新訳 真紅の鬼神 第一四鬼 〜虎牢関の戦い 後編〜
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連合軍から一刀が出てきた。

その事実は焔達を驚愕させた。

 

「なんで、北郷が出てくるんや!まさか裏切ったんや!?」

「・・・・」

 

霞は一刀が裏切ったと激昂し、今にも飛び出しそうだ。

それに比べてねねは静かにそれを見ていた。

 

「霞殿、落ち着かれよ。北郷殿には何度か会う機会があったが、約束を破る男ではない」

「そないな事言ったって、戦う気満々やないか!」

「もし、そうであったとしても・・・殿は負けはせぬ」

 

騰から出される威圧感に霞は黙る。

それ程も迄に騰の焔に対する忠誠心と信頼は高い。

 

「騰の言う通りなのですぞ。ねねには分かりませんが北郷にはきっと何か考えでもあるのですぞ、そうでなくては焔殿に挑もうなど馬鹿な事はしませんからな」

「・・・・焔・・・勝つ。心配ない・・・」

 

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「一刀・・・・」

「勘違いしないでくれよ、約束は裏切ってない」

「どいうことだ?」

「俺の仲間が洛陽に入ってるんだ。」

 

なるほど、それで時間稼ぎって奴か・・・

 

「それに、自惚れかもしれないけど、焔を相手に戦えるのは『今は』俺しかいないと思ってね」

「クククッちげぇねぇな」

 

連合の中で俺とまともに打ち合えるのは一刀くらいだ。

確かに強い奴等はいるが、俺には及ばないだろう。

 

一刀は白椿の柄に手をかけ、ゆっくりと鞘から抜く。

その白刃が陽に光を浴び煌めく。

 

「・・・・」

 

焔も鬼焔を構える。

真紅の刃が鈍く光る。

 

多くの将兵が見守る中、二人は極限まで集中力を高める。

 

静寂の後、最初に動いたのは焔だった。

 

「ハァァァ!!」

 

焔の鬼焔が空気を切り裂いて一刀を襲う。

 

ドンッ

 

「・・・ッ」

 

速いっ

 

ギャリン!!!

 

「なっ!?」

「ハァッ!!」

 

スパッ!!

何かが切れる音と共に血が流れる。

 

オォォオオオオオオ!!!!!

 

連合軍からは歓声をが上がる。

 

「予想以上だよ・・・一刀」

 

まさか、俺の鬼焔を真っ向から受け止めず刀を斜めにし、上手く力の向く

 

方向をコントロールして刃を滑らせ、去なす。

それによって出来た僅かな隙に日本刀特有の斬れ味と返しの速さを持って切り裂く。それをあの一瞬でする。

これをするのは並み大抵のことじゃない。

 

「ったく・・・お前最高だよ」

 

改めて一刀の強さを感じる。

あれは相当鍛練してる・・・

一刀から放たれる闘気を受けながらそう思う。

 

「だりゃぁぁ!!」

「フンッ!」

 

同じ手は食らわん!!

 

「チッ・・・セヤッ!!」

 

去なせないと分かったら直ぐに連撃に変えた。

その切り替えの速さも文句が無い!

だけど・・・・

 

ガッガッガッ!

 

一刀の連撃を受けとめる。

 

「・・・・・ッァアアア!!!」

 

ブォン!!

 

「なっ!?」

 

焔の一撃で一刀は馬ごと吹き飛ばされる。

 

だが・・・・俺には勝てねぇよ

 

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雰囲気が変わった?

と思った瞬間に俺は弾き飛ばされていた。

 

「くっ・・・」

 

なんとか、態勢を持ち直した。

バッと直ぐに顔をあげ焔を確認する。

 

「ッ―――――」

 

身体中に嫌な汗が吹き出る。

分かっていた事だけど・・・実力が違いすぎる!!

 

「ハァァア!!!」

「グッ」

 

去なすにも力でねじ込まれる!!

それにわざと去なす為の力のコントロールを邪魔してる!!

それに・・・

 

「バハァ!!!」

 

この存在感!

 

「ッ〜〜これが焔・・・呂奉先か!」

 

気を張ってないと飲み込まれる!

 

「ほぅ・・・・氣か」

「ッ・・・やっぱし分かる?」

「分からんとでも思ったのか??」

 

バレないようにしてたんだけどな・・・

 

「何度か氣の使い手と戦ったことがあるしな・・・」

「マジかよ・・・」

 

なら、もう隠さないでいいな・・・てか、隠すほど余裕ないし

身体の中の氣を開放する。

 

銀色の淡い光となって俺を包む。

 

「氣の使い手でもあるのか?なんつーかチートだな」

「ハッ、焔に言われたくねぇよ」

 

経験も技術も全て焔が上だ。

それに、勝つ為に俺は此処にいるんじゃない、時間稼ぎだ。

それを忘れちゃ駄目だ・・・

一撃を食らわせたら離脱する!!

 

白椿に氣を集中させる。

 

「行くぞ!!」

「来いッ」

 

互いの武器がぶつかり合う時。

ヒュン!!

 

「なっ!?」

「チィ!!!」

 

突如飛んできた矢が焔の腕へと刺さる。

続けさまに二本三本と矢が焔を襲う。

 

焔は鬼焔を振り、身体をよじらせ、矢をよける。

そして矢の飛んできた方向を向く。

 

「ギリッ・・・武将の一騎打ちを・・・・邪魔するか!!袁紹ォォオ!!」

 

その言葉と共に一人の鬼姫が袁紹軍へと突撃をかけた。

 

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「麗羽!!貴方、なんてことを!一騎打ちの尊さが分からないのか!?」

「フンッ・・・関係ないですわ。何時までもこんな所でそんなモノに時間をかける訳にはいきませんもの」

 

こんなモノだと・・・

 

「貴様ァ!!!」

「止めないさい!春蘭!!!」

 

得物を握り今にも襲いかからんとしている春蘭を制して、麗羽を睨みつける。

 

「そう、それなら私はもう何も言わないわ・・・精々、後悔しないことね」

「なんですの全く・・・皆さん!突撃ですわよ!さっさと蹴散らしてきなさい」

 

連合軍の盟主である袁紹の号令により各諸侯も攻撃を開始する。

 

「許さへんでぇ!武将の勝負を穢した奴ァ!許さん!!」

 

霞は激昂し、突撃をかける。

しかし、その霞よりも怒りを表した者がいる。

 

「・・・・殺す。殺す!殺す!コロスーーーー!!!!」

 

恋だ。

普段からは想像も出来ない程の声を出し、叫び怒りに身を焦がしていく。

それは兵達も同じで、一人一人が絶対の忠義を持ち、武人として戦う呂布麾下5千の精鋭は主の戦いを穢した袁紹を決して許さない。

 

恋の続いて兵が動きだす。

精鋭と名高い呂布軍は己の得物を振り上げ突き進む。

 

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「殿!!」

「焔殿〜!!」

 

互いの兵が戦っている中、焔と一刀の場所だけ空間が出来る。

騰とねねは焔に近付き、傷の具合を見る。

 

「ご主人様ー!!!」

 

兵を薙ぎ倒しながら一刀のとこの関羽があらわれ一刀へ駆け寄る。

 

「ご無事ですか!?」

 

一刀の安否を確認する。

 

「俺は大丈夫だ。それで・・・」

「ハッ、鈴々と星が潜入しましたのでおそらく大丈夫かと」

「そうか・・・」

 

星がいるなら大丈夫だろう。

あとは焔の指定した場所へと行って合流すればいい。

 

「・・・・一刀」

「クッ・・・ご主人様お下がりを!!」

「愛紗、いい下がってくれ」

「ですが!」

「愛紗!・・・俺は大丈夫だから」

 

一刀の言葉に愛紗は黙りこむ。

 

「今回は邪魔が入ったな」

「あぁ・・・」

 

しばらくの沈黙の後。

 

「月と詠の事くれぐれも頼む」

「分かってるさ」

「・・・・一刀、お前は確かに強い・・・だが、圧倒的に経験が足りない。いざという時に命を落としかねん。もっと学べ」

「あぁ・・・分かった」

 

それだけを言い、焔は進んで行く。

 

「行くぞ!騰!ねね!」

「ハッ」

「御意ですぞ!」

 

その後ろに兵が続く。

 

「俺達も行こう」

「ハッ、ですがご主人様はしばらくお休みください」

「・・・そうだな・・・俺は一旦下がるよ。頼むよ」

「ハハッ」

 

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「騰、恋は?」

「ハッ・・・袁紹に向かって怒涛の勢いで進んでます」

「そうか・・・霞は?」

「同じく袁紹をめざしていましたが、途中曹操軍の夏侯惇に捕まりそのまま戦っていますな」

 

ふむ・・・曹操か、アイツはかなりの人材コレクターだ。霞程の有能な将

 

ならば必ず手元に置きたくなるだろう。

問題は恋の方だ。

あの勢いじゃ本当に殺しかねん

 

「とりあえず、恋に追いつくか。」

「ハッ」

 

前方の敵を薙ぎ払い加速する。

前の方では物凄い砂塵があがり血潮が吹いている。

 

しっかし、これのほんとんどが恋の仕業だよな・・・

近づくにつれ死体の大さが分かる。

恋の通ったと思われる道は真っ二つにされた死体や頭を割られた死体などで埋めつくされていた。

その跡を騎兵が続くものだからもう人でないモノと成り代わっていた。

 

「候成!左翼が少し押されてる行け!」

「任せてくれや!!!」

「魏続、右翼だ!」

「おぅよ!!」

 

雑魚だが、数だけは油断できない程いるので斬っても斬っても出てくる。

さっさと追いつかねぇと恋が本当に殺しかねん。

 

「ァァァアアアア!!!」

 

殺気を撒き散らし、邪魔する者を骸に変え、全身を返り血で染めながらも駆ける。

 

「コロス・・・絶対に殺す」

 

焔を傷つけた。

許さない。

なんで焔が傷ついた??一騎打ちで怪我するのは当たり前。戦場で怪我するのは当たり前・・・だけど・・・・一騎打ちで卑怯な手で焔は怪我をした。なんで?なんで??

・・・・・あいつだ。あの金ぴかの女だ・・・・袁紹、名前なんてどうでもいい。焔の楽しみを邪魔して傷つけた奴は・・・・シネ

 

「な、なんですの貴方はッ」

 

とうとう恋とその配下が袁紹本陣へと到達した。

 

「死ね」

「え?」

「あぶねぇ!姫!!」

 

バッと横から袁紹軍二枚看板の一人である文醜が割り込みむ。

 

「邪魔、するなッ」

「文ちゃん!キャァ!」

「斗詩ー!!」

 

同じく二枚看板の一人顔良が恋の豪撃を受け止めるが、吹き飛ばされる。

 

「なにボサッとしてる!麗羽様を守れ!」

 

兵達に指示を出す。

 

「呂姫将軍・・・敵が集まりだしております」

 

恋は黒兎から降り、袁紹へと向かう。

 

「ここっから先は行かせねぇぜ!」

「通す訳にはいきません!!」

 

恋の前に文醜と顔良が立ちふさがる。

しかし、恋の殺気をまともに真正面から受けており、足はガクガクと震え目にも恐れが写っていた。

 

「・・・・邪魔。用があるのは袁紹だけ」

「用があったとしても通す訳にはいきません!」

「邪魔するなら・・・・死ね」

 

ドンッと地面を蹴り一気に距離を縮める。

 

「斗詩、くるぞ!」

「うんッ」

 

瞬きする時間さえ惜しんで恋の動きに集中する二人。

しかし迫る恋の姿が突如として視界から消える。

 

「なっ・・・」

「ハッ・・・文ちゃん!上!!」

 

二人の頭上を軽く越え、その先にいる袁紹へと駆ける。

 

「くっそ!最初から狙いは姫かよ!」

「麗羽様!逃げてください!」

 

袁紹は逃げようとするが上手く身体が動かず、ただ目を瞑ることしか出来ない。

 

「・・・死ね」

 

恋は口の端を吊り上げ、方天画戟を振るう。

 

ガキンッ

 

しかし、次に聞こえるのは肉を裂く音でも断末魔でもなく、金属のぶつかる音だった。

 

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「おいおい、マジかよ」

 

恋の奴マジで袁紹まで辿りついてる!

このままじゃマジで殺されちまう・・・そうなったら今までの計画が全部パァだ!

それだけは防がねぇとっ

 

「騰!隊は任せた!」

「ハッ」

 

俺は赤兎を走らせ、袁紹と恋の間へと入り恋の一撃を防ぐ。

 

「っ〜なんつぅ力だよ・・・恋!そのへんで止めとけ!」

「焔・・・・イヤ」

「ったく・・・洛陽も落ちた。直に他の諸侯もくる。その前にこの戦場から離脱しないと行けねぇんだ」

「・・・・・」

「それとも、俺の言うことが聞けないのか?」

「(ブンブン)・・・・分かった」

 

袁紹を助けたってのは癇に障るが仕方ない。

兵を吹き飛ばし、騰が率いる本体もやってきた。

 

「・・・・袁紹。貴様のやったことは武人に対する侮辱だ・・・故に本来ならばこの場で切り捨ててやってもいいが、今回は見逃してやる・・・だが」

 

鬼焔を振るい刃に着いた血と共に袁紹の顔の前に振り下ろす。

血が顔につき、袁紹は小さく悲鳴を挙げる。

 

「次はねぇぞ・・・」

 

焔の眼光と濃厚な殺気の前に袁紹はとうとう白目を剥き気絶する。

 

「行くぞ、一点突破だ。将は前へ出ろ」

 

焔の号令で直ぐに陣形を作り、突撃を開始する。

この戦いで連合軍は勝利するものの得たものは少なく、逆に与えられた被害は甚大だった。

 

董卓ならび腹心賈クは打ち取られ反董卓連合軍は解散となった。

また、董卓軍将軍だった張遼と其の麾下の兵達は曹操の軍門へと下り、同じく将軍だった華雄と麾下の兵達は劉備の軍門へと下った。

また劉備軍は今回の戦いで被害を受けた二人の侍女を保護したとなっている。

 

 

 

反董卓連合軍と董卓軍での戦いで連合軍に少数なれど大打撃を与え甚大な被害を与えた呂布・呂姫は大いに其の名を大陸中に轟かせた。

そして、呂布との一騎打ちで僅かだが互角に打ちあった天の御使い北郷一刀も其の名を大いに大陸中に轟かせた。

 

 

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あとがき

 

ようやく一段落ついたかな?という所です。

学業も疎かに出来ないので更新は不定期ですが、少しでも見てくだされば

 

嬉しい限りです。

 

誤字や此処おかしくない?とか今後はこういう風に書いてみたら?ってい

 

う意見がありましたらコメントやショートメール・伝言板に書いてくださ

 

い^^

参考にさせていただきます^^

 

次回は焔達の日常を書こうかと思います。

 

でわ、あんまし話す話題もないので失礼します^^

 

再見( ̄ー ̄)bグッ!

説明
怖くて口が裂けても言えないこと・・・

「こら○○!起きろ!!」
「うぅん?」
「うぅん?じゃない授業中に寝るな!」
「チッ・・・なら眠たくない面白い授業をしろッ!!」

勿論、先生に怒られたあと生徒指導室行きだよねww
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コメント
初コメです。恋の戦場で怪我をするのは当たり前のところは間をあけないほうがいいかと・・・。これからも頑張ってください!(ラーズグリーズ1)
初コメです。一気に全部読ませてもらいました!読んでいく内にどんどんのめり込んでしまいましたw(勇心)
この作品だと音々が武将としても強くなってるので、これからの活躍に期待してます。(eitogu)
初コメです。面白すぎですよ、続きが待ちどうしいですねぇーーwww(ロドリゲス)
袁招は現代的な考えなようで、効率的な判断であるのは確かなんだが、時代が合わなかったか(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
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