IS-W<インフィニット・ストラトス>  死を告げる天使は何を望む
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六月の最終週、遂に学年別トーナメントを迎えた。

だだっ広い更衣室を一夏とシャルル、ヒイロで独占しながらモニターで観客席の様子を見ている。一夏が驚くような表情でつぶやく。

 

「しかし、すごいなこりゃ…」

 

彼がそう言ったのは観客席には世界各国政府関係者、研究所員、企業エージェント等の顔ぶれが揃っていたからだ。中には新聞で見るような人物も混ざっている。

 

「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ来ているからね。一年には殆ど関係ないけどトーナメント上位入賞者にはさっそくチェックが入ると思うよ」

「……………」

「ふーん、ご苦労なこった」

「ヒイロはともかく、一夏はボーデヴィッヒさんとの対戦しか頭にないようだね」

「まあ、な」

 

ヒイロはいつも通り緑のタンクトップにジーパンの格好で腕を組んで目をつぶって壁にもたれていた。一方、一夏はシャルルの返答の後、複雑な顔をした。

結局、鈴とセシリアはトーナメント参加出来なかった。二人は代表候補生であり専用機持ちであり、結果どころかトーナメント参加出来ないのは政府、軍から二人の立場を悪くしてしまう。一夏はあの騒動を思い出し、何も出来なかった事に自然と左手に力が籠もっていた。もっとも、セシリアはイギリス政府の知り合いが、鈴は軍所属の叔父がフォローしてくれたようだ。

 

「一夏、感情的になってもいいけど冷静さを失わないでね。彼女は一年の中でヒイロに並ぶ実力者だと思うから」

「…わかっている、ありがとなシャルル。しかし、一年の部、Aブロック一回戦一組目になったら運がいいよな」

「え? どうして?」

「待ち時間に色々考えなくても済むだろ。こういうのは勢いが肝心だ。出たとこ勝負、思い切りのよさで行きたいだろ」

「ふふっ、そうかもね。僕だったら一番最初に手の内を晒すことになるから、ちょっと考えがマイナスに入ってたかも」

 

シャルがそう言うと、ヒイロが目を開き、一夏たちに近づいてきた。

 

「……そろそろ対戦表の発表だ」

「あ、ホントだ」

 

更衣室のモニターが突然映り出し、今大会のやぐらがズラーっと出て来る。

 

「Aブロック第一試合…一夏のいいようになったね」

「対戦相手は……のほほんさんと谷本さん、鏡さんか」

「だが……ここで勝ったら奴らとだ…一夏」

 

ヒイロの言葉に二人は『『えっ』』と言ってヒイロの方を見た。ヒイロはゆっくりと指をさした。その先にはヒイロたちのグループの二つ隣……つまり2回戦で戦うであろうところの片方に

 

『篠ノ之 箒、早瀬 皐月、ラウラ・ボーデヴィッヒ』

 

の名があった。

一夏とシャルルの顔が真剣になる。何としても一回戦を勝ち抜いて、ラウラと再び戦わなければならない。一夏はそう本気で考えていた。その時、

 

『お兄ちゃん、メールだよ♪お兄ちゃん、メールだよ♪』

 

と可愛らしいアニメヴォイスが聞こえる。

 

「シャルル……携帯なってるぞ」

「僕じゃないよ」

 

2人とも恥ずかしそうな顔で言いあう。そもそもこんな着メロ、普通の人は恥ずかしくてできないのだから。しかし、この着メロを設定している奴が一人。

 

「…………俺の携帯だ」

「ってヒイロの着メロかよ!!」

「な…なんでそんな着メロ使ってるの…?」

 

シャルルは顔を引きつるのをよそにヒイロが携帯を取り出し操作する。

一夏は誰からのメールか気になってヒイロの後ろに回り携帯の画面を見ると・・・

ナイスバディーの体で水着を着た女性二人が色気あふれるポーズをとった写真だった。

 

 

・・・・顔に真っ白い球体の被り物をかぶって・・・・

 

 

「ブブーーーーーーー!!…な…なんだこれっ!!」

「……祐子からの写メールだ。どうやら町の大福店の前で見かけて写真を撮ったらしい。キャラの名前は大福くんって奴らしい」

 

一夏が吹いたのに対してヒイロは冷静に写真について答えた。

しかし、ビキニ水着の胸のあたりに名札がありそこにはひらがなで『た●まち』と『●すたろった』と書いてある。おそらく中の人の名前であろう

 

「ひ…ヒイロ、その着メロも…もしかして」

「こっちはみおにもらった。もらった奴だから設定した方がいいと祐子から言われていたからな……」

「アハハハ…」

 

シャルルが再びの苦笑いをしたところでヒイロが話し始める。

 

「……一回戦では時間をかけたくない。相手に情報を知られるのは面倒だ。一夏、シャルル…俺の言う通りに動いてくれ」

 

一夏たちはヒイロの言葉に耳をかたむけ、そしてその内容に驚いたが承諾した。

ちなみにその写真は待ち受けにするヒイロであった。

 

 

 

 

 

 

「一回戦はヒイロンとか〜」

「頑張ろう!!」

「うん!!」

 

と本音率いる仲良し女子3人組が宙に浮いて準備している。今大会は一回戦は空中から、二回戦は地上といった感じになってる。

ヒイロたちは中心にヒイロのウイングガンダムゼロが立ち、その後ろに一夏とシャルルが立っている。

 

「…悪いがすぐに決着をつける」

 

ヒイロの言葉と同時にブザーが鳴る。試合開始の合図だ。

そのブザーがなった途端に一夏とシャルルは一気に降下する。逆にヒイロは上昇して上からあるものを取り出す。それは………

 

 

 

 

………バスターライフル………

 

 

 

「戦闘レベル、全ターゲット確認…」

 

そう言ってヒイロは両手に持ったバスターライフルを交互に発射、そして翼を閉じて一気に急降下してくる

 

「きゃ〜〜〜!!」

「ええ〜〜〜〜!!」

「ほえ〜〜〜(のんきに)」

 

と本音、癒子、ナギは前、右、左と一直線上に逃げて回避する。だがそれがヒイロの狙いだった。先ほどまで3人がいたところ…つまり、三人を線で結んだ時の中央に位置したところにヒイロのウイングゼロが降りてきて翼と一緒にバスターライフルを持った両手を広げる。翼が開くと同時に羽が舞い、天使降臨のごとく幻想的なものを感じる。

 

「…全機撃墜する」

 

そう言って両手のバスターライフルから山吹色のビームが発射され、ビームが出たままヒイロ自身が回る。そう、かつて一夏が初めてヒイロに会った時見せた動き。

 

……ローリングバスターライフル……

 

 

 

直撃した3人は一瞬でシールドエネルギーがゼロになり、墜落。IS自体は壊れずただ目を回しているだけであった。

ヒイロはその様子を見て呟くのであった

 

「……任務完了」

 

 

 

 

 

 

 

『なんだ…あの武装は!!』

『すさまじいですね・・・』

 

観客席…それもVIP席で見ているある国の政府関係者とそしてその国と協力関係にある国の軍人が会話していた。

 

『あれが日本の倉持が偶然の産物で作り出したウイングガンダムゼロか…』

『あの武装…我々の共同開発している“アレ”に搭載してみませんか?あなたの国の技術ではできるのではないですか。エネルギー圧縮技術は日本以上ですし』

『そうだな…ガンダムに対抗するにはそうするしかないか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタッ!!

と大きな音を立てながらモニタールームにいる千冬は勢いよく立ちあがった。

 

「バスターライフルが出力制御できているだと!!」

「い…いつの間に…そして誰がしたのでしょうか?」

 

ヒイロそして皐月からは今日、槇村に頼んで装置の開発を頼もうとしていた。いくら倉持の頭脳と言われ、ブースター技術はあの篠ノ之 束を超えるかもしれないと言われる槇村でもすぐにはできない。

千冬は真耶の疑問にすぐに答えを思いついた。

 

(あのバカしかいない……)

 

そう千冬の予測通り、2週間前にヒイロは束に会った。その時貰ったチップ。それがバスターライフルの制御チップだったのだ。これにより、バスターライフルは一撃でシールドエネルギーを奪う驚異の武器となれるようになった。無論今までの力も健在である。

千冬と真耶はモニターを再び見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ、3人とも」

 

ヒイロたちが試合を終え、男子更衣室まで戻ってくるとそこにはぼろいコートを着たメガネの男……槇村 俊之がいた。

 

「槇村さん」

「久しぶりだな、一夏。皐月から話を聞いている。かなり無茶してるようだな。ま〜その方が技術者としてはやりがいがある。しかも、『白式』がガンダニュウムに適合したのも驚きだよ」

 

ハハハと控えめだがうれしそうに笑う槇村。ヒイロはその様子を見ていた。槇村の言う通り、現在一夏の白式は損傷した左腕と方向転換用可変ウイングのフレームがガンダニュウム合金になったのだ。だから一夏は試合に出れたのだ。

そして、槇村はシャルルの方に顔を向け、話し始めた。

 

「君がシャルル・デュノアか?初めまして、俺は槇村 俊之。倉持技研所属、Gプロジェクトの主任研究員だ」

「は…初めまして、槇村さん。シャルル・デュノアです」

 

シャルルは少し緊張した様子で槇村が差し出した手を握り、握手した。シャルルは槇村が声をかけてくることはわかっていた。

『マーシャル・デュノアの日記』にあった独白で槇村はシャルルを引き取ろうとしていたからだ。このままデュノアのもとにいてもひどい目にあうのがわかっていたマーシャルは友人である槇村に引き取ってほしいと頼んだ。すでに槇村には妻が今までやって来たこと・・・嫌がらせや暴力などの証拠を送り裁判すれば勝てるほどのものをマーシャルから送られていたのだ。

しかし…

 

「実は、君を支援していた『足長おじさん』とは古く知り合いでな、君を…」

「……“槇村様”」

 

突然の事だった。ヒイロも一夏も驚いた顔をする。いつもよりも少し高い声。普段…と言っても部屋の中でしていたシャルル本来の声色。そう『シャルロット・デュノア』としての声だった。しかし、今まで誰かに『様』付けで会話したことはなかった。

これは、シャルロットの本来の口調であったのだ。母ナタリーも同じような感じだった。

 

「私は…そこにいる、ヒイロ様と一夏様のおかげで…父さまの思いを知ることができました。だから私は…父さまの娘としています」

 

シャルロットの強い意志を目から感じた槇村は溜息をつき頭をかきながらヒイロの方を見る。

 

「……ヒイロ、デュノア社にハッキングしたな。アイツの日記を読まないとあんなこと言わないからな。やれやれ…アイツの思惑破たんじゃないか」

 

そういいながらも槇村の顔はどこか嬉しそうな顔をしていた。その時、モニターから大きな歓声がした。

どうやら試合に決着がついたようであった。

 

「皐月…『マドロック』をうまく使えているようだな」

 

槇村がそう言うと3人は画面を見るとラウラ、箒、皐月が勝利していた。

皐月のガンダムアテーナは装備が変わっていた。素体はそのままだが背中の多方向加速推進翼がなくなり、直進用と言ってもいいぐらいのブースターと両肩に抱え込むように背中から伸びている高出力ビームキャノン二門『烈火』。それを支えるために全身の装甲が厚くなる。足にはホバークラフトが装着されていている。左手にはシールド装備ボウガン型エネルギー砲『烈洸』、右手には今回初めて登場した多種類対応バズーカ付ツインガトリング『叢雲(ムラクモ)』があった。

槇村の登場で試合を見ることを忘れていた3人は

 

「ああ!!見るのを忘れてた!!」

「問題ない…あの武装から大体予測できる…はずだ」

「はずだって…」

 

一夏、ヒイロ、シャルルの順に答える。槇村はすまなさそうな顔で

 

「悪い、俺もすぐに観客席に行かないといけなくてな…タイミングが今しかなかったんだ」

 

と答えた。この後、槇村もVIP席に行かなければならないからだ。

 

「シャルル、君のその笑顔…次にマーシャルにあったら見せてやってくれ。きっとアイツはうれし泣きするからな」

「はい!!」

「次会うときは本当の名前の時の君に会えることを楽しみにしている」

 

と言って槇村は更衣室を出て行った。シャルルは女の子らしい可愛い笑顔でそう答えた。

槇村がいなくなった後、一夏がシャルルに言った。

 

「シャルルの昔の口調ってそんな感じだったのか?」

「そうだね。母様もこんな感じだったよ。さすがに同級生同士の会話には様付ではなかったけど。でもさすがに変かな?」

 

シャルルが心配そうな顔でヒイロと一夏を見つめる。二人はその顔を見た後、お互いを見て、何かを察し、シャルルの方をみて二人同時に言ったのだ。

 

「「シャルル (お前)の好きなようにしなよ (しろ)」」

 

それを聞いて再び笑顔になるのは必須だった。

 

VIP席に向かう中、槇村は考えていた。

 

(ヒイロのバスターライフルは明らかに束が調整したのだろう。……束…お前はいつになったらあの頃のように俺を…)

 

槇村の背中は少しさびしく見えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ラウラさん…話があります」

「……なんだ。虫ケラ」

 

女子更衣室では勝利した箒、皐月、ラウラのチームが会話していた。実際先ほどの戦いはラウラが相手二人を一瞬に倒し、その間、もう一人は箒が皐月の目くらましやガトリングで牽制している間に箒がその弾幕の中を駆け、連続攻撃をしたことにより敗北したのだ。

明らかに連携を取っているのは2人だけだった。

 

「次の戦いでは一夏とヒイロがいる」

「あなたは二人同時に相手をなさるおつもりですか?」

 

箒と皐月はそう言う。皐月からは普段とは違い気迫と言うものも感じる。箒はそばでそれを感じ取っていた。

ラウラは眼帯で隠れていない右目を見開き強く言い切った

 

「当たり前だ!!私に屈辱を与えたあの二人だけは私がこの手で葬る!!お前たちは邪魔するな!!」

「なら……あなたは負けます」

「なに!!」

 

皐月の負ける発言でラウラは皐月の胸元を掴む。皐月はそれも気にせずに話し続ける。

 

「ヒイロさんのガンダムはついにツインバスターライフルが使えるようになっています。この状況で二人同時に一人で相手するなど…愚の骨頂ですね」

「ラウラ…この状況は私でもわかるぞ…」

 

ラウラもバカではない。一撃必殺を持つ織斑 一夏、ヒイロ・ユイを相手にするとヒイロに意識を持っていると一夏の『零落白夜』が、一夏に集中するとヒイロの『バスターライフル』が飛んでくることは明白であった。さらにAICはビームやレーザーの光学兵器は慣性で動いているのでないので止めることはできない。

 

「どちらか一人にしなさい。その代り、私と箒さんは邪魔しないから」

「…なら、織斑 一夏をもらう!!」

「わかった。ただし、シャルルに関しては余裕があったら抑えるがヒイロ相手だと二人でギリギリかもしれん」

 

箒がそう言うとラウラは背を向け

 

「お前たちは私の邪魔さえしなければそれでいい。期待などしていない」

 

と言って去って行った。

2人はその様子を見て溜息をついた。

 

「それじゃ〜箒さん。予定通りお願いね」

「任せろ。しかし、この作戦…ヒイロに通じるのか」

「問題ないわ。ウイングガンダムゼロの最大の弱点を利用すれば……ね」

 

と皐月はニヤリと笑うのを箒は見つめるのだった。

決戦の時は近い。

 

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ヒイロの今回の戦闘シーンは第3次スーパーロボット大戦αのローリングバスターライフルと思ってください.

 

P.S.

ちなみにヒイロはあの着メロが恥ずかしい理由が分からないので使っています

 

説明
第18話 破壊者の銃
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タグ
再構築 ヒイロ・ユイ ガンダムW IS インフィニット・ストラトス 

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