異世界冒険譚 月殺し編 其の捌 看破
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keiiti side

沙都子が学校に来た日。俺達は今日も児童相談所に訴えに行っていた。こんなに人数を揃えた。何時も遠くを眺めている感じの梨花ちゃんまでも協力すると言ってくれた。

 

手応えは確かにあった。でも、何だろう? この陳情がまるで独り相撲をとっている様なこの違和感は…………

 

陳情を終えた後、俺たちは綿流しの実行委員があるという事で入江監督と部活メンバーの皆で集会所に向かった。

 

集会所には多くの人がいた。村長とかも来ていた。

 

少し時間が経つと魅音に外に呼び出された。そこには校長先生と知恵先生がいた。二人とも暗い表情をしている。

 

「前原君にお話があります」

 

知恵先生はとても言いにくそうに話し出した。

 

「明日の陳情を最後にしばらく様子を見ませんか?」

 

え? ……今、先生は何を言ったんだ?

 

「前原君のしてる事は正しいと思います。ですが……私はもう協力できません」

 

なんで……どうして先生がそんな事を言うんだ? 知恵先生は俺達の先生で、昨日まではクラス全体を相談所まで引率してくれたじゃないか!

 

その先生が……

 

「圭ちゃんには知っておいてほしい。今の雛見沢分校があるのは知恵先生のおかげなんだ」

 

そう言って魅音が俺に教えてくれた。ダム戦争の時、学校が一度廃校になった。でも隣町の学校に通えない子供たちが登校し続けている事を知った知恵先生が単身、雛見沢に来てくれたらしい。そして、村の重鎮の後押しで無理やり出来たのが今の雛見沢分校。ここから繋がる話は……

 

「村の重鎮に圧力を掛けられたんですね? 陳情を止めないと学校を潰すと」

 

「私だけの問題なら、この身がどうなってもいい。でも……学校を無くす訳には行かないのです」

 

知恵先生は悔しそうな顔で言う。

 

「どうして、村の年寄り連中は未だに北条家を嫌っているんだ? もうダム戦争は終わってる。両親が死んで残された沙都子には何の罪の無いはずだ」

 

ダム戦争の時に沙都子の父親が反対したのは知っている。そのせいで沙都子の一家が村に嫌われている事も。だけどダム戦争は五年も前に終わっている。それでもまだ北条家を憎む奴がいる。

 

「なのに……どうして沙都子がこんな目にあわなきゃいけない!? 誰のせいだ! 誰が嫌ってる! そいつに俺が話をつけてやる!」

 

「北条家を嫌っている人間は……」

 

魅音が呟くように言う。

 

「実はいないのかもしれない」

 

「え?」

 

いない? じゃあどうして沙都子がまだ村八分にされているんだ? そう聞こうと思ったとき、他の声が魅恩に同意した。

 

「私もそう思います」

 

俺は声のしたほうを見る。そこには部活メンバーと詩音がいた。

 

「北条家と縁があると思われたら自分達も同じように村からスケープゴートにされてしまうかもしれないって皆思ってる。だから鬼婆もその後は北条家に一切係わるなと号令を出しました。でも、北条家を許すとは号令を出せなかった」

 

「ばっちゃも同じなんだよ。本当はもう許してるのかもしれないけど、未だ怒りの収まらない村人がいたらそこから支持を失うかもしれないって」

 

「誰も北条家を憎んでないのに誰かが憎んでいると思い込んでいる」

 

詩音、魅音、レナの説明で何となく分かった。

 

「ややこしい話だが、要するに誰も沙都子を憎んじゃいない。だけど、沙都子に味方するのが怖いって事か……」

 

「つまり、頭の固いお年寄りたちを説得してやれば、沙都子を憎んでる奴なんていないって教えれば、この状況を打破できるって事だ」

 

そうだ、雪人の言うとおりだ。居もしない”誰か”を気にして沙都子を苦しめている村の年寄り連中のところに乗り込んで話をつけてきてやる!

 

 

 

俺は集会所の入り口を開け中に入る。

 

「――――――!」

 

結構大きな音を立てて入り口を開けたから村の重鎮たちはシンと静まりこっちを見る。

 

「ひとつ良いですか? 今北条沙都子が叔父から酷い仕打ちを受けている事はここに居る誰もが知っている事ですよね?」

 

一応聞いたが答えは聞かずに場の流れをこっちに向ける。

 

「だけど、誰も助けようとしない。それどころか邪魔をしてくる!」

 

「圭ちゃん。私らが言いたいのはもう十分だろって事だ」

 

村長が言ってくる。

 

「何が十分なんですか!」

 

「あんな、ダム戦争みたいな真似事はもうとっくに終わってるんね。もう徒党を組んでお役所に押しかける時代じゃないんよ」

 

「ダム戦争なんて関係ねえ! こいつは俺の戦争だ! それに参戦するって言うんなら俺の敵か味方かハッキリしてもらおうじゃねえか!」

 

「ダム戦争が終わった今、村がお役所と戦う理由は何も無いんだ」

 

「知ってますよ〜お役所と村の町会はべったりですからね〜年に一度の温泉旅行に忘年会に新年会。それにお祭りだって。お役所からの補助金は数百万。だからお役所に尻尾を振っているんですよね?」

 

村長の言葉に詩音が返すように言う。

 

「し、詩音ちゃん。どうしてそんな事を」

 

「うふふ、たまに私がお姉ぇだったりしてますので」

 

「つまり、お役所と癒着してるからご機嫌を損ねられないってことだね?」

 

「不思議不思議なのですよ」

 

詩音の言葉に続いてレナ、梨花ちゃんと口撃を飛ばしていく。

 

「なんだなんだ? 黙って聞いてりゃ妙な話じゃねえか?」

 

おかしいと思った人も居たのか集会場もざわついていく。

 

「静かに! 静かに! 圭一君。お役所と町会の付き合いは全くの別の問題! そんな事を言ってごちゃごちゃにするんじゃない!」

 

「……この村には一人のために全員で団結しろって言うのがあるんですよね? 死守同盟の結束。俺はこの村に引っ越してきてまだ間もない。でも、この村に住める事を誇りに思う!」

 

俺の言葉に賛成しているのか頷いている人も居る。ここで勝負を掛ける!

 

「沙都子は村の一員だ! 俺達の仲間だ! あの酷い叔父から救い出したい! そのためにもう一度死守同盟の力を貸してほしい!」

 

かなりの人数が聞き入っている。

 

「一人に石を投げられたら二人で投げかえせ! 二人に投げられたら四人で! 四人には八人で、八人には十六人で、千人には村すべてで立ち向かえ! 一人が受けた辱めは全員が受けたものと思え! 一人の村人のために全員が結束せよ! それこそが磐石な死守同盟の結束なり!」

 

俺の言葉に村人が一人また一人と賛同していってくれている。

 

「うう〜ん。とは言ってもなぁ」

 

村長は反対ではないものの何か問題があるようだ。

 

「公由。もしかしてある人の許しが欲しいのではないですか?」

 

「あいたたた。梨花ちゃまは痛い所をつくなぁ」

 

許し? 誰のだ?

 

「公由家としては北条の遺恨はもう水に流したつもりだが……」

 

「み〜☆ 古手家は最初から仲良しなのですよ」

 

「となりゃ残るは御三家で一番でかくて実際この村を牛耳っている園崎家だ」

 

「どうなんだい? 魅音ちゃん」

 

「ばっちゃ一人の問題だというなら戦います!」

 

村長さんの問いに魅音は真剣な表情で答える。

 

「村長さん。約束してくれ。魅音の祖母さんを説得できたら町会の力を貸して欲しい」

 

「そりゃあ良いが、お魎さんは怖いぞ?」

 

「大丈夫! 怒った圭一君はその百倍は怖いから♪」

 

レナが茶化して言う。

 

「じゃあ、レナはその百倍怖いけどな」

 

俺も返すように言う。

 

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次の日。

 

俺達はその日の陳情を終え、園崎家に集合していた。

 

…………公由村長も言っていたが、身内の魅音や詩音がこれほど緊張している。一体お魎さんはどれだけ怖い人なんだ?

 

「失礼します」

 

そう言ってお魎さんが待つという部屋の襖を開ける。

 

「――――!?」

 

途端に身も竦むような圧倒的な存在感が前と後ろ、両方から襲ってきた。

 

俺は部屋の中を見渡す。お魎さんは部屋の中で一番小柄にも拘らずすごい存在感を放っていた。

 

緊張しながら俺達は用意されていた座布団に座る。

 

「圭ちゃんと雪ちゃんは初めてだから紹介しますね。私たちの祖母。現党首、園崎お魎」

 

紹介されたお魎さんの表情は見えない。

 

「その向かって右となりが母、園崎茜です」

 

「初めまして。前原圭一と申します」

 

「同じく初めまして。高科雪人と申します」

 

俺達はお魎さんに沙都子の今の状況を説明した。

 

「というわけなんです。沙都子を助けるために園崎家の力を貸してください!」

 

「すぐに死ぬわけじゃなぎゃあ……お前ら騒ぎすぎなんね」

 

「そりゃあ死ぬまではいかないかもしれないけど!」

 

詩音が反論する。

 

「ならギャアギャア言うんな! あっほらし! すったらん根性が足りんわドアホゥ! 生き死にも賭けんとやっかんよう言うんね!!」

 

「―――――――!」

 

……なるほど……皆がビビるわけだ。沙都子の事を許してるなんて到底思えないぜ。

 

「お魎! 沙都子は僕の大切な友達なのです! 助けてあげて欲しいのです!」

 

梨花ちゃんも必死に懇願する。

 

「梨花ちゃま、相談所はちゃんと対応してくれとる。なぁんと不満があるんね?」

 

「それじゃあ、間に合わないんです! 相談所は町会が俺たちに話をつけたと思っているからもういくら訴えても何も聞いてくれないんです! あなたの力が無いと町会と役所の関係を変えられない! 沙都子を救えないんです!」

 

「町会はもう決着がついています!」

 

「ばっちゃさえ納得してくれれば協力してもらえるんだよ!」

 

魅音も詩音も必死で訴えかけている。

 

「……そうは言ってもねぇ。これは園崎家と北条家の問題なんだよ。魅音たちはダム戦争の時の北条夫妻を覚えているだろ?」

 

「あ……」

 

「……あの二人は雛見沢を売ろうとした。そして、ばあ様を公衆の面前で罵倒したんだ。簡単に許せる問題じゃないんだよ」

 

「要するにその時の怒りがまだ治まらないって事か。なんだ……園崎家頭首って言うのはずいぶんと器が小せえんだな」

 

俺の言葉にお魎さんの表情が変わる。

 

「あんた、言葉に気をつけな」

 

茜さんが俺に忠告してくる。

 

「すみません。でも失礼を承知で言わせてもらいます。お魎さんあなたに俺達の陳情に加わってほしいとは言わない。ただその首を縦に振ってくれれば良いんです」

 

「…………嫌だと言ったら?」

 

「この場で婆さんの頭を叩き割って魅恩を新頭首にして俺たちを支持させます」

 

それがそう言った次の瞬間お魎さんがクワッっと目を見開く。

 

「なぁんと抜かしよんねんこの糞餓鬼ゃ!! てめぇなんざポン刀で叩き切って井戸の中に放り込んでやるわ!」

 

……こ、怖えぇ。これが園崎頭首の迫力ってやつかよ。けど、こっちも引けない。引くわけにはいかない。引いたら絶対に後悔する。その時に後悔するくらいなら今を精一杯戦ってやる!

 

「おう、婆さん。沙都子は俺の仲間だ。仲間のために俺は戦っている! あんたは昔は一人の仲間ために村全てを束ねて戦ってダム計画を跳ね返したんだろ!?」

 

「ふん、余所者がよう知っとんね」

 

「おい、待たんかい婆」

 

俺は魅音の婆さんの言葉に反射的に返していた。

 

「俺は雛見沢の前原圭一だ! 村に来て日が浅くても雛見沢の仲間のために戦っている! それを余所者呼ばわりするんじゃねえ!」

 

俺と婆さんが睨み合う。

 

「落ち着きな圭一君。これはね、けじめの問題なんだ」

 

茜さんが言った。

 

「けじめ?」

 

「ああ、私たちも義理の世界で生きている。頭を下げられたら水に流さない訳にはいかないのさ。ただ、けじめを示すべき北条夫妻はこの世にいないけどね」

 

「……なら、沙都子ちゃんに事情を説明して両親の代わりに謝らせます。それで良いですか?」

 

そうレナが言った。

 

「レナ、何で沙都子がそんな事をしなきゃいけねぇんだ」

 

俺は反論するがレナも考えがあるようだ。

 

「ふん、そこまでやるんなら考えんでもなぎゃあ」

 

「でも、沙都子ちゃんがけじめをつけたらおばあちゃんは責任の無い沙都子ちゃんを苦しめたけじめをとってくれますか?」

 

魅音の婆さんの表情が変わる。

 

「レナの言うとおりです。あなたはただの老女じゃない。この村に絶大な権力を持つ御三家の筆頭その頭首だ。あなたが北条家を嫌えば村人はそのいにそむく事を恐れ沙都子に近づけない。それを知らないとは言わせません。沙都子は俺の仲間です。家族も同然なんです。だから、あなたのせいで沙都子が苦しめられるなら俺はあんたと戦わなくちゃならない。それが、仲間を守るって事です!」

 

「ふぅん。都会者風情が言うじゃないか。……あんたはどうだい?」

 

茜さんが隣にいる男性に聞いた。

 

「圭一君。何時も娘に聞いてるよりずっと立派に意見を言う男だな。筋も通ってる。大したタマだよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

いきなり褒められたので調子狂うな。娘……魅音のお父さんか?

 

「確かに君の所の身内に迷惑掛けたのはうちの責任がある。親はともかく娘に責は無い。親戚の皆さんはどうですか?」

 

「ああ、私らも力を貸していいと思いますな」

 

「お魎さん沙都子ちゃんは一人で健気に頑張ってきたもうここいらで村八分を止めると大号令を出してもらえんかな」

 

公由村長がお魎さんに言った。

 

「婆っちゃ! 私も雛見沢の仲間のために戦ったばっちゃのように戦いたいんだ!」

 

「沙都子は私の家族なんです妹なんですよ! 力を貸してください!」

 

魅音と詩音が必死に訴える。

 

「……首を縦に振ってそれでどうするん」

 

ここで初めてお魎さんが俺に質問してきた。

 

「町会の支持があれば相談所も耳を貸さないわけにはいかなくなる。その上で雛見沢の皆で訴えに行く! お魎さん。もう一度お願いします。沙都子を救うために園崎家の力を俺たちに貸してください」

 

そう言って俺達は全員で頭を下げる。

 

お願いだお魎さん。皆、沙都子の事を分かってくれた。後はあんただけなんだ。北条家を沙都子を許す言ってくれ!

 

俺は必死に願った。しかし……

 

「そんな事でけんね。北条の糞餓鬼なんぞ知らんちゃね」

 

そう言いやがった。この婆は。

 

「……なら、決まりだ」

 

そう言って俺は立ち上がる。

 

「魅音! お前がすぐに頭首を継いで俺を支持しろ!」

 

そう言って俺は婆に向かっていく。

 

「この婆は俺が絞め殺してやらあ!」

 

婆まで後、一メートル。そこで俺は皆に押さえられた。右手を入江監督に左手を魅恩に捕まれる。そして目の前で俺の進路を邪魔するように雪人が立っていた。

 

「あああ、もうあんじょうすったらん!ほんますらっしゃたったらん!」

 

「圭一君。ばあ様がもうこれ以上付き合いきれないって言ってます。だから今日は帰っておくれ」

 

そう言って茜さんはお魎さんと移動を始めた。

 

「な!? 待ってください! これで終わりって納得できません!」

 

「圭ちゃん! 今日はもう帰ろう!」

 

俺は納得できなくて追おうとしたが魅音に止められてしまった。

 

「話せよ魅音!」

 

「……圭一君。出直すのも大人のルールってのを学びな」

 

俺がごねていると茜さんからそう言われた。

 

「お魎さん! まだ返事をもらってないじゃないですか!」

 

早く助けないと沙都子は壊れちまうんだ! 何でそれを分かってくれないんだ!

 

「ちくしょう……ちくしょおおおおおおお!」

 

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「くそっ! 何で返事ももらってないのに帰らなきゃいけないんだよ!」

 

どうして分かってくれないんだ。

 

「圭一君は言うべきことを全て言ったよ。でも向こうも考える時間がいるんだよ」

 

「後はお魎を信じて待つだけなのです」

 

「おじいちゃんとお母さんが鬼婆の怒りをうまく静めてくれたら良いんですけど」

 

皆で話していると村長と茜さんが来た。

 

「おじいちゃん。鬼婆はまだ怒ってたんですか?」

 

詩音が村長に聞く。

 

「それが……お魎さんのOKがでたよ。圭一君の好きなようにして良いってさ」

 

そう言ってきた。

 

「ど、どうしてですか!? だってお魎さんはあんなに怒ってたのに」

 

信じられなかった。怒っていて失敗したとさえ思っていた。それなのに。

 

「そうだよ母さん。本当なの!?」

 

魅音も同じように信じられなかったようで茜さんに聞いたが答えは同じだった。

 

「鬼婆様は雛見沢連合町会が圭一君を支持する事を認めてくれたよ。……さっき圭一君に首根っこ掴まれたせいかねえ?」

 

「いや……飛び掛る直前でしたけどそんな事はしてませんよ?」

 

俺がそう言うと茜さんはクククと笑う。

 

「いいかい圭一君。鬼婆様はこれまで「北条家許すまじ」って言ってきたんだ。それを若造に頭を下げられたからって感嘆には変えられない。だから圭一君が大立ち回りした男気に惚れて特別に許したっていう。そのくらいの物語が必要なのさ。それに……鬼婆様も内心沙都子ちゃんへの冷遇は気にしていたし……ね」

 

「そうだったんですか」

 

「けどね圭一君」

 

茜さんの表情が真剣なものになる。

 

「あんたはこれから雛見沢の作り上げてきた団結の歴史鬼ヶ淵死守同盟を背負うんだ。絶対に負けられないし、無様な戦いは許されない。その覚悟はおありかい?」

 

「あります!」

 

「即答とは男だねえ! おばさんも惚れたよ!」

 

そう言って茜さんは背中を叩いてくる。結構痛かった。

 

「よかったのですよ。お魎が認めてくれて」

 

「ああ」

 

梨花ちゃんの言葉に俺は心から同意した。

 

本当に一時はどうなるかと思ったけど、これで俺達は相談所と本当の意味で戦える。

 

side out

 

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yukito side

 

俺たちがお魎さんを説得し意気揚々と家路に着こうとした時だった。

 

「あ、高科君だっけ? ちょっと待ちな」

 

そう茜さんに呼び止められた。

 

「なんですか?」

 

「なあに、ちょっと聞きたい事があるのさ」

 

「聞きたい事?」

 

「ああ」

 

俺は茜さんの目を見る。顔は笑っているけど、目が笑っていない。観察するかのような目だ。

 

「分かりました。圭一、レナ、梨花。また明日」

 

「おう!」

 

「また明日!」

 

「バイバイなのですよ」

 

そう言って皆帰っていった。

 

「それじゃあ行こうか」

 

「ええ」

 

俺は茜さんについていく。

 

茜さんはある部屋の前で止まった。俺はその部屋に入るように促される。

俺は部屋に入る。そこには魅音と詩音のお父さんとお魎さん。そして葛西さんなどの部下たちがいた。

 

「ええ〜っと、なんで俺が呼ばれたんでしょうか?」

 

「言っただろう?聞きたい事があるって」

 

茜さんが俺に言う。

 

「…………何が聞きたいんですか?」

 

「単刀直入に聞こうか。……何者だ? 君は」

 

魅音のお父さんが俺に問いかけてきた。

 

「……何者って、ただの高科雪人ですよ」

 

「嘘をつくのは利口じゃないねぇ。ただの子供がお母さんの殺気に反応して殺気を送り返してくるなんて芸当、出来るわけ無いだろうに」

 

「……やだなぁ。返せたから何だって言うんですか? 世の中には色んな人間がいますから殺気を返す子供ぐらいいるんじゃないですか?」

 

「その答えを聞くとさらに怪しくなるよ。あんたはこれも知っていそうだね。あんたの戸籍は不正に改竄を受けた後があった。○○県○○市に高科藤隆・高科雪人なんて名前の人間はいなかった」

 

…………駄目だこりゃ。完全にばれてる。

 

「やれやれ。そこまでするか普通?」

 

「娘のためだからねぇ。あんたは知っていたわけだね?」

 

「まぁ、そら俺がやった事だからな」

 

「なんだって!?」

 

俺の言葉に茜さんは目を見開く。

 

「さすがに俺がやったとは予想できなかった?」

 

「……お前、何の目的でここにきよった?」

 

それまで黙っていたお魎さんが聞いてきた。

 

「色々だ。詳しくは言えないが。だが、安心してほしい。魅音たちを傷つけるような事はしない。誓ってだ」

 

お魎さんが俺を睨み付けてくる。俺は視線を逸らさずに見つめる。

 

「はん。まぁ、ええ。それが嘘やったら」

 

「この命を詰めてやる」

 

「…………」

 

その後、大した話もせずに俺は帰った。

 

さて、問題は山済みだ。まずは改竄しても分からない戸籍の作り方だな。

 

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次回予告

 

 

 

ネットって凄いわね。遠くの事を電話より多い情報で知る事ができるんだから。

 

そうですね。人類の進歩の可能性を見ましたよ。僕は。ところで梨花。知っていますか?

 

何を?

 

この物語の舞台の昭和五十八年には……

 

いきなりメタな発言が飛び出してきたわね。で? 五十八年には?

 

日本にはネットはまだ無く、翌年にある大学間で繋げたネットが日本のネットの起源だということを

 

なん……ですって?

 

しかも、個人に普及し始めたのは平成九年。それもごく一部のお金持ちだけらしいのです。

 

……すごいわね

 

すごいですねー

 

このまま行くと何時か、ネットの中に入れる時代が来るかもしれないわね。

 

いやいや、ありえないのですよ

 

 

次回

 

月殺し編 其の玖

 

運命

 

 

運命というのは金魚掬いの網より薄いのです!

 

そうね。それじゃあ、次回もコレクターリカで決めるわよ!

 

そんな事だろうと思ってましたよ!

 

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こんにちは、作者です。

 

雪人が黒い事が園崎家にばれました。これから雪人は園崎家にもマークされる事になります。大変ですね(棒)

 

頑張れ雪人。負けるな雪人。君には明るい未来が待っている

 

 

 

 

といいね!

 

 

説明
交通事故によって死んでしまった主人公。しかし、それは神の弟子が起こした事故だった!?主人公はなぜか神に謝られ、たくさんの世界へ冒険する。
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コメント
中程で誤字発見報告 それを若造に頭を下げられたからって(感嘆)には変えられない 「簡単」 突っ込み本当に少ないな、ここは・・・(伝士 蓮示)
okaka様コメントありがとうございます。ちょっと戦闘でもさせようかな? とか思っていましたが、これでよかったです。(RYO)
やっぱ園崎家こええwwwでも腹の内をさらしたことでそれなりの信用を手に入れられたと考えれば(監視付きだけど)概ねいい結果だったかな?(okaka)
ZERO&ファルサ 様コメントありがとうございます。やはり園崎家は簡単には騙せなかったわけです。怖い。誤字報告ありがとうございます。直しておきます。(RYO)
最初から怪しんでたとはやるね婆さん! 誤字報告です「殺気圭一君に首根っこ掴まれたせいかねえ?」のところ「殺気」は「さっき」では?(ZERO&ファルサ)
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