真恋姫†夢想 弓史に一生 第二章 第六話 切磋琢磨
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〜聖side〜

 

「…う〜ん…。」

 

「あっ!! 聖様、お目覚めになりました〜?」

 

「あれっ…芽衣…。 それに…ここは俺の部屋…。」

 

「聖様は中庭で倒れたんですよ〜? 覚えてませんか〜?」

 

「そういえば、あの女!! 芽衣!!俺の近くにいた女は?」

 

「えっ!! …聖様が倒れてると侍女から聞いて駆けつけたときには誰も居りませんでしたが…。」

 

「そうか…。あいつは何者だったんだろうか…。」

 

「そ・れ・よ・り、聖様!? 朝方、その女性と何をしていたのでしょうか?(ゴゴゴッ)」

 

「何も無い!!何も無いからな!! 芽衣!!笑顔が怖いんだけど〜…!!」

 

「詳しくO☆HA☆NA☆SHI聞かせていただきますね。」

 

「…はい。」

 

 

−ガチャリ−

 

 

「聖はおるか?」

 

「蓮音様。どうかなさいましたか?」

 

「あぁ。ちと紹介したいやつが居てね。玉座の間に来てくれる?」

 

「はい。分かりました。」

 

「うん。良い返事ね。」

 

 

俺は玉座の間へと向かった。そこには…。

 

 

「ああ〜〜〜お前は今朝の!!!」

 

「あらっ、朝の子じゃない。起きて良かったわ。」

 

「なんじゃ、既に知り合いか?」

 

「実はかくかくしかじかで…。」

 

「それは…。うちの娘が迷惑をかけたみたいでゴメンね。」

 

「えっ!! 娘ってことは…。」

 

「この子は孫策、私の長女なのよ…。」

 

「ちょっと母様!! なんなのよその言い方〜!!」

 

「人様に迷惑をかけるダメ娘に呆れてるのよ…。」

 

「ぶ〜。だって…彼の武芸には魅入られるものがあって、それなりの手練れだろうと思ったのよ。それで切りつけたら分かると思ってやってみたら…。」

 

「こうなったってわけね…。 はぁ〜…聖…。此度は娘が迷惑をかけた。呉の王としてではなく、孫文台として、一人の母としてお前に謝る。本当にすまなかった…。」

 

「蓮音様!!頭を上げてください!! …確かに驚きましたが、さっき彼女の言ったとおり俺がもう少し手練れならこんなことにはならなかったわけですから…。」

 

「そうよ!! この男の子の言うとおりだわ!!」

 

「…。(ギロッ)」

 

「ひっ!?」

 

「…雪蓮?? …あなたは何かを言える立場なのかしら??」

 

「うっ!?」

 

「あなたは一度、一から鍛えなおした方がいいわね…。」

 

「ひ〜〜〜っ!! 助けて!!」

 

「えっ!? ちょっと、俺の後ろに隠れないでよ!!」

 

「なんじゃ、聖。庇うんならお前も一緒に鍛えてやる!!」

 

「ちょっ、俺まで巻き添えって!!」

 

「問答無用。さぁ、行くぞ!!」

 

「「た〜す〜け〜て〜〜〜〜!!!!!」」

 

 

こうして俺と孫策は、しばらく蓮音様の訓練という名の地獄を堪能するのだった…。

 

 

調練場で仰向けに倒れながら、俺は全身からくる痛みに悶えていた。

 

蓮音様は強い。その剣筋は至極のもの、むしろ武というより舞を舞っているように感じる。しかし、その一撃一撃は鈍器で殴りつけるような威力。それこそ一撃必殺の攻撃力を秘めていた。

 

なんとか立ち上がりまだ戦う意思があることを示す。ふと視線をそちらに向ければ、すでに仰向けで倒れている孫策…。俺もきっとああなるんだろうな…。

 

「おっ!! 立ち上がってきたね…。いいねぇいいねぇ。でも、そろそろ限界のようじゃな… 聖!! お前は自分に足りないものが何か分かっているか?」

 

「色々と足りないとは思っていますが…。強いて言うなら“目”ですかね?」

 

「ふむ、いい分析だ。まぁぶっちゃけ言うと経験も必要だがな…。」

 

「確かに、経験で得られるものは多いですからね…。」

 

「お前はさっき自分で言っていたとおり、その“目”を鍛えて早さについてこれる様になれ!! それまでは私が訓練をつけてやる。分かったか?」

 

「…分かりました…。」

 

 

母さん…。俺、死ぬかも…。先立つ不幸をお許しください。そんなことを思いつつ倒れこむ俺だった。

 

 

「さて、二人とも情けないの〜。私から一本でも取ってみようという気持ちはないのか?」

 

「あるけど…。母様は強すぎるわ…。」

 

「そんなこと無いわ…。雪蓮。あなたには武の才能がある。けど、それは諸刃の剣ともなる…。」

 

「それは…あのこと?」

 

「そうね…。さて、今日はこれで終わりにしましょう。明日はまた朝からやってあげるから覚悟しなさい♪」

 

「「地獄だ…。」」

 

「ふふふっ。」

 

 

そう言って蓮音様は出て行った。残された俺たちは床に二人して突っ伏していた。

 

 

「ねぇ、あなた。名前は?」

 

「そういえば…名乗ってなかったかな。俺は徳種聖。広陵郡の県令をやってました。」

 

「じゃああの天の御使い…。そう、噂とは尾ヒレが付きやすいものね…。」

 

「まぁ、そんなものですよ孫策さん。」

 

「雪蓮よ。母様が真名を許してるんだから、私もそうしなきゃね。」

 

「分かりました、雪蓮。俺は真名が無いから、適当に呼んで。」

 

「えぇ、じゃあ聖って呼ぶわね。」

 

 

少しの沈黙の後、雪蓮が徐に口を開いた。

 

 

「…ねぇ聖。何故あなたは戦うの?」

 

「えっ!?」

 

「私たち孫呉は、朝廷の崩壊後、いち早く一諸侯として立ち、国を新たにする。それは呉の人のためであり、家族のため…。そして、大陸全てが呉の民、家族となったなら幸せな日々を暮らせる。それを望んでいる…。」

 

「…俺は国の全ての人が手に手をとって皆で困難に立ち向かえるようなそんな国を作りたい。というかしなくてはならないって思ってる。それが俺に期待したまま亡くなっていった人達への弔いになると信じて…。」

 

「そう…。違っているようで私たちの思惑は近いってことか…。それを聞いて少し安心したわ。…さぁ、帰りましょう!!こんなとこに長居してると大変よ♪」

 

「雪蓮!! ちょっと待ってよ!!」

 

「待ったないよ〜!!」 

 

雪蓮は俺のほうを向いて笑った。

 

その笑顔は、華がぱっと咲いたみたいに綺麗な笑顔だった。

 

「勿論、武においてもね…。」

 

「えっ?? 最後なんて言った?」

 

「これから頑張りましょうって言ったのよ♪」

 

「そうなのか? まぁ良いや…。頑張ろうな雪蓮…。」

 

「頑張りましょう、聖…。」

 

 

そう言ってその日は二人とも自分の部屋に戻ったのだった。

 

 

とある日、今日も今日とて朝から蓮音様の特訓をうける俺。

 

 

俺のやってる特訓はというと…。

 

 

「さぁ次いくぞ!!」

 

「はい!!」

 

 

指先から足先まで全神経を集中して一瞬の行動に備える。次の瞬間、目の前に飛んできた矢を素手で握る。

 

 

「よしっ!!午前はここまでとしよう…。 頑張ったな。」

 

「はいっ、ようやく矢を目で追えるようになりました…。」

 

「これで大体の人間の剣戟は目で追えるだろう。これなら前線に立っても大丈夫だな。」

 

「それもこれも蓮音様のお陰ですね…。初めのころは殺されるかと思いましたけど。」

 

「鏃はちゃんと潰してあるから死にはしないさ。現に今生きてるだろ?」

 

「…まぁそうですけどね…。」

 

「はっはっはっ。そうだ!! 午後からは雪蓮と手合わせにしよう。」

 

「えっ!?流石にそれは無理ですって!!」

 

「な〜に、前のようなことはないと思うぞ。お主の成長、楽しみに見させてもらうな。」

 

「はぁ〜…。」

 

 

こうして何故か雪蓮と戦うことになるのだった…。

 

 

〜雪蓮side〜

 

 

こっちに来てからと言うもの…机仕事ばっかり!! あぁ〜つまんな〜い…。黄巾討伐の依頼も来ないし、本当につまらないわねぇ…。

 

こんな事なら建業からわざわざ来るんじゃなかった…。まぁ、母様に鍛えられるよりはマシだけどね…。

 

聖はどうなったかな!? 母様に毎日鍛えられてるんだもん、そりゃあマシにはなるわよね。一回手合わせしてみたいな〜。

 

 

そんなことを考えてると、母様がやってきて、午後から聖を相手に一戦してくれだって!!ちょうどいいわ、聖。あなたの成長見させてもらうわね。

 

 

昼御飯を食べてから中庭にやってくる。そこには手甲をつけた聖の姿が見えた。

 

 

「あらっ、手甲なんて使うの?あなたの武器は弓なんじゃないの?」

 

「弓は勿論得意ですが、近距離で戦うために手甲は欲しいんですよ…。これは今朝、蓮音様から戴きました。」

 

「ふ〜ん。じゃあ少しは楽しませてもらえるんでしょうね!?」

 

「さて、どうですかね。」

 

「食えないわね。じゃあ…行くわよ。」

 

 

私は剣を抜きながら切りかかった。速度としては前に襲ったときよりも少し遅いくらい。もし成長が見られなければこの一撃で勝負がつくのだが…。

 

 

「ギィン!!!ヒュ!!!」

 

 

聖はなんなくその一撃を受け止めて、そのまま廻し蹴りを放ってきた。私はそれを反ってかわし、距離を開けるために退く。

 

 

「ふふふっ。そう来なくっちゃ♪じゃあこれならどう?」

 

 

私は五歩程の距離を一足とびでつめて切りかかる。

 

その攻撃は受けられたが、攻撃に緩急をつけながら、猶も切りかかる。時に激しく、時に流々と。しかし気を抜けば一撃で倒せるほどの威力をこめて…。

 

しかし、聖はそれらを全て捌いていく。重い一撃のときはその攻撃を手甲を使って力を受け流し、軽いときには確りと受けてこっちの姿勢を崩すかのように…。

 

ふふふっ。面白い、面白いわ!!聖。あなたは相当強くなった…。それこそ私よりも強いかも…。果たしていつまで持つのか楽しみね…。

 

 

〜蓮音side〜

 

 

聖と雪蓮の手合わせが始まって約半刻。先ほどから一方的に攻め続けてる雪蓮に対して、全てを丁寧に捌いていく聖…。

 

見た感じで分かる、雪蓮が押されている…。

 

確かに攻め続けているのだが、決定的な一撃はなく、体力的にも雪蓮はあと少しだろう。それに対して聖は汗こそかいているものの、随分と余裕な顔をしている。

 

 

目が良くなっただけでここまで戦える人というのはそう多いものではない。それこそ武技というのは長年の経験がものを言うからだ。

 

しかし、聖からは武技の高さが窺える。それこそ雪蓮と戦っているというのに、まるで舞でも踊っているかのような、そんな洗練されていて無駄のない動き。聖に足りてなかったのは“目”だけだったってわけか…。

 

さて、そろそろ決着かな…。聖よ、お主はもう立派な強者になったのだな…。

 

 

 

 

〜聖side〜

 

初めこそその速さに驚いたが、だんだんと慣れてくることが出来た。これも飛んでくる矢を素手で掴むなんていう馬鹿げた特訓の賜物かな…。とはいえ、矢とは違い雪蓮はフェイント混じりの攻撃で俺を翻弄しようとする。

 

目が追いつくのでフェイントだって分かるんだけど、体は正直に反応しちゃってるんだよね…。ここら辺はもう少し慣れてこればマシになるかな…。

 

さて、そろそろこの手合にも終止符を打ちたい。雪蓮もそろそろ疲れてきているし、何より俺も疲れてる。捌くだけとはいえそろそろ腕が痺れてきた。さて、そろそろ動くか。

 

 

「はぁああああ!!!」

 

 

雪蓮が大きく振りかぶりながら切りつける。俺は雪蓮に向けて体を反転させつつ身をかがめ、雪蓮の手を取る。

 

雪蓮には俺が一瞬消えたように見えたのではないだろうか…。

 

雪蓮の体は俺を支点に空中で一回転をして俺の前にくる。所謂一本背負いを俺が雪蓮にかけた形だ。一瞬雪蓮の体が固まったが、すぐに空中で体を回転させて着地し、体勢を立て直すべく、身を引こうとする。

 

しかし、身を引く前に俺は足払いをかける。雪蓮は意識が上にいっていた事もあり、足払いでバランスはガタガタ…。俺の予想外の攻撃に目を見開く。雪蓮の体は完全に宙に浮いたが、それでも宙で身を翻して剣を振ってくる。

 

俺は剣筋を見極めながら、その剣を振る腕に合わせて手を添える。

 

 

「良いか雪蓮。無理に体勢を直そうと思うなよ。」

 

「えっ!?ちょっと…それってどういう…きゃあああああ!!!!」

 

 

雪蓮は回転しながら3mくらい空に飛んでいく…。すっげ〜飛んだな…。

 

俺は落下地点に先回りして雪蓮をお姫様抱っこの形で受けとめた。雪蓮の体は柔らかく、ほのかに香る良い香りが鼻腔をくすぐる…。雪蓮は俺の腕の中で驚きと恐怖の表情を浮かべていた…。

 

 

「これで俺の勝ちかな??」

 

「はっ!!…悔しいけど私の負けね…。聖、あなたは強くなった…。」

 

「雪蓮にそう言われると照れるね。」

 

「ねぇ、聖。あなた、私たち呉の将にならない?」

 

「残念だけど、それは出来ないよ。俺は俺の勢力を持つことに決めたから。」

 

「そう…。あなたとは戦いたくないわね…。」

 

「俺も戦いたくないよ。雪蓮みたいな美人とは剣よりも肩を合わせて町を歩いていたいしね…。」

 

「あら♪嬉しいこと言ってくれるじゃない。もしかして私を口説いてるの?」

 

「そっそんなつもりは…。」

 

「あらっ。私は良いのよ。私を負かすような人ですもの♪」

 

「勘弁してよ…。」

 

「はははっ。ゴメンね。でも、私は本気よ。」

 

「えっ!!」

 

「いいからそろそろ降ろしてくれない!?この格好結構恥ずかしいんだけど…。」

 

「あぁ!!!ごめんごめん。すぐに降ろすよ。」

 

 

俺はお姫様抱っこ状態の雪蓮を下ろした。名残惜しそうな俺の手…。雪蓮はいつものような笑顔を俺に向けると。

 

 

「楽しかったわ。またやりましょうね♪」

 

 

そう言って彼女は、自分の部屋へと歩いて帰っていくのだった…。

 

 

「冗談…だよな…。」

 

 

聖は、先ほど雪蓮の言った言葉を反芻しながらその後姿を見つめていた。

 

 

孫呉の姫を負かすほどの実力を得た聖。それと同時に、彼は姫の心さえも得たのであった。

説明
どうも、作者のkikkomanです。

ここでようやく孫堅さんの真名が登場!!その名も「蓮音(れんね)」

孫家の人は真名に蓮が入っているので、何か良い感じにくっつくものは無いか、と思案した結果これが生まれました。

他の作者さんの作品にも孫堅さんが出てくることはありますが、この真名は確か無かったはず…。なるべくなら人と被りたくは無いですからね…。


でも、もし被ってたらどうすれば良いんですかね…??

私の方が早ければ、私の方が優先されるんでしょうか…??

難しいところですね…。


さて、ここで祭さん登場!!呉の面子との顔合わせが急速に進んでます(笑)でも、だからと言って呉ルートに進むとなるかは…分かりませんよ。


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コメント
オリ主そんなつよくないね 期待外れかも(六道仙人)
>咲実さん    コメントありがとうございます。  そう言うことです!! 視力と言っても色んな種類の視力があるということです。(kikkoman)
まあ、動体視力と遠距離を見るための視力は別ですしね(咲実)
>ボンちゃんさん      コメントありがとうございます。  目も体も蓮音様の所で鍛えられたので大丈夫なんです!!(kikkoman)
弓兵でしかも1,2km先の動くものを射抜ける人に目が、、、って(^_^;)目に体が付いて来ないってのならまだわかりますが。。。(ボンちゃん)
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