10月、ACE学園では幼稚園?大学を含んだ全校規模での学園祭が行われる。

午前10時から一般公開が始まり、いつも以上にフリーダムで様々な年代の人達がそれぞれの学舎に集まっていた。

「よお、前杉じゃないか」

校舎前の屋台エリアをうろついている士樹に焼き鳥(たれと塩が2本ずつ)を持った高等部2年の相川歩が挨拶した。

「歩か。他の人達は一緒じゃないのか?」

士樹もチャーハンを食べる手を休めて挨拶に応じる。

「今日は、ユーと学園祭を見て回る約束なんだ。お前こそお姫様はどうしたんだ?」

「アインハルトは水泳部カフェの助っ人でスク水メイドをやっているよ。ちょうどいいから一緒に行かないか?」

「別にいいぞ。ユーともその辺りで合流する予定だしな」

2人がプールへと歩みを進めようとした時、急に全校放送が流れた。

『皆さん、おはようございます。イベント企画委員会会長のミレイ・アッシュフォードです。これからキューピッドの日を始めます。まずは、事前に配られている帽子を被ってください』

「ああ、例の鬼ごっこイベントか」

「会長も人が悪いよね。彼氏・彼女持ちまで巻き込むんだからさ」

2人は軽口を叩きながら鞄からハート型の帽子を取り出して被る。

『ルールは簡単。男子は青いハート型帽子を被り、女子は赤いハート型帽子を被ります。そして、意中の異性の帽子を奪い、自分が被れば強制的にカップル成立です』

「トモノリに見つからない内にさっさとユーと合流するか」

「そうだね。アインハルトも未だに親衛隊が残っているし、用心に越したことはないね」

士樹は目的地であるプールへ行くため、複数の逃走手段を準備する。

『では、スタートの前に私から一言』

ミレイは息を一拍おいて息を吸い、爆弾を投下した。

『手配書にリストアップされている人物の帽子を私に届けてくれた人には1人あたり100万円相当のプレゼントをします』

「手配書? 鉄腕DASHの100人警察でもやるつもりなのかな? ま、最優先はアインハルト……」

士樹が横を見ると端末を見ていた歩の体がゾンビなのにガクガクと震えていた。

「どうしたの?」

「こ、これを見ろ!!」

士樹が歩に差し出され、覗き込んだ端末には、

[手配書]

ルルーシュ・ランペルージ

音無結弦

土見稟

相川歩

風凪レイ

前杉士樹

etc……

と表示された。気がつけば、2人の周りにいる生徒は怪人態になっていたり、ナイトメアを装着していたり、デバイスを展開したりしていた。既にミッドチルダ式の結界が展開されているため、本気で暴れても問題はない。が、四面楚歌であることに変わりはない。

「どうする、前杉?」

「まずは、図書館に逃げ込む。あそこなら少しはマシだと思う」

『では、カウントダウンを始めます。5・4・3・2・1・0!!』

カウントダウンが終わった瞬間、ミサイルや砲弾、魔力弾の雨が士樹と歩のいる場所を襲った。明らかにオーバーキルな攻撃が終わった後、硝煙がたちこめ、視界が塞がれた。

「やったか!?」

「待て!! まだ奴らの戦闘不能が確認できたわけじゃない」

攻撃に参加したサザーランドの1人にそう言い、ウォードがたしなめる。煙が晴れていったが、そこに2人の姿はなかった。

「いない!?」

「馬鹿な!! よく探せ!!」

多数の生徒が爆心地に接近し、近代ベルカ式の騎士が兎の頭の様な物を発見した。

「これは何だ?」

騎士が兎を持ち上げると、兎はカチッと音が鳴り、大爆発を起こした。それを、アクエリアスと歩はミラーワールドの中から見ていた。

「流体サクラダイトを混ぜたメテオールだ。こうも簡単に決まると笑いが止まらないね」

「えげつねえな」

アクエリアスはクスクスと笑っている。仮面の下では、もっと笑っていることだろう。

「それより速く行こうぜ。俺はあまりここにはいられないんだ」

「待て!!」

2人の行く手を遮るように佐野満が変身する仮面ライダーインペラーが現れた。後ろには、契約しているゼール系のモンスターがうじゃうじゃいた。

「お前達の帽子は俺達がもらうぜ!! おとなしく観念しろ!!」

勝利を確信したインペラーが2人を指差しながらポーズを決める。

「くっ、どうする?」

「こうする」

アクエリアスが右手を上げると、アクエリアスチェイサーがインペラー達の後ろ(・・)から現れ、全弾を一斉発射した。

「えっ――」

「更にもう1発」

《FINAL ATTACK RIDE：Z・Z・Z・ZOLDA》

アクエリアスは目の前に牛型モンスターのマグナギガを呼び出し、その背中にアクエリアスドライバーを差し込んで引き金を引き、エンドオブワールドを発動した。

「逝ってらっしゃい♪」

マグナギガの正面からも倍以上の砲弾を放たれ、インペラー達は全滅した。

「う……まだだ……」

まだかすかに指が動くインペラーに歩か近づいてその帽子を奪い……、

「ほいっと」

その辺に倒れていたゼールの頭に被せた。アクエリアスは無言でグッジョブと右手の親指を立てて語り、歩も同じ行動をすることで返答した。

(そんな、馬鹿な……)

「ちょうどいいからこれも貰っていくか」

絶望しきったインペラーを尻目に歩は近くに停めてあったライドシューターに搭乗した。

「よし! こいつならミラーワールドとの行き来も出来るな!!」

「そろそろ行くよ! 他のライダーに見つかるのも時間の問題だろうし」

「了解した」

アクエリアスと歩はバイクを操縦し、その場を離れた。

★★★★★

士樹達がインペラーを撃退したのと同時刻、ACE学園高等部・屋上

は炎に包まれていた。たくさんの暁の残骸とそのパイロット達が倒れている状況で赤い翼を生やした悪魔は最後の一機に尋問していた。

「言え! ゼロは……ルルーシュは何処に行った!!!?」

「知らねえよ、バァカ」

「ちっ!」

悪魔は尋問を終えた後、暁を放り投げた。

「待っていろ、ルルーシュ!! 必ず見つけ出してやるからな!!」

悪魔……紅蓮聖天八極式の紅月カレンは羽根を広げて叫んだ。