俺は隊長に還って来た嬉しさから、満面の笑みを浮かべながら、急いで兵舎に向かった。

　　　そして、兵舎の扉をすぐ先に二人の男が談笑をしていた。

　　　仁「・・・・でさ、あそこのせいろ蒸しの店の娘が可愛いんだって！」

　　　剛「いやいや、隣の区の本屋の娘の方が・・・」

　　　甑「おい、剛に仁。今はそんな話をしてる場合じゃないんぞ！！」

　　　剛「おぉ！どうしたんだ、そんなに息を上げて？」

　　　仁「そうだぞ、のっくをしてから扉開けろよな？心の臓に悪いだろ？」

　　　甑「それは悪かったって、仁。そんなことより、隊長が・・・北郷隊長が帰ってきたんだ！！」

　　仁・剛「「はぁあああああああああああああああああああ」」

　　　仁と剛の大声を上げた反応に兵舎の周りに居た同僚たちがぞろぞろと入ってきた

　　　甑「お前ら２人とも。そんなに大声を出さないでくれ。耳が痛いじゃないか。」

　　　仁「そんなことより、本当に北郷隊長が帰ってきたのか？本当に本当に！？」

　　　周り「「「「「「「ほ、北郷隊長が帰ってきたって、本当なのか！？甑。」」」」」」」

　　　甑「あぁ、今さっきな。荀�ｹさまが賊に襲われそうになったときにな、一瞬で賊１０人を

　　　　　倒すほどに強くなられていて、それでその賊を捕縛してから・・・って、ぁああああ」

　　　剛「どうしたんだ、甑？」

　　　甑「賊を捕縛したのはいいんだけど、運ぶのを手伝ってもらおうと思ってたんだった。

　　　　　・・・・・もしかしたら、北郷隊長にあえｒ」

　　　俺が言い切る前に皆が我先と窓や扉から出ようとしている、やはりみんな北郷隊長が

　　　帰ってきたということを自分で見たいということなのだろう。

　　　そう思うと、先に見れた自分は幸運だったなと思った。

　　　結局、街にいた同僚を全員呼んで、北郷隊長が居た場所に向かった。

　　　流石に大所帯なのか、街の住民たちは所々怯えているのを見ると申し訳なくなった

　　　仁「なぁ、なんでこんな大所帯になったんだ甑？」

　　　甑「俺に言うなよ、剛が全員呼んで行くって言って、呼びに言ったんだからしょうがないだろ？

　　　　　それにみんな、隊長に会いたいってことだろ？・・・・っともう、そろそろだな。」

　　　仁「それもそうか。・・・・っ！？みんな、一旦道の端とかに隠れろ。」

　　　剛「どうしたんだ、仁。そんなに慌てて？」

　　　仁「いや、荀�ｹさまが黒い怪しい服装をしてる奴を抱きしめてるし、それに曹操さまや

　　　　　重臣の方々が泣いてるってことはあれが隊長なのか、甑？」

　　　甑「あぁ、怪しい服装をしてるのは北郷隊長で間違いないよ、俺は隊長と少しだけ

　　　　　お話したしな」（自慢げに）

　　　剛「くっそー、お前だけずるいぞ！まぁ、そうか。本当に帰ってきてくれたんだな、隊長は。」

　　　剛がそう呟くと、周りに居た同僚の目じりには涙を溜めている。かくいう俺も同じく涙を

　　　浮かべているのだろう。皆も早く、隊長に”おかえりなさい”と伝えたいのだろう。

　　　だが、彼の周りには我々と同じかそれ以上に待っていた愛しい人がいるのだから、待っている

　　　のだろう。

　　　甑「なぁ、皆。俺たちにできることをしないか？」

　　　剛「俺たちに・・・・できること・・・」

　　　仁「そうだ、街の民たちに隊長が帰ってきたことを伝えて、街全体で宴の準備をしよう！

　　　　　ちょうど、今日は祭りだから、そんなに前準備をしなくても大丈夫だと思うし、

　　　　　皆、分担して区ごとに急いで伝えるんだ！そして、隊長に喜んでもらおう。」

　　　仁の言葉に皆頷き、急いで走っていった。俺は剛と仁の３人はこの区内の店の１つ１つに

　　　隊長が帰ってきたことを伝えに周った。

　　　俺は剛、仁と別れて、近くの服屋に立ち寄った。

　　　甑「ちょっとよろしいですか？」

　　　店主「へい、いらっしゃい！！なにかお探しの物でも？」

　　　甑「いや、そうではなくてですね。実は今日、隊長が帰ってきたのです。」

　　　店主「隊長といいますと・・・・・ほ、ほほ、北郷様が帰ってこられたのですか！！！

　　　　　　それは本当なのですか・・・いえ、貴方たち北郷隊の言うことに嘘なんて

　　　　　　ありえないです。おい、かあちゃん。北郷様が帰ってこられたらしい、急いで周りの

　　　　　　全ての店に伝えに言ってくれ。俺は周りの服屋と集まって、北郷様に着ていただく用の

　　　　　　服を仕立てる。祇栄さん、隊長の寸法を大体でいいから教えてくだせぇ。」

　　　甑「分かりました、私でよければいくらでも手伝いますよ。」

　　　店主「ありがとうございます。ささ、ではこちらで。付いて来てくだせぇ。」

　　　隊長が昔、教えてくれた”民も同じ人なんだからさ、一緒に仲良くしようよ？こっちが

　　　傲慢な態度なんか取っていたら反発で返されるし、仲良くなれば、信頼を返してくれるよ？”

　　　と言う言葉が身に染みて感じることができた。俺は隊長が消えてから、みんなにこの言葉を

　　　伝え、実践してきた。そして、今ではこうして信じて手伝ってくれてる。そして、俺も

　　　その信頼に答え、頑張っていこうと思った。いつか、隊長みたいに常に笑顔で接することが

　　　できるように。