魔法戦記リリカルなのは聖伝 〜SDガンダム・マイソロジー〜 008ステージ −舞い降りる月と雷−
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翼 SIDE

 

 

思い起こすのはマイシスの旗の下に集った過去の会話…。

 

『私の様な悲劇を繰り返さない為にも…私は戦います。』

雷斗…。

 

『例えそれが罪で有ったとしても…拙者はこれ以上の悲しみを生み出さない為にも、罪を背負う覚悟は出来ているでござる。』

龍也…。

 

『へっ、あいつ等のせいで泣く奴等が出てくるなら…オレが全て叩き潰す。難しく考えたり、面倒な事は苦手なんだよ。』

焔…。

 

『はっ? どうでも良いさ、オレは楽しく戦えりゃそれで十分なんだよ。』

宗一…。

 

…焔、雷斗、龍也…オレ達の道は何時違えたんだろうな…。聖獣(マイソロジー)の力を得て総帥の旗の下で戦う為に集った時…その時は見ていた景色は同じではないにしても…似た景色を見ていたはずだ。

 

「…考えるだけ意味の無い事か…。」

 

オレは管理局の張った結界へと視線を向ける。この中に焔も居る。この時だけは再び仲間として戦える。

 

「(…何れは再び敵になる…。…分かっていても嬉しい物が有るな…。)行くぞ、クロスボーン。介入開始だ。」

 

「応ッ! へへへっ…面白い戦いになりそうだな。」

 

オレとクロスボーンは総帥の命で戦いの中へと向かう。

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

時也 SIDE

 

 

その戦いの日より数日前の会話…

 

「なあ、雷斗…。“過去”の悲劇は何が原因だったんだろうな…? オレが聖獣(マイソロジー)の力を手に入れたから? それとも、エイロディアが復活した事か…?」

 

「私には分かりませんね。寧ろ、それの真実は時也さん…貴方の方が近い位置に居るのでは?」

 

時也の問いに雷斗が答える。

 

「そうだな。ハーディアとウラノディアのパーツを手に入れて、ガンダムとキュベレイになったオレと姉さんがマイシスと言う組織を作り上げた。最初はオレ達の世界を守る為の自警団だった。」

 

今でこそ総帥と言う立場だが今のエイロスも、最初は自警団の団長と言う立場だった。そして、以前の時也がその自警団の現場での指揮官。

 

最初は聖獣(マイソロジー)の一パーツと言う程度の物から始まった。今でこそ強力な聖獣(マイソロジー)を持っているが、以前は時也も時音もバインドも使えずにガンダムやキュベレイの力だけだった。

 

「はっきり言ってオレ達の世界の管理局は頼りにならなかった。」

 

「いえ、私達の世界も似た様な物では? そもそも、『危険だから管理する』と言う名目で、魔力を帯びた物や自分達の技術以上の物を『ロストロギア』扱いして、ロストロギア収集に精を出すだけの妙な連中と言う認識でしたね。以前の私は…。」

 

時也の言葉に溜息をついて答える雷斗。

 

「…大体…よく有るファンタジーの小説やゲームじゃないけど、それが何かの封印だったらどうするんだ? まったく…自分の足元の事を無視して無駄に手を広げる。しかも、海と呼んでいるロストロギア収集要員に地上から人材盗んで、その結果治安は悪化…そして、あのヒゲゴリラの様なバカな事に手を出す。悪循環だな。」

 

「…実際…エイロスから聞いた話では、私の世界で封印されて休眠状態だったアローディアを持って行こうとした事で、アローディアが目覚めてしまって自衛モードによる暴走が起こった事が私の世界の消滅の理由でしたっけ?」

 

神になる力を秘めた聖獣の自衛能力…完全ではないと言え、世界一つが滅ぶ程度で強欲な神候補を誕生させないのならば、それは最小限の犠牲だろう。問題は最悪の場合は全次元世界規模なのだから。

 

「結果、時也さん達が目覚めさせてくれたハーディアの翼を私が持っていた事で私は助かりましたけどね。結果、私の元に来たアローディアの頭を手に入れて…他のパーツは飛び散ってしまい…故郷の世界は消え去り、私だけが助かってしまいました…。」

 

表情は変えていないが、雷斗はその表情には憎しみの…憎悪の感情を貼り付けていた。

 

「しかも、あの連中は早々に引き上げて逃げ出した訳だよな。実際、姉さんの…エイロディアの策は本局と地上本部…その両方がやっていた必要悪を超えた悪事の証拠…。実際、まともな神経を持っていたのか、疑いを持っていたのか知らないけど…それを知って辞める人間は多かった。」

 

そこまで言うと笑いを浮かべる。

 

「…まあ、辞めなかったのは多く分けて三つ。管理局の上層部とその子飼…闇の部分に住んで利益を貪って肥えた連中。マイシスとの戦いの最激戦区であるミッドの人間…こっちは少しでも被害を少なくする為に辞める訳には行かないんだろうけどな。…そして、後は…何の疑いも持たない狂信者と盲信している連中か…。」

 

「まあ、あの時も今のマイシスも『自称悪の組織』だったんですよね…?」

 

「そうなんだろうけどな。少なくとも…少しずつバインダーが集まり始め、オレがエイロディアの存在に気付いて抜けた直後から…マイシスは可笑しくなり始めた…。」

 

そこで一度言葉を止めると時也は、

 

「管理局がレアスキルの一種と考えバインダー達を有するマイシスを取り込もうと濡れ衣を着せて逮捕しようとした事…それが一つの引き金だったんだろうな。悪の組織としての第一歩は存在していた世界の管理局の施設…いや、痕跡の完全な消滅…。生き残りは誰一人…その世界に住んでいた無関係な局員の家族に至るまで…居なかった。」

 

過去の時也がマイシスの行動に気付いて止め様とした時には既に手遅れだった。その一件には何も関係していないはずの局員の家族まで殺された所を目撃した時…幼い子供の命まで奪った姿を見て確信した。既にそれは姉ではなくエイロディアと言う別の存在だと。

自分の記憶の中にある姉と同じ笑い声で…助けを求める局員の家族をウラノディアに惨殺させる姿…それに頭に血が上って戦いを挑んだが、片腕のパーツだけしか所持していない時也では歯が立つ筈も無く、返り討ちにされて…見逃された。

 

「…オレは奴を止める…必ずな…。」

 

「…ええ…止めましょう…必ず。」

 

決意を定めて戦う意味を確認しなおす時也と雷斗…。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

結界の上空

 

 

ウイングゼロとクロスボーン、時也と雷斗が結界の近くの地上で介入するタイミングを計りながら、結界の中に入り込む方法を選択している時、シグナムも騎士甲冑を纏い、結界の見える場所まで来ていた。

 

「……強層型の捕獲結界、ヴィータ達は閉じ込められたか……。」

 

《Please choose your action》

 

「レヴァンティン、お前の主はここで引くような騎士だったか?」

 

《No》

 

「そうだレヴァンティン! 私達は今までもずっとそうしてきた!!!」

 

彼女の言葉にレヴァンティンはカートリッジをロードし、刀身に炎を纏わせる。そして、シグナムはそのまま結界に向かって突撃を仕掛けていった。

 

シグナムの姿が結界の中に消えていくと、ヘルメディアの両腕の上に立つその主ウイングゼロとクロスボーンがそこに現れる。

 

「そろそろオレ達も介入するぞ。」

 

「はっ、いいねぇ、それでオレは誰と遣り合えば良いんだ?」

 

「…焔には話は通してある…。お前のターゲットはデスティニー…龍也だ。オレは今の内に猫退治をさせて貰おう。それと…焔を外に転送してくれ、アイツから紹介してもらった方が遣り易い。」

 

「オッケー、楽しませてもらうぜ♪」

 

ウイングゼロの言葉に答え、彼の投げ渡した待機状態のストレージデバイスを受け取り、ウイングゼロと共にクロスボーンがヘルメディアの肩に飛び乗ると、ヘルメディアは背中の非対称の双剣を手に取る。

 

「受けろ…暗黒の双撃…デスヘルメッシュ!!!」

 

ヘルメディアの双剣から放たれた黒き炎が結界の一部を切り裂く。

 

「へへへっ!!! 行くぜ、行くぜぇ!!! 行くぜぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

ウイングゼロとヘルメディアが結界を破壊すると同時に、そこからクロスボーンがムラマサブラスターを持って結界の中へと飛び込んでいく。

 

そんなクロスボーンを一瞥しながら、ウインクゼロはヘルメディアを影の中に帰還させると翼を広げてその場を飛び去っていく。

 

 

 

 

一方、結界の中ではヴィータ達ベルカの騎士に対抗する為にカートリッジシステムを搭載したレイジングハートとバルディッシュを持つなのはとフェイト、そして、デスティニーがヴィータとザフィーラ、ゴッドの三人と対峙していた。

 

「私達は、ただあなた達と戦いに来た訳じゃない。まずは話を聞かせて……。」

 

「闇の書の完成を目指している理由を!」

 

「オロ!」

 

なのはとフェイトの叫びにアロンダイトを構えていたデスティニーが前転気味にずっこける。

 

戦闘体勢を取っていたなのはとフェイトの二人と戦うと思っていたヴィータ達だったが、二人は飽く迄闇の書の完成を目指している理由を知りたがっている様子だった。

 

「あのさ、ベルカの諺でこんなんがあんだよ……『和平の使者は槍を持たない』ってな。」

 

「?」

 

「あー…確かにそうでござるな。」

 

疑問を浮かべる二人に対して言葉の意味を納得したのか頷いているデスティニー。

 

「話し合いをしに来たのに武器を持ってやって来る奴が居るかって意味だよ、バァ〜カ!」

 

「確かに…話し合いの基本は非武装でござるからな…。武器を持ってするのは、脅迫か宣戦布告でござるよ、なのちゃん。」

 

「なっ!? 行き成り有無を言わせず襲い掛かってきた子がそれを言う!? それに、龍君も酷いの!!!」

 

なのはとフェイトの問いにヴィータは諺と言ってなのは達をバカにする。龍也…デスティニーとしても話し合うならせめて武器を持つ前にするべきだろうと思っているので納得する。そして、味方のはずの幼馴染の言葉に抗議するなのはだった。

 

「それにそれは諺でなく、小話のオチだ。」

 

「まっ、確かに言えてるけどな…。」

 

ザフィーラのツッコミでそれは間違いだと指摘され、ゴッドは頷きながらそう告げた後、ヴィータの前まで移動し、額にデコピンを当てる。

 

「痛っ!? なにすんだよ、ゴッド兄?」

 

額を押さえながら涙目で抗議するヴィータだが、ゴッドはなのはを指差し。

 

「取り合えず、先に手を出したのはこっちなんだから、ちゃんと謝っとけ。」

 

「うぅぅ〜。ごめんなさい。」

 

「まっ、そう言う訳であの時は悪かったな、オレからも謝る。ごめん。」

 

ゴッドにそう言われると素直に頭を下げて謝るヴィータと、一緒に謝るゴッドだった。

 

「な、なんだか…毒気が抜かれるでござるな…。」

 

「あ、あの、それは良いんですけど…なんで闇の書を完成させようとしているか、教えて貰えませんか?」

 

「悪い、それは教えられねぇな。それに、これからはお互い同意の上での戦闘だ、どっちが悪いってのは無しだぜ!」

 

「そうでごさるな…では、勝ってから質問はさせて貰うでござる。」

 

「龍君!?」

 

すっかり、ゴッドのペースに持ち込まれている状況だったが、一人ゴッドの性格を理解しているデスティニーはゴッドを見据えながらアロンダイトを向けるとゴッドもそれに応じるように拳を構える。その時、一閃の閃光がなのはやデスティニー達とヴィータ、ザフィーラ、ゴッドの三人の間に降り立った。

 

「シグナム!」

 

その光の正体は局員の張っている結界を貫いて来たシグナムだった。

 

「龍君、ユーノ君、クロノ君、手を出さないでね! 私とあの子と一対一だから!」

 

「オッケーでござるよ、なのちゃん。では拙者は…ゴッド殿と戦うでござるよ…。」

 

自分が一方的とは言え因縁の有るシグナムと戦おうとしたが、先にフェイトがシグナムと戦いたいと念話で伝え、アルフもザフィーラの相手をしたいと言ってザフィーラを見る。仕方ないと言う意思と同時に、ゴッドの相手は自分がするのが良いと判断する。

 

構えるフェイトとなのは、アルフもザフィーラと対峙し、デスティニーとゴッドも対峙する。

 

(ユーノ、それなら丁度良い。ぼくと君で手分けして闇の書の主を探すんだ。)

 

(闇の書の?)

 

(連中は持っていない。恐らくもう一人の仲間か主かが何処かに居る。ぼくは結界の外を探す、君は中を。)

 

(分かった。)

 

一方、念話でクロノとユーノの二人は互いの役割を確認し合う。結果以内に居る守護騎士達とゴッドは闇の書を持っていないと確認し、ユーノに結界内を、クロノが結界の外に闇の書を持つ者か闇の書の主が居ると考え、それぞれ分かれていった。

 

 

 

 

なのはとヴィータ、フェイトとシグナム、アルフとザフィーラがそれぞれ戦いを始めると、剣と拳を構えていたデスティニーとゴッドはゆっくりと動き始める。

 

僅かずつ間合いを詰める二人。そして、有る程度まで近づいた瞬間、光の翼とゴッドフィールドを展開させ一気に加速し、

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

「オラァァァァァァァァァァァアア!!!」

 

ぶつかり合う。

 

共に最も得意なのは接近戦。素手での格闘技が主体のゴッドは大剣を操る剣士であるデスティニーの相手は本来不利のはずなのだが…完全に圧倒していた。

 

「ゴッドストライク!!!」

 

「くっ!」

 

乱打から一回転しデスティニーの顎を蹴り上げようとするが、その動きを読んでいたのだろう、デスティニーは上空へと飛び上を取る。

 

「お主と言う奴はぁ!!!」

 

光の翼を広げ落下の加速さえも利用した斬撃を放つデスティニーだが、ゴッドはその動きを読んでいた様に振り下ろされたアロンダイトを両腕で…真剣白刃取りの体制で受け止める。

 

「甘いでござるよ!」

 

素早く何の未練も無くアロンダイトを手放すとデスティニーは右肩に有るフラッシュエッジ2の一つをビームサーベルとして抜き放ち、両腕が塞がった状態のゴッドへと切りかかる。

 

「チッィ!」

 

アロンダイトを手放してデスティニーの一撃を避けようとするが、その一閃は確実にゴッドを捕らえていた。

 

「やってくれるじゃねぇか。」

 

「そりゃそうでござるよ。実力は拙者よりもゴッド殿の方が上でごさる。だから拙者は策を弄させて頂いたでござる。」

 

先手を取ったのはデスティニー。良くも悪くも一直線な性格のゴッドだが、格下の相手と言っても侮らず全力で戦うタイプだ。

空戦部隊の隊長・副隊長の地位にあったゴッドとデスティニーの二人は実力の上ではゴッドの方が上であり、デスティニーが勝つには油断を誘うしかないが、ゴッドは油断するタイプではない。

デスティニーはゴッドの中に自分への油断が無いのなら油断を誘うべく、アロンダイトを囮に受け止めさせたのだ。

 

「やるじゃねぇか…だったら…こっちももう少し派手に行かせて貰うぜ!!!」

 

更に拳を構えるゴッドだが、そんな中、何かが降って来る。

 

「はっはっはっ!!! 祭りだ、祭りだぁ!!! 御祭りだぁ!!!」

 

その動きに気が付いてアロンダイトを振り上げ、振り下ろされた影の剣を受け止める。

 

マントの様な装甲を纏い、胸部と額に有る特徴的なドクロマーク。その者の名は、マイシス海戦部隊隊長にして、最狂の狂戦士(ベルセルク)『クロスボーンガンダム・フルクロス』。

 

「「お前は…クロスボーン!?」」

 

「へっ、お前の相手はオレ様だぜ!!! おい、ゴッド、ウイングゼロから話は言っていると思うけどな、手を貸してやるぜ!!!」

 

驚愕と共に叫ばれるゴッドとデスティニーが叫ぶ。二人の叫びに笑みを浮かべながら、クロスボーンのムラマサブラスターから木の葉状に十四の光の刃が伸びる。

 

「クッ! 礼は言わねえよ。」

 

「ハッ!? 言われる筋合いもねえな。」

 

そんなクロスボーンを睨みつけながらゴッドがそう言い放つと、クロスボーンはゴッドの言葉を鼻で笑いながら、そう言葉を返す。

 

「ゴッド殿…何故再びマイシス等と協力するでござる!?」

 

「ん? ああ、総帥の命令でな、闇の書の完成に力を貸せだそうだ。」

 

笑いを浮かべながらゴッドの変わりにデスティニーの問いにクロスボーンが答える。

 

「そう言う訳で、オレ達は期間限定で仲間に戻った、って訳だぜ、龍也。」

 

「ふざけるな! 誰が仲間だ!?」

 

「ああ? 悪い、悪い。オレは今はゴッドと守護騎士達の利害の一致の協力者って奴だ。ああ、そうそう、ウイングゼロが呼んでるぜ。」

 

「っ!? お前!?」

 

右腕を向けるとミッド式魔法陣が展開され、そのままゴッドの姿が消えていく。

 

「クロスボーン、貴様!?」

 

「ハッ、そろそろ本気で行こうぜ! 来な、海神の加護を受けし海の主、聖獣(マイソロジー)『ポセイディア』!!!」

 

「クッ、来たれ、クロスディア!!!」

 

祝詞に導かれるようにクロスボーンの影から現れるのは海王星の加護を持つ水中戦用の首長竜型の聖獣(マイソロジー)『ポセイディア』。それに対抗するべく、デスティニーもまた自身の聖獣(マイソロジー)であるクロスディアを呼び出す。

 

 

 

 

「な、なんだよ、あれ?」

 

「あ、あれって…あの時の…。」

 

ヴィータとなのはも戦いを止めてポセイディアの出現に驚愕を浮かべる。すぐ近くで繰り広げられている首長竜と翼竜の怪獣対決に見入ってしまう。特になのははPT事件の時にクロスボーンと戦った時の事を思い出したのだろう、レイジングハートを握る手が震えている。

 

 

 

 

「あれは…ゴッドの物とは違う、何者だ。」

 

「あ…あ……。あれは…あの時の…。」

 

なのは達と同様にポセイディアの出現に驚愕を浮かべて戦いを止めるシグナムとフェイト。以前にクロスボーンとポセイディアと戦った時の記憶を思い出したのだろう、フェイトも恐怖に震えている。

 

 

 

 

結界の外、結界を破る手立てを考えていた時、シャマルはクロノにデバイスを突きつけられていた。

 

「捜索指定ロストロギアの所持、使用の疑いであなたを逮捕します。」

 

「くっ!?」

 

「抵抗しなければ弁護の機会があるあなた達にはある。同意するなら武装の解除をお願いします。」

 

シャマルに至近距離でデバイスを突きつけ投降を宣言するクロノ。ゴッドが居れば話は別だが、シャマルの能力ではこの状況に対処の仕様はないだろう。既に投降する以外に手立ては無い。投降するのは時間の問題だろうと、臨時作戦本部のリンディ達もそう思っていた。

 

「っ!?」

 

「え、なに!?」

 

慌ててそこから飛び退くと今までクロノの立っていた場所を異形の剣が突き刺さっていた。

 

「…よく避けたな…執務官。」

 

「お前は!?」

 

純白の翼を広げながら、影の様に漆黒の体を持ち、天使の翼を持たない代わりに禍々しい印象を与えるバックパックを持ったもう一人の己『バインドウイングガンダムゼロカスタム』を従えて現れたウイングゼロが感心した様に言う。

 

「あなた達は……?」

 

シャマルの問いかけを聞き、バインドウイングゼロを影へと消し、クロノから注意を外し彼女へと視線を向けた時、ウイングゼロはツインバスターライフルを2丁に分離させ、左右に向けてウイングゼロはツインバスターライフルの引き金を引く。

 

「「っ!? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」」

 

分離させたバスターライフルから、なのはのディバインバスター級の砲撃が放たれ、二つ同時に悲鳴が響く。左右のビルの壁に叩きつけられるのは、クロノと仮面を付けた謎の男。

 

「悪いな、オレは短時間だけだが未来予知が出来てな…。」

 

翼はウイングゼロの持っていたシステム『ゼロシステム』をウイングゼロの姿の時に使用できる。それによってクロノの動きを予知し反撃したという訳だ。

 

「自己紹介が遅れたな…。オレの名はウイングガンダムゼロ。ところで…ついでに反撃したが…奴は敵で良かったのか?」

 

シャマルに己の名を名乗りながらウイングゼロは(知っているが)仮面の男を指差して問い掛ける。

 

「い、いいえ、知らないわ!」

 

「そうか、取り合えず敵と認識して良いか。そうそう、守護騎士の一人でシャマルと言ったか…オレは今はお前達の味方だ。」

 

「…信用できないわね…。」

 

「…それも、そうだな…だったら、こう名乗った方が良いか…オレは焔の…「ウイングゼロォォォォォォオ!!!」…お前に証明してもらった方が良いだろうな。」

 

「ほむ…じゃなかった、ゴッド君!?」

 

上空に現れた魔法陣を通して現れたゴッドがウイングゼロの言葉を遮る様に叫び、彼へと殴りかかる。その光景に驚いてシャマルは思わず焔の名で呼びそうになってしまう。

 

「約束どおり協力しに来たぞ、ゴッド。執務官が居る事だし、本名は控えた方が良いだろう?」

 

「ゴッド君、彼の事を知ってるの?」

 

「ああ…一応…な。」

 

「オレの事はどうでも良い。今から結界を破壊する。お前の力では無理なら、ゴッドのスパルタン、又は他の守護騎士の大技をぶつける必要が有る。闇の書の力を使うと言うのは避けたいだろう?」

 

「え、ええ…。」

 

「っ!? だったら…来い…「止めておけ。オレがやる。」なんだと?」

 

ゴッドを止めてウイングゼロは前に出て、

 

「そんな事より、あいつはお前の知り合いか?」

 

仮面の男を指差して問い掛ける。

 

「誰がだよ…って、あー!!! あいつはあの時、オレを襲った奴か!?」

 

「ええ!?」

 

思いっきり仮面の男を指差して叫ぶゴッド。

 

(ホントかよ、ゴッド兄!?)

 

(ならば、奴も管理局か?)

 

念話を通してヴィータとザフィーラの声が響く。

 

「いや、どうやら、アイツも夜天の書を狙っている様だったぜ。」

 

((((なんだと(ですって)!?))))

 

ゴッドの言葉に驚愕の叫び声が重なって響く。

 

「なるほどな…どうやら、完成した魔道書の主やその騎士には手が出せなかったとしても、それ以外の人間を狙うのは容易い事だ。完成した所でゴッドを人質にして自分達の好きに利用しようとでも思ったんだろうな…。」

 

最後に『奴にとって誤算だったのはゴッドが普通の人間じゃなかった事か?』と付け加え、ウイングゼロは言葉を区切る。

 

「いや、オレの事が邪魔だとかいってた様な気が…「どっちにしても、敵に代わりは無いだろう。結界破壊はオレに任せて、トドメを刺して来い。」それもそうだな。」

 

「え? ちょっと、ゴッド君。」

 

「取り合えず一発ぶん殴るだけだ、安心してくれって!」

 

本気で殺りに行きそうなゴッドを慌てて止めようとするシャマルだが、ゴッドはそう言って両腕をゴッドフィンガーの体勢に変える。

 

『ハイパーゴッドフィンガー!!!』と言う叫び声と爆発音を背中にウイングゼロは『計画通り』と言う様な黒い笑みを浮かべていた。…長年の友人関係故か、徹底的にゴッドの扱いに慣れているウイングゼロである。

 

「さて、結界を破壊するか…。おい、結界の中の仲間に逃げる準備をしろって伝えておけ。」

 

「え、ええ。」

 

「光臨せよ、偉大なる者より産み落とされし水の星の加護を受けし武士(もののふ)…聖獣(マイソロジー)『ヘルメディア』!!!」

 

ウイングゼロの影より現れるヘルメディア。そして、更に、

 

「増殖せよ!!!」

 

ウイングゼロの叫びと共にヘルメディアの影から現れた九体のクローンヘルメディア達がヘルメディアと共に結界の周りを取り囲む。

 

「闇へと消えろ…デスヘルメッシュ!!! 十連撃!!!」

 

九体のクローンヘルメディア達とヘルメディアの総攻撃が同時に結界へと突き刺さる。十の漆黒の炎を纏った斬撃はいとも簡単に管理局員が全力で張った結界を破壊する。

 

同時に結界破壊のドサクサに紛れてウイングゼロはクローンヘルメディア達を使って管理局が現場に飛ばしていたサーチャーを破壊する。

 

「さて、次に会う時は久しぶりに肩を並べて戦う事が出来ると楽しみにしているぞ…焔。」

 

結界内に居るシグナム、ヴィータ、ザフィーラ、そして、クロスボーン達が逃げる。そして、横を通り過ぎていくゴッドに告げてウイングゼロもその場を後にする。

 

「待て!!!」

 

ウイングゼロはクロノを嘲笑う様にクロノへと顔を向けて目を合わせて一瞬だけ笑みを浮かべてから飛び去る。

 

「くそっ!!!」

 

クロノは怒りを叩き付けるように地面に拳を叩きつけるのだった。

 

 

 

反マイシスチームSIDE

 

 

「ポセイディア…クロスボーンですか…。」

 

クロスディアとの怪獣対決の様な戦いを繰り広げているポセイディアを眺めながらフリーダムの姿の雷斗が呟く。…戦いと言うよりポセイディアのそれは単なる大暴れに近いが、ポセイディアの能力が殲滅戦向けなのだからそれは仕方ない事だろう。

 

「っ!? それって、龍也一人じゃ拙いんじゃないのか?」

 

「ええ、拙いですね。私達も加勢に入りましょう。」

 

「ああ!」

 

ガンダムの姿の時也とフリーダムの姿の雷斗がそれぞれの聖獣(マイソロジー)を召喚しようとした時結界内に異変が起きる。

 

「って、崩壊ですか!?」

 

「捕縛用の結界だからな…仲間を助ける為に破壊したんだろう…オレ達も脱出した方がいいな。」

 

そう言ってポセイディアに視線を向けるとポセイディアの姿が消えて、クロスボーンとヴォルケンリッター達が逃げていく。

 

「そうですね。…はぁ…私達…何の為に結界の中に入ったんでしょうか…?」

 

「言うなよ、オレも久しぶりに活躍したかったのに…。(泣)」

 

妙にベタな発言をしてくれる主人公から主人公(仮)に成りつつある時也だった。…ヒロイン居れば少しはマシになるのだろうが…。

 

「だったら、sts編まで早く進めろ!!!」

 

「時也さん…そう言うのは楽屋裏でするセリフですよ。あれ? 何故か逃げ遅れてませんか…フェイトさん。」

 

「使い魔が居るなら、そいつや仲間が何とかするだろう、早く帰ろうぜ…。」

 

「いえ、ポセイディアの大暴れで分断されちゃったみたいです…。って、物凄く拙いのでは!?」

 

物凄く…と言うよりも明らかに拙い。明らかにそれは時也達の存在が呼んだ歴史の変化と言う所だろう。

 

「時也さん、彼女を助けに行きます、援護を! アローディア!」

 

「仕方ないな。任せろ!」

 

フリーダムの叫び声と共に現れる金色の人馬の騎士型の聖獣(マイソロジー)アローディア。フリーダムの持つ全聖獣(マイソロジー)の中で最速のスピードを誇る聖獣(マイソロジー)。

 

「駆け抜けろ、アローディア!!!」

 

フリーダムの叫びと共にアローディアは飛び立つ。

 

「ったく。来い、ハーディア!!!」

 

己の影へと触れてガンダムは自身の聖獣(マイソロジー)ハーディアを呼び出し、アローディアの後を追う。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

「え?」

 

アローディアの最高速を維持しフェイトの元に辿り着くと、フリーダムはフェイトの腕を掴み、自身の下に引き寄せる。

 

「フリーダム…さん?」

 

「ええ。ここから離脱します。捕まっていて下さい。」

 

アローディアを反転させ結界が崩壊する前に離脱しようとしたが、流石のアローディアも最高速でなければ間に合う可能性は薄く、一度止まってしまった以上、再び最高速になるまでの時間が問題だろう。

 

だが、

 

「切り裂け…『崩壊』を!!!」

 

ガンダムとハーディアがアローディアの後方…崩壊に向かって腕を振り上げる。光と影の境界さえ切り裂くハーディアの力とバインダーの精神で大きく力を変えるハーディア。

…ならば、バインダーが望みさえすれば…ハーディアは“形の無い物”さえも“切り裂く事”が出来る。

 

「エクリプス…クライドォォォォォォォオ!!!」

 

ハーディアの力でアローディアの後方で起こっている結界の崩壊を切り裂く。それによって崩壊を阻止できたのは僅かな時間だけ…だが、アローディアのスピードならば、僅かな時間だけ有れば十分過ぎる。

 

アローディアの離脱を見届ける事無く、ガンダムはハーディアと共にその場から離脱して、ハーディアを影へと戻すと結界の外のビルの一つにゆっくりと降りる。

 

「え!?」

 

「間に合いましたね。」

 

フェイトを抱き抱えながらフリーダムはアローディアを影へと戻し、ゆっくりとビルへと降りる。

 

「フリーダムさん、どうしてここに…?」

 

「ええ、単なる偶然ですね。」

 

そんな会話をしている二人はまあ放って置いて良いだろう。取り合えず“それ”を無視して居るフリーダムは何時でも簡単に逃げられると言う確信が有るからだろう。問題があるとすれば、

 

「時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。詳しい話を聞かせてもらおう。」

 

フリーダムとガンダムにバインドをかけて、そう宣言してくれているクロノと頭に『#』マークを貼り付けて『ティターンズカラー』に見えるダークオーラを纏うガンダムだろう…。ガンダムの心境としては、『“過去”のクロノとは別人』と自分に言い聞かせて居る所だ。…どうでも良いが、連れて行かれた先で爆発されるよりはこの場で爆発してくれた方が何倍も安全だろうが…。

 

……見事にクロノは“過去”のマイシスとの戦いの後での時也とクロノのファーストコンタクトを再現してくれたのであった……。

 

(…クロノ殿…フォローできないでござるよ…。)

 

あとは、フェイトが助かった事で安心しているアルフと、取り合えず危なくなったら助けようと考えながらも、なのはの安全を最優先に考えながらクロノを眺めるデスティニーと、オロオロとしているなのはの姿だった。

 

「ね、ねえ…龍也…彼って大丈夫なのかな…?」

 

「あー…何と言うか…かなり頭にきている感じでござるな…。臨時本部に連れて行くのは危ないと思うでござる。」

 

「き、危険ってどれくらい…?」

 

「…あー…下手に連行してその先で爆発されたら…拙者はなのちゃん以外の安全は保障しないでござるよ。」

 

「え゛。なんで、なのはだけ?」

 

「…あー…取り合えず拙者は、なのちゃんを全力で最優先で守るだけだから…でござる。まあ、フェイト殿の安全はフリーダムが保障すると思うから大丈夫だとは思うでござる。」

 

「あー…。」

 

龍也の言葉に妙に納得してしまうユーノだった。

 

(クロノ殿…あまり時也殿を怒らせないで貰いたいでござる。)

 

 

 

 

 

つづく…

説明
神候補である星の加護を持った聖なる獣達に宿った鋼鉄の戦士達の力を受け継いだ戦士達と魔法の物語。あるSDガンダム物とリリカルなのはのクロスした小説です。
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