司馬日記15 |
2月1日
亞莎と凪と三人でお茶をしたところ、亞莎が魏の庁内でとある小説が流行っているらしいので入手してもらえないだろうかと頼まれた。
小説の名は聞いたことがないものだったが、著者は文書局の王粲だという。おぼろげな記憶では彼女は小柄で大人しく、こう言っては失礼だが比較的地味な娘で余り印象も親交も無い。幸い今年文書局に妹の叔達が入庁しているので妹づてに頼んでみると亞莎に答えた。
どのような内容なのかと聞いてみたところ、一刀様を題材にしたものだと聞いていますと答えて頬を染めていた。
2月2日
妹の叔達に亞莎の依頼の話をしたところ、その小説は既に持っているというので借り受ける事にした。
借りるにあたって陳琳様の方ではなくてこちらですねと叔達に言われ何のことだか判らなかったが、
亞莎の要望はこの通りなのでそうだと答えてそのまま借りた。
どのようなものかふと気になって読んでみたが、一刀様が天の国より降臨されてから大陸を統一されるまでの英雄譚にして三国の王や重臣達との恋愛譚であった。
王粲の文才は噂には聞いていたがあっという間に物語に惹きこまれ三巻から成るこの小説を徹夜で読んでしまった。
前文にこの小説は架空のものとの但し書きはあったが亞莎や凪も登場し、実物に違わぬ純朴可憐な少女として描かれ一刀様との馴れ初めも凡そ彼女等から聞いたものと同じであったので、相当詳細な取材の下に書かれたのだろう。
文章は秀逸で、特に一刀様が曹操様と結ばれるまでのくだりは思わずもらい泣きをしてしまった。
亞莎には大変素晴らしい小説なので是非凪にも読ませてあげて欲しいと伝えて渡した。
叔達には一言断りを入れてあるので問題無いだろう。
2月4日
朝、政務の御連絡で一刀様のお部屋へ伺ったところ既に一刀様は御不在で、一刀様の寝所の敷き布に顔を埋めていた姜維に出くわしてしまった。
目が合った途端、「せ、洗濯当番です、失礼します」と言いながら敷き布を抱えてそそくさと退室していった。
頬が高潮して胸元の袷が乱れていた、余程慌てていたのだろう。
2月6日
子丹御嬢様、子廉様、子孝様が久しぶりに飲みにいらした。
お嬢様は袁術殿の教育方針について張勲殿と細かいところでいまいち合わないのだという。
「私は昼は貞淑に夜は大胆にお誘いするように育てたいんだけど、七乃さんは『大きくなっても美羽様は受け専です』って言って譲らないのよねぇ」
と仰っていたが、一体何の教育方針ですかと聞きたくなってしまう。
元譲様が言っていた曹操様の鼻歌をふと思い出し、こんな曲なのですが御嬢様は御存知でしょうかと伺ったところ、御三方が揃って「知ってる!」と答えられ、酔った勢いのまま放歌をなさり始めた。
以前も思ったが最近本当に外で飲むのを辞めて良かった、軽快な曲調でとんでもなく下品に御寵愛をねだる歌だった。
士載に聞こえてしまわないか不安に思う大声だったが、給仕に来た士季には大丈夫ですよと言われた。
曹操様はこの歌詞を歌うにしのびず、曲のみを惜しまれたのだろう。
子廉様、子孝様は一刀様の御当番の時間までの時間潰しであったらしく、御機嫌のまま切り上げて一刀様の御屋敷の方へ向かわれようとしたところ子丹御嬢様が混ぜてもらえませんかと言い出した。
「私達が終わって寝てる間だったら一刀様をお連れ出ししてもいいわ、但し一刀様には御戻り頂いて腕の中で目を覚ますのは私達って事でも良ければね」との子廉様と子孝様の条件に首肯され、子丹御嬢様も向かわれていった。
「私も連れて行って下さい」と言いだせなかった私は負け犬ではない。
2月8日
年に一度の三国競技会が近づいてきたので、各国の事務方と方針会議を行った。
中堅層の底上げの為、個人戦は新人戦のみとし団体戦を主とすることとした。
各部門優勝商品は例年通り一刀様と一日過ごせる券(金品、武器・図書との引き換えも可)で合意した。
およその予算も問題無い為、次回の打ち合わせで詳細をつめることとした。
2月10日
姜維が定時間際に人払いと相談を願い出てきたので、先般の件を思い出し自宅の一室に招いて聞いてみた。
「先般の件ですが、私が秘密にしていた(自分が女であるという)事を見られてしまったでしょうか」
と聞いてきた。誠実に答えるべきと思ったので
「覗くつもりは無かったが(一刀様の敷き布に顔を埋めていたのを)見てしまった」
と答えると暫く面を伏せていたが、
「司馬懿様は一刀様の御寵愛の日程を管理される方と伺って御相談に来ました、真剣に一刀様をお慕い申し上げるようになってしまったのですがどうすれば御寵愛を賜れるでしょうか」
と聞かれて思わず絶句してしまった。
美女と見まごう容姿をしているが士載の話では姜維は男のはずだ。数十の寵姫を愛でられる一刀様とは言え流石に男は範囲外なのではないか。いやこれだけの美貌であれば、私でさえ受け入れて下さる一刀様の広大なる愛であれば…?いやいや、これを機に一刀様がそちらに御関心を持たれて寵姫の方々を蔑ろにするようなことでもあれば外交問題どころか天下の大問題、私の首如きでは贖い切れない罪だ…
田豊殿らには「貴殿らの御心掛けと一刀様の御心次第」と言ったが、これにはおいそれと答えられぬと悩みこんでいたところ、
「失礼ですが御話は伺わせて頂きました!」と言いながら士載の口を抑えた士季がすぱーんと扉を開けて部屋に入ってきた。
立ち聞きは不躾であると叱責しようとしたが友人の姜伯約の為に意見を具申させて下さいませ、と何時に無く礼儀正しいので発言を許したところ、
「姜伯約殿は口戯の鍛錬をして一刀様への御奉仕の道を開くがよろしかろう!また一刀様は美人の後ろをお責めになることも吝かでない、そちらを一刀様にお捧げしてはどうか?これでしたら貴殿の御寵愛を賜る道も開け、御寵姫の方々の御不興を買う事もありますまい!」
という。大分に姜維に好意的な意見とは思ったが姜維の美貌と相対していてつい感覚が狂ってしまっていたのかもしれない、
「左様でしょうか?」と姜維に聞かれて「一刀様の御心次第では」と答えてしまった。
すると嬉しそうに礼を言い、屋敷を辞していった。
士季が何か言いたげに手足をばたつかせる士載の口を抑えてひきずりながら、厭らしい笑いを浮かべて
「あいつ、今度の新人戦の剣技部門で間違いなく優勝しますよ。私市街戦に出場だし」と言って部屋へ帰っていった。
一抹の不安がよぎる。
ついでに士季も一刀様の前と私の前とのその落差はどうにかならないのか。
2月11日
退庁後、元直を捕まえて飲みながら姜維の件を相談してみた。
「一刀様は(姜維が男だということを)御存じないと思うのだが…」と言うと、
「え?まだ知られてなかったの、じゃあ(女だって事を)ばらしちゃえば?」
とあっさり返された。釈然とせずそれで良いのだろうかと思い巡らせ、私も酔っていたのだろう、
「姜維に服を着たまま、後ろから御寵愛を賜るように指導してやってもらえないだろうか…」
と呟くと仲達はそういうのが好きなのねぇ!と爆笑された。
(姜維の為を思えば)仕方が無いだろうと怒ると(それが貴女の性癖なんだから)仕方無いわねぇ、と尚も笑われた。
元直の生温かい微笑が妙に腹立たしい。
説明 | ||
その後の、とある文官の日記です。 | ||
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コメント | ||
蜀の問題義姉妹がまた訪ねてくるぞwwwww(hongfire) 会話がかみ合ってねえwwwもう姜維と司馬懿両方とも同時に喰われちまった方が幸せなんじゃね?きっと親友になれると思うんだwww(zero) 恋姫の世界の軍師同士の会話ならありえるなwww(だめぱんだ♪) 全くかみ合ってないwwwwww(ミドリガメ) 勘違いが入り乱れてきたwwwwww(アルヤ) |
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