IS<インフィニットストラトス>過去の女神と未来の天使 第弐話 改造、そして真実
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「っっっ!!?」

 

 

芳佳は突然の激痛に襲われた。束の空間から黒い靄に入った直後、あの撃たれたような痛みが再発した。

 

 

「み、宮藤が生き返った!?」

「芳佳ちゃん!!」

「っぁぁっ……」

 

 

力を振り絞って名前を呼ぼうとするが痛みに妨げられ、苦しみの悲鳴が漏れる。

 

 

「喋るな宮藤!今すぐ助けてやる!!」

「しっかりして、芳佳ちゃん!」

「っぅ……」

 

 

激痛の余り、再び意識は闇の中へ沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういやさっきシンちゃんって帰る世界が無いって言ってたけどどうしてなのー?」

 

 

束は初号機のコアのデータに目を通しながらシンジに尋ねた。コンソールを操作する指は素早く動き一瞬たりとも止まらない。

 

 

「僕はそのエヴァ初号機でサードインパクトを起こして世界を滅ぼしたんです。だから誰もいない世界に戻っても意味が無い気が……」

「へー、じゃあいざとなったらサードインパクトを起こせる機能を付けておくね。イメージ的にはビックバンもどきだけど」

「やめてください!」

 

 

シンジはコンソールをいじってる束の腕を必死で取り押さえた。

 

 

「冗談冗談だって」

「心臓に悪いですよ」

「にゅふふ?」

 

 

束はコアのコピーを終えると、初号機に駆け寄って特殊装甲を切り取り始めた。

 

 

「こりゃ固いなぁ。どんな作りになってるの?」

「1万2千枚の特殊装甲です」

「わぉ!さすが巨大なだけあるね。けど束さんがそう簡単に諦めるとでも?」

 

 

束はクレーン車を動かして装甲をこじ開けはじめた。メキメキと音を立てて紫色の装甲が剥がされていく。

 

剥がされた装甲の裏にはべったりと赤黒い液体がこびりついていた。

 

 

「ロボットから血?」

「あ、初号機はロボットじゃなくて人造人間なんです」

「へー……人造人間ねぇ」

 

 

何か悪事が閃いたらしく束は口の端を吊り上げた。

クレーン車から飛び降りて奥から巨大な道具をフォークリフトで運び出した。

 

 

「こんなこともあろうかとあってよかった手術道具!」

「ま、まさか」

「早速オペスタート!あ、シンちゃんは見ちゃダメ、グロいから」

 

 

シンジはクレーン車に吊り下げられ隣の部屋に放り込まれた。

扉を閉めているにも関わらず、グロテスクな効果音が束のラボに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………?」

 

 

芳佳が目を覚ますと見覚えのある天井が見えた。

生きている。

帰って来れた以上に生きていることに喜びを感じた。

意識が喪失する前に感じた激痛は大分引いたがまだ若干痛みは感じる。

 

 

芳佳はベッドから起き上がり、部屋から出た。今は夜中。廊下も静まり返っている。

芳佳はフラフラと覚束ない足取りのままハンガーへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハンガーの中央ではシャーリーは整備中の自分のストライカーユニットに寄り掛かって眠っていた。

芳佳は起こさないようにこっそり自分のストライカーユニットにたどり着いた。

束によって改造されたらしいがじっくり見てもよく分からない。

 

 

「ん?」

 

 

ストライカーユニットの間に小さな四角い板が挟まっていた。芳佳はそっと取り出してみた。どうやらスイッチらしく、真ん中にボタンが付いていた。

 

 

 

 

そしてボタンには文字が

 

 

『よっちゃんへ もしこれを読んでるなら死ぬ確率100%を覆したんだね。もし自分が窮地でも誰かを救いたい、守りたい気持ちになったら押してねー』

 

 

「……」

 

 

芳佳はスイッチをポケットにしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

「大丈夫か宮藤?」

「はい」

 

 

美緒の話によるとネウロイに撃たれた芳佳は更に追撃を食らい、海に墜落した。

直ぐさまネウロイを牽制しながら芳佳を救い出したがその時には心臓が止まっていた。

ネウロイを倒し基地に亡骸を運ぼうとしていた最中に芳佳は息を吹き返し苦しみ出した。

直ぐに治療を施したのでなんとか一命を取り留めることができた。

 

 

「心配かけてすみません、坂本さん」

「いや、私のミスだ。すまん、宮藤」

「そんな、坂本さんがあの時声をかけていなかったら……」

「あの時?」

「囮のネウロイが私を狙ってた時、『宮藤、後ろ!』って」

 

 

しかし美緒は首を傾げた。

 

 

「あれは私ではないが?」

「えっ?」

「確かに『宮藤、後ろ!』と聞こえたが……」

 

 

近くにいたリネットは彼女のことを『芳佳ちゃん』と呼び、ペリーヌは『豆狸』と呼ぶ。エイラやバルクホルンは『宮藤』と呼び捨てにするが、声が聞こえるほど近くにはいなかった。

 

 

「まさか」

「考えたくないな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

残る可能性はネウロイの声。

二人にはとても信じられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初号機の改造は一日で終わらず、夜中も続いた。

初号機から剥いだ特殊装甲は束の手によって瞬く間にISのフレームに形を変えていく。

肩に内蔵されていたプログレッシブナイフも不必要な部分を削ぎ落とし、柄が人間の掌に収まる程度のサイズまで小さくなった。

 

 

「凄い……」

「まあね、天才束さんに不可能は無いから」

 

 

束は話しながらも絶え間無く工具でISのフレームを組み立てている。しかもリツコのキーボード捌きよりも速く手を動かしている。次の工程が始まったと思えば既に二つ三つ先の工程まで進んでたりもする。

 

 

「お腹、空きましたね」

「んー、そうだね」

「何か作りますけど」

「おぉー、助かるぅ!私は好き嫌い無いからなんでもいいよ」

「分かりました、ところでキッチンは?」

「そこの赤い扉だよ」

 

 

シンジは奥の赤い扉を開いた。

 

 

中にあったのはIS。キッチンなど無い。

間違えたのかと思いシンジは隣の青い扉を開いた。またISだ。

 

 

「束さん、キッチンは」

「赤い扉の部屋にあるIS」

「……へ?」

「暇だから欠陥品を改造して料理用ISにしてみたんだ。IHクッキングヒーターや大容量の冷蔵庫付きの便利な逸品だよ。まあ、使うのはインスタントのお湯沸かすくらいだけど」

 

 

シンジは料用理ISに乗り込んだ。右にあった盾がスライドしてシンジの目の前に浮かび上がった。

 

 

「これでどうやって」

「目の前の盾の形したクッキングヒーターを使ってね。道具とか材料はイメージすれば出てくるよ」

 

 

シンジはまず包丁をイメージした。すると右手に包丁が現れた。

更にレタスやトマト、ニンジンやひき肉、そして塩胡椒を取り出した。

 

 

「流しは?」

「左の盾にあるよ」

 

 

クッキングヒーターの上に重なるように右の盾が流しになった。

シンジは料理用ISの便利さに感心した。

 

 

(これならミサトさんでも料理上達してたかも……いやむしろ悪化してたかな?)

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジは二人分のサラダとハンバーグを束の横に運んだ。

 

 

「できました」

「美味しそう!いただきます」

 

 

束は作業を中断して早速ハンバーグを口にした。

 

 

「美味しい!」

「よかった」

「いやー、ハンバーグ何年前に食べたんだろ?もう軽く10年は食べてないなぁ。箒ちゃんの手料理のハンバーグが最後かな?」

「箒ちゃん?」

「私の妹、かれこれここ数年は連絡すらしてなかったけどIS学園に入るみたいだよ。もしかしたらクラスメートになるかもね」

「どんな人ですか?」

「かわいい妹でちょっとツンツンしてるかな?今はわかんないけど。あ、ハンバーグごちね」

 

 

束はあっという間に平らげて直ぐに作業へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイレンが響いた。

 

 

「またネウロイか」

「ええ、巨大ネウロイ1機と小型ネウロイ多数。巨大ネウロイは前回よりもずっと小さく、高度12000を保ったまま南東からここへ」

「ここだと?」

 

 

美緒はミーナが広げた地図を見直した。確認された地点を直線で結ぶと一端がこの基地とぶつかった。その先は町は無く、小さな村も数個しか見当たらない。

 

 

「ウィッチに逆恨みか何かか?」

「ネウロイもここを落とせばって考えたのかしら?」

「いずれにせよ、我々は撃墜するのみだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

芳佳は部屋からからウィッチが飛び立つのを見ていた。病み上がりを配慮して芳佳は基地で待機することになっていた。

 

 

『前より数が多いな……』

『ネウロイも小さいし楽勝だな』

 

 

インカムを通して戦場の様子が耳に入ってくる。大音量の爆発音も数秒遅れてエコーのように微かに聞こえる。

 

 

『一体一体は弱いが数が多いとなると……』

『あーもー、しつこい!』

『大変だ!!』

「!」

 

 

芳佳もその状況が見えた。

巨大ネウロイが基地に向かってスピードを上げていた。

小さいネウロイで引き付け本命の巨大ネウロイを進ませる。前回と似た戦法に嵌まってしまった。

 

 

『ダメ、あたしでも間に合わない!』

『ミーナ、行ってくれ!』

「私が行きます!」

 

 

芳佳は思わず返事をした。

 

 

『お前はまだ病み上がりだ!部屋で待機』

「大丈夫です!もう治りましたから!!」

『宮藤!』

 

 

芳佳は急いでハンガーに向かい、ストライカーユニットを装着した。

束が出力を上げたと言っていたが芳佳にはあまり変化が感じられなかった。

 

 

「出撃します!」

 

 

芳佳はハンガーから発った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネウロイはすぐそこまで来ていた。

射程距離内にウィッチーズの基地を見つけたネウロイはレーザーを一斉に放った。

芳佳はネウロイの真っ正面に立った。

 

 

「させない!!」

 

 

シールドを張ってレーザーを防ぐ。束になって降り注ぐレーザーはいつもに増して威力があった。芳佳も押され気味だ。

 

 

「く……ぅう……」

 

 

ネウロイはレーザーを放ったまま更に基地へ接近した。一人では時間稼ぎもできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

『もし自分が窮地でも誰かを救いたい、守りたい気持ちになったら押してねー』

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あれだ!」

 

 

芳佳は束が仕込んだと思うスイッチをポケットから取り出した。

 

 

(お願い、束さん!)

 

 

芳佳はスイッチを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び時が止まった。

 

 

 

 

続く

説明
第十使徒との戦いでサードインパクトを起こした碇シンジ。ネウロイとの戦闘で撃たれた宮藤芳佳。気付けば二人は別の世界にいた。そこは《IS》という女性にしか扱えない兵器が存在する世界。
二人はこの世界で生きていけるのか?


IS、エヴァ、ストパン転生小説です。更新はかなり遅いですがよろしくお願いし
※この作品は小説家になろう、フォレストページでも投稿しています※
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タグ
ストライクウィッチーズ IS インフィニット・ストラトス エヴァンゲリオン 

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