銀魂で二次創作「土方、規制さる」(後篇)
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「・・・つまり、今の貴様は歩く猥褻物ということだ。えーと、その・・・困ったなエリザベス。俺は土○なんて卑猥な言葉は使えんぞ。そうだ。何か呼び方を決めよう。何がいい?う○こ。」

「おい、う○こって言ってるぞバカヅラ。」

俺は『ピー』ポ君の着ぐるみに入ったまま桂の後についてアジトへ向かっていた。

「バカヅラ?センスは悪くないが、幕府の犬ごときがヅラを名乗るには10年早いぞ。そうだな、お前は・・・フルーツう○こ侍というのはどうだ?カッコイイだろう。」

「どや顔で言っているところ悪いが、誰が何と言おうと土方十四郎だ。突然宇宙から上がりこんできた連中にどうこう言われる筋合いはねぇんだよ。」

「はいはい、お行儀の悪い言葉を使えばカッコイイと思っているのね。でもお母さん、フルーツう○こ侍ちゃんの名前が一番かっこいいと思うわ。親からもらった名前は大事にしなきゃバチがあたるわよ。死んだ父さんも・・・」

「人を中学2年生みたいに言うんじゃねぇよ!っていうか誰お父さんって?!」

言っている間に桂は油性ペンで着ぐるみにフルーツう○こ侍と書いちまった。俺は着ぐるみを着た上に、逃亡中の身の上で反撃も出来ず、ただ咥えていたマヨ○ーズを固く吸うだけだった。

 

[The Nameless Dog(土方、規制さる)(後編)]

 

「さぁ、ここを曲がればアジトだ。」

「おう。やっとついたのか。ったく、かぶき町のど真ん中にアジト構えるとはいい度胸だ。ほとぼりが冷めたら摘発してやるから覚悟しておけよ。」

「ここはあくまで規制反対派のアジトだ。攘夷志士の手掛かりなど塵ほどもありはせんぞ?っていうか、着ぐるみの中で○ヨネーズ啜るの止めてくれない?それ後でみんな着るんだから。『ピー』ポ君にマヨネー○の匂いついちゃうから!『ピー』ポ君の中がギトギトぐちょぐちょになっちゃうから!もうマヨ○ーズ啜り過ぎてさっきからヂューヂューうるさいんですけど?!何それ?鳴き声?『ピー』ポ君の鳴き声なの?!」

うるせぇ。

手前ぇら一般人にマヨネー○を奪われた人間の気持ちなんか解るか。

俺は桂に続いてアジトに入った。

 

「よし、もう安心だ。ここが我々のアジトだ。」

桂がそう言うと、天井に下げられた裸電球が点灯し、円卓を囲んだ規制反対派の面々が照らし出された。

「お前らは・・・!」

それは見知った顔ばかりだった。

「やはり来ましたか。本来は私と若お一人で充分なのですが・・・この際、手駒は多いに越したことがないでしょう。」「よい着ぐるみだな。ボクにも一つ作ってくれ。」

柳生道場の東條と、柳生九兵衛。

「いや、お前らなんでここにいるの?」

「今回の江戸条例の規制対象に、僕とお妙ちゃんとの間を引き裂きかねない内容が含まれているんだ。それと、なんか『工事』に必要な病院も取り締まられるらしい。あんな規則は到底受け入れられない。」

「若がそうおっしゃるなら、私はどこまでもお供するまでです。」

「いや、お前とはさっきかぶき町でばったり会ったはずだが・・・」

「あー・・・・いえ、その、カーテンのシャーってなる奴を買いに行ってたんですよ。」

「こんな夜中にか?というか、そのカーテンのシャーってなる奴持ってないじゃないか?」

「いえ、それはその・・・・」

なるほど、こいつは風俗店が行政指導されるのが嫌なわけか。

あれ?俺これ見逃していいの?警察官だよね?

「今回はとんだ災難でしたね。思いっきり規制対象として名指しされてましたから、来ると思ってました。」

万屋の新八。

こいつは、なんとかいうアイドルの歌詞が修正くらいそうなことを気にしているんだろう。

・・・いや、下らないことは思い出さずにおこう。

っていうか、俺がいち早く気がついたのは残りの一人だ。

「よぉ、やっぱり来たか。トシ!」

「近藤さん!?あんた何やってるんだよ!?真撰組の局長が指名手配犯と一緒に役所に喧嘩売るようなことしちゃマズイだろ?!」

「心配するな。今の俺はただの愛の狩人として参加している。」

「いや、それストーカーだから。警察官どころか犯罪者だぞソレ。」

「トシ・・・愛にはいろんな形があっていいはずだ。お前だって、人間なのに土方十四郎だろ?俺はそれを責めるつもりは無い。」

「殆どストーカーゴリラなのに人間と言い張る奴に言われたくねぇよ。っていうか、近藤さん、あんたの場合は江戸条例じゃなくてもアウトだろ。」

 

「うむ、では、顔合わせが済んだ所で、早速、我々が今後どのように活動していくかを教えようと思う。」

桂はそう言うと、円卓の上に江戸の地図を置いた。

「まぁ、お前達にまどろっこしい計画を立案したところで、却ってそれぞれの実力を発揮できなくしてしまうだけだろう。そこで、俺が提案するのは邀撃だ。この条例案を提出し、各所に圧力をかけて強引に事を進めている連中の所へいって直談判をする。正直なところ、俺は今回の条例が誰が何のために提出したものなのかサッパリ解らん。見えない敵と戦うくらいなら、一度敵の正体を見定めるために、その懐に入り込んでやろうではないか。」

桂は、地図に赤く丸をした。

江戸の行政区画の一角にあるそのビルは、先日から地球を訪れているションダイシラハロプ星人やチャンスアグネが滞在している場所だった。なるほど、桂め、近藤さんをノせて情報を引き出しやがったな。

「ここにいる皆は、誰もが今回の条例でかけがえの無いものを奪われようとしている。私はそう理解している。」

「あー、いや、ちょっと待て。桂、お前は一体何のためにこんなことをしているんだ?」

「俺か?俺は・・・アレだよ、その・・・別にそういうの気にしなくていいじゃん。」

「そうだよな、俺もそれ聞いてなかったわ。普段は敵同士なのにこうして組んでるんだ。教えてくれよ、桂。」

「仕方が無い・・・。今回の条例で、かまっ娘倶楽部が行政指導される可能性が高いのだ。そうなれば、最悪の場合、西郷殿の親権が奪われる恐れもあるのだ。俺達、攘夷志士にとっては西郷殿は偉大な先輩であり、恩人も同然。この桂小太郎、恩人の危機を見過ごすことは出来なかった。それだけの話だ。」

「それ別に隠すようなことじゃないですよ。立派な理由じゃないですか、桂さん。」

「べ、別に、人妻ものの同人誌が買えなくなりそうだから言ってるんじゃないんだからね!」

「いや、ツンデレの意味が解りませんし、何か大事なことバラしちゃってますよ。」

「なんだ、お前も変態じゃないか。気にするなよ。ここにいるのはその意味での同志だからさ。」

「ちょっ、俺巻き込むの止めてくんない?!」

「そうか?『ピー』ポ君の着ぐるみ着て街を出歩いてるトシもなかなかだと思うがな。」

「いや、これ着ろって言ったのアンタだから。」

「いや、僕は素敵だと思うぞ。そのデザイン。」

「九兵衛さん、女の子が堂々と興味を持つようなもんじゃないと思うけど・・・。」

たしなめた新八ののど元に切っ先が現れた。九兵衛のものだ。相変わらず生意気な剣速だ。

「勘違いしないで貰おう、新八君。僕は男の娘だ。」

切っ先から九兵衛の気迫を嫌というほど浴びた新八は顔を引きつらせた。

「も、もういいです。すみませんでした。ややこしくなるので、話を先に進めてください、桂さん。」

「うむ。それじゃ、早速行こうか。」

「行こうかって・・・今からですか?!」

「そうだが、何か異論があるのか?」

「いや、こんな夜中に行ったって不審者扱いされるだけですよ?!」

新八のもっともな反論を聞いた一堂は「何をいまさら」といった顔をしたが、お人よしの近藤さんが説明に入った。

「心配無用だ、新八君!」

「近藤さん?」

「俺達もうとっくに不審者扱いされてるから。」

「お前に言われると物凄く腹立つわ!!何?!これそういう集まりだったの?!」

「まぁ、そう卑屈になるな新八君。テロリストに狩人、変態と男の娘と自称侍のアイドルヲタクと土○とくれば、立派な不審者集団だ。勇者と賢者だらけのパーティなんてルイーダの酒場でもこんなオールスター軍団集まらないよ?」

「いや、この期に及んで狩人を自称されても・・・っていうか、そんな遊び人以下というよりカンダタ寄りのモンスター軍団で大丈夫なんですか?」

「なら、君はここに残れ。ここから先は俺達だけで行く。」

桂はそう言うと、振り返らずに出口へ向かおうとした。

「そんな、ここまで来たら引き返せませんよ。」

言いながら、新八は桂の後に続こうとしたが「直接的な言い方をせねば解らんか?お前では足手まといだと言っているんだ。」「桂さん!?」桂はそれ以上何も言わずに出て行く。「ちょっと待ってくださいよ!一方的に・・・・」「新八君、悪いが、俺も桂が正しいと思う。悪いことは言わない、今回は俺達が戻るのを待っていてくれ。」近藤さんは新八を留めると、やはり桂に続いて出て行った。

「・・・そんな・・・僕じゃ足手まといなんて・・・」

九兵衛と東條も出て行き、最後に残った俺もアジトを後にした。

 

議員達のところへ殴り込むからには、当然、護衛の連中と衝突になる。

だが、喧嘩だけなら俺達は勇者で賢者だ。道を切り開くため、大切なものを取り戻すために各々が各々の前に立ちふさがるものを斬り捨てて進んでいった。

「ふん、まさか君たちと共闘することになろうとはな。」

小柄な九兵衛は、呼吸を乱す様子もなく、刀を鞘に納めた。

連中の泊まっているホテルの最上階。

それぞれに最上階フロアを目指した俺達は欠けることなく合流を果たしていた。

「嫌なら帰れ。俺は一人でも充分だ。っていうか、お前は本当に帰るか?東條。」

鼻血をたらして呼吸を乱しまくった東條がハァハァ言いながら階段を上がってきた。

「お気遣い結構。若と一緒にホテルに入っていると思うと、つい。」

「お前本当に帰ってくんない?そういうのと一緒に居ると誤解されるから!」

「さて、このフロアの一番奥、そこが奴らの部屋だ。準備はいいな?」

桂はそう言うと、最早さえぎるものの居なくなった通路を堂々と歩き始めた。

さて、こんなふざけた規制をゴリ押しした連中といよいよご対面か・・・。

[newpage]

「・・・で、部屋に引き篭もってるアルか。いきり立って出て行ってもやっぱり新八は新八アルな。」

万屋。お妙からの電話をとっている神楽の話を、ソファーに寝転がっていた銀時は聞いていた。

「銀ちゃん?居るアル。相変わらず家でゴロゴロしてるアル。とんだ宿六アル。え?代わるアルか?」

神楽は受話器を肩にはさんだまま振り返る。

「銀ちゃん、姐御が電話代われって。」

すると、銀時はもう玄関へ向かっていた。

「どこいくアルか?」

「新八んとこだ。その件で電話したんだろ?直ぐ行くって言っといてくれ。」

「あいよ。姐御、銀ちゃんそっち行くって。」

 

「ったく、こんなこったろうと思ったぜ。」

「ごめんなさいね。でも、相等応えたみたいで、帰ってきてからずっと部屋を出ようとしないの。こういうのは男同士のほうがいいんじゃないかと思って・・・。」

面倒くさそうに頭をかく銀時を新八の部屋の前まで案内したお妙は食事を載せたお盆を部屋の前に置いた。

「新ちゃん、ご飯、ここに置いておくから。それと、銀さんが来てくれたわよ。」

それじゃ、お願いしますね。そう言い残して、お妙は廊下を歩いていった。

 

「・・・よぉ、ぱっつぁん。お妙がダークマター持ってきてくれたぞ。あんまし心配かける前に顔だけでも見せてやれよ。」

廊下の壁に寄りかかりながら、銀時は新八の部屋の障子戸に向けて語りかける。

「・・・放って置いてください。」

「どうしたんだよ?条例に反対しに行ったんだろ?」

「・・・僕の言うことなんて誰にも相手にされませんでした。規制に反対して直談判に行った桂さんや近藤さん達から足手まといだなんて言われて、トボトボ帰って来ちゃったんですよ、僕は。」

「何でぇ、お前は寺門通の規制反対に行ったんだろ?お前以外に誰がそれを訴えられるんだよ?」

「僕もそう思ってました。思ってましたけど、それでも、僕は相手にしてもらえなかった。」

「それでいいのか?」

「良くありませんよ!良いわけ無いじゃないですか!僕は誰よりもお通ちゃんを・・・・!」

「それ、どこまで言えたんだ?」

「え?」

「お前が寺門通の何を、どの部分をどれだけ素晴らしいと思っているのか・・・具体的に奴らに言えたのかって聞いてるんだよ。」

「そんなの、全部に決まってるじゃないですか。僕は・・・」

「全部?なるほどな。じゃあ駄目だ。ぱっつぁん、悪いがヅラやゴリラと同じことを言わせて貰うぜ。」

「銀さんまでそんなことを言うんですか・・・・?寺門通を好きじゃいけないんですか?人から駄目と言われたら、そうやって何でも諦めなければいけないんですか?多数決で決められた意見が当たり前に少数派を蹴散らしてしまうような、そんな世の中なら、僕は一生この部屋を出なくて良いです!」

鬱積していた思いを一気にぶちまけた新八は、言い終わると軽く嗚咽した。

障子越しに新八の嗚咽を聞いた銀時は、天然パーマを掻くと、ため息をついた。

 

「ぱっつぁんよう、俺は寺門通が好きなことが駄目だと言ってるわけじゃない。世の中には、ただ好きなだけじゃ通用しねぇ一線ってもんがあると言ってるんだ。」

 

「世の中ってのはな、限りなく広がっているわけじゃない。天人が土足で上がりこんできてからは、むしろ狭いくらいだ。一歩動けば誰かにぶつかるくらいに混み合ってる。だから、誰かが何かを動かそうとした時に、他の誰かの肩身が狭くなったり圧迫されたりするのは道理ってもんじゃねぇか。それでも、誰かが何かを動かし続けていないと、世の中は立ち行かねぇだろ?だから、互いに意見を言い合って相談したり、たまには殴り合いの喧嘩をしたりして、軋轢まくってやっとこ世の中を動かしていくんだよ。」

 

「アイドルの親衛隊としてのお前の立場が侵されているってのは、はたから見てても解る。だがな、そのことが即ち、動きを止める理由にはならないんだよ。相手の動きを止めるには、それだけの説得力を持った意見を言わなきゃ駄目だ。喧嘩してる最中に痛いって叫んだってどうにもならねぇだろ?反撃しなきゃな。趣味だとか、生き甲斐だとか、綺麗ごと並べて美化したところでよぉ、所詮は実社会の問題の前じゃ路傍の石もいいところだ。言っちまえばさ、自分の趣味や信念なんてものが、無根拠に社会に認められるなんて思っちゃいけねぇってことだ。そういうものは、周りの人間に解ってもらってやっと認められるんだ。その為の努力もしないで、ただ好きだから尊重しろってのはよぉ、虫が良すぎねぇか?ぱっつぁん。」

 

新八は何も答えなかった。

 

「・・・まぁ、そうやって部屋の中で一人で愉しんでる分にはそれでいいのかもしれねぇな。だがよ、俺達はもう既に一発食らわされてるじゃねぇか。こいつを奪われて、な。」

 

銀時は腰に差していた洞爺湖を新八の部屋に投げ込んだ。畳の上に木刀が落ちる鈍い音がした。

 

「いきなり宇宙からやってきた天人の都合で、侍(おれたち)は刀を失っちまった。その時だって、抵抗はしたさ。だが、俺達の言葉も拳も、ついに届かなかった。情けねぇ話さ。だがな、まだ侍は滅んじゃいねぇだろ?柳生の道場や、真撰組や、お前んところの道場とかさ・・・そういうところに、まだ侍の魂が生き残ってるじゃねぇか?ただ好きで侍やってた奴らが今どれだけ残ってる?生き残って頑固に侍やってるのは、手前ぇの武士道を貫いて突っ張って生きてきたバカだけじゃねぇか。」

 

「寺門通親衛隊長としての、お前の武士道は何だ?お前が伝えたいことは、お前が伝えるべき寺門通の魅力って奴はなんだ?誰にも侵害されたくない、規制されたくない寺門通の魅力って何だ?それが言えなきゃ、規制をかけてくる奴らや、規制に賛成する奴らには寺門通のどこが大切にされるべきなのかは伝わらないぜ?」

 

「その辺がフワフワしてるうちは、やっぱりお前は中途半端な足手まといなんだよ。ヅラとゴリラが言っていたのは多分、そういうことだ。」

 

「・・・銀さん、僕は・・・まだ解りません。お通ちゃんは、素晴らしすぎて、何からどう説明して良いか、訴えていったら良いのか整理がつかないですよ・・・。」

 

図星をつかれた新八の声は震え、掠れていた。

 

「だろうよ。好きであればあるほど、大体そうなるんだ。」

 

「どうしたら、いいんですかね・・・。僕、もう何をしていいか解らなくなっちゃいました・・・。」

 

「部屋ん中でよぉ、何か解るまで死ぬほどCD聞きまくって、写真集でもビデオでもなんでも見まくったらいいさ。素振りみてぇなもんでさ、そのうち、何か大切だと思うものが見えてくるんじゃねぇの?なんつーか、さ、修行っていうの?ま、俺は見ての通りのハンパ者だから偉そうなことは言えねぇけど、俺の愛読書には昔っからそう描いてあんだよ。」

 

「・・・流石、ジャンプ歴二十年は伊達じゃないですね。」

 

新八は振り返らないようにヘッドフォンを探しながら、障子の向こうに居る銀時に言った。

 

「さぁな。それじゃ、俺帰るわ。洞爺湖(そいつ)は貸しといてやるから、ちゃんと暗黒物質片付けとけよ。」

 

障子の向こうで、背中越しに銀時が去って行った。

 

「僕の・・・武士道・・・!」

 

 

 

 

それから数時間が過ぎた、夜明け前、洞爺湖を腰に差した新八は部屋を出て行った。

公園の広場で親衛隊を召集し、桂たちが殴り込んだホテルへ向けて進撃を開始した。

「ちょ・・・新ちゃん、大丈夫なのかい?」

状況を見た八兵衛が心配そうに尋ねる。

「大丈夫。今度は奴らに通じる言葉で、お通ちゃんの魅力を訴えることが出来るよ。」

「今日の新ちゃんは、何か頼もしいな。何かあったのかい?」

「別に。ただちょっと、精神と時の部屋に篭ってきた。」

[newpage]

ホテルに到着した親衛隊が目撃したのは、破壊されつくしたホテルのエントランスフロアだった。

「うわ・・・どういう暴れかたしたらこうなるんだ?!」

「よぉ、奇遇だな、こんなところで。」

「沖田さん!これ、どういうことなんです?」

「さぁな。真撰組(おれたち)も通報を受けて駆けつけたところでぃ。」

直後、遥か頭上から轟音がした。

「上・・・まさか、桂さんたち!?」

上へ登る階段を走り始めた新八と沖田に続いて、親衛隊と真撰組がホテルに突入を始めた。

 

「桂さん!近藤さん!」

彼らを探しながら最上階までやってきた親衛隊と真撰組が目にしたのは、4m弱あるロボット3体と戦う近藤たちであった。

既に数時間戦い続けている彼らは、一様に消耗し切っていた。

 

「これは・・・っ!?話をしにきた筈じゃなかったんですか!?」

 

「こいつら最初から話し合うつもりなんか無かったんだよ!そうだろ?チャンスアグネ!」

 

土○のにらみつける方に、中年を過ぎつつある女が立っていた。

 

「こいつらはな、こうやって他人の星に難癖をつけては、風紀を正すとか、正しい倫理を教授するとか言って自分達の文化とルールを押し付けながら徐々に相手の星を自分達の社会の風下に置いちまうんだよ。」

 

くだらねぇ。そう言わんばかりに土○は唾を吐き捨てた。

 

「相手の提示したルールにだけ従っているうちに、僕達は彼らの奴隷にされてしまうんだ!」

 

「外国の言葉や文化を理解して輸入するインテリの中には、海外文化こそ優れていて、正しく清潔なものであると信じ込んで、彼らに恭順することで自分達も外国人、つまり天人になれるかのように勘違いする人間が少なからずいるのです!そういう似非インテリが私達のような『侍』を古いとか野蛮とか言って、地球人自身の手で排斥していったのです!」

 

「新八君、ションダイシラハロプ星人は俺達に侍や刀が恥ずかしいものだと思い込ませて、天人に都合の良い雰囲気を作り出して食いモノにしようとしてたんだ!」

 

○方たちは、ロボットと戦いながら口々に天人の罪状を叫んでいく。

それを聞いていたチャンスアグネがついに口を開いた。

 

「あなた達のような俗悪な人間には話しが通じないのです。あなた達の基準に合わせてこちらの倫理基準を下げるわけにはいかないのです。」

 

「なんだって?!それじゃ、最初から僕達を粛清するつもりだったんですか?!」

 

「違います。それは誤解です。私たちの言う倫理を受け入れてくれれば、あなた達を追い出そうとは思いません。ともに良い社会を作っていこうと思っています。」

 

「そんな、あまりにも一方的だ!それに、こんなロボットまで用意して、これじゃ力づくで言うことを聞かせている、武力侵攻と変わらないじゃないですか!?」

 

「このロボットは、私達の倫理と正義を護るためのロボットです。それに、私達の正義と倫理は多数決によって決められた民主的な意見、総意です。子どもを護ること、子どものいるところから俗悪なものを排除することに賛成している、それが良いことだと思う、そういう意思を、あなた達に否定できますか?」

 

「そうやって、誰もが否定しづらい正論を隠れ蓑にして力を振りかざすのは卑怯ですよ!すさんだ心に武器は危険なんです!」

 

チャンスアグネは大きくため息をついた。度し難い、困った人を見るような目で新八たちを見る。

それは酷く傷つけられる目つきであったが、新八は、我を通す、通してきた人間は常にこういう目で見られながら生きてきたことを知っていたし、それでも貫き通したいものが、今の新八にはある。だから、動じなかった。

呆れたというように、あからさまなため息をついたチャンスアグネの代わりに、ションダイシラハロプ星人が前に出てきた。

 

「そうだ。これは戦いだよ。世の中は全て、自分の意見と他の意見とを戦わせながら動いていくんだよ。私達は何かをするにつけ、誰かを傷つけることを承知しているし、そうすることで誰かから非難されたり誹謗中傷を受けることも覚悟をしている。それが出来ない惰弱な奴に、意見を言う権利は無い!戦う気概も傷つく勇気も無い奴は黙っていろ!」

 

チャンスアグネから打って変わって、高圧的な態度で畳み掛けてきたその声を正面から受け止めるように仁王立ちしていた新八は、聞き終えると指先でメガネを押し上げ、洞爺湖を抜いた右手を上げた。

 

「寺門通親衛隊を甘く見るなよ!行くぞお前ら!俺達のヲタ芸を見せてやれ!!」

 

「何を訳のわからないことを・・・不愉快だ、吹き飛ばせ!」

 

「させないぞ!僕は、自分の居場所、自分の信念を貫くために戦う、どこまでだって軋轢まくってやるんだ!」

洞爺湖を構えた新八に向かって、巨大なロボットが襲い掛かってきた。

「逃げろ!新八君!君に敵う相手じゃないぞ!?」

咄嗟に新八をかばおうとした近藤だが、他のロボットに阻まれてしまう。

 

 

 

 

姿勢を極力低く落として、全身のバネに瞬発力を蓄え、爆発させる。

次の瞬間、まるで弾丸のように俺の体はそのロボットへ向けて弾かれ、平らに突き出した刀が新八と親衛隊に襲い掛かったロボットの首元に吸い込まれていく。俺は鋼鉄の硬い手ごたえを無視して、ロボットの首を貫いた刀を真横になぎ払った。

「土○さん・・・ッ!」

新八を突き飛ばして後ろに追いやると、そのまま残りのロボットと天人の位置を確認する。奴らは護身用の銃を持っているはずだ。

 

「ト○・・・!」

「近藤さん。ガキにあんな見栄切られたんじゃ、俺達がこんなポンコツに梃子摺るわけにもいかないだろう。」

「その通りだ・・・!」

勢いを取り戻した俺達は、そのままロボットを破壊した。

 

そして

 

「っく・・・・!生意気なサル共め!お前らの相手は同じサルがお似合いだ!!」

 

一人の天人が合図すると、部屋中の扉が空き、そこから次々にガラの悪そうな連中が入ってきた。

 

「やはりお前が暗躍していたか。高杉!」

一番最後に部屋に入ってきた人影を見て桂が叫んだ。

「・・・ふん、やっぱりお前らが噛み付いてきたか、桂。」

「どういうことだ?同じ地球人がションダイシラハロプ星人の味方だと・・・?!」

九兵衛が当惑したうめき声を漏らした。俺も同じ気分だが、こいつはそれをやっても不思議はない。高杉晋助は春雨ともつるんでやがる。

「最近、人妻ものの色本の値段が不自然に上がったと思っていたが・・・なるほど、貴様が裏で手を引いていたわけだな。大方、禁酒法のときの密造酒のように、密造エロ本で暴利を貪ろうとしていたのであろう?そうはさせんぞ!」

「お前は結局そこが問題なのかよ!?」

「クククッ、お見通しってわけかい。」

「マジで?!そんな下らない理由で俺の名前が駄目になったの?!っていうか関係無くねぇか???」

「あー?・・・ああ、あんたか。土方、お前の名前がションダイシラハロプ星の言葉で太陽族だってのは事実だぜ?疑うんなら後で字引でも見て調べてみな。」

「マジかよ・・・」

 

と、言ったところで、改めて状況を確認してみる。

戦力は、突入組みと総悟が連れて来た真撰組の隊士が20名。さっきから変なパフォーマンスを続けているやかましい親衛隊は役に立たないだろう。ともあれ放っておくわけにもいかねぇ・・・。足手まといだ。

後は、俺達だが・・・正直なところ、もう戦う力も残っていない。夜中から夜明けまで戦い通しだ。クソ硬いロボットをぶっ壊したところで体力の限界って奴だ。

相手の戦力は、天人と地球人の混成がざっと見て100近く・・・オマケに高杉とその取り巻きは腕が立つ。こいつらを総悟に押し付けるわけにもいかねぇし、流石にちょっとまずいか・・・。

「さて、それじゃ、今度こそさよならだな、桂。」

高杉の言葉と共に、100人近い敵が一斉に襲い掛かってきた。

「くそ!真撰組の意地を見せるぞ!続け!」

「よしお前ぇら、一人5人斬ればクリアだ。斬れなかったら俺が6回殺してやるから覚悟してかかれ!」

近藤さんと総悟とともに俺は切り込んで言ったが、部屋の一角で人間が吹き飛ばされるのが見えた。

「何だ?!」

土煙の向こうから、二つの人影が姿を現す。

「あー、ちょっと散歩してたらイカした音楽が聞こえてきたから、なんとなくホテルの最上階まで来て見たら、そいつらをボコボコにしようとしている連中がいたアルよ。びっくりしてぶっ飛ばしてしまったネ。」

「よぉー新八。木刀、返してもらいに来たわ。」

「神楽ちゃん、銀さん!!」

新八が木刀を銀時のほうへ放り投げる。

「な、たった二人?増援のつもりか?何者だ!!」

天人が上ずった声を出す。

銀時は木刀を受け取ると、その切っ先を真っ直ぐ天人に向けて言った。

「俺か?俺はな、正義の味方だ!」

「正義の味方だと?ならばなぜ、こやつらの味方をする?」

「おいアンタ、覆面ヒーローがなんで覆面してるか知ってるか?」

「はぁ?そんなものは、後ろ暗い部分があるか、素顔を晒す度胸がないからに決まっているだろう!?」

 

銀時は「わかってねぇなぁ」といいながら頭を掻いた。

 

「正義の味方ってのはな、正義そのものじゃねぇんだよ。正義をなす人の味方、助っ人なんだよ。正しいことをしていれば、必ず誰かが助けてくれる。正しいことをしている人を見たら、誰もいい、助けてやるんだ。つまり、正義の味方ってのは誰もがなれるし、ならなきゃいけないんだよ。だから顔を隠すんだ。誰でもいいように、な。つまりよぉ、堂々と手前ぇの正義を押し付けるような奴は、正義の味方でもなんでもねぇってことだ!!」

 

言い終わると、銀時と神楽が反撃を開始した。

やれやれ・・・あの野郎が出てきたんじゃ、俺も情けねぇところは見せられねぇな。

 

[newpage]

激闘の末、なんとか鬼兵隊を撃退した俺達は、ションダイシラハロプ星人と春雨・鬼兵隊との関係を暴いた。

かつて江戸で一世を風靡した宇宙タレントのチャンスアグネを大使として派遣し、目当ての星を精神的に屈服させて風下に置き、ついには植民地のようにしてしまうションダイシラハロプ星人のやり口は、「え」せ倫理で「コ」レは駄目だと脅迫して子どもを「ち」びらせる。通称ECCジュニアという銀河連邦法で違法とされる侵略であったことが判明。そのまま逮捕されたことで、この馬鹿げた江戸条例は無効となり、俺は名前とマヨネーズを取り戻したのだった。

 

 

「あー、山崎、ちょっとツラ貸せ。」

「え”・・・いや、あのちょっと俺、忙しいんですけど・・・」

「いいじゃねぇか。時間は取らせねぇから。」

一発ぶん殴ると抵抗を止めた山崎をつれて、屯所の調理室へ連れて行った俺は、山崎を座らせると、ここ最近の研究成果をテーブルの上に展開した。

「これを食ってみろ。」

「い・・・いや、俺、腹の調子が・・・・」

「そうか。腹の具合が悪いならコレだな。」

「あの、どれもマヨネーズの塊にしか見えないんですけど・・・?」

「失礼な奴だな。これはマヨネーズに正露丸の粉末を練り込んだタルトで、マヨネーズの整腸作用を最大限に引き出した料理だ。美味いぞ。」

「い、いやいやいや・・・それ整腸作用って殆ど正露丸じゃないですか?!正露丸飲みますから、ラッパのマークでいいですから?!うわぁぁぁーーーーーッ!?」

 

山崎は大人しくなった。腹痛が治まったらしい。

今回の事件で、俺は理解してもらうことの大切さを学んだ。

あまり自分の事をあーだこーだと言って回るのは好きじゃないが、時には、誰かに何かを訴えることも必要なようである。

色々考えてみたが、今の俺がその素晴らしさを訴えるべきものが一つあった。

 

 

「あ!山崎!?お前、どうしたんだこんなところで・・・畜生、誰にやられたんだ!?」

調理室で事切れていた山崎を発見した近藤は、山崎を抱き起こしながら周囲を見回した。

「見てくだせぇ近藤さん。山崎の口、マヨネーズだらけでさぁ。こりゃー土方の仕業にちげぇねぇや。近藤さん、ちょっと土方斬ってきますぜ。」

「トシが?なんでこんなことを?」

「最近、マヨネーズの素晴らしさを世に知らせる伝道師になるとかで、犬のえさを押し付けて回ってるって話です。こりゃもう立派なテロリストですよ。殺っちまいやしょう。」

それを聞いた近藤は小さくため息をついた。

「まぁ、いいんじゃないか。そういう部分もあった方が。トシにはな。放っておけよ。そのうちまたいつもの奴に戻るさ。」

近藤は笑いながら調理室を後にした。

総悟は舌打ちをすると、後に続いた。

 

 

『The Nameless Dog(土方、規制さる)』

おわり

説明
銀魂で二次創作。真撰組「鬼の副長」土方十○郎は、ある朝突然、江戸条例によって、名前とマヨ○ーズを放送禁止用語にされた上に隊を追われてしまう。居場所を失った土○を拾ったのは、条例反対派の同士を募っていた桂小太郎だった。「土●規制」編、後編です。※追記:東條→東城ですね(汗。
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