新訳 真紅の鬼神 第一三鬼 〜虎牢関の戦い 中編〜
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「これは不味い」

 

誰が言ったかは分からない。その言葉は誰もが思っている言葉であり口に出したところで変わりはしない。

袁家の二人が呂布に敗れ命からがら逃げ帰ってきて直ぐに軍議が開かれた。

連合軍の総大将たる袁紹は自分の天幕より出てこない。

同じく袁術も出てこない。

現在、連合軍は危機的状況にあった。

 

「先の戦いで袁紹・袁術はその兵力の半分とは言わないけど、それに近い被害を出したわ」

 

この雰囲気の中、口を開いたのは袁紹と共に戦場に出ていた曹操だった。

連合軍の中で一番の兵力を持っている袁紹と袁術。その兵の練度は最低だが、それでも兵の数で勝っている袁家の軍勢を悉く蹴散らすとは、呂布とその配下の兵の強さが分かる。

 

「曹操殿は呂布と直接会ったんだろ?どんな奴だったんだ?」

 

西涼の馬騰の娘の馬超が言う。

彼女は連合軍には所属しているもの一度も戦闘に参加していない。

だけど、何か調べている素振りを見せている。

彼女は確か董卓と同じ同郷の出な筈だ。

 

「――――武を身体で表すような男だったわ。そして将としても一流。部下の扱いも上手くまた信頼されている。」

 

そして個人の強さも言わずもがな。

 

「将の中の将って奴か」

 

公孫讚が溜息を吐きながら言う。

 

「それを言ったら張遼も危険よ。彼女の用兵は侮れないわ」

 

先の戦いで袁術の元で戦った孫策が言う。

張遼の巧みな用兵術の前に散々軍を引っ掻き回され、個人としても神速と名高い張遼の槍の前に兵は次々と倒れていった。

そしてその両将に守られる虎牢関。その存在は連合軍にとって一回りも二

 

回りも大きく連合軍には見えた

結局、なんの突破口も見えぬまま軍議は解散となった。

 

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「ご主人様、私達どうすれば良いのかな?」

 

劉備軍本営天幕にて劉備は自らが慕う天の御使い北郷一刀に声をかける。

 

「大丈夫、もう少しで来ると思うから」

「来る?主、何が来るのですか?」

 

風が吹き松明の火が少し消え、再び燃え上がる。

 

「っ何者だ!?」

 

天幕の入口に大きな人影があった。

関羽は得物を持ち構える。

その影はゆっくりと動き入口の布に手をかけた。

 

「何者って言われてもな・・・・一刀さては皆に説明してないないだろ」

「なっ、貴様は!」

「にゃぁ!!」

「これはこれは」

「あ〜!!」

 

鼻に布を詰めて頬を腫らした呂布が立っていた。

 

「よぉ遅かったな・・・所でその顔どうした??」

 

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連合軍を蹴散らし虎牢関に帰還した焔は自室にて休んでいた。

現在、恋は身体についた血を洗い流しに行っており、騰は兵を率いて警備の任に就いて、ねねは部屋に籠って作戦を練っている。

 

「それで、いつまでそこにいるつもりだ?」

 

視線はそのまま鬼焔を手に握る。

 

「生きたまま俺の前に姿を現すか、亡骸となって俺の前に現れるか」

 

どちらか選べ・・・と殺気を向ける。

すると天井の板が外れそこから人が物音立てずに降りてきた。

 

「無礼をお許しください。私は御使い様より手紙を預った者です。」

 

外套などで顔を隠しているが声からして女か・・・

懐からだした手紙を焔へと渡す。

 

「ルーズリーフか・・・」

 

この世界では存在しない元の世界の紙。

そこに書かれているのは日本語。

 

「(なるほど、これなら見つかっても俺以外には解読されないだろう)」

 

中身はいたってシンプルな無いようだった。

 

「(今夜、話がしたい。劉備軍陣営で待っている。)」

 

丁寧に地図まで入っていた。

 

「(一人で来てくれ・・・か)」

 

目の前の女は唯黙って俺の返答を待っている。

 

「一刀に伝えてくれ、了解したと」

「御意」

 

その女は再び天井に入り、お供なく消えた。

気配が完璧にきえたのでもうこの部屋には居ない。

 

「ふぅ」

 

焔が一息ついた時だった。

ギィィ

扉が少し開き、その隙間から突如目が現れる。

 

「―――焔」

「ヒッ」

 

ギョロッと目に光をなくし瞳孔が縦に割れた瞳が焔を射抜いている。

 

「れ、恋か、おかえり」

「―――焔、大好き」

 

ニタァといつも表情に乏しい恋が三日月の形に口を変えて嗤う。

何処か狂気じみた恋の顔に焔は後ずさってしまう。

 

「い、いきなりだな、俺も恋の事大好きだぞ」

 

恋は扉をゆっくりと開け、フラフラしながら焔へと近付いて行く。

 

「―――さっき」

 

「れ、恋?」

 

ガツンッ!

 

「グゥッ」

 

恋の拳が焔の頬を打ち抜いた。

そして力任せに焔の身体を床に押し倒す。

 

「女と話シテタ」

「いや、あれはだなッ―――」

 

焔が口を開いた瞬間、全力で殴られる。

 

「焔から女の匂い」

 

恋は嗤いながら殴る。

 

「臭い。匂イ」

 

焔の口の中が切れ血が出てくる。

 

「焔は、恋のモノ」

 

鼻を強打されたらしく鼻血も溢れる。

しかし恋は殴ることを止めない。

 

「焔・・・焔焔焔!」

 

唯ひたすら自分の愛すべき男の名前を口にだし、嗤い殴る。

その拳から血が出始めた時

 

「―――恋」

 

今まで黙って受けていた焔が恋の拳を止めて抱きしめる。

 

「焔のニオイ」

 

顔をうずめて匂いを嗅ぎ、顔を擦り寄せる。

 

「落ち着いたか?」

「―――――うん」

 

焔は恋を上から優しく退かせ、立ち上がる。

 

「(鼻は折れてないな・・・口の中はヤバイことになってるけど)」

 

モゴモゴと口の中を動かしていると血が溢れる。

それを窓の外に吐き捨てる。

しかし、焔は恋を怒ることは無い。

こういう行為に至るのも恋が自分の事を深く愛してくれているからだ。

不器用な恋の数少ない愛情表現の一つとして焔は認識している。

今の行動も焔を取られたくない一心でやったことだ。

 

「(こういう所も可愛いな)」

 

こう思っている所、焔も壊れているのかもしれない。

 

「さっきのはな、一刀からの手紙を持ってきてくれた人でな、別に恋から俺を取りにきた人じゃないんだよ」

「・・・・それは、分からない」

「なら、もしそうだとしても、俺が恋を捨てて他の女に走ることは無い」

「・・・・ん」

 

恋の頭を撫でてあげる。

恋は気持ち良さそうに目を細める。

 

「それでな、俺は今から一刀の陣営に行ってくる。これは月を助ける為には必要不可欠なことだ」

「・・・・恋も行く」

「駄目だ。今回は一人で行かなくちゃいけないんだ」

 

すると恋の目がまたも変わる。

 

「―――焔」

「馬鹿、唯話に行くだけだって」

 

コツンと頭を小突いて、構えられた拳をゆっくりと下ろさせる。

流石にこれ以上食らっては焔も只ではすまない。というか現在も只ではすんでいないが・・・

 

「・・・・だけど」

「わかってるよ。俺は恋以外の女には絶対に手を出さないし本当に話しをするだけだから」

 

恋の説得をし、騰と霞に行くことを伝え赤兎に跨る。

 

「イッテラッシャイ」

「あ、うん行ってきます」

 

最後まで不機嫌な恋の殺気に冷や汗をかきながら関を出る。

 

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「で、そんな顔になったのか」

「そうだよ!てな訳で女を寄越したお前にも罪はある!一発殴らせろ☆」

「アハハッ・・・だが、断る!!!」

 

敵同士でありながら真名を交換し互いに親友という二人は楽しそうに話す。

 

「まぁ、いいや。それで華雄は何処だ?」

「やっぱり気づいていたか」

 

一刀は兵に華雄を呼んでくるように言った。

 

「焔!」

「おぅ、元気そうでなによりだ」

 

しばらくして、兵に連れられて華雄がやってきた。

少し、雑談してから話しを進めた。

 

「さて、焔。もう知ってると思うけど俺は董卓ちゃんを救いたい」

「あぁ、何となくだが分かっていた」

「それで、具体的にどうするんだ?」

「うむ。一刀にはこの戦いが終わったら月を匿ってもらいたいんだ」

「匿うか」

「あぁ、侍女としてでもいい。一刀達には洛陽に一番に乗り込んで月達と合流してもらいたい」

 

焔の言葉に一刀は頷く。

 

「でも、虎牢関を占領しないと先に進めないよ」

「そりゃそうだ。俺たちも命をかけて戦ってるからな、本気だ。だけど俺達も引かなくちゃいけない理由がある」

 

焔は朱里達へと視線を移す。

 

「え?どういうこと?」

「はわわ・・・えっと兵糧が無いんだと思ういます」

「うん、泗水関から退却した兵隊さんも加わってるから・・・」

 

朱里の言葉を雛里が繋げて言う。

桃香は納得したように手を叩いた。

 

「その通り、元より援軍もない籠城戦だ。連戦によって兵も疲れてきてるからな」

 

幾ら屈強な兵士でも毎日攻めてくる敵が来ていれば精神的にも肉体的にもきてしまう。

 

「そんで、一番重要なのが、華雄お前だ」

「は?」

「お前には洛陽へ行って、一刀達と合流するまで月と詠を守っていて欲しい」

「焔の兵が守ってるんじゃないのか?」

「確かに、俺の兵が守ってるが、あの十常侍のクソ共が何しでかすか分からな」

 

あのクソ共は不気味な程大人しくしている。

だが、何かを企んでいることは確かだ。

だからこそ、今自由に動け尚且つ信頼出来る華雄へと頼んだ。

 

「分かった。元より我が武は月様の為にある」

 

華雄は直ぐ感情的になるところを除けば、優秀な武将だ。

近くに月がいれば無理も出来ない。

もってこいの人材だ。

 

「焔・・・お前この戦いが終わったらどうするつもりだ?」

「ん〜なんも考えてなかったな」

 

適当にぶらついて傭兵紛いなことでもしていようか。

 

「それなら、俺達のとこへ来ないか?」

「ご、ご主人様!?唐突すぎじゃありませんか!?」

「うむ。主、相手は呂布だ少しは考えて言うべきだ」

 

愛紗と星に諌められる。

確かに、幾ら友人とはいえ、相手は呂布だ。

仲間にすればこれほど頼りになるものは無いが、逆に敵に回るとこれほど厄介な敵はいない。

しかも、今回の戦いで呂布は多くの諸侯を相手に暴れた。

仲間に入れようものならそれを理由に攻められる可能性があるからだ。

 

「考えておく」

 

それを分かっているからこそ、焔は曖昧な返事をした。

本当なら、直ぐにでもその誘いを受けたい。

だけど一刀達にも迷惑はかけれない。

せめて、外堀が冷めてから

 

「そっか、まぁいつでも歓迎するさ」

 

一刀は愛紗達の小言にも屈せず、笑顔で焔に言う。

 

「(あぁ・・・なるほど。この笑顔で虜にしてきたのか)」

 

確かにこの笑顔は女性にとっては魅力的だろう。

現に桃香達は顔を赤くしている。

 

「はぁ・・」

「なんだよいきなり溜息ついて」

「いんや、なんでもねぇよ」

 

この無自覚で女性を落とす男。

いつか後ろから刺されないかと心配する焔だった。

 

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夜の会合を終え、朝皆に伝え軍議を開いた。

 

「んで、そうするん?」

「俺達は唯ここを守ってればいい」

「んな。それじゃ作戦の意味ないやん」

 

確かに俺達がここを守っていれば作戦も始まらないだろう。

 

「だが、今は引き時じゃない」

「ん〜焔が言うんならそうなんやろうけど」

 

外より敵の来襲を報せる銅鑼がなる。

 

「敵さんのおでましやな」

「あぁ、守るぞ。総員戦闘準備!!」

 

応ッと気迫の篭った声が響く。

連合軍との戦いは虎牢関の頑丈さと精強たる兵のおかげで、守り抜いていた。

それから3日経った夜、焔の元に一報が届いた。

 

「んだと!?」

 

裂帛と共に叩きつけた拳が机を粉砕する。

呂布軍直属兵の青年は跪いたまま言う。

 

「十常侍が劉弁様と劉協様を拉致!反乱をおこしました!」

 

その場にいた者全てが焔から滲み出る殺気に冷や汗を流す。

唯一恋だけが涼しい顔をしていたが・・・

 

「予定より早いが洛陽まで撤退する。兵を纏めろ」

「ハッ」

「時間を稼ぐ必要がある。だれか策はあるか?」

 

しばしの沈黙後、ねねが手を上げる。

 

「あるのですぞ!」

「なんだ」

「城壁に訓練用の木に鎧を着せて立てるのです!」

 

ねねの撮った策とは連合側に此方が居ないことを誤魔化すためのカモフラージュ。

虎牢関は呂布と張遼が守る難攻不落の城と連合軍は思っているから、簡単には近づいてこない。

 

「しばらくは時間を稼げるのですぞ!」

 

ねねの策を起用し、用意が出来しだい焔は虎牢関を後にし、洛陽へと向かった。

 

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「おかしいわね」

 

焔達が虎牢関を抜け出した翌日、連合軍は士気も上がらないまま虎牢関を攻める用意をしていた。

 

「おかしい、とは?」

「虎牢関の様子がおかしいわ。確かに兵はいるようだけど・・・」

「ここからでは見えませんね」

「(何かの罠かしら)」

 

呂布は侮れない。

別に呂布だけじゃない、その下にいる呂姫も高順も侮れない。

そして張遼の存在もある。

 

「華琳様!!この夏侯元譲に命じてくだされば虎牢関の一つや二つ!見事落としてみせましょう!!」

 

「馬鹿じゃないの?アンタが行って落ちてたら最初から行かせてるわよ。

 

じゃぁ〜これだから脳筋は・・・」

「な、なんだと!もう一回言ってみろ!」

「何度でも言ってあげるわよ!脳筋!」

「うがーー!!!」

 

まったく、この娘達は少しは静かに出来ないのかしら・・・

 

「止めなさい。春蘭、桂花」

「「はい」」

 

虎牢関に進軍する軍も余りの静けさに行軍が遅くなっている。

その事に若干苛立ちを感じていると

 

「まったく、只の木を恐れおって気合が足りん!」

「・・・春蘭、もう一度言って」

「え?何をですか?」

「今言った言葉よ!」

「は、はい!え〜と只の木を恐れ「それよ!」え?」

 

春蘭の目の良さは幼少の頃より知っている。

秋蘭も良いが、春蘭は化物じみている。

 

「春蘭、確かにあれは木なのね?」

「ハッ!間違いありません!」

「ならば良し!!!直ちに軍を率いて虎牢関を攻めよ!」

「ハハッ!!」

 

おそらく、夜の内に抜け出したのだろう。

春蘭が兵を率いて虎牢関へと突撃をし、しばらくすると虎牢関に曹の旗が立った。

 

「やりましたよ華琳様ーー!!!!」

 

ここまで聞こえてくるような大きな声で春蘭が叫ぶ。

 

「なんて大声出してるのよ・・・」

「あぁ、姉者は可愛いな〜」

「ふふふ、これで虎牢関の戦功は頂いたわ」

 

さて、天幕で怯えている馬鹿でも起こしに行きましょうか。

きっと、虎牢関が落ちたと聞いたら直ぐに調子を取り戻すのでしょうね。

正直、いやだけど我慢するしかないわね・・・

 

「華琳様?お顔を顰めてどうしたのです?」

「いえ、なんでもないわ・・・秋蘭付いてきなさいあの馬鹿を叩き起こすわよ」

「御意」

「桂花、後の事は任せたわ」

「ハッ!お任せください!」

 

しかし、虎牢関を破棄しなくてはいけない理由があったのか・・・

 

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虎牢関を抜けた焔達は全速力で洛陽へ向かっていた。

 

「もうすぐで着くで!」

「あぁ分かってる!歩兵は!?」

「後ろからちゃんと付いてきとる!」

 

よし、このまま洛陽へ入る!

 

「報告いたします!」

「おぅ、止まる時間はないこのまま話せ!」

「ハッ洛陽では将軍麾下千の兵が十常侍が私兵と交戦中!」

「なんだと!?」

「月と詠は無事なんか!?」

「華雄将軍が守っていると!」

 

華雄!なんとか持ち堪えてくれよ!!!

洛陽の城下街を抜け、城へと入るとそこは戦場だった。

 

「ッうぉぉぉおおお!!!!」

「りょ、呂布だー!!!」

 

焔達の前に次々と無力化されていき、歩兵が到着した時点で決着がついた

 

 

「月!詠!!何処だ!?」

 

すでに洛陽は掌握し、全体の警備にもつかせた。

 

「焔!!」

「華雄!!」

「月様達はこっちだ。」

 

連れてこられた場所には兵がガッシリと護りを固めた民家がだった。

 

「焔さん!」

「月!!」

 

中から出てきた月に近寄り、無事を確認する。

一度、主要の武将を集め会議を行うことになった。

 

「そうですか・・・」

「あぁ、既に勝敗は決した。後三日もすれば連合軍がくるだろう」

「そんな!月はどうなるのよ!!」

「それは、大丈夫だ。月と詠には一刀のとこに行ってもらう。」

「北郷さんの所へ?」

 

コクリと頷く焔に月は俯く。

 

「皆さんは・・・皆さんはどうするんですか?」

 

その言葉に俺達は苦笑する。

 

「俺達は連合軍を引きつける。その間に一刀達と合流しろ」

「そんな!!駄目です!皆さんの命をこれ以上、危険に晒すわけにはいきません!!」

 

今にも泣きそうに目にいっぱい涙を貯めて言う。

その姿に微笑みながら言う。

 

「月、俺達はな月に生きてもらいたいんだ。その為に戦った。それに俺達だって一介の武人だ引き際も心得てるさ」

「月様、北郷は少し変な所はありますが、いい奴です。決して蔑ろにするような奴ではないです。」

 

華雄も一刀の事を伝え説得にかかる。

 

「分かりました・・・」

 

ようやく頭を縦に振った月の頭を撫で、俺は立ち上がる。

 

「よし、それじゃ連合の奴等がくるまで時間があるから各自自由に行動していいぞ」

 

その場は解散となる。

俺は、一人自分の家のある場所へと向かう。

珍しく恋が見当たらないが恐らく家に先に帰っているのだろう。

 

「ただいま」

「お帰りなさいませ」

 

連合軍と戦う前に雇った使用人の男が俺を出迎える。

 

「一夜は?」

「先に戻られた奥様と一緒におります」

 

やっぱり、先に帰ってたか・・・

庭の方から声が聞こえてくる。

 

「しっかし・・・」

 

何日も空けていた家だが綺麗なままだ。

使用人の腕が良い証拠だろう。

 

「あっ!お父さん!!!」

 

俺の姿に気付いた一夜が走ってやってくる。

 

「おぉ!しばらく見ないうちにまた大きくなったな!」

「でしょ!!早く大きくなってお父さんみたいに強くなるんだ!!」

 

一夜がその手に拳を作って見上げてくる。

 

「なら、鍛えないとな」

「うわぁ!!」

 

一夜をヒョイッと抱き上げる。

 

「・・・・焔、おかえり」

「ただいま、てか先に帰るなら言ってくれよ」

「・・・・(コク)」

「お父さん、お母さん今日はお休み?」

 

無邪気に笑顔を見せてくる一夜の頭を撫でる。

子供ってやっぱ癒やしだわ〜

 

「そうだぞ〜」

「やったー!!遊ぼ!お父さん!お母さん!!」

「よしっ!遊ぶか!!」

「・・・・遊ぶ」

 

久しぶりに家族で遊び、一夜が疲れて寝てしまったので、俺は庭の東屋で一人酒を呑む。

 

「ふぅ・・・」

「溜息、駄目」

「恋か・・・いや、なにこの家ともおさらばかと思うとな」

 

この家は特別に思い出のある家だ。

恋と結婚した場所でもあるし、一夜が産まれた家でもある。

離れるのは少し寂しいと思う所もある。

 

「大丈夫・・・・戻ってくる・・・・」

「ん、そうだな」

 

酒を煽り杯を置き夜空を見上げる。

 

「恋・・・連合軍との戦いが終わったら、皆でゆっくり出来る所でも探してのんびりするか!」

「・・・ん。のんびり」

 

連合軍には痛い目を少し見てもらうが・・・・張譲、貴様をこの手で打ち取りたかったぞ・・・

 

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やっとおでましか」

「皆さん・・・」

 

目の前には連合の軍勢が犇めいていた。

 

「皆さん・・・」

「月、ここは危険だから早く戻れ、詠もだ。」

「わかってるわよ!だけど、月がどうしてもって言うから」

 

なるほど、月の我侭と言うことか・・・

本当に詠は月に甘いな・・・

 

「どうか、生きてください」

「あぁ分かってるさ」

「今生の別れってわけやないし、そんな辛気臭い顔せんといてや」

「月、詠・・・・またね」

「お世話になったのですぞ!」

 

オォォオオオオ!!!!

 

敵が動いたか・・・

 

「月、詠。早く戻れ、華雄頼んだぞ」

「任せろ命に変えても守り抜く!」

 

華雄と僅かな護衛に連れられて月と詠が消えたのを確認し俺は鬼焔を担ぐ。

 

「さて、始めるか・・・」

 

俺は兵達の前を進む。

真紅の呂旗が靡く。

 

焔が通った道は次の瞬間、雄叫びへと変わる。

誰もが己の武器を天へと突き上げる。

 

真紅の呂旗に続くは紺の張旗。董卓軍を代表する武将の前に兵達は己を奮い立たせる。

 

「我が名は呂奉先!!!!」

 

大気を震わせ戦場に焔の声が響く。

 

「汝ら連合軍に問う!!我を倒す者はいないか!!!!」

 

遠くからでも分かるその存在感と鈍く光るは何千もの血を吸ってきた真紅の方天画戟。

それは大きく連合軍の士気を削いだ。

勝利を確信していた連合軍の前に最強の男が現れたのだ。

だが、一人の男によってそれは歓声へと変わる。

 

「ここにいるぞ!!!!」

 

裂帛と共に姿を表したのは白馬に乗った青年。

日の光を反射し光り輝いている姿は正に天の御使いそのままだった。

 

「一刀・・・ッ」

 

一刀はその愛馬『白龍』を進ませ天高らかに名を挙げる。

 

「我こそは天の御使い北郷一刀!!!呂奉先!!勝負だ!!!!」

 

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あとがき

 

いや〜ここ2週間は一番きつかった・・・・

試験勉強に試験に部活。

まともに寝れてないぜ・・・orz

だけど、高校最後の公式戦でまで勝てたから嬉しかった( ̄ー ̄)bグッ!

 

しっかし、雨降ったり、晴れたりと、こうも気候と気温が変わったら身体を壊しそう><;

みんなも気を付けてね!!

 

明日から、また学校か・・・怠いな〜

 

この一週間も文化祭の用意とかあるし・・・

 

まぁその中でも地道に更新していこうと思います^^

応援宜しく!!

 

再見(o・・o)/

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外堀→ほとぼりでは?(西湘カモメ)
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