サヨナラノソラ

サヨナラノソラ

青

青から白

白から青

青から藍

そして藍から黒

黒

闇の色

空の黒は闇

闇色の空

サヨナラノソラ

サヨナラノソラ

お別れは言わない

僕は行く

君はどこへ？

僕は行く

僕の未来へ

君も行くのか

君の未来へ

それは遠く

遠く

遠く

「死ぬのか？」

　煙草の匂い

　男の声

「死なない」

　僕の返事

　倒れたまま

「血が出てるが？」

　覗きこむ男

　背にした光

　顔は見えない

「でも死なない」

　僕の返事

　腹から出る血

　足から出る血

　頭から出る血

　目から　口から出る血

「怖いか？」

　男　しゃがみ込む

　煙草の煙立ち上る

「怖い？寒いよ」

　全身に走る悪寒

　腕で抱きたい体

　動かない四肢

「詰まらんことだ」

　立ち上がる男

　煙草を捨てる

　足で踏み消す

「いい天気だな」

　空

　さよならの空

　空にさよなら

　青い空

　二度と見られない

　この目は見えなくなる

「最後だったか」

　二本目の煙草

　最後

　僕が最後

「多分ね」

　そこここにある十字架

　眠る死者

　天登る使者

　僕の上には何も立たない

「どうでもいいってツラしてやがる」

　覗きこむ男

　吐き捨てたセリフ

「死なないって言ってる」

　反論

　論点は不明確

「埋めたのはお前か？」

　問い

　辺りを見回す男

　そこここにある十字架

「まぁね」

　僕の返事

　誇らしげに

「その体でよくやったもんだ」

　感心する男

「捨て置けない」

　幾つもの死者

　置いてはいけない

　持ってはいけない

「なぜ逆らったんだ？」

　問い

　覗きこむ男

「人は星に住むものだと僕は思う」

　本心

　星は故郷

　置いてはいけない

　持ってはいけない

　失くしてしまいたくはない

「わからなくはない」

　納得する男

「だけどな」

　男２本目の煙草も捨てる

　足で踏み消す

　３本目に火をつける

「兵器は捨てる約束だ」

　兵器は殺す

　人を殺す

　平気で殺す

「兵器じゃない。星だ」

　反論

　星は故郷

「星で、兵器だ」

　男　続けて戦争の歴史を語る

　各地に残った兵器を語る

「この星はもう兵器だろう？」

　男地面を指差す

　星を指す

　星を兵器という

「でもそこに居たいと願ったんだ」

　目から流れ落ちる血

　涙のよう

　だけどそれはやはり血

「わからなくはない。でも規定に逆らったよ」

　男　懐に手を入れる

　取り出したのは銃

　兵器

「それは兵器じゃないの？」

　問い

　顔をしかめる男

「結局支配欲か」

　吐き捨てたセリフ

「平和であればそれでいいだろ？」

　苛立つ男

「それを奪ったのは誰だ？」

　僕の反論

　銃声

　左手がはじける

　痛くはない

　感覚はもうない

「埋めるやつはいないな。俺が埋めてやる」

　銃声

　２発目

　右手がはじける

　少し痛い

　右手にはまだ感覚があった

「安らかに死ね」

　銃口　額を指す

「死なない」

　反論

「死ぬさ」

　問答

　僕の目　男を見る

「旅立ちだ」

　男　聞いて笑う

「旅立ち？星を捨ててか？」

　吐き捨てる

「星の中に旅立つ」

　星

　故郷

　星の中で生きる

「そうかよ」

　男　寂しげな顔

「別れは済ませたか？」

　問い

　別れ

　離別

　離れること

「何に？」

　星とは一つになる

　男に別れは言わない

　男　首をかしげ　考える

　男　空を見上げる

「そうだな、空に、だ」

　空

　二度と見られない

　この目には二度と見えない

　空と離れる

　空と別れる

「そうか…」

　空

　もうほとんど見えない

　色は青

「空」

　呟く

　銃口は額を指す

　男の指　引き鉄にかかる

「サヨウナラ」

　銃声

サヨナラノソラ

サヨナラノソラ

青

青から白

白から青

青から藍

そして藍から黒

黒

闇の色

空の黒は闇

闇色の空

サヨナラノソラ

サヨナラノソラ

お別れは言わない

僕は行く

君はどこへ？

僕は行く

僕の未来へ

君も行くのか

君の未来へ

それは遠く

遠く

遠く