おっさんPとアイドル(春香編)
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「プロデューサーさん。お菓子ですよ! お菓子! お菓子を作ってきましたので食べませんか?」

「お、春香の手作りか。春香の作るお菓子は美味しいからな」

「えへへ〜♪」

 私のプロデューサーさん。皆からはおじさん、だなんて呼ばれてたりするけど、素敵な人です。

 初めは大丈夫かな。って思っていたけど、プロデューサーさんと一緒に居る内にそんな考えは吹き飛んでいった。

 優しくて、誰よりも私達のことを考えてくれている人。私達を優先してくれる人――そんな人だったから。

「今日のは特に自信がありますよー」

 最近ではよくプロデューサーさんにお菓子を作ってきている。

 こんなことで私の気持ちが伝わるだなんて思っていないけど、それでも少しでもこの人と居たいから。

「すぐに準備をしますから――ね゛っ!?」

「春香っ!?」

 目の前がスローモーションで見える。

 私がゆっくりと倒れていって、せっかく作ったお菓子が宙を舞っている。

 そんなぁ……せっかくプロデューサーさんに食べてもらおうって思ってたのに、このままじゃお菓子が粉々に崩れてしまう。

「むぎゅっ」

 地面にぶつかっちゃう。そう思って目を瞑っていたけど、一向にその気配がない。

 その代わりに何か温かい感触を感じる。なんというか、誰かに支えられているような……

「怪我はないか?」

「ふぇ……?」

 声がする方をそっと見上げると、そこにはプロデューサーさんが……

「ぷ、ぷぷ、プロデューサーさんっ!?」

 どうしてプロデューサーさんが……と、ということは、この温かい感触はプロデューサーさんということで。

「す、すす、すいませんプロデューサーさんっ!」

 すぐさまバッ、と離れる。プロデューサーさんから離れるのは少しだけ寂しいけど、それよりも恥ずかしさが勝っているから。

「おっと、大丈夫か? ほんと、春香はよく転ぶな」

「すいません……」

 プロデューサーさんの言葉にシュンとなってしまう。気をつけてはいるんだけど、何故か転んでしまうんです。

 それに、せっかく作ったお菓子も今ので粉々になってるよね?

「別に謝る必要はないさ。それが春香の魅力で可愛いところなんだから」

「か、可愛い……ですか?」

 そんなこと、転ぶのが可愛いってそんなことありませんよ。ただの迷惑なだけで――

「俺が可愛いって言ってるんだから、それでいいだろ。それよりも早くお菓子を食べよう」

「で、でも……」

 きっとお菓子は粉々に崩れている。味に変わりはないとはいえ、やっぱり綺麗な状態のを食べて欲しい。

 私の想いの籠ったお菓子だから。だからこそ、余計に綺麗なモノを食べて欲しいと思うんです。

「春香がせっかく作ってくれたんだ。食べないのは失礼だろ?」

「……プロデューサーさん」

 あぁ、この人は本当に優しい。どうしてそこまで優しいのだろうか?

 この人がこんなだから、私はこの人に恋心を抱いてしまう。年齢は離れているけど、それでも恋心を抱いてしまう。

「はいっ♪ 一緒にお菓子を食べましょう」

「あぁ、やっぱり春香は笑顔が似合うな。可愛いのは女の子の特権なんだから自信を持て」

「プロデューサーさんっ!」

 この人はどうして、そんな台詞をサラッと言えるのだろうか? こんなことばかり言われてたらおかしくなっちゃうよ。

「どうした? 顔が赤いけど、熱でもあるのか?」

「違いますよもう……」

 顔が熱いのも、照れてしまうのも全てプロデューサーさんが悪いんですよ?

 私にこんな気持ちを抱かせるあなたが悪いんです。女の子をメロメロにさせてしまうあなたが悪いんですよ。

「プロデューサーさんのばかぁ……」

「何でだよ。それよりも、相変わらず美味そうなお菓子だな」

「……でも、粉々です」

「関係ないだろ。春香が作ってくれた――それで十分だからな」

「プロデューサーさん……」

 私の欲しい言葉を投げかけてくれる。人の心が読めるのかなってくらいに的確に。

 ――あ、でもやっぱり心は読めてないのかな? だって、それなら私のこの気持ちも読まれてることになるから。

 うん、読まれてたら困るから、読まれてないことにしよう。私はアイドルで彼はプロデューサーなんだから。

 

 だけど――それでもいつかは、私のこの気持ちをプロデューサーさんに伝えたい。

 今は無理でも、それでもこの想いを伝えたい。

 ですからプロデューサーさん。今は無理ですけど、いつかは私の気持ちを伝えさせてくださいね。

 

『あなたが好き』だという私のこの想いを。

 

説明
はい、今度は春香さんです。
相変わらずの短編となってますが気にしないでくださいな。
そして、あまりおっさんである意味が・・・
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