特捜戦隊デカレンジャー & 魔法少女まどか☆マギカ フルミラクル・アクション
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Episode.05 アサルト・ランサー

 

見滝原中学の二年生のフロア。放課後のチャイムが鳴る中、未だ教室に残っている生徒が数名いた。

 

「ふぁ〜ぁ〜」

 

授業が終わって気が緩んだためか、残っていた生徒の一人――仁美が欠伸をする。

 

「あ、はしたない・・・ごめんあそばせ。」

 

「どうしたのよ、仁美?寝不足?」

 

そんな仁美の様子に、気付いたさやかが声を掛ける。

 

「ええ、昨夜は病院やら警察やらで、夜遅くまで・・・」

 

「ええ!?何かあったの!?」

 

「病院」や「警察」など、普段厄介になる事の少ない単語が同時に出てきた事に驚いた様子のさやか。そんな彼女に、仁美は説明を続ける。

 

「なんだか私、夢遊病って言うのか・・・それも同じような症状の方が大勢いて・・・気が付いたら、皆で同じ場所に倒れていたんですの。」

 

「はぁ?何それ?」

 

「お医者様が集団幻覚だとか何とか・・・今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの。ああ、そうそう。バンさんにも会いましたのよ。」

 

「へ?バンさんに会ったの!?」

 

「ええ、昨夜私達が倒れていたところを助けていただきまして、病院に連絡をしてくださいましたの。それで、バンさんに、まどかさんと一緒じゃなかったかって聞かれたのですが・・・」

 

その言葉に、まどかがギクリと身を震わせる。さやかもまた、心中では冷や汗をかいていた。

 

「私はあの時まどかさんと会った記憶が無いのですが・・・まどかさん、何か知りませんか?」

 

「う、ううん。私は何も知らない・・・」

 

「そうですか・・・」

 

「へ、へ〜・・・でも、その集団幻覚ってやつはきっと、バンさんの追っている事件の捜査に関係があるんじゃない!?」

 

「そうかもしれませんわね・・・それにしても、今思い出して見れば怖いですわね。集団幻覚なんて・・・」

 

「ま、大丈夫大丈夫。いざとなったら、S.P.D.のバンさんがまた助けに来てくれるって!!」

 

「「・・・・・」」

 

そんな他愛のない、いつもと同じ様子で会話する二人。だが一方、そんな二人の様子を見ながらも、ただただ黙っているしかできない人物が二人居た。

まどかとほむらである。彼女等は、昨夜の事件の真相を知っている。正確にはさやかも当事者なのだが、そんな事を言える空気ではなかった。

いつもと変わらない、平穏な彼女達の日常には、大きな異物が混入したかのような違和感があった。

 

 

 

同じ頃、デカベースでは・・・

 

「それで、昨夜の一件については、被害者たちからは何の手がかりも掴めなかったのか?」

 

署長であるドギーが、昨夜に起こった、まどかや仁美が入っていった倉庫の一件における調査結果の資料を見ながら尋ねる。

 

「はい。回収されたドロイドの破片についての分析はまだですが、魔女の口づけを受けた被害者達からは、検査や事情聴取をしたのですが、手掛かりは一切掴めませんでした。」

 

「私も能力を使って手掛かりを探ってみたのですが、これといって収穫はありませんでした。」

 

事件についての報告をするバンとジャスミンの言葉に、ドギーは暗い顔をする。

 

「そうか・・・だが、このまどかという少女についてはどうなんだ?」

 

報告書に書いてある、魔女の関連した事件に巻き込まれた被害者の一人と目される少女について、ドギーがバンとジャスミン、そして病院の監視カメラの映像を回収してきたセンに問う。

 

「・・・倉庫内に倒れていた被害者達の中に、彼女はいませんでした。俺達がドロイドと戦っている間に抜け出したと考えても、魔女が居た中では脱出する事は不可能な筈です。」

 

「監視カメラには、まどかちゃんという少女をはじめとして、三人の見滝原中学に通う女生徒の姿が映っていました。バン、そうだよな?」

 

「・・・ああ。一人はまどかちゃんの友達のさやかちゃんだった。だが、もう一人は分からない。」

 

「成程・・・間違いなさそうだな。」

 

「はい。恐らく彼女は魔法少女、もしくはその関係者である事は間違いないと考えられます。」

 

事件当時、仁美に付き添う形で倉庫内へと入っていったところをバンとジャスミンは目撃している。そして事件後、彼女の姿は、魔女が居たであろう倉庫内では確認できなかったのだ。この事から、ドギーやバン、ジャスミンは、まどかが魔法少女と関わりを持っていると考えていた。

 

「この事件における重要な参考人になるかもしれん。早速、今日にでも事情聴取をしたい。」

 

「ボス、俺がやります。」

 

まどかへの事情聴取を行うべく名乗りを上げるバン。バンはまどかとさやかとは面識があり、警戒心を抱かせずに話し合う事が出来るかもしれない。

 

「よし、分かった。彼女への事情聴取には、バンとウメコが行け。」

 

「ウメコも一緒ですか?」

 

「何よ?不満なわけ?」

 

バンの問いに対して怒った様子を見せるウメコ。ウメコが事情聴取に同行する事に不満は無い。彼女の専門は交渉術であり、明るく元気かつ純粋な性格から子供に好かれる事も多いため、むしろ助かる面が多い。だが、出来る事なら自分一人で聴取を行いたいというのがバンの望みだった。

 

「いや、そうじゃないけど・・・」

 

「じゃあ何なのよ?はっきりしないわね。」

 

煮え切らない様子のバンに詰問するウメコ。そんな様子の二人に、ジャスミンが口をはさんだ。

 

「バン、気持ちは分かるけど、これも捜査よ。彼女達が事件に関わっているなら、尚更事実関係を明らかにしないと。」

 

「分かってるよ・・・けど。」

 

「大丈夫よ。ウメコだって、中学生の女の子相手に無茶な質問はしないわ。でしょ、ウメコ?」

 

「任せといて。交渉術は私の得意中の得意なんですから!」

 

胸を張って自信満々に告げるウメコ。地球署に居た頃に解決した事件の中には、ウメコの性格・交渉術が幸いして解決できたものが数多くあったと、バンは思い返していた。

 

「分かった。ウメコ、頼むぞ。」

 

「任せといてよ!」

 

「決まりだな。バンとウメコは、鹿目まどかと美樹さやかの事情聴取に向かえ。テツは見滝原中学へ向かい、もう一人の女生徒の素性を洗い出せ。センとジャスミンは、引き続き見滝原市の巡回に向かう事。」

 

『ロジャー!!!』

 

こうして、デカレンジャー達は捜査へ向かったのだった。オフィスから出て行く部下達五人を見送ったドギーは、署長用デスクに積まれた資料に改めて目を通す。と、その時。

 

「ん?」

 

持っていたマスターライセンスの着信音が鳴ったのだ。ドギーはライセンスを開き、通信に出る。その相手は・・・

 

『よっ!久しぶりだな、ドギー!!』

 

「レツ!?・・・あ、いや、警視総監殿!!」

 

『ハハ、いいんだよ、レツで。俺達は昔からの親友じゃねえか。』

 

ドギーに通信を掛けた相手は、かつてドギーと共に宇宙刑事として活動していた仲間の一人であり、現宇宙警視総監のレツだった。親友とはいえ、公私の区別は付けなければと、慌てて口調を直すドギーだが、レツの方は全く気にしていない。

 

「そうか・・・それで、レツ。いきなり何の用だ?何かあったのか?」

 

『ああ・・・こっちで起こったっていうより、今そっちで起こってる事件に関係があるんだがな。』

 

「ああ・・・例の、謎のエネルギー反応についてか。」

 

『お前の事だから、もうとっくに『魔法少女』の事とかは掴んでるんだろ?』

 

「知っていたのか?」

 

『ああ、別の惑星でも同様の事が起こっていたんでな・・・それの事件捜査をしていたところだ。魔法少女についての情報は、ついこの間手に入れたばかりだ。』

 

「そうか・・・それで、何か新しい手掛かりは掴めたのか?」

 

『いや、まだ確定じゃねえが、黒幕の目星は付き始めてる。捜査情報だから安易には教えられねえが・・・こっちで調べてる事が事実なら、相手はかなりヤバい奴だ。用心しろよ。』

 

「ああ、肝に銘じておこう。」

 

『そうしてくれ。新しい情報が入ったら、正式にそっちに提供する。今度、アンパンでも食べような。それじゃあ、またな。』

 

「ああ。」

 

ライセンスの通信を切ると、ドギーは資料を整理していた手を止め、思考に耽る。

 

(レツが関わっている事件・・・惑星を介していると言う事は、間違いなくアリエナイザーの仕業・・・だが、一体何者なんだ?)

 

敵の正体についての謎がさらに深まり、同時にこの事件の真相の底知れない闇に対して、宇宙警察として長年培った勘が警鐘を発しているのを感じていた。

 

 

 

時刻は放課後。まどかとさやかは学校で仁美と別れ、帰り道の途中に通りかかった土手の芝生に居た。

 

「んっん〜!」

 

横になり、背を伸ばすさやか。その横に、まどかは座っていた。さやかは気持ちよさそうに寝転んでいたが、まどかはどこか不安な表情をしていた。

 

「さやかちゃんはさ、怖くはないの?」

 

「ん?そりゃあ、ちょっとは怖いけど・・・まあ、昨日のやつにはあっさり勝てたし、もしかしたら、まどかと仁美・・・友達二人も同時に失くしてたかもしれないって・・・そっちの方がよっぽど怖いよね。」

 

心配そうな顔をしているまどかに対し、さやかは何も気に病む事は無いと言うかのように、いつもと同じ陽気な口調で話す。

 

「だ〜か〜ら!!」

 

左手に卵型の宝石――ソウルジェムを持ちながら、起き上がるさやか。それは、彼女がキュウべえと契約して魔法少女となった事の証だった。

 

「自身?安心感?ちょっと自分を褒めちゃいたい気分っつーかね?まあ・・・舞い上がっちゃってますね、私!」

 

嬉しそうに、明るく振る舞うその姿には、どこか危なさがある。まどかはさやかの姿を見て、そう思っていた。

 

「これからの見滝原市の平和は、この魔法少女さやかちゃんと、マミさんが、ガンガン守りまくっちゃいますからねー!!」

 

「・・・後悔とか、全然無いの?」

 

「そうねぇ・・・後悔って言えば・・・」

 

さやかの脳裏の浮かぶのは、先日病院に現れた魔女から自分を守るために戦い、重傷を負ったホージーの姿だった。

 

「迷ってた事が、後悔かな?」

 

死んだわけではないが、自分のために大怪我をさせてしまった事に関して、さやかは負い目を感じていた。最悪の場合は、本当に死んでいたかもしれないのだから。

 

「どうせだったら、もうちょっと早く心を決めるべきだったなって・・・あの時の魔女、私が魔法少女だったなら、あの刑事さんもあんな目に遭わずに済んだだろうし。」

 

「私・・・・・」

 

大切な人たちが日常を捨て、他者のために戦う世界に足を踏み入れている中、自分一人が安全圏に居て良いのかと迷うまどか。そんなまどかの頬を、さやかがつついた。

 

「さては、何か変な事考えてるな〜?」

 

「私・・・私だって、」

 

「なっちゃった後だから言えるの!こう言う事は!」

 

暗い雰囲気を背負うまどかに対して、飽く迄明るく振る舞い、元気づけようとするさやか。その姿には、先程までの痛々しさは無かった。

 

「どうせならって言うのがミソなのよ。あたしはさ、なるべくして魔法少女になったわけ!」

 

「さやかちゃん・・・」

 

「願い事・・・見つけたんだもの。命がけで戦う羽目になったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの。そう気付くのが遅すぎたっていうのが、ちょっと悔しいだけでさ。」

 

そう言って、まどかに微笑むさやか。その笑顔は、いつもと変わらないものだった。

 

「だから、引け目なんて感じなくていいんだよ。あの刑事さんだって、死んだわけじゃないんだし。まどかは魔法少女にならずに済んだって言う、ただそれだけの事なんだから。」

 

「うん・・・」

 

「さてと、じゃあそろそろ、私は行かないと。」

 

「何か、用事があるの?」

 

「マミさんへの報告と、ちょっと行く所がね。」

 

そう言うと、さやかは立ち上がり、芝生の上に置いてあったバッグを拾って去って行くのだった。

 

 

 

そしてその頃。部活動で残っている生徒を除いて、大部分の生徒が帰った見滝原中学の職員室。そこに、白い宇宙警察制服に身を包んだテツの姿があった。見滝原中学に通っているまどか達三人の少女について聞くためである。

 

「この生徒達について聞きたいのですが。」

 

テツが見滝原中学の教頭職にある教員に差し出した三枚の写真には、まどか、さやか、マミの姿があった。教頭は写真を手に取り、顔と服装を確認する。

 

「ああ、この生徒たちなら、ウチの生徒で間違いありませんよ。あ、でもこの子だけは三年生ですね。ええと、担任は確か・・・早乙女先生!矢的先生!」

 

教頭の呼び出しに応じて、二人の教員が教頭とテツのもとへ近づく。一人は眼鏡を掛けた女性教員、もう一人は初老の男性教員だった。

 

「この子達はあなた達のクラスの生徒でしたよね?」

 

「ええと・・・はい、そうです。」

 

「こちらも、うちのクラスの巴で間違いありません。」

 

写真を見て自分達のクラスの生徒で間違いないと頷く二人。

 

「ところで、この子達がどうかしたんですか?」

 

「まさか、宇宙警察の御厄介になる様な事をしたのでしょうか?」

 

「いえ、我々が今行っている捜査に関して、少々聞きたい事がありまして。決して彼女達は疾しい事はしていませんので、ご安心ください。」

 

宇宙警察が自分の学校の生徒について調べている事に、教員二人と教頭は不安を隠せない。テツは、彼女達は警察沙汰になるような問題など起こしていないと誤解を解く。その後、彼女達の住所等の情報を聞くと、見滝原中学を出て行くのだった。

 

「こちらテツ。もう一人の少女、巴マミについての情報を入手。今から捜査官全員に回します。」

 

 

 

テツが見滝原中学にて巴マミの情報を得たその頃、先日まで見滝原病院に入院していたホージーは、病院内にある電話でバンに連絡を取っていた。

 

「バン、捜査はどうだ?」

 

『全然駄目だ・・・情報を握っているかもしれない見滝原中学の生徒二人は不在で、何も聞きだせなかった。』

 

「そうか・・・他に動きはあったか?」

 

『昨夜、街の倉庫に魔女が現れて、十数人の人々を誘導して自殺未遂に追い込んだぐらいだ。犠牲者は出ず、とりあえずは事なきを得たってところだ。』

 

「分かった。俺も明日には退院できる筈だ。何かあったらすぐに知らせてくれ。」

 

それだけ言うと、ホージーは電話を切った。立って歩く事も出来るようになっている以上、本来ならばSPライセンスで連絡を取りたいところだが、先日の魔女との戦闘で破損しており、現在はスワンのもとで修理中だった。

 

「さて、俺ももう少し養生するか・・・」

 

明日には捜査に復帰するべく、十分な休養を取るために病室へ戻ろうと廊下を歩いていたその時だった。

 

「?・・・・・これは、バイオリンの音?」

 

ふと、ホージーが今居るフロアより二つ程上、屋上へ続く階段から、バイオリンの旋律が聞こえてきたのだ。

 

「・・・なんて綺麗な演奏なんだ。」

 

そのあまりにも美しい音色に、ホージーは誘われるように階段を上る。一段上る度にその音色がより明確に聞き取れるようになっていく。そして、遂に階段を上り切り、屋上への扉を開く・・・

 

「・・・・・」

 

夕陽の茜色に彩られた景色の中、花壇に植えられた花から、花びらが風に舞う。そしてその奥、白衣を着た数名の医師が見守る中、バイオリンの旋律を奏でる、車椅子に座った少年が一人。その音色は、その場にいる人間全ての心に染みわたる、清らかなものだった。

 

「Bravo・・・」

 

そんな言葉が、ホージーの口から洩れた。やがて演奏が終わると共に、観客達は一斉に拍手をした。ホージーも勿論、その一人だ。少年は拍手に対して車椅子からお辞儀する。そして、両親らしき二人の大人が少年に歩み寄り、演奏を褒め称える。

どうやら、これは怪我から復帰した記念の演奏だったようだ。ホージーはそんな事を考えながら、病室へ戻ろうとしたその時・・・

 

「・・・あの子は!!」

 

踵を返そうとして視界に入ったのは、一人の少女。ショートカットの青髪のその少女は、見間違う筈もない・・・ホージーが病院に現れた魔女の結界の中で出会った少女だった。

 

「君!!」

 

「!!!」

 

ホージーは少女に声を掛ける。対する少女――さやかは、声のした方を振り向くと同時に、驚いた様な表情を見せると・・・

 

「さ、さよなら!!」

 

「ま、待ってくれ!!君に聞きたい事が・・・」

 

ホージーの顔を見るや、一目散に屋上から走り去って行ってしまった。病み上がりのホージーに、全力で走り去るさやかを引き留める事などできる筈もなく、呆然と屋上に立ちつくすのだった。

 

「・・・・・間違いない。あの子だ・・・」

 

自分を避ける様子から、結界の中で出会った少女に間違いないと考えるホージー。まさかこんな場所で出会うとは思わなかったが、事情を聞く前に逃げられてしまった。

 

「・・・だが、あの子の繋がりは・・・ある。」

 

さやかが走り去った事に気付かない車椅子の少年を見やりながら、ホージーはある事を考えていた。

 

 

 

時刻は日も沈みつつある夕方。とあるマンションの入り口前に、二人の少女の姿があった。

 

「まどか?」

 

「さやかちゃん、これから・・・もしかして・・・」

 

まどかとさやかだった。まどかはさやかがこれから何をしに出かけるのか、分かっているために不安そうな表情をしている。

 

「そう、悪い魔女を探してパトロール。マミさんとは別ルートで、見滝原市を巡回するんだ。これも、正義の味方の務めだからね。」

 

「一人で・・・平気なの?」

 

「平気平気!マミさんだってそうしてきたんだし、後輩として、そのくらいはね。」

 

魔法少女として戦いに臨もうと言うのに、さやかには不安そうな様子は見られない。だが、それでもまどかの不安はぬぐい切れず・・・

 

「あの・・・私、何もできないし・・・足手まといにしかならないって分かってるんだけど・・・でも、」

 

これからさやかが向かう先で、自分が役に立たない事は重々承知している。だが、それでも放ってはおけなかった。

 

「邪魔にならない所までで良いの。行ける所まで、一緒に連れてってもらえたらって・・・」

 

そんなまどかに、さやかは微笑む。その表情には、どこか安心した様子が見られた。

 

「頑張りすぎじゃない?」

 

「ごめん・・・駄目だよね。迷惑だってのは分かってたんだけど・・・」

 

「ううん、すっごく嬉しい!」

 

そう言うと、さやかはまどかの手を握る。その時だった、さやかの余裕の・・・空元気を装っていた姿に皹が入ったのは。

 

「ねえ、分かる?手が震えちゃってさ・・・さっきから、止まらないの。情けないよね・・・もう魔法少女だってのに・・・一人だと心細いなんてさ。」

 

「さやかちゃん・・・」

 

「邪魔なんかじゃない・・・凄く嬉しい。誰かが一緒にいてくれるだけで、すっごく心強いよ。それこそ、百人力って感じ。」

 

初めて聞かされた、さやかの本音だった。マミが居たとしても、常に死と隣り合わせの世界に居る不安は決して取り除けるものではなかった。

 

「私・・・」

 

「必ず守るよ。だから安心して、私の後に付いてきて。今までみたいに、一緒に魔女をやっつけよう!」

 

「うん!!」

 

それから、さやかはまどかに対し、魔法少女になった事で心に抱いている自分の感じている恐怖や、それを紛らわすために必死だった事などを話していった。

まどかは、そんな心中を話してくれる事を・・・精神的な面で頼られている事を嬉しく感じていた。それと同時に、魔法少女になってもさやかが抱いている感情は自分と変わらないものだと言う事に、安心するのだった。

そうして街中を歩いて行く内に、遂にさやかのソウルジェムが『敵』を感知する。

 

「ここだ!」

 

途端、周囲が光に包まれ、異形の光景が展開される。

 

「この結界は、多分魔女じゃなくて、使い魔のものだね。」

 

「楽に越した事ないよ。こっちはまだ初心者なんだし。」

 

「油断は禁物だよ。」

 

「分かってるって。」

 

そうして、結界の中を突き進むことしばらく・・・遂に、使い魔が姿を現した。飛行機のような物に乗った異形・・・それが使い魔の姿だった。

 

「逃げるよ!」

 

「任せて!!」

 

結界の外へ逃げようとする使い魔を仕留めるべく、さやかはソウルジェムを取り出し、魔法少女へと姿を変える。

白いマントを翻すと共に、周囲に現れた無数の剣を、使い魔に向けて投擲する。放たれた剣群は、使い魔の動きを止め、串刺しにしようとしたのだが・・・

 

「「何!?」」

 

もう少しで届くと言う所で、何者かに弾かれてしまった。使い魔はそのまま結界の外へと逃げて行った。そして舞い降りる、新たな存在・・・

 

「ちょっとちょっと、何やってんのさ、あんた達。」

 

それは、赤い衣装を身に纏い、長大な槍を担いだ魔法少女――佐倉杏子だった。

 

 

 

そしてその頃、使い魔の張った結界を探知した人間が居た。

 

「魔力反応だ!!ここから近い!!」

 

「行くよ、センちゃん!!」

 

市街地の巡回に赴いていたセンとジャスミンは、ライセンスが魔力反応をキャッチするのを確認するや、その根源にむけて走りだす。反応元は、人通りの少ない裏路地からだった。

 

「こっちか!!」

 

「あれは・・・!!」

 

二人の視線の先には、槍をもった赤い装束の少女と、剣を持った青い装束の少女が居た。互いに武器を構え、戦っている。赤い装束の少女は見た事が無いが、青い装束の少女は病院の監視カメラに映っていた美樹さやかで間違いない。そしてもう一人、見滝原中学の制服を着た、桃色髪の少女・・・鹿目まどかが居た。

 

「もしかして、彼女達が・・・」

 

「間違いないわね・・・魔法少女よ!!」

 

遂に、一連の事件の鍵を握るとされる魔法少女という存在に出会ったのだ。ここまできたら、何としても彼女達にさらに詳しい事情を聞かなければならない。

 

「とにかく、今は彼女達を止めるよ!!」

 

「反対の反対!!」

 

二人はSPライセンスを取り出し、変身の構えを取る。

 

「「エマージェンシー・デカレンジャー!!!」」

 

デカスーツを纏うと共に、二人はそれぞれデカグリーン、デカイエローへと姿を変える。そして、揃って駆けだす。

 

「「フェイス・オン!!」」

 

まどかと二人の魔法少女とを区切っている柵の様な物を跳び越え、デカグリーンとデカイエローは魔法少女同士の戦いを止めに掛る。

 

「止めるんだ二人とも!!」

 

「ああ?何だお前等?」

 

「あなた達は・・・」

 

突然の乱入者に、さやかと杏子は攻撃の手を止める。デカグリーンは杏子に向かい合い、デカイエローはさやかの前に立つ。

 

「宇宙警察よ。あなた達、魔法少女で間違いないわね?」

 

「だったらどうなんだよ?」

 

「街で起こっている一連の不可解の事件について、事情を聞かせてもらうわ。武装を解いて、大人しく」

 

「捕まるわけないだろうがっ!!」

 

デカイエローの静止を聞かず、杏子が動き出す。もっていた槍を目の前に立ちふさがるセンに突きだし、攻撃を加える。

 

「やめるんだ!!こんな事をして何になるんだ!?」

 

「うっせーんだよ!!サツは引っこんでろっ!!!」

 

デカグリーンの言葉に耳を貸さず、杏子は激しい刺突を繰り出す。だが、それらはデカグリーンには命中せず、空を貫くばかりだった。

 

「魔法少女同士で争って何になるんだ!?それに、俺達は君達の敵じゃない!!」

 

「信じられるかよ!!失せろ!!!」

 

刺突が効かないと判断した杏子は、今度は横なぎに槍を振るう。デカグリーンは上へと跳躍してこれを避けようとしたが、

 

「甘いんだよ!!」

 

「なっ!!」

 

杏子の槍が多節棍となり、デカグリーンの身体にからまる。縛り上げられたデカグリーンは、杏子が槍ごと振り払い、壁へ激突する。

 

「センちゃん!!」

 

「くっ・・・あんた、関係無い人まで・・・!!」

 

「さて、今度はあんたの番だよ。かかってきな。」

 

「こ、のぉぉおお!!!」

 

「あっ!」

 

デカイエローの静止を振り切り、さやかは杏子のもとへ駆けだし、再び剣と槍の刃をぶつけ合っての激しい白兵戦を繰り広げる。デカイエローは、壁に激突したデカグリーンに手を貸し、再び魔法少女達の戦いを止めに行こうとしていた。

と、その時、デカグリーンがまどかの方をみて、様子がおかしい事に気付いた。

 

「どうして・・・ねえ、どうして?魔女じゃないのに・・・どうして味方同士で戦わなきゃならないの!?」

 

まるで、誰か問いかける様に呟き始めたのだ。しかし、まどかの周りには誰もいない。一体、誰に話しかけているというのか?よく目を凝らして見る・・・すると、まどかの肩に乗る、白い猫ともウサギともつかない生物がゴーグルを通して見えたのだ。

 

「どうしようもない・・・お互い、譲る気なんてまるで無いよ。」

 

「お願いキュゥべえ、止めさせて・・・こんなのって無いよ!!」

 

「僕にはどうしようもない・・・でも、どうしても力ずくでも止めたいのなら、方法が無いわけじゃないよ。」

 

(キュゥべえ?一体、奴は何者なんだ・・・)

 

「あの戦いに割り込むには、同じ魔法少女でなきゃダメだ。でも、君にならその資格がある。本当にそれを望むならね。」

 

(そうだ・・・私が契約すれば・・・)

 

(資格?鹿目まどかには、魔法少女になる資格がある・・・どういう事なんだ?)

 

そうこう考えている間に、ついに杏子がさやかを追い詰めた。足をか絡め取り、とどめの一撃を繰り出そうとしている。まどかはもう迷っている暇など無いと思い・・・

 

「私・・・!」

 

魔法少女としての契約に踏み込もうとした瞬間・・・・・

 

 

 

それには及ばないわ

 

 

 

「「「!?」」」

 

突然響き渡る第三者の声、そして通り過ぎる一筋の影。それが何者かを確認する前に、杏子の一撃がさやかに放たれた・・・

だが、槍は杏子を貫く事なく、地面を抉るにとどまった。先程まで杏子の槍の先に居た筈のさやかも、いつの間にか別の場所にいた。

 

「なっ・・・どういう事なんだ!?」

 

「新しい・・・魔法少女?」

 

全員が混乱するその渦中の中、黒い装束を身に纏った魔法少女――暁美ほむらが、黒く長い髪を靡かせて、戦いによって破損したパイプから噴出される水飛沫の中に降り立っていた。

 

説明
見滝原市にて、謎のエネルギー反応が続発する。一連の現象について調査をすべく、見滝原市へ急行するデカレンジャー。そこで出会ったのは、この世に災いをまき散らす魔女と呼ばれる存在と戦う、魔法少女と呼ばれた少女達。本来交わる事の無い物語が交差する時、その結末には何が待っているのか・・・
この小説は、特捜戦隊デカレンジャーと魔法少女まどか☆マギカのクロスオーバーです。
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デカレンジャー 魔法少女まどか☆マギカ 戦隊ヒーロー 魔法少女 魔女 クロスオーバー 

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