俺妹 あやせたん ア□パンる
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「きゃぁあああああぁっ!? お兄さんのエッチぃ〜〜っ!」

 昔テレビの画面で見たことある気がするピンクと赤の中間の色の扉をくぐり抜けてお兄さんが新垣家のお風呂場に入って来ました。

 入浴中のわたしは当然その、裸なわけで……。

「いやぁ〜あやせの部屋に入ろうと思ったら座標を間違えちゃったよ。はっはっはっは」

 間違えたと言いながらお兄さんは出ていこうとはしません。ずっとわたしの裸を覗いたままです。

「は、早く出ていってくださいっ!」

 シャワーを浴びている最中だったわたしは両手で必死に自分の体を隠します。でも、お兄さんには既に全てを見られてしまっていたに違いありませんでした。

 恥ずかしさで死んでしまいそうです。お嫁に行くまで誰にも見せないって決めていたのに……。

「おっと。こんな美しいものを記録に残さないのは人類として許されないよな」

 お兄さんは携帯を取り出し、パシャパシャと撮影し出したのです。

「やっ、止めてくださいっ!」

 左手を必死に伸ばしてお兄さんの携帯を取り上げようとします。でも、胸を隠しながらお兄さんから携帯を取り上げることなど不可能なことでした。

「あやせたんのあられもない姿の写真ゲットだぜ〜♪」

 それどころか更に多くの写真を撮られてしまいました。

「嫌ぁあああああああああぁっ!」

 床にしゃがみこみます。もう恥ずかし過ぎて立ち上がる気力さえも湧き出ません。

「さ〜てこの写真をどうしようかな〜? とりあえず赤城の野郎にでも送るか? それともインターネット上にアップして全世界にこの美を広めようかな?」

「そ、そんなこと……や、やめてください」

 もし、裸の写真がインターネット上にアップされてしまったら……わたしは舌を噛んで死ぬしかありません。

「つまりあやせたんは、俺にこの写真データを放棄して欲しい。そういう訳だな?」

「そ、そうです。今すぐ捨ててくださいっ!」

 お兄さんに必死に訴えます。でも、お兄さんはいやらしい笑みを浮かべて返しました。

「死んでしまいたくなるほど恥ずかしい写真データの放棄。これは、それ相応の代償が必要な行為なんじゃないかなあ〜?」

「それ相応の代償?」

 お兄さんの目がわたしの胸、そして下半身に向いています。それを意識した瞬間にとてつもない寒気が走りました。

「ま、まさか……」

「そうさ。俺が欲しいのはあやせ。お前だ」

 お兄さんが満面の笑みを浮かべます。それはまさに鬼畜の笑みでした。

「そ、そんな……あ」

「嫌なら別にいいんだぜ。その場合、美少女プロモデル新垣あやせの初ヌード画像が全世界に発信されるだけだがな」

 お兄さんは画像投稿サイトの画面を開いて見せます。

「こんなの……こんなの脅迫じゃないですか! 立派な犯罪ですよ!」

「ああ、犯罪だよ。重犯罪だろうな。俺は牢屋行きだ。もっとも、ヌードが流出したあやせの世間体も地に落ちるだろうがな。この土地に暮らしていくのも辛いんじゃないのか?」

「そんな、そんなの酷過ぎますよっ!」

 勝手にお風呂場に現れたのはお兄さんの方なのに。勝手にわたしの裸の写真を撮ったのはお兄さんの方なのに。

 なのに何でわたしが脅迫されなくちゃいけないんですか?

「まあ、どうせ犯罪者になるなら、あやせをたっぷりと堪能させてもらった後で、インターネット上にその様子をばら撒くって手もあるよな。くっくっく」

 お兄さんが実に楽しそうに笑います。こんな鬼畜を初めて会った時は素敵だと思っていたなんて……。過去の自分を呪い殺したくなります。

「あやせにとって最善の選択肢はこの場で一生俺のモノになることを宣言することだ。そうすれば俺たちは恋人同士。合意の上だから犯罪ではないし、俺だって愛する未来の妻の裸画像がネット上に出回るなんて出来ない。どうだ、悪い話じゃないだろう?」

 お兄さんがわたしの顎を指で持ち上げて上を向かせます。脅迫者にして権力者の顔がそこにありました。

「わ、わたしは……」

 そんなの嫌と叫びたい衝動に駆られます。でも、それを叫べばきっとこの人はわたしを容赦なく辱める。それがわかる瞳をしていました。だから何も言えません。

「どうした? 早く答えないのなら……画像をアップしてしまうぞぉ〜」

 ニヤニヤしながらお兄さんは投稿手順を進めていきます。わたしにはもう一刻の猶予もありませんでした。

「……わ、わかりました」

「う〜ん〜? 聞こえないなあ〜?」

 お兄さんが耳に手を当てながら下卑た表情で言い直しを求め直します。

 わたしは悔しさと恥ずかしさから泣き出してしまいます。でも、言わない訳にはいきませんでした。お兄さんの左手は携帯の操作を続けていたからです。

「わ、わたしは……お兄さんを愛しています。妻にしてください!」

 大声を上げます。もう自暴自棄でした。

「はっはっはっは。マイ・ラブリー・エンジェルが俺を好きだと言ったか。いやぁ〜色男冥利に尽きるぜ〜」

 お兄さんは上機嫌です。

 そして携帯をポケットにしまって両手でわたしの肩を握りました。

「あやせたんにそこまで頼まれては嫁にもらわないわけにはいかないな。俺の妻になってくれ、あやせ」

「うっうっうっ」

 お兄さんがわたしの要請を受け入れてしまったことにまた涙が出ます。

「さあ、早速婚前交渉と行こうか」

「そ、そんなあっ!」

 お兄さんはわたしの意思など無視して顔を近付けてきます。

「拒否したらインターネット上に流しちゃうぜ」

「お兄さんの……鬼畜……」

 わたしの一生はこんな鬼畜に支配されてしまったのです。

 人生に絶望を感じながら、お兄さんの唇が自分の唇に押し付けられる感触を味わったのでした……。

 

 

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「バウムクーヘンッ!!」

 大声と共に目を覚まします。

 何の夢を見ていたのか具体的には覚えていませんが、とても心躍る夢だったということは覚えています。

 あの夢のような楽しい経験ができたのなら、そう考えてしまいます。

 つまり、現実は違うという訳です。

「はぁ〜。お風呂でも入って気分転換しよう」

 もしかすると、お兄さんが覗きに来るかもしれない。

 そうしたらお兄さんを捕まえて罵って蹴り飛ばした末に男の人として責任を取ってもらおうと思います。

 お兄さんは変態ですから、わたしがしっかり手綱を握っていないといけません。

「何で、覗きに来ないんだろう?」

 なのにお兄さんは今まで一度も覗きに来たことがありません。それどころか自分からわたしの家に訪ねてきてくれたことはありません。

「わたし、何してるんだろ?」

 ちょっと憂鬱な気分になりながらお風呂場へと向かいました。

 

 

あやせたん ア□パンる

 

 

 校門に到着します。

 もう冬の香りをまとっている風を背に受けながら校舎に向かって歩きます。

「学校が、何か寂しく見えますね」

 去年と変わらない筈の目の前の光景。

 でも、わたしの目には去年より明らかに色褪せて見えます。

 それはわたしの世界を見る視覚が変わったから。

 わたしが去年に比べて不満を募らせているからきっと世界が色褪せて見えているのだと思います。

「恋なんて、しなければ良かったのかな?」

 小さく小さく呟きます。

 って、わたしったら、何を言っているのでしょうね?

 わたしがあんな変態に恋なんてするわけないのにおかしいですね。

 

「グッドモーニング娘。〜♪」

 加奈子に教わったナウやヤングにバカウケな挨拶を交わしながら教室に入ります。

 わたしもお堅い女のイメージを脱して、15歳の少女らしい瑞々しい感性を持とうと努力しています。

「お、おはようございます、あやせさま」

 クラスメイトたちもニコヤカに挨拶を返してくれます。

 去年よりも打ち解けた雰囲気になっている筈なのに。なのに、やっぱり教室の中も去年より色褪せて見えます。

 やっぱり、ここでも世界が変わってしまったのだと再確認します。

 でも、そんな色褪せた世界の中でたった一カ所だけ光り輝いて見える場所がありました。

「くんかくんかほ〜むほむ〜っ♪」

 変態が、陸上ウェアを着た変態がタオルに顔を埋めながら輝いていました。

 その少女は確かに変態でした。タオルの香りを嗅ぎながら「ふぉおおおおおぉ!」とか叫ぶ残念な人です。みんな困った視線でその残念を遠巻きに眺めています。

 でも、この教室の中で誰よりも輝いているのは確かでした。

「あやせさま。あの、その」

 女子生徒の1人がわたしに近付いてきました。そして申し訳なさそうにわたしと残念の顔を交互に見ました。

「わかりました」

 頷いてからゆっくりと残念に近付いていきます。

 学校の秩序と正義を守るものとしてはあの残念の行動を改めなくてはなりません。

 あの元完璧は一体何をしているのでしょうか?

 

 

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「ねえ、桐乃? さっきから一体何をしているの?」

 残念に尋ねます。

 その残念は肩に手を置いてやっとわたしの存在に気が付いたようでした。

「何よ、あやせ? アタシの至福の時を邪魔しないでよ」

 桐乃が非難の視線をわたしに向けてきます。

「だから、至福の時って一体何をしているの?」

「見てわからないの? フルマラソンを全力疾走して汗を掻いたからタオルで顔を拭いているだけよ」

 桐乃は何でもないことのように言い切ります。

 さて、桐乃の発言の中で問題を含んでいる部分はどこでしょうか?

 まだ授業前なのに既にフルマラソンを走っている所でしょうか?

 でも、桐乃はこう見えて努力家ですし、何より変態ですから普通の人間には不可能なことも普通にやってのけるでしょう。

 では、40km以上を全力疾走したという点でしょうか?

 でも、桐乃はこう見えて努力家ですし、何より変態ですから普通の人間には不可能なことも普通にやってのけるでしょう。

 じゃあ、汗を掻いたからタオルで顔を拭いているという点でしょうが?

 その言葉自体には何の問題もありません。

 もう引き延ばすのはやめましょう。

 問題は桐乃の行動ではなく、タオルにあります。

 桐乃がタオルと呼んでいるソレ。ソレは世間一般でいうタオルとは異なります。

 青と白の縦縞の長方形の布。その長方形の片側には股が出来ていて2等分されています。その反対側にはゴムが入っています。

 ソレは世間一般ではパンツと呼ばれるものではないでしょうか? しかも男性用。

 そう思うのです。

 一体この残念は何を考えて男性用のパンツに顔を突っ込んでいるのでしょうか?

 残念の考えることですから、常識人のわたしには完全には理解できません。

 でも、少しでも理解しようとする姿勢が重要だと思います。それが人間のマナーです。

「それ、男性用のパンツ、だよね?」

 残念の意図を確かめます。

「そうよ。これは、ア■パンよ。この世で最高級のタオルよ」

 桐乃はとてもツヤツヤした表情でそう言い切りました。

 でも、それを聞いたわたしは穏やかではいられませんでした。

「アンパンっ!?」

 その単語、加奈子から聞いたことがあります。

 アンパン、それはナウやヤングの身も心も破壊する危険極まりない吸引物。

 そんな恐ろしいものに桐乃が手を出すなんて。

「桐乃のバカぁああああああぁっ!」

 桐乃の……隣に寝ている加奈子の頬を思いっきり引っ叩きます。

「痛ったぁああああああぁっ!?」

「な、何をするのよ、あやせっ!?」

 桐乃が左の頬を押さえながら目を大きく見開きます。

「桐乃がしてはならないことをしているからよ! この、大バカぁああああぁっ!」

 今度は左手で桐乃の……隣で苦しそうにもがいている加奈子の頬をもう1度良い音を響かせながら引っ叩きます。

「ぎぃやああああああぁっ!?」

「二度もぶつなんて……信じられない」

 桐乃は両方の頬を押さえながら泣きそうな顔をしています。

「訳もわからずに叩かれて泣きたいのはあたしの方だっての!」

「桐乃が悪いんだよ。そんな人間の倫理にも日本の法にも違反する行為をしているから」

「アタシが一体何をしたって言うのよ?」

 桐乃が涙を溜めた瞳で唇を尖らせます。

 だからわたしは桐乃に己の罪深さを教えてあげることにしました。

「シンナーに手を出すなんて絶対にダメよっ!」

 加奈子は言っていました。ナウやヤングの中で人生に挫折したものはみんなシンナーに走るって。校舎裏はいつもシンナー臭いって。ビニール袋はシンナーを入れる容器だって。

 まさか、去年までこの学校始まって以来の天才と称えられていた桐乃がシンナーに手を出すなんて。もう、何も信じられません。

「誰がシンナーに手を出すってのよ! アタシは7,80年代の不良かっての!」

「えっ? だって、桐乃がそのタオルのことをアンパンって」

 加奈子は言っていました。

 ナウなヤングはシンナーのことをアンパンと呼ぶと。だから、桐乃はシンナーに嵌ってハイになっているのに違いないのです。

「アタシが吸っているのはアンパンじゃなくてアニパンだっての!」

 桐乃は大声を出しながら椅子を倒して立ち上がります。

「ぶへぇっ!?」

 椅子が吹き飛んで何かに当たりますが、今は桐乃に集中しなくてはなりません。

「あの、桐乃……アニパンって何?」

 額から汗を垂らしながら桐乃に尋ねます。何か、とても嫌な予感がしました。シンナーの方がまだマシなような、そんな危険極まりないもののような。そんな悪寒がしたのです。

 そしてわたしの悪寒は残念ながら的中してしまったのです。

「アニパンってのはね……兄貴のパンツの愛称よっ!」

 桐乃は胸を反らしながら大きな態度で言い切ったのです。

「やっぱり変態ぃいいいいいいいぃっ!」

 わたしは我慢できずに手近にあった机を桐乃……の横で苦しんでいるツインテールに向かってぶん投げます。

「グッ!?」

 ツインテールはうずくまっていたので机はその上を通過していきました。チッ!

「き、桐乃は、それじゃあ、お兄さんのパンツをタオル代わりにして使っていると言うの?」

「そうだよ。アニパンに顔を埋めてくんかくんかほ〜むほむしているとね、どんな疲れも吹っ飛んじゃうんだ。でへへへへへっへ〜っ♪」

 桐乃は緩みきった顔で涎をパンツに垂らしています。

 学校一の美少女として名高かった面影がどこにも見られません。ただの変態です。

「しかもこれ、使用済み未洗濯の特級品なのよぉ。ぐへへへへへへっ♪」

 桐乃は再びパンツに顔を埋めます。

「変態変態変態っ! 変〜態〜〜っ!!」 

 お兄さんの洗っていないパンツに顔を埋めて悦に浸っている桐乃に嫌悪感を抱きます。

 でも、何故かわたしはお兄さんのパンツから目を逸らすことが出来ませんでした。一体わたしはどうしてしまったのでしょうか?

「そんなこと言って、あやせもアニパンが欲しいんでしょ?」

 『そんな訳ないじゃない』そう大声で否定しようとしました。

「幾らで売ってくれるの?」

 でも、実際に口に出たのは全く別の言葉でした。わたしの理性とは全くかけ離れた内容を発してしまったのです。

「フフ。やっぱりあやせも欲しいのね」

 桐乃はニヤリと悪女な笑みを浮かべました。

「でもダメ。アニパンを堪能していいのは妹であるアタシだけなの」

 わたしは、変態的な言葉を繰り返す桐乃をたしなめようとしました。

「そんな意地悪しないで、わたしにもお兄さんのパンツを堪能させてよ!」

 でもまた、わたしの口は意志とは違う言葉を発したのです。

「アニパンはね。その名の通りに妹というこの世界で選ばれた存在のみが楽しめる宝具なのよ。それにもう、アニパンは資源枯渇によりこれ以上の発掘が不可能な稀少品なのよ」

 桐乃はニヤニヤしながら背筋を逸らします。勝者の笑み。そんな言葉が浮かびました。

「さて、汗も掻いちゃったことだし着替えないとね。下着も濡れちゃったから取り替えないといけないけど、替えを持ってきてないからアニパンを履くしかないわね〜♪」

 桐乃はお兄さんのパンツを抱きしめました。

「洗っていないアニパンなんか履いたら〜妊娠しちゃうかもしれないけど〜まあ、そうなったらアイツに責任取ってもらうしかないわね〜でへへへへへっへ♪」

 桐乃の顔は見る影もなく崩れています。でも、その瞳の奥には王者の、勝者の炎が燃えています。

 桐乃はわたしを見て、ニヤッと笑うと威風堂々と更衣室へ向かって出て行きました。

 

 

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 お兄さんのパンツで悦に浸る桐乃。どう見ても変態です。どう考えても非社会適合者です。

 だけどわたしは桐乃に完敗した。そう認識しました。

 敗北感により生じた激しい喪失感。その心の穴を埋める為にわたしは電話を掛けるしかありませんでした。

「あの、お姉さんですか?」

『どうしたの〜? あやせちゃん?』

 わたしが電話を掛けたのは田村麻奈実お姉さんでした。今一番頼りにしているお姉さんです。早速この喪失感を埋める方法を相談することにしました。

「あの、お姉さんはアニパンって何だか知ってますか?」

『きょうちゃんのパンツのことでしょ〜? 勿論知っているよ〜』

 お姉さんはすぐに返答しました。もしかしてアニパンは日本の常識でわたしが知らないだけなのでしょうか?

 わたしが世間に疎いことはこの1年でちょっと悔しいですが痛いほど実感しました。わたしの知っていた世界は本当に井の中の蛙に過ぎなかったのです。

 それを認めた上で質問したいと思います。

「アニパンを入手することは可能ですか?」

 田村屋の裏の部分に尋ねます。

『う〜ん。きょうちゃんのパンツには槇島財閥が関与しているから〜ちょっと高いんだよ〜』

「高いって幾らぐらいなんですか?」

『使用後洗濯済みで1億5千万円ぐらいかな〜?』

「そ、それは……高すぎますね」

 わたしがモデル業をして一般的な中学生よりはお金を持っているとはいえ、億単位のお金を準備することはできません。

『きょうちゃんのパンツは〜桐乃ちゃんと黒猫ちゃんが独占的に占有しているから〜市場に出回る数は少ないんだ〜』

「2人はどうやってお兄さんのパンツを手に入れているんですか? まさか、泥棒?」

 桐乃ならお兄さんが留守の間に部屋に進入してパンツを漁っていそうです。

『違うよ〜。等価交換だよ〜。桐乃ちゃんと黒猫ちゃんは自分のブラとショーツときょうちゃんのパンツやシャツを交換しているんだよ〜』

「何て羨ましいっ! いえ、破廉恥なっ!」

 女子高生と女子中学生が自分の下着を男性の下着と取り替えるだなんて……。

 どうしてわたしを誘ってくれなかったのですかっ!?

 もし、もしもですよ?

 わたしの下着が等価交換でお兄さんのタンスに偶然入ってしまったとしたら……。

 お兄さんは当然わたしのショーツを嗅ぐでしょう。舐めるでしょう。しゃぶるでしょう。かぶるでしょう。

 そして……間違えたとか言いながら履くに決まっています!

 そしてそして、わたしの下着を征服した以上、わたし自身も征服したも同然とか言いながら、わたしのことを自分の女扱いするに違いありません。

 調子に乗ったお兄さんはわたしに身の回りの世話をさせ始めるのです。そしてついには嫌がるわたしに無理やり夜の世話もさせるようになるのです。

 そしてそしてそして、世間体が悪いというただそれだけの理由でわたしに強引にサインさせて婚姻関係を結ぶのですっ!

 それって、それって……。

「ビクトリ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 まったく、お兄さんと来たら妄想と現実の区別が付かない上に鬼畜過ぎますよ〜♪

『あやせちゃ〜ん。脳内の妄想がダダ漏れだよぉ〜』

「ヒィイイイイイイイいぃっ!?」

 お、お姉さんに聞かれたっ!?

 こ、こうなったら……。

『余計なことは考えない方が良いよ〜。長生きしたければね〜』

「イエス! マイ・マジョリティー!」

 お兄さんのお嫁さんになるまでは死ねません。

 いえ、言い間違えました。

 わたしには世の風紀と規律を正すという崇高な使命があるのです。

 等価交換、果たさねばなりませんね。

『そうそう1つだけ忠告しておくと〜きょうちゃんの男物の下着は今穿いている黒と赤の縞々トランクスが最後の1枚だから〜絶対に取ったりしたらダメだよ〜じゃないと不幸になっちゃうよ〜きょうちゃんもあやせちゃんも』

「最後の1枚っ!?」

 つまり、その1枚を逃したら、アニパンを手に入れる機会は逃してしまうと。アニパンに顔を埋める幸せを逃してしまう。そういうことなんですね!

『あやせちゃ〜ん?』

「わたしは何も考えていませんよ! それではお姉さん、失礼致します!」

 深々と頭を下げてから電源を切ります。

「アニパンを……何としても等価交換でゲットしなければなりませんね」

 わたしの人生に新しい目標が生じた瞬間でした。

 

 

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 放課後を迎えました。

 いよいよ、狩り、いえ、等価交換の時間です。

 とはいえ、わたしが持ち合わせているブツはブルマのみ。これで、アニパンと交換できるのでしょうか? お兄さんは性欲の塊だからこれで納得してくれるか不安です。

 それにお姉さんのおじいさんから買った情報によりますと、黒猫さんがお兄さんに接近しているとのこと。正確にはお兄さんの家に向かっているそうです。恐らく今日、最後のアニパンをゲットする気に違いありません。

 更に、結局始業前に着替えに行って帰って来なかった桐乃が箱根の関所からターンして猛スピードで千葉へと引き返しているそうです。狙いは最後のアニパンで間違いないでしょう。

 更に更に、槇島財閥が金塊を車に積んで千葉市に向かっているそうです。ラスト・アニパンを買い付ける気に違いありません。

 どれもこれも手ごわいライバルたちです。でも、わたしは負けません。

 みんなが高坂家でアニパンを奪取するつもりであるのなら……わたしは、路上で奪取したいと思います!

「掛かって来なさい、お兄さんっ!」

 お兄さんの学校と高坂家の途中にある公園前でお兄さんを待ち構えます。

 

「それでよぉ〜。聞いてくれよ、あかりちゃん。俺の妹ったら本当におっちょこちょいでよぉ〜。この間なんか緑茶にソース入れて気付かずに美味そうに飲んでたんだぜ」

 来ました! お兄さんです。

 お兄さんは最近出来たエア友達の赤座あかりちゃんと仲良く談笑中です。

 ……お兄さんもきっと、毎日毎日下着の数が減っていって、代わりに女物の下着が増えていくのが精神的に辛いのだと思います。

 だからあんな、エア友達と上手に話せるようになってしまったのだと思います。わたしにもあの子の姿がフルカラーではっきりと見えます。

 ですが、あの赤座あかりとか言う中学1年生の小娘。わたしのお兄さんの心を掴むとは良い度胸です! 若いからって調子に乗ってんじゃねえ!

空気じゃなかったら粉みじんにブチ殺してやっている所です。

いえ、何でもありません。

 今はただ、目標達成の為に全力を尽くすのみです。

 

「お兄さん、こんにちは」

 偶然出会った体を装いながらお兄さんに声を掛けます。

「おう、あやせ」

 お兄さんが手を上げて答えました。ご機嫌みたいです。って、いきなり顔が曇りました。

「あやせはあかりちゃんには挨拶しないのかよ? 礼儀正しい奴だと思ってたのに超幻滅だぜ。フラグ消滅だな。もうモブキャラ扱い決定だぜ」

「えぇえええええぇっ!?」

 空気相手に挨拶しなかっただけで好感度が下がってしまいました。

「あかりちゃんはあんな礼儀知らずな子になっちゃダメだからな」

 お団子頭の女の子がコクッと頷きました。

 でもよくよく考えてみるとあかりちゃんはエア友達。存在しない筈の子です。それが認識できるということは、わたしまで幻覚が見え始めているのかもしれません。

これはまずいです。わたしはアンパンをやってなにのに!

 頭がどうにかする前に早くアニパンを手に入れてこの場を去らないと。

「あの、お兄さん、トレードしてくれませんか?」

「突然だな。で、何を何とだよ?」

 お兄さんが胡散臭い瞳でわたしを見ます。あかりちゃんもわたしを胡散臭がってお兄さんの後ろに隠れています。でも、負けません。目標へ向かって一直線です!

「今日1日わたしの体温で暖め続けた赤ブルマと!」

 鞄の中からブルマを取り出して見せます。お兄さんが感情移入し易いように、今日の1時間目から放課後になるまでずっと穿いていたこだわりの一品です。

 変態の考えていることぐらい簡単にわかります!

「お兄さんが今穿いているパンツを、ですっ!」

 お兄さんの下半身を見ながら熱く吼えます。

「なっ、何を血迷ったことを言っているんだっ!? 俺のパンツが欲しいだなんて!」

 お兄さんが体を“く”の字に曲げながら驚きます。

 あかりちゃんがお兄さんの前に立って両手を広げて守っています。完全にわたしが悪者、いえ、変態扱いです。でも、負けません!

 

「お兄さんのパンツは悪い奴らに狙われているんです! だから、わたしが保護しないといけないんですっ!!」

 桐乃や黒猫さんにお兄さんが今穿いているパンツが渡ってしまったらどう使用されてしまうかわかりません。それはもうエロいことに使うに決まっています。

健全な思考しか持たないわたしだって脳内で108通りのアニパン使用法を思いついてしまうのですから。

「俺にはあやせのその血走った目が何より怖いっての!」

 お兄さんが指を差しながら事実無根の非難をします。あかりちゃんまでコクコク頷いて本当に失礼な2人です。

「いいからっ! 変態たちの手に渡る前に今穿いているパンツを寄越しなさ〜いっ!」

「変態の手に俺の最後のパンツを渡せるかっての!」

 お兄さんは両手でズボンを押さえて徹底抗戦の構えです。

 スタンガンとハイキックで無理やり奪ってしまいましょうか?

 泣き叫ぶお兄さんのズボンを引き裂いてパンツを無理やり奪い取る。

 考えただけで背筋がゾクゾクする実に素敵なシーンです。

 でも、それじゃあダメなんです。

 それではわたしは泥棒、いえ、強盗になってしまいます。

 わたしが目指すのはあくまでも等価交換。

 そう、等価交換なのです。

 お兄さんが等価交換に応じない理由は何なのか?

 答えは簡単です。

 お兄さんは自分のパンツとわたしのブルマでは価値が釣り合っていないと考えているわけです。

 現役女子中学生、しかもプロモデルが1日穿いていたブルマでもまだ不足だというのですか?

 あの強欲王は何だったら満足すると言うのですか?

 その時わたしの脳裏に今朝の桐乃とのやり取りが思い出されました。

『使用済み未洗濯の特級品』『洗っていないアニパン』

 つまり、つまり……

「洗っていないアニパンに対抗できるのは、使用済み未洗濯のパンツしかないっていうことなんですねぇ〜〜っ!!」

 遂に、わたしは答えを得ました!

 

 

 

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「何を頭を病ませているのか知らないけれど、俺はもう行くぞ」

「待ちなさい、変態っ!」

 わたしの前を通り過ぎようとしている変態と若さだけが取り得の小娘(空気)を大声で引き止めます。

「変態はお前の方だろうがぁ〜っ!」

「…………が、好きなんでしょ? …………じゃなきゃ満足できないんでしょ?」

「はぁ?」

 白を切ろうとするお兄さん。

 卑怯です。

 わたしに、口で言わせて辱めるつもりなんですね。

 言葉攻めにしてわたしを弄ぶつもりなんですね。

 良いでしょう! 乗ってあげますよ! アニパンを手に入れる為なら!

「お兄さんは、現役女子中学生プロモデルの脱ぎたて未洗濯のパンツじゃなきゃ満足しないんでしょ? このぉ……ド変態がぁあああああああぁっ!」

 怒りの叫びを発しながらスカートの中に手を入れます。

 そして怒りの勢いそのままにショーツに手を掛けて一気に引き摺り下ろします。

「あっ、あやせっ、オマっ!? 路上で突然何をやってるんだぁ〜〜っ!?」

 わたしにこれを要求している張本人が白々しく驚いています。

 そんな変態に対してわたしは脱いだピンクのショーツを突きつけてみせます。

「これが欲しいんでしょっ!? わたしの脱ぎたてパンツがぁっ!」

 まったく、こんな辱めを受けたのは生まれて初めてですよ!

「コイツ、本物の痴女だぁあああああああぁっ!!」

 大声で騒ぐお兄さん。

 まったく、自分からわたしの脱ぎたてを要求した癖に何を勿体付けているのでしょう?

「つべこべ言ってないで、お兄さんの脱ぎたてパンツをこれと交換しなさいっ!」

 ショーツを指に掛けてクルクル回しながらお兄さんに近付きます。

「痴女に汚されるぅううううぅっ! 嫌ぁあああああああああああぁっ!」

 生まれたての小鹿のように全身をプルプルと振るわせるお兄さん。

 そうですか。お兄さんはわたしに無理やりパンツを脱がされて奪取されるという展開をお望みなんですね?

 わかりました、この変態野郎。

 そんなにわたしに変態プレイをさせたいと言うのなら叶えてあげようじゃありませんか!

「げっへっへっへ。さあ、早く脱ぎたてアニパンを寄越しやがれぇ〜〜っ!」

「あやせのケダモノぉおおおおおおおおぉっ!」

 お兄さんを壁際に追い詰め、今まさにお兄さんのズボンを点数の悪かったテスト用紙の様に引き裂かんとしていた時でした。

「何をしているの、あやせさま?」

「あやせさん、無理やり性欲を満たそうとするのは犯罪だよ」

 ランドセルを背負った2人組、ブリジットちゃんと日向ちゃんがわたしたちの前に現れました。

 

「こ、これは違うのよっ!」

 慌ててお兄さんの前から離れます。

 わたしは節度ある大和撫子。小学生の前で取り乱す真似なんてできません。

「た、助けてくれぇ〜〜っ! 痴女に襲われていたんだぁ〜〜っ!」

 2人の後ろに隠れるお兄さん。この人、もう18歳なのに恥じも外聞もないのですかね?

「あやせさん……」

「あやせさま……」

 2人の白い視線が飛んで来ます。

「ち、違うのよ! わたしはただ、等価交換をしようとしていただけで、お兄さんに破廉恥なことをしていたんじゃないのよ!」

 小学生の前では大人の尊厳を保たないと。

「等価交換って、何を?」

「アニパン……お兄さんの脱ぎたてパンツと、わたしの脱ぎたてパンツを交換しようとしていただけなのよ。だから、何もおかしくないでしょ?」

「何もおかしくないでしょという言葉が堂々と出て来る所が既にあたしにはわかんないのだけど?」

 冷や汗を垂らす日向ちゃん。

 一方でブリジットちゃんは顎に手を当てて真剣に考え込んでいます。

「あの、あやせさま?」

「何?」

 ブロンドに青い瞳という日本人が考える典型的な西洋人の彼女が真剣な瞳でわたしを見ます。

「女の子の脱ぎたてパンツなら京介お兄ちゃんのパンツと交換できるの?」

「ま、まあ、そういうことなのかなあ……」

 改めて言われると返答に困る質問でした。でも、自分がそれをしている以上、否定することもできません。純真なブリジットちゃんに嘘はつけません。

「わたしも……京介お兄ちゃんのパンツ、欲しい」

 そう言ってブリジットちゃんはスカートの中に手を入れてパンツを脱いでしまいました。

「えぇええええええええええぇっ!?」

 ブリジットちゃんの行動はあまりにも衝撃的なものでした。

 だってですよ。女の子が男性の前、しかも路上でパンツを脱ぐなんて!

 そんなのまるっきり変態痴女のすることじゃないですか!

「京介お兄ちゃん、パンツ、交換しよ♪」

 真っ白いパンツを見せながらキラキラと邪気のない瞳で訴えるブリジットちゃん。

 何でしょう、この敗北感は……。

 

「いや、だからな。たとえ、美少女小学生と中学生の脱ぎたてパンツを提示されようと、最後の1枚となったこのパンツを譲ることなど絶対にできないんだぁっ!」

 もう物語的には完全に詰みな筈なのにまだ無駄な抵抗を続けるお兄さん。実に無様です。そしてチキン野郎です。

 仕方ありません。

 当初の予定通り、パンツは力をもって強奪したいと思います。

 それに、その方がハプニングで何かが見えてしまうお楽しみもあるかもしれませんしね。フッフッフッフ。

「さあ、お兄さん。無駄な抵抗はやめて大人しく今穿いているパンツを寄越しなさい!」

「わたしも、あやせさまの真似をするんだよ。ふっふっふっふ」

 今度は2人掛かりでお兄さんを壁際へと追い詰めます。

「嫌ぁあああああああああぁっ! 男子の純情が汚されるぅううううううぅっ!」

 泣き叫びながら震えるお兄さんを見ていると、心の底からゾクゾクして最高の気分になれます。

「さあお兄さん、等価交換のお時間ですよっ!」

 あかりちゃんが自分の体を盾にしてお兄さんを守ろうとしますが無意味です。何故ならその体は空気で出来ているのだから!

「いっただきま〜〜〜〜すっ!」

 お兄さんのズボンを引き裂くべく自分の両腕を前方に差し出し──

「幾ら何でもそれ以上は犯罪だよ、あやせさん」

 ズボンを掴もうとした所で、けたたましい大音量が周囲に鳴り響きました。

 

 

-7ページ-

 

「へっ?」

 大騒音の発信源はわたしの鞄でした。

 日向ちゃんがわたしがいつも持ち歩いている防犯ブザーを鳴らしたのです。

「事件はここかぁ〜〜っ!」

 制服姿のお巡りさんが駆けながらわたしたちの元へとやって来ました。

「た、助かったぁ〜」

 安堵の息を漏らすお兄さん。

 どうやら、わたしのアニパンゲット作戦は失敗に終わってしまったようです。

 アニパン……一度で良いから味わってみたかったです。

「お巡りさん、助けてくださ……」

「貴様ぁああああああぁっ! 女子小学生と女子中学生のパンツを強奪しようとしていたなぁっ!」

「「「「えっ?」」」」

 お巡りさんの言葉に驚かされます。

 現状を整理してしましょう。

 わたしはパンツを脱いで手に持ってお兄さんに迫っています。

 ブリジットちゃんはパンツを脱いで手に持ってお兄さんに迫っています。

 日向ちゃんはわたしの鞄の防犯ブザーを手に持っています。

 お兄さんは3人の美少女に囲まれています。

 ああ、なるほど。

 見方によっては、お兄さんがわたしとブリジットちゃんのパンツを強要して、日向ちゃんがその隙に防犯ブザーを鳴らしたと推測することができますね。

「貴様ぁっ! 痴漢の現行犯逮捕だっ! 交番にしょっ引いてやるから大人しくしろ!」

 お巡りさんはお兄さんに手錠を掛けて背中を押して歩き始めました。

「誤解だぁああああああぁっ! 襲われていたのは俺の方なんだぁあああああああぁ!」

「犯罪者はみんな被害者ぶるんだ。大人しく罪を認めて悔い改めろ!」

 お兄さんはあかりちゃんに付き添われながら連れて行かれてしまいました。

「えっとぉ……高坂くんとあやせさんたちを引き離せればそれで良かったのだけど……ちょっと失敗しちゃったかな?」

 日向ちゃんが冷や汗を垂らしながら空を見上げました。

「わたしは、何か色々なものを失っちゃったかな?」

 冬の風が、ノーパンの身に冷たく染みました。

 

 

 

 後日、誤解が解けて警察から解放されたお兄さんでしたが……

「はっはっはっは。あかりちゃん、今度2人きりで遊園地に行かないか? 偶然タダ券が手に入ってさぁ」

 すっかり女性不審に陥ってしまいました。わたしが眼前にいるのに目も合わせてくれません。まるで空気扱いされています。

「えっ? 2人きりで遊園地に行くなんてデートみたいだって? その、俺は……デートのつもりなんだけど、嫌、かな?」

 代わりにお兄さんはエア友達のあかりちゃんに夢中です。人間のわたしが空気扱いされて、エア友達と真剣に語り合うってどうなのでしょうか?

「えっ? 嫌じゃないって? それじゃあその、俺と……エア友達じゃなくてエア恋人になって欲しいのだけど。ダメ、かな?」

 エア友達の若さだけが取り得の癒し系お団子頭娘に……。

「ええっ!? オーケーしてくれるのか! やったぁ〜。これで俺も今日から彼女持ちのリア充の仲間入りだぜ〜〜っ!」

 ジャンプして全身で喜びを表すお兄さん。

 お兄さんの目の前では、お団子頭の少女が顔を真っ赤にして俯いていました。

「あっかり〜ん……」

 わたしも消えてしまいたいなあ。

 お兄さんのエア恋人のあかりちゃんを見ながらそんなことを思いました。

 やっぱり今日も冬の風が冷たいなあ……。

 

 了

 

 

 

説明
あやせたんは愉快だなあ

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康太と愛子と決戦バレンタイン温泉旅行
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コメント
峠崎丈二 様 お褒めいただきありがとうございます。 例の彼女は空気として出演できるのでとても使い勝手が良いです。第二期が始まったらまた登場してくるかと思います。目立たないのに存在感が彼女の利点です (枡久野恭(ますくのきょー))
まさかの彼女が出演とは……相変わらずテンポもネタも心地よい加減で面白いですな。あやせよ、君はあの夜空の星になったのだ……(峠崎丈二)
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