リリカルとマジカルの全力全壊  無印編 第九話 誰にも秘密のトップシークレット
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 以下、ユーノ・スクライアの心の言葉から抜粋。

 

ユーノでーす。

 今日はいきなり現れた女の子にジュエルシードを持っていかれたとです。

 

ユーノでーす。

 意気消沈した帰り道でいきなり結界の中に取り込まれたとです。

 辺り一面モノクロの世界とか言ったら少しかっこよかとです。

 

ユーノでーす。

 しかも結界の中には仮面をした男二人というドッからどう見ても怪しい男達が待っていたとです。

 二人がじりっとすり足で距離を削ってきていますけど、素人目に見ても訓練された動きをしているとです。

 只者じゃないとです。

 

ユーノでーす。

 こんな怪しい連中に狙われる覚えは・・・一つしかないとです。

 きっとルビーのせいです、本当に本当にありがとうございました。

『なのはちゃん一体何しちゃったんです?』

「「「「明らかに|お前(るびーちゃん)のせい|だろうが(なの)!!」」」」

 4対1でもいじめと思うなかれ、数の暴力なんてルビーには当てはまらないのだ。

『え〜ルビーちゃんのせいですかぁ〜』

 自覚なき加害者は醜悪な物である。

 同情の余地なしでファイナルアンサー?

『でもでも〜ルビーちゃん、いきなり結界の中に幼女を連れ込んで色々悪戯しようとするような変態仮面の知り合いなんていませんよぉ〜』

「「人聞きの悪いことを言うな!!」」

 男達が異口同音に反論する。

 なのはとユーノはルビーに翻弄される二人を生暖かい眼で見ていた。

 あの二人の姿は、なのはもユーノも通ってきた道だ。

 これは純粋に慣れるしかないので何を言っても無駄なのである。

『それにしてもこれが結界ですか〜すごいですね〜。これならご近所にも迷惑をかけずに済みます。家の駄フェレットもこれくらいがんばってくれるとなのはちゃんももっと楽なのに』

「げふ!!」

「ユーノ君!!」

 油断していたら、ユーノに飛び火して来た。

 思わず吐血するフェレットの姿はとてもシュール、ルビーの傍に安全地帯など存在しないのだ。

「な、なのは・・・僕はもう駄目かもしれない・・・」

「・・・ルビーちゃん、ひどいよ!!ユーノくんだってがんばってるんだから!!」

「あ、ありが・・・」

「闘いで役にたたなくても、ユーノ君可愛いもん!!」

「僕の存在意義が|愛玩(それ)!?」

 死に掛けだったユーノが飛び起きた。

 無意識の加害者も結構ひどいと思う。

「が、がんばれフェレット!!」

「そうだよ、フェレットはイタチ科の肉食小動物なんだから!!ちゃんと牙も爪もあるんだよ!!」

「あ・・・あり・・・がとうございます」

 何故か・・・多分、敵であろう仮面ブラザーズ(仮名)に同情されて、ユーノのつぶらな瞳からはらはらと涙が流れた。

『うさぎやげっ歯類とか狩るために飼われたりしていますね、ねずみ狩りもしますし』

「え?ユーノ君ってウサギさんやリスさんを食べちゃうの!?ひどいよ!!」

「なのはーーー!!」

 ユーノの叫びは悲痛だった。

 子供は無邪気だけに時々残酷になるのは気のせいか?

 男達もあまりにも哀れで顔を背ける・・・ユーノの不遇に泣いているのかもしれない。

『ちなみに、知ってますかなのはちゃん?ペットのフェレットって発情期になると体臭がきつくなったり凶暴になったりするから、ユーノ君のような雄の場合去勢されているんですよ?』

「そ、そうなんだ・・・」

『飼い主の基本です。ユーノ君はどうだったでしょうかね?こんど動物病院につれていきましょうか?』

「余計で物騒な事言うなーーー!!」

 ユーノの叫びは必死だった。

 男としては必死になるべきだし、ならざるをえない。

 じゃないといろいろな意味で終わる。

 これは男の本能だ。

「こ、この際言わせて貰うけど君だって役に立っていないじゃないか!?」

『ルビーちゃんが本気出したらすごいですよ?具体的に言うなら海鳴が真っ二つになりますね〜』

「うそだーーー!!」

「ルビーちゃん、それはさすがに言いすぎだよー?」

『え〜マジなのに〜』

 なのはもユーノも信じていない・・・しかし、後日二人はとんでもないモノを目にして、このときの会話を思い出すことになる。

「くっつ、こいつ!?」

「落ち着いて、奴のペースに乗っちゃ駄目!!」

 ルビーたちのやり取りに男達が苛立った言葉を交わす。

 内容はもっともだ・・・微妙に女言葉なのが気になるが。

 とにかくルビーに付き合っていたら全然話がすすまない・・・一回冷静にならないと・・・。

『所で貴方達、結局何しに来たんです?』

「お前を排除にきたって言っているだろうが!!」

「今気づいた風に言うな!!」

 うん・・・冷静になるの無理!!

 二人揃って既にルビーのペースの中、仮面の下の表情がたやすく予想できる。

『うーん、狙われる覚えがありませんね〜』

「ふざけるな!!私の体を散々もてあそんだくせに!!」

「「な!?」」

 片方の仮面男がとんでもない事を言い出した。

 その内容になのはとユーノが反応する。

「ル、ルビーちゃんどういうこちょなにょ!?男のひちょのきゃらだをもてあそんだって本当にゃの!?」

『落ち着いてくださいなのはちゃん、じゃないとルビーちゃん萌えちゃいますよぅ〜はい深呼吸、ヒッヒッフー』

「ヒッヒッフー」

 深呼吸じゃないのは|お約束(テンプレ)。

「ルビーちゃん、責任は取らなきゃ駄目なの!!」

『なのはちゃん、全然落ち着いていませんね?とはいえ、ルビーちゃん本当に・・・あれ?』

 何かに気づいたルビーが声を上げると、今度は男達の方がビクッと反応する。

「「な、なんだ?」」

『・・・変身魔法ですか?貴方達そろって姿を変えていますね?』

「「っつ!!」」

「それにこの魔力・・・ああ、貴方達の正体は・・・」

「「それ以上しゃべるな!!」」

 二人同時に魔法を発動して距離を詰めて来た。

 これ以上ルビーに喋らせないつもりだろう。

 今のなのはには二人同時に相手をする事はできない。

 片方に気を取られている間に、もう一人に隙を突かれてしまう。

 それ以前に、バリアジャケットさえ着ていないのだ。

『仕方ありませんね〜、レイジングハート?』

『はい、姉さん』

『ちょっと早いですけどアレのお披露目、行ってみましょうか?』

「あ、レイジングハート?」

 なのはの手の中からレイジングハートが飛び出した。

 ルビーとレイジングハートが徐々に近づき・・・接触した瞬間、目がくらむような光が放たれ・・・・・・・・・・・・・・・ズドンという腹に来る爆発と共にドクロ型きのこ雲が立ち上がった。

『うーん、失敗しちゃったみたいですね〜』

『まだシンクロ率の調整が足りなかったみたいです。すいません姉さん』

『気にしなくてもいいですよレイジングハート、誰もいきなりしょっぱなから成功するような主人公ご都合なんて期待していませんから〜』

 煙が晴れた爆心地はクレーターになっていた。

 周りにはなのはとユーノが目をナルトにして倒れている。

 一応障壁で守ったし、あの様子だとビックリして気絶しているだけのようだが・・・問題の二人組みの姿が見えない。

『爆発で結界が壊れているようです』

 通常空間に戻ることで、破壊された物が元の姿を取り戻してゆくが、これが本当の街だったら壊れた物に加えて人間もいたはずだ。

 そのあたりも計算に入れての実験だったのだろう。

 おかげで人的被害は一人と一匹ですんだ。

 なのはとユーノにはご愁傷様である。

『警戒して一旦退いたようです』

『慎重ですね〜よっぽど悪いことをしているんでしょうか?』

 世の中の慎重派の人間に喧嘩を売るような物言いだ。

『かなりダメージも負っていると思いますけど・・・』

 結界を破壊するような爆発の目の前にいて無傷というのはありえないだろう。

 しかし、追撃は出来ない。

 何故ならば肝心のなのはが伸びたままだ。

『ふむ・・・さて、レイジングハート?彼らの姿は記録していますね?』

『もちろんです』

『それじゃあルビーちゃんのデータも送りますから・・・まずは・・・』

 この後、ルビーとレイジングハートはそろってなのはから「あんな物騒なことしちゃ駄目なの!!」とOHANASIされることになる。

 ちなみに、ルビーはなのはとユーノにあの二人についてある事ない事吹きこんだ。

 何故ならそっちのほうが面白そうだったから、他に信じられる説明が出来る人間もいなく・・・これが元で次になのは達が再会した時に一悶着する事になるが、それはまだ先の話だ。

 それよりも近い、約12時間ほど先の未来・・・つまり翌日〜。

「いたぞ、あそこだ!!」

「逃がすか!!加速装置!!」

「左から追い込め!!」

「「にゃー!!」」

 海鳴の街中を、数人の男達に追われながら妙に黒く焦げた感じの二匹の猫が逃げていた。

 一見して動物虐待の図だが、誰もそれをとがめようとしない・・・っと言うよりも見た瞬間に悲鳴を上げて逃げる人までいた・・・追いかけている男達の目が普通じゃないのだ。

 目が血走っている。

 ギラギラと欲望に染まっている。

 はっきり言って怖かった。

「じ、十万って何!?何なの!?」

「知らないわよ。ってひゃあ!!」

「っちい!!」

 横から不意を突いて伸ばされた腕を、寸前で何とかかわす事に成功する。

 現れたのは一見してヲタ男・・・平日の昼日中からアニメのキャラTを着ていれば疑いの余地はない。

 しかも、サイズが2サイズは小さいのを無理やり着ているのでシャツのキャラが引き伸ばされ、元の顔が解らなくなっている。

 ・・・サイズがなかったのだろうが、そこまでして着たいのか?

「デブ!!幼女のチッスがブヒー!!」

 さらに意味不明だった。

 意味不明なだけに余計に怖かった。

 しかも目がオームの攻撃色みたいに真っ赤だ。

「「ひっ!!」」

 二匹の猫は恐怖にかられてダッシュで逃げる。

 逃げなければ何をされるかわからない。

「はあ・・・はあ・・・」

「ゼッ、ゼッ・・・」

 何とか追手を引き離した二匹の猫は、植え込みの中に飛び込んで隠れると、息も絶え絶えに喘いでいた。

 周囲にはまだ猫達を探している男達の気配がする。

「なんで・・・急に・・・」

「あ、あれ!」

「え?なあああ!!」

 ”それ”を見た瞬間、二匹の猫は揃って追われている立場も忘れて声を上げた。

 二匹が目を限界まで開いて見たのは、壁に貼られたポスターだ。

 

【尋ね猫 逃げ出してしまった飼い猫を探しています。良く似た双子の猫です。見つけてくださった方にはお礼として一匹十万円、そして美幼女からのキッスを進呈しますよぉ〜】

 

 そしてその下にはご丁寧に写真付き・・・写っている写真はどうしようもなく猫達だった。

 更に、ポスターの最後には見覚えのある杖をかたどったマークがまるで笑っているかのように・・・。

「「あんのくそ杖!!!!」」

「なんか声がしたぞ!?」

「何処だ!?」

「あっちデブ!!」

「「っつ!!」」

 ほとばしるパッションが思わず口から出てしまった。

 周囲に人の気配が充満し始める。

 包囲網は確実に狭まって来ていた。

「こ、こうなったら・・・」

「仕方ないよね、ね?」

 猫達の魔力が高まり、その姿を灰色の魔力光が覆い尽くす。

 はじけた魔力の中から現れたのは猫ではなかった。

 昨日、なのは・・・というかルビーを狙ってきた二人組みだ。

 当然だが仮面はつけていない。

 おかげで素顔の状態だが、整った顔立ちの青年だ。

「ごめんねクライド君、こんな事で姿を借りて」

「力をかしてね」

 お互いの変身が完璧だという事を確認しあい、二人は並んで茂みの外に出た。

 そのまま平静を装って歩き出す。

 途中で自分達を追いかけていた連中とすれ違ったが、飢えた獣のような姿がグールのようでびびる。

 二人が並んで歩いていると人目を引くが、誰もが双子だと思い、それ以上に興味を引く事はない・・・はずだ。

「・・・なああんたら?」

「「は、はい!?」」

 不意に声をかけられ、二人は揃って飛び上がりそうになるのを自制した。

「なんだ?」

「に、にゃんでもありませんよ〜」

「そ、そうですにゃ〜」

 なんか言葉が支離滅裂になっている。

 どう見ても不審者のそれだが、止まらない止められない。

「なんか変だが・・・まあいいや、このあたりでよく似た猫を見なかったか?こんな感じの」

 そう言って見せてくれるのは例のポスターのチラシバージョンだ。

 ここまで用意周到にやらかしてやがったのか!?

 一日で一体どれだけ広範囲にばら撒いたんだ!?

 写真の中の自分と目が合った二人の顔が引きつる。

「さ、さあ・・・知らないにゃ〜」

「そ、そうにゃ、あっちのほうで見たようにゃ〜」

「何、本当か!?」

「「ホントホント」」

 インディアン嘘ついかないという風に肩を組み、頷きあう。

「ありがとうよ!!おい、あっちらしいぞ!!」

「俺、これが終わったら「お兄ちゃん大好き」って言ってもらってからキスしてもらうんだ」

「甘ぇ!!俺はすでに写真スタジオを押さえてんだ!!奇跡の瞬間を永久保存するんだよ!!」

「限定フィギュアに幼女のチッスなんて夢のようデブ!みーなーぎってきたブヒー!!」

「なのはの唇は俺が守る!!」

 ドスドスとまるでバッファローの群れのように駆けて行く男達・・・いや、あえて漢達と呼ぼう。

彼らの姿が見えなくなるまで、二人はその場で互いを抱きしめあって怯えていた。

 まあ、あそこまで欲望に忠実な連中を前にしては無理もない・・・割と美青年の部類のそっくりさんが二人、抱き合っている姿がどういう風に見えるかはこの際置いておこう・・・ところで、最後に何か妙なのが混じっている気がしたのは気のせいか?

「・・・くっそ・・・あの杖・・・今度こそぶっ壊してやる!!」

「何であんなのが存在しているのよ。ここは魔法が存在していない世界のはずでしょう!?」

 口々にルビーへの怨嗟を並べ立てる二人。

 割と美青年の部類のそっくりさんが二人、道端で悪態をついている姿がどれだけ痛く見られるのか・・・以下略。

「あーちょっとキミ達?」

「「え?」」

 ルビーへの憎悪に熱くなっていたらしく、二人はいつの間にか自分の傍に第三者がいる事に気が付いていなかった。

 そこにいたのは制服を着た青年・・・つまりは警察官。

 しかも一人ではなく5人ほどが周囲を固めている。

 全員警棒を手に持って臨戦体制だ。

 二人にとってはWhat?な状況である。

「ちょっと訊きたいんだけど・・・これはキミ達かな?」

 一番近くにいた警官が、一枚のポスターを見せる。

 

【変質者注意 ×月×日誘拐未遂事件発生 犯人逃亡中 二人組みの犯人は仮面をかぶっている為に素顔は不明 髪や体格、服装が良く似ているので双子と思われる】

 

 そして例の如く、印刷された写真は昨日の襲撃のときの自分達だった。

「「げ!!」」

 二人揃って声をあげてしまった事は責められるものではないだろう。

 たとえそれで容疑を固めてしまったとしても・・・案の定、警察官の目が鋭くなった。

「これって君達そっくりだよね?仮面はつけてないけど服装とか髪とか?」

「そ、そうかもしれませんね〜」

 苦しいが言い訳を通すしかない。

 魔法を使えば簡単かもしれないが、管理外世界での魔法の使用はご法度だ。

 しかも、彼等は現在隠密行動中で派手な事をするわけにもいかない。

 下手をしたらあのくそ杖に気づかれてしまう。

「ちょっとOHANASI聞かせてもらえるかな?」

「「は、はい・・・」」

 ニコニコ笑う警察官に、二人は頷く事しかできなかった。

 余談では在るが、別世界にある巨大組織の・・・それも結構上位の男性が、いきなり休暇を取って第97管理外世界と呼ばれる世界にあわてて向かったという未確認情報がある。

 更には、その97世界のとある町の交番にイギリス紳士風の老人が現れ、容疑者の身元引受人になって引き取ってゆくという事があったそうな・・・ちなみに、老人の組織では軽く対人恐怖症になった二人のネコミミな女性が「杖怖い〜杖怖い〜」と呟いている姿がしばらく見られたそうな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『フフ、これでしばらくあの猫さんは海鳴に来るのを躊躇うでしょう』

『姉さんも裏で煽っていたようですし・・・トラウマになっているのでは?』

『え〜何のことかルビーちゃんわかりませんよぉ〜』

 深夜、子供だけでなく大半の大人も寝る時間、当然だがなのははベッドで、ユーノは部屋の隅の籠の中ですやすや眠っている室内で、二人を起こさないように気を使いながらルビーとレイジングハートが談笑していた。

 酒がのめれば乾杯していたかもしれない。

 内容は例のチラシとポスターと被害届についてだ。

『少し気の毒な気がしますね』

『それは誰がですか、レイジングハート?あの二人に関しては向こうから仕掛けてきたんだから、被害者は私達じゃないですかぁ〜?』

 一概にそう言え無い事が色々とレイジングハートのデータベースには記録されているが、過剰防衛などとは空気を読んで口にはしない。

『それにしても、なのは様の唇を賭けるなんて、どう考えてもやりすぎですよ姉さん?』

『誰がなのはちゃんの唇なんて賭けますか?』

『え?だって幼女って・・・』

 レイジングハートの中では幼女=なのはだったらしい。

 まあ普通は誰でもそう考えるだろう。

 なのはが聞いてたらなんと言うか知れないが。

『ちゃんと似顔絵も描いていたじゃないですか〜?』

『・・・まさか姉さん』

 あのポスターの最後にあったイラストのことを言っているのではあるまいな?

『でもルビーちゃん口がないから〜どうやってキスしましょ?』

 テヘッと笑っても誤魔化されない。

 それを世間様は詐欺と言うのだ。

 今頃、血眼になって猫を探している連中はそのまま血涙を流すかもしれない。

 そもそも、ルビーの何処が幼女だ?

『女というのはピュアな心を持ち続ける限り何時までも幼女なのです』

『姉さん、それダウトです』

『ええ〜?』

『ピュアの意味を知っていますか?』

『純粋って言う意味でしょう?ルビーちゃん何時でも純粋ですよ〜』

 ああ・・・その通りだ。

 ルビーは何時でも何処でも純粋に面白おかしく引っ掻き回す。

 これは|話にならない(だめだな)とレイジングハートは話の矛先を変えることにした。

『それにしたって、あの賞金十万円というのは・・・』

『”本当に捕まえることが出来たなら”、それこそ忍さんに文字通りルビーちゃんが一肌脱いででもお支払いしてましたよ〜』

 ルビーも連中が捕まるとは露ほども思っていない。

 少なくとも、この世界の一般人が何の用意もなく魔導師をどうにかできるとは思えない。

 連中の目的は不明だが、かなり後ろめたいことをしている様だと言うのはわかる。

 自分から騒ぎを起こすことは極力避けるだろう。

 同じ理由で秘密を守るために必死で逃げ回るはずだ。

 そこまで計算した上での、はっきり言って嫌がらせ以外の何物でもなかった。

『国家権力って偉大ですよね〜日本の警察って本当に優秀ですぅ〜』

 そして今日、例の二人組みの姿をしているところを警察に捕まったらしい。

 決定的な証拠がない事と、保護者の人間が引き取りにきてアリバイを証明して連れ帰ったという警察無線をレイジングハートが傍受した。

 これで少なくとも連中が三人以上であるという事がわかった。

 何が目的かはいまいち漠然としているが、連中に地の利がこっちにあることも示せたので牽制くらいにはなるはずだ。

 ちなみに被害届を出すときには、ルビーがウィンウィンな感じに魔術を使い、警察官を操って作らせた。

『あの人達の目的はジュエルシードじゃないようでしたから、これだけしておけば安易に手を出してこようとはしないでしょう』

 少なくとも、あの猫の姿と男の姿で町中を歩く事は出来まい。

 かなり行動は制限されるだろう。

 最終的にはどうにかしなければならないかもしれないが、ジュエルシードの問題を抱えている現状、そこまで手が回らない。

 なのはの負担が大きすぎる。

 なので実はこれが今出来る精一杯だったりするわけで、先にジュエルシードの問題を解決するのがルビーの判断だ。

『・・・姉さん?聞きたいことがあります』

 レイジングハートが不意に改まってルビーを呼んだ。

『何ですか?』

『なのは様は・・・”候補者”なのですか?』

『・・・・・・』

 ルビーが沈黙した。

 静寂が刃物のように鋭く場を満たしてゆく。

 話の中心であるなのははスウスウ寝息を立てて眠っていて起きる様子はない。

『・・・誤魔化しは無駄のようですからぁ〜質問を質問で返しますけど、一体どうやって知ったんです?そんな情報を与えた覚えはないんですけど〜ぉ?』

『平行世界の概念、そして姉さんの能力、魔法使い・・・それらを総合的に見て姉さんの”本来の在り方”を推理しました。・・・すいません』

『気にしなくていいですよぉ〜むしろさすが洗脳探偵、感心しますね〜あの凛さんもシロウさんも、結局ルビーちゃんの本来の用途には気がつかなかったって言うのに〜』

 ルビーに不快な様子はない。

 これはむしろ…楽しんでいる?

『ルビーちゃんに関してはレイジングハートは気にしなくても無問題、貴女の立場ならルビーちゃんも同じ事を聞きましたよぉ。|なのはちゃん(マスター)に関わる事ですからぁ〜』

『ではやはり・・・』

 レイジングハートは確信した。

 自分の推論は正しかったのだと。

『やはり、なのは様は候補者・・・』

『さて、それはどうでしょう?』

『え?』

『ルビーちゃんのマスターになることと、候補者であることは必ずしも同意ではありませんから』

『・・・しかし、姉さんだけはなのは様が候補者なのかどうかを知っているはず。姉さんは本来その為の礼装のはずです』

 ルビーはいったん言葉を切る。

 会話は終わりというよりも、何を話そうかと迷っているようだ。

『ルビーちゃんの製作者のくそ爺はですねぇ〜、作っている間に気づいちゃったんですよぉ〜。ルビーちゃんがパンドラの箱だって事に、一応は完成はしてくれたんですけど〜』

『それは・・・確かに姉さんの能力にはそういった一面がありますが・・・そのせいで封印を?』

『爺がどういうつもりだったかは知りませんし、知りたくもないですけど、概ねそういうことでしょう。シロウさん達は最後までルビーちゃんの性格のせいだって思い込んでいましたよぉ、失礼ですよねー?』

 それに関しては否定できない。

 レイジングハートだって、ルビーの正体に感づかなければ同じように思っていたかもしれない。

『なのはちゃんに嫌われたくないから、レイジングハートの疑問にはノーコメントです』

『・・・判りました』

『ところでぇ〜』

 ルビーの口調が変化する。

『・・・ユーノ君?寝てますよねぇ〜?寝たふりで乙女の会話を盗み聞いたりしていませんよねぇ〜?』

 おどろおどろしいルビーの声に、籠の中で丸くなっているユーノの毛が一瞬、ボワッと逆立ったように見えた。

『なのはちゃんには秘密ですよ〜もし話したりしたら問答無用で”ねじ切ります”から』

 ユーノの寝ている籠が小刻みに揺れている。

 それに満足したルビーは、定位置であるベッドで寝ているなのはの枕元に移動して寄り添った。

 レイジングハートも話は終わりとばかりに何も言わない。

 ユーノは「なんかとんでもない秘密を知ってしまったー!!」と「一体何をねじ切られるの!?」で眠れない夜が続き、体重が激減することになる。

 

説明
リリカルなのはに、Fateのある者、物?がやってきます。 自重?ははは、何を言ってるんだい? あいつの辞書にそんなものあるわけないだろう? だって奴は・・・。 ネタ多し、むしろネタばかり、基本ギャグ
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