイチバン楽しい夏だった。……でも、いろんな意味で激動の夏だったなぁ」

 

 これもまた、今までの人生でイチバン激動な夏だった。

 

「つらいコトもあったしさ。なんと驚き、人前で何度かガチ泣きしちゃったんだよ。他にもイロイロあってさ」

 

「うん、ちゃんとわかってるよ。でもフユくん、そういう経験のおかげか、この夏だけでおっきくなったよ」

 

「えぇ?そんなに背ぇ伸びてねーよ。今174か5くらい?」

 

「身長じゃないよ。ここだよ、ココ」

 

 憂はそう言って、ポンポンと俺の胸を叩いてくる。

 そうだろうか、俺の中身は少しでも成長しているんだろうか。

 なんだか照れ臭くて、強引に話を続ける。

 

「ま、まあ、本当にイロイロあった夏だったけど……、数えきれないぐらい笑ったなぁ」

 

「うん、笑った。たくさん」

 

 嬉しくなってニッコリ笑ったり、楽しくなってニヤって笑ったり、腹抱えてゲラゲラ笑ったり。

 今までの人生で、イチバン笑うコトができたと思う。ソレは、とっても素晴らしいコトだ。

 そうこうしているウチに、憂がフフッ、と笑った。

 

「言ってるそばから憂笑ってるし。ナニ、どしたん?」

 

「ふふっ、……なんだか、おかしいの。これだけ楽しい夏休みの思い出があるのにね、どうしてか今こうやってフユくんと並んで座って夕日眺めてる思い出の方がずっとずっと心に残りそうなんだ。ヘンでしょ?」

 

 憂は本当に可笑しそうに笑った。他にも最高の思い出いっぱい作ったのにね、と。

 

「私がおばあさんになっても、今日の日のコトをたまに思い出す気がするなぁ」

 

 きっとすぐ忘れるだろ、と思ったけど、口には出さなかった。

 不思議と憂の言ってるコトに共感できたからだ。

 

「ま、夏が終わって寂しい感じすっけどさ、新学期始まったら始まったできっと楽しいって」

 

「そうだね、秋は学校行事が賑やかになるしっ。……あ、じゃあ次は、フユくんのお姉さんからお父さんの季節の番だね」

 

「……よく覚えてんなぁ」

 

 俺の姉の名前は千夏、父の名前は秋名。

 昔、ちょろっと言っただけなのに覚えてくれていて、俺はなんだか自分のコトのように嬉しくなる。

 アホ面の自分の父親を思い返していると、俺はあるコトを思い出した。マジでなんでこのタイミングでそんなコトを思い出したのかわからない。

 

「昔さ、俺が滅茶苦茶ヘコんでるときにさ、父さんが気になるコト言ったんだよ」

 

「気になる?お父さん、何て言ったの?」

 

「お前にも大切なモノ見つかるよ、って」

 

 確か、バスケみたいな大切なモノ……だったっけ。

 

「そんときはさ、俺すげぇ荒れてたから、んなモンあるワケねぇだろって思ってたんだけど……。ところで、憂にはある?大切なモノ」

 

「え、私?……えっとね、えーとね……っ」

 

 憂は急に話を振られて焦ったように頭を回転させて考えている。

 

「まあ、そうなるわな。大切ってどのレベルでの話?つーか大切ってなんなんだよ?って感じだよな」

 

 こんな質問、答えにくいったらありゃしない。

 

「でも、シンプルに考えりゃ、たくさんあるんだよな。高校に入って、音楽と出会えたし」

 

 安い言い方だけど、バスケットに代替できる大切なモノならもう既にあるって話になってくる。でもさ。

 

「大切な人だってたくさんできたよ、他にもたくさんある。……でもさ、そういうのじゃなくてさ。でも……」

 

「……でも?」

 

「…………」

 

 急に冷静に我に返ってみると、俺はすげー恥ずかしいコト言おうとしてるんじゃないかと気が付く。青臭さ満載のイタイ話なんじゃないかと。

 

「……憂、笑わない?」

 

「笑わないよ、絶対。約束する」

 

「ゼッタイだかんなっ」

 

 あーあーあー、こんなコト言うのは、唯先輩にフラれた所為だ。きっとそうだ。

 今までに、誰にも言ったコトが無い。家族にも、唯先輩にも。

 憂なら、話してもいいやって思えたんだ。

 

「ソレはさ、目に見えないけど、暖かくて、優しくてさ。持っているだけで幸せな気持ちになれる、みたいな感じの、そんな夢みてえな。そんでもって、ありふれてて、みんなが持ってる。そんな大切なモノ」

 

 憂は俺のすぐ隣で、静かに真剣に聞いてくれている。

 

 

 

「俺は、大切なモノを見つけたいんだ」

 

 

 

 普通の人に言ったのなら。

 んなモンあるワケねーだろって言うかもしれない。もうとっくの昔から持ってるよって言うかもしれない。そんなん探してるヒマあったら勉強か仕事しろって言うかもしれない。

 でも憂は違った。

 

「フユくんなら、きっと見つかるよ!ゼッタイのゼッタイのゼッタイに!」

 

 憂は、俺の妄想みたいな言葉を本気で信じてくれる。

 俺が見つけられるって、本気で信じてくれる。

 俺はそれが、たまらなく嬉しかった。

 

「大切なモノを見つける方法、わかったら真っ先に憂に教えてやんよ」

 

「うんっ、楽しみに待ってるからね」

 

 そう言って、俺たちはいつものように子供みたく笑い合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は神様なんて信じないけれど、もし本当に存在するなら、お願いをしてみようと思う。

 俺にこんなにも優しくしてくれる憂や他のみんなを、幸せにしてあげて欲しい。

 

 そして、唯先輩のコトを思い出す。今頃、きっと光さんと楽しくやっているに違いない。素敵な笑顔をしているんだろうな。

 神様にお願いを続ける。

 唯先輩の笑顔が、ずっとずっと絶えませんように、光さんとずっとずっと仲良く幸せになりますように、と。

 神様、アンタをブン殴る計画はチャラにしてやるからさ、よろしく頼むぜ。

 

 

 

 

 

 俺は、憂の隣で、願い続けた。

 神様なんているワケないのに。本気でその願いが叶うようにと。

 本気で願っていたんだ。

 

 

 

 空気の冷たさが秋の訪れを告げる、そんな夏の終わりのコトだった。

 

 

 

 

 

説明
勢いとノリだけで書いた、けいおん!の二次小説です。
Arcadia、pixivにも投稿させてもらってます。

よかったらお付き合いください。
首を長くしてご感想等お待ちしております。
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