真恋姫†夢想 弓史に一生 第二章 第九話 華に集まる蝶
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〜諸葛瑾side〜

 

その戦いは私たちの敗北で勝敗が決すると思っていた。

 

兵たちは数多く負傷し、数で圧倒的に不利。策も無く、今は後退しているだけ。兵たちの顔にもそんな表情が見て取れる。

 

ただ一人を除いて…。

 

 

「今だ!!!」

 

 

彼はそう言って火矢を放った。火矢は放物線を描いて飛んでいく。

 

すると、賊達の後方に岩が落ち始める。

 

突然の出来事に賊共は混乱、我先にと逃げ出す中、そこに放たれる矢の雨。賊共はその数を減らしていき、私たちの軍とさして変わらない数となった。

 

 

「策は成った!!今だ、先ほどの借りを倍以上にして返してやれ!!!!!」

 

 

 彼の声が戦場に響き渡る。

 

 私はその言葉にはっとし、急いで指揮を執る。

 

 

「今です!!反転して敵に当たるのです!!」

 

 

 

この後、戦いは直ぐに決着がついた。

 

どうやら、彼が敵将を討ったらしい。

 

それにより、敵は逃げるものもいれば降伏するものもいた。私たちは降伏した兵を後ろ手に縛って、寿春の城へと帰っていった。

 

 

所変わって、その日の夜。寿春城の諸葛瑾の部屋…。

 

 

賊討伐の報告を終え、部屋に戻った私は、今非常に迷っている。

 

果たして彼にお礼の一言を言いに行くべきか、それとも向こうも疲れてるだろうから休ませておくべきなのか…。

 

 

「やっぱり、今日助けてもらったんだから、お礼の一言も言わなきゃ失礼なのです…。でも、疲れてるのにそんなことで時間をとらせて良いんでしょうか…。う〜ん、迷うのです…。」

 

部屋の中であれやこれやと悩んでいるが、一向に解決はしない。

 

「よしっ!!覚悟は決まったのです。彼にお礼を言いに行くのです!!」

 

私は将館の廊下を歩いていく。

 

ドクン…ドクン…。

 

何故だか脈拍が速い…はやる気持ち…。これは緊張…。

 

でも何故?? たかがお礼を言いにいくだけなのに…。何を怖がっているの…。もう覚悟はしたじゃない…。そうだ…お礼を言いに行く…ただそれだけじゃないか…。

 

 

考えている間に、目的の人物の部屋の前にやってきた。

 

私は、呼吸をいったん整えると、扉に手を掛け、ゆっくりと開けるのだった。

 

キョロキョロ…。

 

薄暗い部屋の中で、目的の人物を探す。しかし、その姿は見当たらない。

 

……もしかして外出している??

 

しかし、よく見ると寝台が膨れ上がっている。ゆっくり近付いてみると目的の人物はスースーと寝息をたてながら、仰向けで気持ち良さそうに眠っていた。

 

「何だ、寝てたのですか…。相当お疲れなのですね…。」

 

まるで子供のように、ほぼ無警戒な表情で眠るその顔は、なんだか可愛らしかった。

 

「戦場での凛々しい顔つきをする貴方もいれば…このように幼い顔の貴方もいる…。貴方の本当の顔はどれなのですか…。」

 

乱れた掛け布団を直す。彼は、寝返りをうってこちら側に顔を向けてくる。私は腰を屈めて正面からその顔を覗き込む。

 

「今日はありがとうございますです…。貴方がいなかったら私は死んでいましたです。貴方に助けられたのはこれで二回目ですね…。」

 

私は辺りを見回し、誰もいないことを確認すると、

 

「これは…お礼なのです…。( ///) …ちゅ…。」

 

彼のおでこに口づけをする。

 

顔が離れると、林檎みたいに真っ赤に染まった顔が、熱くてしょうがない…。

 

「ちょっと、顔を冷やしに行くのです…。」

 

私は部屋を出ようと扉側に向き直る。

 

「んっ…。誰…?? そこにいるのは…。」

 

びくんっ!!!

 

 後ろからの急な声に体が硬直する…。

 

彼は、寝台から起き上がり、ゆっくりと近付いてくる。

 

「あれっ!? 諸葛瑾さん!!」

 

「…どうもなのです。」

 

「…どうしたのこんなとこで…。」

 

「いやっ、その、じつは、その…。」

 

「…まさか…。」

 

「お礼!! きょっ今日のお礼を言いに来たのです!! …そしたら寝ていたので帰ろうとしたところだったのです。」

 

「あっ…そうなんだ。じゃあゴメンね、寝ちゃってて…。」

 

「…別に謝らなくても良いのです。」

 

 

彼は苦笑いを浮かべながら、部屋の明かりをつける。

 

明るくなった室内では、確りとお互いの顔を確認できる。

 

「とにかく、今日は助かったのです。それだけ言いに来たのです。」

 

「わざわざ良いのに…。俺は味方が傷つくのが嫌なんだ。一人でも負傷者が減るように俺が頑張る、俺が身代わりになる。今日もその結果だよ…。」

 

「でも助けられたのは事実なのです。 …これで二度目ですね…。」

 

「あぁ、確かに…。諸葛瑾さんは命の危機に面することが多いね…。」

 

「仕方ないのです…。 私は人より不幸なのです…。」

 

「…どういうこと…?」

 

私は今まであったことを話しました。

 

家族のこと、水鏡塾のこと、そしてこの前のこと。

 

彼はその話を真剣に聞いてくれました。

 

私は、自分のこの不幸体質が嫌いで嫌いで仕方ありませんでした。だから、どうにかして解決法が欲しかったのです。

 

もしかしたら天の御使いなら知ってるかも…。そんな淡い期待をこめて彼に全てを話したのです…。

 

これに返す彼の言葉は…。

 

「頑張ったね。でも、もう大丈夫だよ。」

 

という意外な言葉でした。

 

「…どういう…意味なのですか?」

 

「その言葉のままだよ…。色んな苦労に遭いながらも、頑張って生きてきたんだろ? だったら、それを労ってもおかしくはないさ。」

 

「いやっ、そこじゃなく「でも!!!」…。」

 

「もう大丈夫だ。君はもう一人じゃない。何も出来ないわけじゃない。今は君の周りには仲間がいる、なら頼ればいいじゃないか…。助けを求めればいいじゃないか…。 …一人で不幸を抱え込むなんてするなよ。嬉しさや楽しさは皆と共有すれば何倍にもなるし、悲しいことや不幸なことは皆で共有すれば些細なものだよ…。」

 

「でも、それじゃあみんなに迷惑が…。」

 

「じゃあ諸葛瑾さんは、今まで誰にも迷惑をかけてないと?」

 

「…そのつもりですが…。」

 

ピシッ!!

 

「あいたっ!!!」

 

「誰にも迷惑かけてないだと!! じゃあ、今日死にかけたのは誰だ!! …もし死んでいたら、士気は下がり、俺達は全滅していてもおかしくは無かった。」

 

「…。」

 

「もう迷惑はかけてるんだよ…。でも、誰もそんなの気にしてない。というより、迷惑かけるのが当たり前だからな…。」

 

「…私は…そうは思いませんです…。」

 

「…皆を信用してないのか?」

 

「そんなことは!!! …無いのです…。」

 

「なら、迷惑かけていいんだよ。むしろ、かけてくれないと信用されてる気がしない。」

 

「そういう…ものなのですか…?」

 

「あぁ。人ってのはそういうもんだ。」

 

「じゃあ…ぐすっ…私は…ひっぐ、うっ…もうこの不幸体質に…人に迷惑をかけるのに…耐える必要は無いのですか…?」

 

「勿論だ!!! 少なくとも俺には…な!!」

 

「うわぁぁぁあああ〜〜〜〜ん。」

 

 

この体質を改善する方法が無いのは重々承知していた…。だから、誰も私の問題に答えることは出来ないと思っていた。それこそ私が死ぬ以外に…。

 

でも今日、彼は答えを出した。そしてその答えは私が欲していた解答…私の理想の解答と言える内容だった…。

 

もしかしたら、私の中でもすでに答えは出ていたのかもしれない。ただ後押しが欲しかっただけで…。

 

 

彼は、私が泣き止むまでずっと抱き締めていてくれた。それに気付いたときには直ぐに振りほどいて距離をとったけど、ちょっとばかし勿体無かったかな…。

 

とりあえず気持ちが落ち着いてから、私は気になっていたことを一つ尋ねる。

 

「そういえば谷の上に兵が伏せられていて、相手の退路を立ち、弓で大部分を殲滅するという大手柄をあげましたが、あれは…?」

 

「あぁ、あれね。いや〜助けに行く前にその後のことを考えて、とりあえず反撃の手段を講じておこうと思ってたんだ。それで、良い場所があったから、そこに兵を伏せておこうと思って、あらかじめ指示を出し、俺の合図で策がなるようにしておいたってこと♪」

 

「それをあの一瞬で…。」

 

「まぁ結果的に成功してよかったよ。」

 

彼は簡単に言っているが、味方の危機に駆けつけながら、反撃の手段を考え実行する行動力、判断力。その策を考え付くことなど、挙げれば普通の人間では出来ないことを平気でやってのけている…。軍師としてでも彼はやっていけるのでは…と思えてしまった。

 

そこで私は思いつく。

 

「すいませんが、私を弟子にしてくれませんかです!!」

 

「…?? ごめんよく意味が分からない。」

 

「私に軍師としてのご教授をお願いしたいのです!!」

 

「無理!! 俺はそんなに頭良くないし、そんなこと教えれないよ…。」

 

「でも、あなたの方が私よりもずっと頭が切れるのです。是非お願いしますなのです。」

 

「う〜ん…。じゃあ一緒に勉強ってことで良いかい? 俺も勉強しないと教えれないし、分かりにくいところを俺の戦場での経験とか合わせながら教えるってことで…。」

 

「勿論それで良いのです!! お願いしますなのです。」

 

「うん!!分かった。じゃあそうしようか…。」

 

「ありがとうございますなのです…。じゃあ先生と呼ばせてもらって良いですか?」

 

「先生っ!? 良いよ、そんなの…。俺には似合わない。」

 

「私がそう呼びたいのですが…駄目でしょうか…?」

 

私は彼を見上げる。

 

彼は破顔した表情で苦しんでいたが、気持ちを落ち着かせたのか直ぐに向き直って。

 

「まぁ、そう呼びたいのならそれで良いよ…。よろしくね、諸葛瑾s「((橙里|とうり))なのです」…へっ?」

 

「私の真名は橙里なのです。先生には助けてもらいましたし、これから色々と教えてもらうのですから、真名をお預けするのです!!」

 

「…ありがとう、橙里。これからよろしくね。」

 

「はいなのです、先生!!」

 

「うんっ!! 良い返事だ。」

 

そういうと先生は私の頭を撫でる。その暖かくて大きな手に撫でられると気持ちよくて心地よくて、安心できる…。

 

 

〜聖side〜

 

「んっ!?ここは…。」

 

気付けば俺のいるのはただひたすらに広大な草原。

 

空は青く、日も高く、風は心地よい程度の強さで吹いている。

 

どこかで経験した景色…。そうだ、これは…。

 

「だ〜れだ!?」

 

「俺はスーパーひとし君人形を使い、坂○さんだと答える!!」

 

「はい、ボッシュート♪ ちゃらっちゃらっちゃ〜。」

 

「そんな〜!!!!! スーパーひとし君が〜!!!」

 

「今週のトップ賞は、パーフェクトの黒○さんです!!」

 

「いるの!? 黒○さんいるの!? そしてパーフェクト賞かよ!! 強ぇ〜!!!!」

 

とまぁ、こんな会話が出来るのは一人しかいない…。俺は優しい笑顔で声をかける。

 

「よう、雅!!久しぶりだな。」

 

「久しぶりだね♪」

 

屈託の無い素敵な笑顔が、俺には輝いて見えて、ちょっと目を細めるのだった。

 

「それで?? 今日は一体全体どうしたって言うんだ?」

 

「うん!! 実は、ひーちゃんが呉にいてもう一年くらいになるんだけど、その間に変化した能力について報告しておこうかなって思って。」

 

「あぁ〜もう一年にもなるのか…。時がたつのって早いね…。」

 

「二十歳過ぎたら一瞬らしいよ。」

 

「じゃあ気付いたら俺もう40のおっさんか…。それまでに結婚してぇな〜…。」

 

「大丈夫だよ!! ひーちゃんには((婚礼者|フィアンセ))の私がいるから♪」

 

「…それって自分で言っていて恥ずかしくないのか?」

 

「…そりゃ私だって女の子だもん…。恥ずかしいに決まってるじゃん…。」

 

「分かって言ってるのか…。この〜愛い奴だな〜。」

 

がしがしっと雅の頭を撫でてやる。

 

「…ばか。」

 

「ん??何か言ったか?」

 

「何でも無いよ♪」

 

雅が何か言ったみたいだったが…俺には聞こえなかった。

 

「さて、じゃあ今の能力について説明するね!! 今はこんな感じ!!」

 

いつも通りにホワイトボードを取り出す雅。

 

名前 徳種(とくたね) 聖(ひじり)

装備 蛇弓(初期装備) 弓胴衣(初期装備) NEW核○(磁刀) NEW手甲 NEW蝶々マスク(パ○ヨン変身時のみ着用)

特性 ((武技達人|マスタートリート)) ((完全魅力|パーフェクトチャーム)) LOST ((幸運好色|ラッキースケベ)) NEW紙一重 NEW女難の相 

特技 ((幻視|ビジョン)) 博識 ((衛星視点|パラサイトビューイング))  NEW((陶酔静歌|トランキライザー))

能力 武 100 知 85 徳 95 魅 ∞(完全魅力により)

   力 40 IQ 140 運 -200 HP 250/250 素早さ 50(生体エネルギー変換により100) 敵遭遇率 68%

 

 

…項目増えてる…。

 

とりあえず、前よりも上がっているのが多くて助かるわ〜…。まぁ、蓮音様の下での修行が大きいかね…。

 

ってか、女難の相って!!そして運!!!もっと頑張れ!!やれば出来るって!!

 

「なぁ、雅。紙一重と陶酔静歌ってなんだ?あとLOSTってなに?」

 

「紙一重は、所謂見切りのことかな。その場その場での瞬間判断が早くなる、まぁこれは開花した才能だね♪ で後、陶酔静歌は人を引き込む歌が歌えるって言う能力だよ。これは程遠志って言う武将を倒したでしょ?その成果♪ 特性は武将を倒せば増えるし、やられれば減っていくの♪ だから今回みたいにやられればLOSTになるわけ。」

 

「俺やられたっけ??」

 

「孫策さんにやられたじゃない。」

 

「あれもカウント!!?」

 

「勿論!!」

 

「ぐぅ〜…。雪蓮め〜〜〜…。こうなったらあいつはしばらく禁酒の上、蓮音様の特訓の刑に処してやる!!」

 

「そんなこと出来ないくせに。」

 

「言ってみたかったんだ…。それにしても陶酔静歌は戦いには不向きだな…。」

 

「まぁそうだね。でも、使い道はあると思うけど。」

 

「まぁ考えてみるか…。」

 

「頑張ってね!!」

 

「あぁ、任せろ。」

 

「じゃあ今日はこれまで!!また今度〜〜!!!」

 

「だから急にハンマーは…い〜〜〜や〜〜〜〜〜〜〜ぁぁあああ……。」

 

 

いつも思うんだけど、ハンマー以外に本当に方法が無いんだろうか…。

 

わりと本気で解決策を考える聖であった。

 

 

説明
どうも、作者のkikkomanです。


前話なんですが…。

諸葛瑾さん書きやすいですね〜…。

こういう『自分は出来る』って思っている娘って結構いますよね…。そういう娘には現実を教えてあげるのが一番!! そう思って今回はこういう話を持ってきました。

作者としては、戦略面では色々と戦法、戦略があるだろうとは思うんですが…今回は、やはり単純で一番効率よく殲滅できる作戦が良いと思いましてこれを選んでいます。

また、機転を利かした聖の作戦も同様に簡単なものにしました。と言うか、急に小難しい作戦なんて思いつかないし、行うのに時間が掛かるので普通はやらないでしょう…。

岩を集めるのが早すぎるんじゃないか?と言う質問があるかもしれません…。岩としては崖肌を壊したりして準備したと思ってください。また、聖が諸葛瑾を助けに行ったり、前線を持ち直したりと時間をかけているので、準備にかかる時間は稼げているはず…と言うのが作者の考えです…。ご理解戴けるとありがたい…。


また、私の小説を以前に読んでくれたことがある人は、諸葛瑾の真名が変わっているのに疑問を覚える人が居るかもしれませんが、作者がTINAMIで探したところ、あの名前で、しかも同じ諸葛瑾の方がいらしたので、その人と被るのを避けるために変えました。

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