IS〜狂気の白〜 第三話《旧交再開》
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 IS〜狂気の白〜

 第三話《旧交再開》

 

 

 

 

 

 IS学園初日、一時間目終了後の休憩時間。

 

「ふむ、注目とは、存外に息苦しいものだ」

 

現在、織斑一夏は現状打開の方法を思索していた。

 

 教室内には異様な雰囲気が漂っていた。

同じクラスの生徒達がこちらに視線を向け、何やら小声で囁いている。

それだけならば別段如何という事は無いのだが、生憎の事に現状を作り出して

いる要因はそれだけでは済まなかった。

教室の外の廊下には、大挙として押し寄せた女生徒達が足の踏み場も無いほどに

密集し、同じ様に視線を向けているからだった。

廊下の彼女達は上級生をも含めた他クラスの生徒であり、初の男性操縦者という存在に、

好奇心の塊となってしまっているのだ。

その彼女達が、皆一様に視線と囁きを向けるのだ。

その静かなる迫力は、そこらの人間では到底及ばない鋼の精神を持つ

一夏にして、気圧されるとはいかないまでも、辟易させる程であった。

 

 この好奇心の源は、男性操縦者だからというだけでない。

彼の姉、織斑千冬が世界的に有名である事が、それを助長しているのだ。

織斑千冬は、かつては各国から選出される国家代表の中で、日本代表を務めていた。

更にその代表達の中でも他を圧倒する実力を持ち、IS操縦者の世界一を決める

大会である第一回モンドグロッソに於いては総合優勝を果たしている。

名実共に最強の存在であり、引退した今猶ブリュンヒルデの名で呼ばれ、

世界中の操縦者達から尊敬を集めている存在だ。

その弟にあたる一夏に興味を抱かない訳もなく……。

以上二つの要因が、現状の空間を作り出しているのだ。

 

 年頃の男子ならばこの状況に歓喜してしかるべきなのだろうが、

前世で妻子を持ち、精神も老練された青年にとってはそこまでの思い入れは無い。

年頃の男子というところで友人の五反田《ごたんだ》 弾《だん》の事を思い出した。

彼は随分と羨ましがっていたな、と他愛ない事を考えていると、

 

「……ちょっといいか」

 

唐突に、話しかけられた。

唐突とは言ったが、一夏は教室内にいる人物の動向は思考の隅で

把握していたためにそれほど驚く事はなかった。

 

「……おや、君から話しかけてくれるとはね」

「…………」

 

話しかけて来たのは、先程から此方を睨み続けていた人物。

 

「いや実に久しいね、箒君」

 

旧友の篠ノ之《しののの》 箒《ほうき》だった。

背丈は平均ながら、伸びた背筋と凛とした雰囲気が何処か長身を思わせる。

纏う雰囲気は、神主の家に生まれ、兼任する剣道場で培われたものか。

本人曰く生まれ付きらしい険しい眼つきで一夏を睨み付け、

艶やかな黒髪を、白いリボンで括ったポニーテイルにまとめて背中に垂らしている。

その口は一文字に引き締められ、なかなか開く事がない。

 

「……観衆に聞かせたくないならば、移動するのも吝かでないが?」

「……いや、此処でいい」

 

その言葉に、周囲が聞き耳を立てたのを感じたが、箒は気にした様子もない。

それならば彼としても、無理に外で話す必要もない。

そのまま、久方振りに再会した友人との会話に勤しむ事となった。

 

「……そうだね」

「……?」

 

会話を持ちかけた方がなかなか口を開かないので、一夏の側から話題を提供する。

 

「昨年、剣道の全国大会で優勝したそうだね。おめでとう」

「なっ!」

 

予想外の一夏の賞賛に、箒はその整った顔を真っ赤に染め上げた。

 

「な、何でそんな事知ってるっ!」

「何故と言われてもね。習慣として新聞を読んでいるのだが、

偶々君の記事を見つけてね?記憶に留めておいたのだよ」

「何で新聞なんか読んでるんだ!」

「なに、世の情勢を知る一貫だよ。というより、そうでなくとも普通に読むだろう?」

「読むんじゃない!」

 

実に理不尽に怒られた。

 

「ああ、それと―――「な、何だ!?」……少し落ち着きたまえ」

 

迫るような剣幕で問いかける箒に、一夏は諭すように語りかける。

 

「そら、深呼吸すると良い。有事でもないのに、あまり人を急かすものではないよ」

「う、うむ。済まない……」

 

深く息を吸って吐いて、落ち着いたらしい箒が一夏に目を向ける。

 

「そ、それで……何だ?」

「ふむ、では」

 

一夏は少々大袈裟な身振りで箒を真っ直ぐに見据え、

 

「また、会えて嬉しいよ。箒」

 

喜びを込めた、甘さすら感じられる声で、囁いた。

 

「……………………」

 

箒はしばらく呆けていたが、やがて――――――

 

「んなぁ!!」

 

――――――爆発した。

 

「な、な、な、な、な!」

「落ち着きたまえ。何故そうもうろたえる」

「お、落ち着けるかぁ!」

「……箒」

 

やれやれと言うように首を振り、手を伸ばし自分の胸程の高さにある彼女の頭に乗せる。

 

ぽむ

「落ち着きなさい」

 

その一撃《・・》に、苺かトマトかと言う程に顔も耳も首筋も真っ赤に染めた箒は、

 

「……はい」

 

と、か細い声で答えた。

 

 キーンコーンカーンコーン

二時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。

何故か赤面し固まっていた周囲の生徒たちが、蜘蛛の子を散らす様に着席する。

 

「次の授業が始まるね。席に戻ろうか」

「…………」

「箒?」

「……わ、わかっている」

 

ぎこちなく手足を動かして席に戻っていく。

右手と右足を同時に出して歩いている彼女に、一夏は怪訝な視線を向ける。

 

「ククッ、まさか、実際にあのような歩行を見れるとは……。

いやはや長生きはしてみるものだね。」

 

可笑しそうに肩を上下させ、自身も着席する。

普段は頑固で、一本筋の通った性格の旧友。

しかし、時折見せる年相応の仕種は実に可愛らしい。

 

「君は変わらないね。箒」

 

未だに自分を覚えていてくれた友人に、前世では決して感じなかっただろう

不可思議な感情を覚えて、知らず笑顔になる一夏だった。

 

説明
IS〜狂気の白〜 第三話です。

読んで下さる方はいらっしゃるんですが、
感想をくださる方がいません……。

やはりまだまだということでしょうか……?
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コメント
後、コメントが来ない事なんて気にしない方が良いですよ、僕も違う所で書いていましたが、コメントは来てもバッシングがかなりくるので精神的にきつかったことがありますし…(神薙)
なんかこの一夏を見ていると元ネタ知らないからDiesIraeっていうエロゲーの黒幕を思い出してしまった…うさん臭すぎるだろ…。(神薙)
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IS 型月 転生 強い一夏 御都合主義 遅筆 駄文 見切り発車 

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