福さんと祭りの夜
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小さな山の長い階段を登っていくと

 

小さなお社に、小さな小さな神様が住んでいました

 

神様の名は「福」、小さな綿毛のような白い体と頭の上には紫色の花を咲かせ、真っ赤なハッピを着た

 

ワンパク大将のような神様です

 

小さな福さんは自分が住んでるお社の鳥居から街を見るのが大好きです

 

今日も街のほうをボンヤリ眺めていました

 

すると真下の方に人の姿見えます

 

福さんはうちに来たお客を眺めていました

 

お社にある賽銭箱にお金を入れるんじゃないかと思ったからです

 

福さんはお金も大好きです特に500円玉が好きです

 

金色で綺麗で大きくて街に降りた時に餡蜜を頼んだ時に100円だと沢山いるのに

 

500円だと一枚出したらくれるので、きっと500円玉は一番強いんだろう

 

福さんはそう思っているからです

 

そして賽銭箱の前にはひとりの女の子がいました

 

女の子は小さな声で言います

 

「神様私お願いを聞いてください、今日のお天気をどうか変えて欲しいんです、せっかくのお祭りの日に大雨なんてひどいと思いませんか」

 

「ですから神様大福様、一番入れたら喜ぶって言うの賽銭箱の中に入れますからこれどうか一つ!!」

 

言い終えると女の人は財布から500円玉を出し

 

賽銭箱に投げ込みました

 

そして女の子はゆっくりとおじぎして帰っていきました

 

福さんは帰ったのを見届けるとさっそく賽銭箱から500円玉を取り出しました

 

そして福は自分の子分である「子福」を呼びました

 

子福は小さな福さんより小さく、頭にもお花ではなく双葉があるだけです

 

福さんをじっと見つめていました

 

女の子のお願いを聞いてあげないのか?

 

子福は福さんにそう訴えかけました

 

福さんは子福をむんずと?まえ

 

愛車の狛犬を呼びました、福さん愛車の狛犬は空を駆け小さな角は闇夜を照らします

 

そして日が暮れるのを見届けると、福さんは子福を狛犬の頭に乗せ

 

自分は唐草模様の手ぬぐいをほっかむりすると、自分も狛犬の背に飛び乗りました

 

そして狛犬発進!

 

月が夜の闇をやんわり照らす中、少ない雲の合間を福さん一行が駆けていきました

 

ですが、その月明かりも見る見る影って行き暗くどんよりした雲に覆われました

 

雲がいっぱいの雨粒を含み今にも零しかねません

 

それを見ると福さんは雲の中に入っていきました

 

ごろごろどかーん

 

雷が雲いっぱいに響きその音は地上にまで響いていました

 

福さんが雷の方へ方へと進んでいくと

 

そこには大きく長い龍が空をかき混ぜ雲を濃くして雨粒でいっぱいにしていました

 

龍は近づいてきた福さん気づき声をかけました

 

「福の字、またこんなところで何をしてるんだ?」

 

龍はそう訊ねましたが、すぐに察しました

 

「人間に頼まれたのだな、」

 

その答えに福さんは大きく頷きました

 

「だけどオイラも雨を降らすのがお仕事なんでねはいそうですかって訳にはいかねーぞ」

 

お互い引く気はありませんですがまごまごしているとお祭りが始まってしまいます

 

こんな時って神様どうするか?

 

外国の神様は知りませんがココの神様は…

 

「いつもの奴で決着をつけるか!福の字!!」

 

そういうと力いっぱい龍は福さんに向かってきました

 

角を持ったもの同士の力比べ、そう角力(すもう)です

 

龍の掛け声に福さんは狛犬の上で大きくしこを踏みました

 

がらがらどこーん

 

ごろごろどかーん

 

下から人々が雲の様子を見ていると今までとは比べ物にならないほどの大きな雷が鳴り響きました

 

龍の鳴き声と

 

福さんと龍がぶちかましをした時の光は

 

雷として人たちに届いていました

 

空を見上げる人々の中にあのお社におまいりに来ていた女の子もいました

 

ぴかぴかどどーん

 

それを合図に雲いっぱいに含んだ雨が地面にいっぱい零れ落ちてきました

 

その場にいた人たちはお祭りは出来ないか、と思いましたが

 

そんな人たちの不安にやんわりと月明かりが照らしました

 

雨はいっぱい降りましたがそれは祭りの熱に火照った人たちへの打ち水様なものでした

 

雨がやむと大きな風が吹き、雲は見る見る消えていき

 

空には星と月が輝いていました

 

人たちはいっせいに祭りの準備に取り掛かりました

 

そんな中女の子は月の中に小さな何かが飛んでいるのに気づきました

 

それが福さんだと分かり女の子は大きく手を振ります、感謝の気持ちをいっぱい込めて

 

福さんは少し疲れていました

 

龍との角力は流石に堪えたようです

 

ですが、上では星が輝き、下では人が光を照らしている

 

この不思議な光景が不思議と好きだったりします

 

後ろの方からは同じ光景を眺めながら龍が付いてきました

 

龍も祭りの出す光、「花火」の音と光には「アレはオイラのまねっこだな」と

 

花火が夜空に咲き乱れるのを眺めていました

 

福さんは龍の仕事を邪魔した代わりに自分のお社に招き御神酒と好物の金鍔と大福をご馳走しました

 

そうして今年のこの日だけは人間に花を持たせてあげたのでした

 

明日はどうするかは知りませんが今日この夜だけは、この人間の作った夜をめでるのでした

 

 

 

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小さな福さんと女の子とお祭りと天気のお話
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綿毛小人 祭り 女の子 

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