仮面ライダークロス 第十一話 Yの悲劇/昨日と明日
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光輝と一真はそれぞれのマシンに乗り、風都の街をドライブしていた。

 

しばらくして二人は小休止を取り、光輝は一真に尋ねる。

「どう?この街はいい風が吹くでしょ?」

「ああ、最高だ!」

二人は近くにあった自販機でオロナミンCを買い、飲み終えてから、ドライブを再開した。

 

 

 

 

 

翔太郎と亜樹子は、不破夕子という女性から依頼を受け、彼女とともに『きのう』という名前の猫を捜していた。

すでにあらゆる手段を使ってきのうを捜しているが、見つからない。

「こうなったら奥の手だ。」

「?」

翔太郎が言い、何をするのかと亜樹子が見ていると……

 

「にゃーお。にゃあぁーお!にゃ、にゃーお。」

 

突然翔太郎が猫の真似を始めた。

亜樹子はスリッパで翔太郎の頭を叩く。

「ってぇ!!」

「アホ!そんなんで見つかるかい!」

「甘ぇな亜樹子。おやっさんが言ってたぜ?犯人を捜す時には、犯人と同じ気持ちになれってな。」

そう言って再び猫の真似を始める翔太郎。再び翔太郎の頭を叩く亜樹子。

すると…

「にゃおー、にゃーお!」

夕子までが猫の真似を始めた。

「ウソ…」

「ほらな?」

翔太郎も猫の真似を再開する。

その時、

 

「何してるんですか、翔太郎さん?」

 

いつの間にかやって来ていた光輝が、翔太郎に声をかけた。

 

 

 

 

 

僕は翔太郎さんに声をかけた。

ちなみに一真は、かなり引き気味な視線で翔太郎さんを見ている。

「や、これはな?」

翔太郎さんはかなりうろたえながらも、僕達に事情を説明した。

「そういうことなら、僕も協力します。一真は?」

「俺も手伝うよ。」

というわけで、僕達は猫捜しに協力した。

と、

「あ…」

さっき翔太郎さんが紹介してくれた夕子さんが、何かに気付く。

「どうしました?」

翔太郎さんは尋ねた。

「これ、可愛いな、って…」

夕子さんはそう言いながら、目の前にあるポスターを指差す。

ポスターにはこの街のマスコットキャラ、ふうとくんがプリントしてあった。

 

僕はふうとくんを見る度に、今から数ヶ月前に起きたあることを思い出す。

あの、不思議な人のことを……

 

 

 

 

 

それは今日みたいに、ロイヤルランナーに乗って街をドライブしていた時のことだった。

僕は家に帰る途中、やけに足取りが悪そうな人を見つけた。

タキシードを身に纏い、首にスカーフを巻いた男性だ。

 

なぜかその人から目が離せなくなった僕は、しばらくその人を見ていた。と、その人は崩れるようにして、倒れてしまう。

驚いた僕はその人に駆け寄った。

「大丈夫ですか!?」

僕が支えながら声をかけると、男性は、

「ああ、大丈夫だ。気にしないでくれたまえ」

と言いながら立ち上がった。

でも、僕は直感でわかった。この人はもうすぐ死ぬ、僕には助けられない、って。

すると、男性は僕にふうとくんキーホルダーを手渡した。

「このふうとくん、実は僕がデザインしたものでね。君にあげよう」

「…どうして僕にこれを?」

「…さあ、なぜだろうね?君にはあげなければいけないと思ったんだ。」

それから男性は少しだけ歩いて、僕を見る。

 

そして男性は名乗った。

「僕の名は霧彦。どうか覚えておいてほしい」

 

霧彦と名乗ったその男性は、どこかに行ってしまった。

 

それが彼と僕の、最初で最後の邂逅だった。

 

 

 

 

 

「光輝?光輝!」

僕が考え事をしていると、一真が話しかけてきた。

「え?ああ、ごめん。猫捜しだったね」

僕達は翔太郎さんから猫の特徴を聞いたあと、捜しに出かけた。

 

 

 

 

 

光輝と一真が翔太郎達と別れてから数分後、光輝のクロスフォンに翔太郎から電話がかかってきた。

「もしもし、どうしたんですか翔太郎さん?」

「光輝か!?ドーパントだ!」

「えっ!?」

「奴は今ホールに向かってる。挟み撃ちだ!」

「はい!」

光輝は電話を切った。

「どうしたんだ?」

「ドーパントが出たって。今ホールに向かってるらしいから、挟み撃ちにするよ!」

「わかった!」

光輝と一真はホールに向かった。

 

 

 

 

 

二人が変身してホールに向かうと、砂時計のような頭をしたドーパントが走ってくるのが見えた。

「あいつか!」

「行こう光輝!」

「うん!」

クロスとブレイドは互いに武器を持ってドーパントに斬り込む。だがドーパントは意外にも素早く、二人の攻撃をかわしてしまう。

そこへ、ヒートメタルにハーフチェンジしたWも到着し、三人がかりで挑む。

しかし、どうも相手は回避に重点を置いて戦っているようで、当たらない。

そうこうしているうちに、ドーパントはホールの中に逃げ込んでしまう。

『ホールの中に入った!』

フィリップに言われ、三人もドーパントを追ってホールの中に入る。

「安心しろ!今日は休館日だ!誰もいねぇ!」

翔太郎の言う通り、今日は休館日だ。よって、人を気にせず戦える。

 

ドーパントはその後も三人の攻撃をかわし続け、ついにステージの上へ。

その時、

 

ドーパントがWに向けて光弾を撃ち出した。

 

光弾はWに直撃。

「翔太郎さん!」

驚くクロス。だが、

『今のは!?』

「…効いちゃいねぇよ。」

翔太郎の言う通り、ダメージはなさそうだ。

「それより、マキシマムで行くぜ!」

 

 

〈CYCLONE!〉

〈JOKER!〉

〈CYCLONE/JOKER!〉

 

Wはサイクロンジョーカーにハーフチェンジし、

 

〈JOKER・MAXIMUM DRIVE!〉

 

必殺技を発動する。

「『ジョーカーエクストリーム!!』」

ドーパントはWに向けて大量の光弾を連射するが、ジョーカーエクストリームはそれを破ってドーパントに飛んでいく。

しかし、ドーパントはそれすらかわしてしまい、外へ逃げる。

「すばしっこい野郎だ!」

「待て!」

ブレイドが叫び、三人はドーパントを追いかけた。

だが、ホールを出て船着き場に着いたところで、ドーパントを見失う。逃げられたのだ。

 

 

 

 

 

三人が変身を解いた時、亜樹子がやって来た。

「ドーパントは!?」

「…逃げられた。」

そこへ、見計らったかのように夕子が現れる。その腕には猫が抱き締められていた。

「おかげ様で見つけられました。ありがとうございます」

「ああ、いえ…」

翔太郎は会釈する。と、

「これで、明日が楽しみです。」

「えっ?」

夕子は意味深なことを言って去っていった。

「別れもまた、突然なのだよ、ハーフボイルド君。」

「…亜樹子…」

「あ、お金お金…」

亜樹子は夕子を追いかけていく。

「俺達も帰ろうか。」

「…そうだね。」

光輝と一真も帰ることにした。

 

 

だが、彼らはまだ知らない。

明日何が起きるのかを……。

 

 

 

 

 

翌日、光輝と一真はダンテ達に、昨日起きた戦いを聞かせた。

「そんなことがあったのか…」

バージルが言った。

「しかし、そのドーパントは何がしたかったんだろうな?」

「話を聞く限りじゃ、ただ逃げ回ってただけらしいけど…」

「気になるのは、その時ドーパントが撃ったっていう光弾だ。」

照山、トリッシュ、ダンテは考える。

「いずれにしても、今日探偵さんの所に行って、様子を見た方がいいわ。」

レディが結論を出した。

一真が頭をひねりながら、光輝に疑問を投げ掛ける。

「でも、あの攻撃は一体何だったんだろう?命中したのに、ダメージが全くないっていうのも変な話だし…」

「僕も、なんだか嫌な予感がするよ。」

それを聞いてバージルは、

(その予感、当たるかもしれんな…)

と、密かに危惧していた。

 

 

そしてこれから数時間後、バージルの危惧通り、光輝の予感は当たることになる。

 

 

 

 

 

授業が終了し、帰路につく光輝と一真。

そんな時、光輝のクロスフォンに、照井から連絡が入ってくる。

「もしもし照井さん?どうしたんですか?」

「白宮、緊急事態が発生した。」

照井の話によると、翔太郎が突然昨日と全く同じ行動を始めたという。

これはイエスタディ・ドーパントというドーパントの仕業らしい。

イエスタディは相手に八の字型の刻印を刻むことによって、対象に昨日と全く同じ行動をさせることができるのだという。

光輝はそれを聞いてピンときた。

昨日の戦いでWに光弾を撃ち込んだ、あの正体不明のドーパントがイエスタディだったのだ。

「昨日と同じ行動…」

光輝は昨日を思い出す。昨日はホールの中で戦った。昨日は休館日だったが、今日は違う。

「…大変だ!一真、今すぐホールに行こう!」

「えっ?」

「会場の人達が危ないんだ!」

 

 

 

 

 

俺は光輝から事情を聞いて、光輝とともにホールへ向かった。光輝の話だと、今日は園咲冴子という人の講演会があるそうだし、確かにヤバイ。

 

そうこうしているうちにホールにたどり着く俺達。照井さんはまだ来ていないみたいだ。中では昨日の行動通り、ヒートメタルにハーフチェンジしたWが、メタルシャフトを振り回して戦っていた。ステージの上では、なぜか園咲冴子が逃げずに立っている。側には、前に光輝が教えてくれた園咲若菜という人がいて、彼女に逃げるよう促しているのだが、これもまたわからないことに、当の本人はそれを拒否していた。

とにかくこのままだとまずい。

「変身!」

 

〈TURN UP〉

 

俺はブレイドに変身して駆け出した。

Wはサイクロンジョーカーにハーフチェンジし、マキシマムを発動して飛び上がる。

だが俺はそれより早くステージ上にたどり着き、ブレイラウザーからカードを一枚取り出し、ラウズする。

 

〈METAL〉

 

俺がラウズしたのはメタルトリロバイトのカード。スーツやブレイラウザーを硬化して、防御力を高めるカードだ。

「ジョーカーエクストリーム!!」

Wのマキシマムに対し、俺はスーツを硬化させて正面から受け止める。

「うわあっ!!」

俺の試みはうまくいった。Wは俺のスーツを破れず、跳ね返される。

そこへ、アクセルに変身した照井さんが入ってきた。光輝もクロスに変身している。

すると、どうやら操られているのは翔太郎さんだけらしく、Wからフィリップさんの声が上がる。

『照井竜!僕に考えがある。Wを外へ!』

「わかった。」

アクセルはバイクモードに変形し、Wを無理矢理外へ押し出した。

「一真!Wのマキシマムを正面から受けてたけど大丈夫!?」

「ああ、大丈夫だ。それより、二人を追いかけよう!」

「うん!」

俺達はホールを飛び出し、Wとアクセルを追いかけた。

 

 

 

 

 

「どこ行った!?」

どうにかWを外へ追い出したアクセルだが、Wは未だに操られたままである。

クロスとブレイドが到着したその時、

エクストリームメモリが飛来し、ドライバーに装着。

 

〈XTREAM!〉

 

Wはエクストリームメモリを開いてサイクロンジョーカーエクストリームとなり、同時にWの胸に刻まれていたイエスタディの刻印も消滅する。

「エクストリームのパワーを集中して、イエスタディの刻印を相殺した。翔太郎!翔太郎!」

「っ!俺、今まで何を…」

フィリップの奇策により、翔太郎は元に戻った。

「よかった!翔太郎さん、元に戻ったんですね!」

喜ぶクロス。

「あ、ああ。なんとかな…」

「詳しいことを説明したいが、そんな暇はない。ドーパントだ」

フィリップに言われて見てみると、そこには昨日戦ったドーパント、イエスタディ・ドーパントがいた。

「あいつは…」

「お前の記憶を操っていたドーパントだ。」

「俺の記憶を?」

翔太郎にドーパントのことを教えるアクセル。と、イエスタディは背を向けて逃げ出した。

「まずい、逃げられるぞ!」

焦るブレイド。だが、Wの、フィリップの方は落ち着いてイエスタディに声をかけた。

「逃げても無駄だ。君の正体はわかっている」

言われたイエスタディは足を止め、こちらを向いてからイエスタディメモリを抜き、変身を解除する。

 

イエスタディの正体は、不破夕子だった。

 

「あなたは…」

「夕子さん!?」

驚くクロスと翔太郎に、フィリップはさらなる真実を告げる

「彼女の本名は須藤雪絵、須藤霧彦の妹だ。僕らには園咲霧彦と言った方がわかりやすいかもしれないけど」

クロスはさらに驚く。

「あの人に、妹がいたのか…」

「あ?お前、霧彦に会ったことがあるのか?」

「…ほんの短い間ですけどね。」

すると、雪絵は彼らにスカーフを見せた。これは霧彦が着用していたものである。

「夕子さん!」

「夕子じゃない。雪絵よ、須藤雪絵。」

「なぜ園咲冴子を狙う?復讐か?」

Wは尋ねるが、雪絵は笑う。

「復讐?馬鹿馬鹿しい。確かに、兄は組織に始末されたわ。でもそれは兄が必要じゃなくなったから。私は兄さんのようなヘマはしない」

「それはどういう…!」

「昨日は利用するためにある。」

 

〈YESTERDAY!〉

 

クロスの質問に答えた雪絵はイエスタディに変身。

「この力で、私はミュージアムの幹部になる!」

さらに手から光弾を放ってきた。

クロスはアクセルとブレイドを守るべく、レイブンクロークを盾にして二人の前に立つ。Wもプリズムビッカーを盾に光弾を防ぐ。

「左!メモリブレイクだ!」

「やって下さい!」

「翔太郎さん!」

「…わかった!」

アクセル、ブレイド、クロスに言われ、Wはイエスタディの攻撃に耐えつつ、プリズムビッカーのマキシマムスロットにメモリを挿し込んでいく。

 

〈CYCLONE・MAXIMUM DRIVE!〉

〈HEAT・MAXIMUM DRIVE!〉

〈LUNA・MAXIMUM DRIVE!〉

〈JOKER・MAXIMUM DRIVE!〉

 

「「ビッカーチャージブレイク!!」」

Wはプリズムビッカーからプリズムソードを引き抜き、ビッカーシールドでイエスタディの攻撃を防ぎながらイエスタディに接近。プリズムソードを降り下ろす。

だが次の瞬間、イエスタディはメモリを抜き、変身を解除した。これにはさすがのWも、プリズムソードを止めてしまう。

「あはははは!」

雪絵は笑いながら去っていった。

「生身の人間は攻撃できない。翔太郎の弱点をついてくるとは…」

「昨日は利用するためにあるだと…?」

変身を解除した翔太郎は悔しそうに言った。

 

 

 

 

 

それからしばらくして、雪絵はタブーに変身した冴子に会った。

「会うのは初めてね。霧彦さんに妹がいるとは聞いていたけど…」

「兄は結構マメな人物でね、毎日日記をつけてたわ。驚いたのはその中身…」

「事情は全て知ってるってわけ…」

「勘違いしないで。」

「?」

タブーは攻撃に使おうとしていた手を止めた。

「兄は愚か者よ。自分のプライドのためにせっかく掴みかけた栄光をふいににした…でも私は違う。」

「私に脅迫状を送ってきたのは、あなたね?」

冴子の元には、今日は講演会を行ってはならないという脅迫状が送られてきていたのだ。

一方雪絵は、

「仮面ライダーに園咲冴子を襲わせる。イエスタディなんていうクセのあるメモリを、ここまで扱える人、いるかしら?」

と肯定した。

「あれは脅迫状じゃなくて、売り込みだったってわけ?自信家ね、お兄様に似て。でも、そう簡単に信用できない。」

言うが早いか、タブーは雪絵に光弾を放つ。

だが雪絵はイエスタディに変身し、タブーに組み付いて動きを封じる。

「諦めないわよ。必ず私の力を認めさせる。お義姉さん…」

タブーはイエスタディを振りほどいて光弾を投げつける。

しかし、イエスタディはどこにもいなかった。

「元、お義姉さんね。」

タブーがそう呟いた。

 

 

 

 

 

同時刻、とあるビルの屋上で、アーカムが本を読んでいた。

と、そのアーカムの元へタブーが放った光弾が飛んでくる。

しかし次の瞬間、アーカムは手にしていた本を閉じ、その本で光弾をガードした。

「嵐が来そうだ。」

アーカムはそれだけ言ってその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

「どうしたコウキ、カズマ?えらく思い詰めた顔してるじゃねぇか。」

ダンテが話しかけてくる。

二人は昨日起きたことを話した。

「昨日は利用するためにある、か…あながち間違ってはいないな。だが、使い方を間違えている。」

バージルは自分の意見を言う。

「しかし、自分の肉親のことを、そう簡単に切り捨てられるもんか?俺は何か裏があると思うぜ。」

「そうだといいけど…」

照山の言う通り何か考えがあってのことだというのなら、どれだけよかったか。一真はため息をついた。

「ねぇ、あれなんだと思う?」

レディが尋ねてくる。それに気付いて光輝と一真が外を見てみると、

 

大量の光弾が街中に降っていくのが見えた。

 

「あれは、イエスタディの刻印!?一真!」

「ああ!」

二人は立ち上がり、

 

〈CROSS!〉

 

「変身」

「変身!」

 

〈CROSS!〉

〈TURN UP〉

 

それぞれ変身。

クロスはレクイエムサーベルにレクイエムメモリを装填し、ブレイドはブレイラウザーにサンダーディアーのカードをラウズし、窓を開け、光線と電撃を放ってイエスタディの刻印を撃ち落としていく。周囲の生徒達は突然の出来事に驚いていたが、そんな事を気にしている場合ではない。

「俺達も加勢した方がよさそうだな。幻影剣!!」

「ラピッドショット!!」

「ヴァルカンショックイグニション!!」

バージル、ダンテ、照山も加勢し、イエスタディの刻印は瞬く間に全て撃ち落とされた。

二人は変身を解く。

「危なかった。もう少しで街の人達がイエスタディの刻印に侵されるところだったよ」

「今のが、その刻印?」

トリッシュが尋ねる。

「ひでぇことしやがる……」

照山は呟いた。

 

 

 

 

 

翌日、光輝と一真は翔太郎、フィリップ、亜樹子とともに、昨日雪絵がいたという公園で雪絵を捜索していた。

「にしてもひどいね。イエスタディの刻印をばらまくなんて…」

「翔太郎は、彼らが撃ち落とせるだけの数しか刻印を射出していないと思ってる。」

「仕方ねぇだろ。俺にはあの人に、別の目的があるとしか思えねぇんだ。」

その時、

「やっと気が付いた?」

聞こえたのは雪絵の声だった。

一同は声が聞こえた階段の上に向かって走る。

階段の上には、雪絵がいた。

雪絵は五人に向かって言う。

「最初から私の目的は復讐!」

「やっぱり…」

翔太郎の予想は当たっていた。

すると、雪絵は霧彦のスカーフを見せる。

「それは…」

「わからない!?兄さんのスカーフ。私が婚約祝いにプレゼントした…面白い偶然よね?この街に来た時迎えてくれた。まるで私に助けを求めるように!私は許さない…兄さんを殺した、あなたをね!」

「…えっ?」

翔太郎は雪絵の言葉におかしな点があることに気付いた。翔太郎は霧彦を殺していない。

「見ろ翔太郎!」

フィリップは雪絵の首筋を指差した。

光輝、一真、亜樹子は驚く。

「イエスタディの刻印!?」

「どういうことだ!?」

「あたし、聞いてない…!」

 

〈YESTERDAY!〉

 

「さあ、永遠に昨日に囚われるがいい、園咲冴子!!」

五人の目の前でイエスタディに変身した雪絵は、腕の時計のようなもの、スタートクロックを作動させる。

「これって、昨日の行動だよね?」

亜樹子が四人に尋ねた。

「たぶん雪絵さんは昨日、園咲冴子に戦いを挑んだんだ…」

一真は自分の予想を言う。

イエスタディはさらに昨日の行動を繰り返す。

「なぜだ…なぜイエスタディの刻印が効かない!?」

そこに、驚くべき乱入者が現れた。

「そう、残念ながら冴子君には、通用しなかった。」

「井坂深紅郎!?」

そう、翔太郎の言う通り、ウェザーに変身した井坂が現れたのだ。

 

 

 

 

 

話は昨日に遡る。

どうにか冴子にイエスタディの刻印を刻むことに成功した雪絵は、イエスタディに変身する。

「さあ、永遠に昨日に囚われるがいい、園咲冴子!!」

「…そんなことじゃないかと思った。あなたもお兄さん同様、愚か者ね。」

 

〈TABOO!〉

 

冴子はタブーに変身。イエスタディはそれに構うことなく、スタートクロックを作動させる。

しかし、行動の再現は起きない。

「なぜだ…なぜイエスタディの刻印が効かない!?」

「その程度の力では、タブーのメモリに、影響は与えられないねぇ。」

イエスタディの背後にはウェザーに変身した井坂が立っていた。

「先生の治療のおかげですわ。」

そう、冴子は井坂から治療を受けることによって、他のドーパントの能力に対する高い耐性を得ていたのだ。

「そんな…」

「昨日に閉じ込められるのは雪絵さん、あなたの方よ。そして私はやっと過去から解放される…」

タブーが光弾を生み出すと、イエスタディの刻印がタブーから離れ、光弾に宿る。

「さよなら、雪絵さん。」

「ぐあっ!!」

イエスタディは光弾を食らってしまった。

 

 

 

 

 

それが昨日起きた出来事だった。

「もうすぐ記憶の再生が終わる。自分自身の過去の記憶を飲み喰らったメモリ…どんな効果があるか楽しみだよ!」ウェザーは嬉しそうに話す。

「雪絵さん…」

翔太郎はイエスタディを見て呟いたあと、ウェザーを睨み付けた。

「許せねぇ…」

「下がって…」

フィリップは亜樹子を下がらせる。

「よくもこんなことを…!」

「自分の欲望のために他人を苦しめるなんて…!!」

光輝も怒りを燃やし、一真はウェザーの姿をかつて自分がいた世界の巨悪と重ねた。

「行くぜフィリップ、光輝、一真!」

 

「はい!」

「決着をつける!」

 

〈CYCLONE!〉

〈JOKER!〉

〈CROSS!〉

 

「「変身!」」

「変身」

「変身!」

 

〈CYCLONE/JOKER!〉

〈CROSS!〉

〈TURN UP〉

 

「『さあ、お前の罪を数えろ!』」

「さあ、暗黒に沈め。」

三人のライダーはウェザーに挑む。

「罪のない人生など、スパイスの効かない料理だよ!そして暗黒に沈むのは君だ!」

ウェザーは三人を迎え討つ。

そこへ、照井もやって来る。

「左、白宮、剣崎!そいつは俺が!」

 

〈ACCEL!〉

 

「変・身!」

 

〈ACCEL!〉

 

照井はアクセルに変身し、ウェザーに斬りかかる。

ウェザーを相手に一進一退の攻防を繰り広げる四人。

そんな中、Wはイエスタディを見た。

「復讐?そうね。でもただの復讐じゃない。風都のためにあなたを倒すわ!それが、兄の意志だとわかったから!」

イエスタディは幻を相手に戦い続けている。

「…フィリップ、エクストリームだ。」

確かに、エクストリームを使えば、イエスタディの刻印を無力化できる。

『だが、そう何度もうまくいくとは…』

「いくさ。いや、いかせるんだ。このままじゃ、霧彦に会わせる顔がねぇ!」

『わかった。』

二人の意識に応え、エクストリームメモリが飛来する。

エクストリームメモリはフィリップの肉体を回収し、Wがエクストリームメモリを掴み取ってドライバーに装着。

 

〈XTREAM!〉

 

エクストリームメモリを開き、サイクロンジョーカーエクストリームに強化変身する。

「翔太郎さん!フィリップさん!」

「光輝!ここはWにまかせるんだ!俺達じゃあの人は助けられない!Wを信じろ!」

ジャックフォームに強化変身したブレイドはクロスに言って聞かせる。

「僕には…何もできないのか…くっ!」

クロスはウェザーとの戦いに戻った。

 

 

「「プリズムビッカー!!」」

Wはプリズムビッカーを出現させ、

 

〈PRISM!〉

 

プリズムメモリを挿し込んで、プリズムビッカーを使ってイエスタディをスキャン。

「検索を終了した。」

 

〈PRISM・MAXIMUM DRIVE!〉

 

「「プリズムブレイク!!」」

Wはプリズムソードを抜いてイエスタディに接近。

すると、イエスタディの刻印がイエスタディから離れ、Wはそれを斬り裂く。

「うああぁぁーっ!!!」

イエスタディはメモリブレイクされ、雪絵に戻った。

「雪絵さん!」

「大丈夫だ、刻印は消えている。」

「…よし。亜樹子!」

「はい!」

Wは気絶した雪絵を亜樹子に預ける。

 

 

クロスとブレイドを殴り飛ばしたウェザーは、イエスタディがメモリブレイクされたことに気付く。

「W!!いつもいつも邪魔ばかり「よそ見をするな!!」ぬう!」

アクセルはエンジンブレードを振ってウェザーに斬りかかる。だが、すぐにねじ伏せられてしまった。

「君もいい加減しつこいな!復讐などという小さなものにばかりこだわっていると、」

ウェザーはアクセルを立たせ、殴りつける。

「彼女のようになるぞ!」

「言うな!!」

再びエンジンブレードを振るアクセル。だが、今度は木に押し付けられてしまう。

「過去を振り返るのは嫌いでね!」

ウェザーは腕を燃やし、高熱でアクセルを苦しめる。

「そろそろ終わりにしよう…!」

アクセルにとどめを刺すべく、ウェザーはもう片方の腕に炎を集中していく。

しかし、

「オラァッ!!」

間一髪でWが救助に入り、ウェザーはそれをかわして飛びのく。

「大丈夫か照井?」

Wは声をかけるが、アクセルには答える余裕がない。

 

 

「…くっ!」

 

〈EVOLUTION KING〉

 

ブレイドはラウズアブゾーバーにエボリューションコーカサスのカードをラウズ。

「一真!」

「うおおおおおおお!!」

キングフォームに強化変身した。

そのままWの隣に並び立つ。

「エクストリーム、キングフォーム!その力、見せてもらいましょうか!!」

ウェザーは両手から電撃を放って二人を攻撃する。

Wはエクストリームの力で電撃を無力化しながら、ブレイドはキングフォームの厚い装甲を利用して、ウェザーの攻撃を受けつつ接近。

Wは右手にサイクロンの力、左手にジョーカーの力を宿してウェザーを殴り飛ばし、ブレイドはキングラウザーでウェザーを斬りつける。

「決めるぜ、フィリップ!」

Wはエクストリームメモリを一度畳み、再び開く。

 

〈XTREAM・MAXIMUM DRIVE!〉

 

すると、開いたエクストリームメモリから竜巻が発生し、Wを浮かび上がらせていく。

ブレイドは装甲のレリーフから五枚のカードを出現させ、それを手に取り、キングラウザーにラウズしていく。

 

〈SPADE TEN,SPADE J,SPADE Q,SPADE K,SPADE ACE〉

〈ROYAL STRAIGHT FLASH〉

 

すると、ブレイドの目の前に五枚のカードのオーラが出現した。

「待て左!剣崎!そいつだけは、俺が!」

アクセルは二人を止めようとするが、発動した必殺技は、もう止まらない。

「「ダブルエクストリーム!!」」

Wはエクストリームメモリの発生させる竜巻を纏って放つ両足蹴り、ダブルエクストリームを。

ブレイドは五枚のカードのオーラをくぐり抜けて相手を斬る技、ロイヤルストレートフラッシュを。同時にウェザーに食らわせた。

 

ドガァァァァァン!!!!

 

大爆発が発生し、煙が晴れた時、立っていたのはWとブレイドだけだった。

「やった!」

勝利を喜ぶクロス。

だが、アクセルの反応はその真逆だった。

「貴様ら…余計な真似を!!」

ウェザーはアクセルにとって家族の仇。それを他人に倒されたことは、彼にとってこの上ない屈辱だろう。

しかし、フィリップからある事実が告げられる。

「いや、逃げられた。」

見ると、すぐ側の木の近くにウェザーがいた。

「残念ながら倒したのは蜃気楼ですよ。」

「気象を操れるドーパントなら、それもアリか…」

ブレイドは残念そうに言う。

「だが手応えはあった。」

翔太郎が言った瞬間、

「うぐっ!」

ウェザーは木に手をついて身体を支える。

「完全に避けきれなかったのか…エクストリーム、キングフォーム。なかなかのものですね…」

ウェザーは落雷を発生させて逃げた。

「井坂ぁぁぁぁ!!」

すぐにでも追いかけたかったアクセルだが、満身創痍の身では、そんなことなどできるはずもなかった。

変身を解くWとアクセル。しかし、

「…ぐうっ!」

一真は崩れ落ちてしまった。

「一真!」

クロスも変身を解除し、一真を支える。

「一真、大丈夫!?」

「ああ、大丈夫だ…」

「どうしてキングフォームを…」

「ジャックフォームじゃ、敵わなかったから…」

「無茶しすぎだよ…」

「ごめん…俺のことより、雪絵さんを…」

一真に言われた光輝だったが、一真を放ってはおかない。一真に手を貸しながら、翔太郎達と雪絵の元に向かう。

 

 

 

 

 

気絶していた雪絵は、目を開けた。

雪絵は翔太郎に言う。

「兄さんの言った通りだった…困ったことがあれば、鳴海探偵事務所へ行けって…」

「霧彦がそんなことを…」

雪絵は懐から、一枚の紙を取り出す。その紙には、幼い頃描いた、自分と兄の絵があった。

「…いい風…」

ゆっくりと目を閉じる雪絵。そして再び目を開けた時、

 

 

 

「あなた達は…!?」

 

 

 

 

 

 

雪絵さんは全ての記憶を失った。フィリップさんの話では、イエスタディメモリの影響らしい。まさかこんなことになるなんて……

どうして僕はこんなに弱いんだ?

 

 

 

 

 

 

翌日の夕方、一真を先に帰らせた光輝は、一人で教室の窓から夕日を見ていた。

と、

「光輝?」

彼に声をかける者がいた。フェイトだ。

「フェイトさん…」

「どうしたの光輝?こんな時間まで…」

「…ねぇ、僕って弱いかな?」

「えっ?」

フェイトは突然の質問に慌てる。

「えっと……光輝は強いと思うよ?」

「いや、僕は弱い。」

「どうして?」

光輝はフェイトに昨日あったことを話した。

「そんなことがあったんだ…」

「僕は何もできなかった。一真も危険な目に会わせちゃったし…」

「…」

フェイトは黙って聞いている。

「…僕は、仮面ライダーなのに、誰も救えないのかな…?」

いつしか光輝の目から、涙がこぼれていた。

 

「そんなことない。」

 

しかし、フェイトはそれを否定する。

「えっ?」

「光輝は、何度も私を助けてくれた。ちゃんと私を救ったんだよ。だから、自信を持って?光輝は強い。」

「…ありがとう。」

光輝は再び夕日を見た。

その側には、フェイトが寄り添っていた……。

 

 

 

 

 

 

それらの光景を見ていたドナルドは、この空間を邪魔しないように去った。

校庭まで出てから、ドナルドは呟く。

「その無力感ももうすぐなくなるよ。君は全てを守り、全てを救える力を手にするんだから…」

 

 

 

 

 

光輝の覚醒は、近い。

 

 

 

 

 

 

 

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次回、

仮面ライダークロス!!

 

フィリップ「何だ、あの奇妙な形のメモリは!?」

スバル「照井さん、頑張って!」

アクセル「これが新しいアクセル…トライアル!」

 

第十二話

Rの彼方に/全てを振り切る蒼き風

 

これが裁きだ!!

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意外な事実が明らかになります。
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