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「……き、君は?」

 

金髪の男が、振り返りながら呟いた。

 

「タバサの使い魔だ。魔法使いだが、平民だ」

 

「……貴族の食卓を平民の血で汚す訳にはいかない。ヴァストリの広場で待っている。

用意が出来たら、来たまえ」

 

 ギーシュが歩いて行くと、その取り巻き達も、案内役に一人残して

その後を追って行った。

 

「お、おい!何があったんだよ!?」

 

才人が、向こうから走って近寄ってくる。

後ろにも、ルイズやタバサがいた。

 

「才人、いいところにきた」

 

「えっ?」

 

「この子、厨房に送っといてくれ」

 

「分かった……じゃなくて!何の騒ぎだったんだよ?」

 

「ちょっと決闘してくる」

 

「決闘って……大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だろ、多分……

とりあえず、そのメイドの子、頼んだぞ?」

 

「お、おう……」

 

才人が、メイドを引っ張って奥に行った。

 

 

あれ?この文だけだと才人が変態に見える……不思議!

 

 

「誰と戦うの?」

 

馬鹿な事を考えていると、タバサが質問してきた。

 

「金髪の男。薔薇もってた。二股してた」

 

「ギーシュね……」

 

キュルケが歩いてきながら呟いた。

 

「どのくらい強いんだ?」

 

「彼は土のドットメイジ、メイジのランクとしては最下級。

戦闘に於いては他のドットより強い。」

 

「へぇ……大体分かった……かもしれない。

んじゃ、ヴェストリの広場はどこだ?」

 

案内役として残った一人の男に、声をかける。

すると、案内役は顎をしゃくった。

 

「こっちだ。平民」

 

 そして案内された先――ヴェストリの広場には、ギーシュという男が既に待っていた。

おまけに、結構な数の人も……。

 

「諸君!決闘だ!」

 

ギーシュが薔薇を掲げると、観客が沸き立つ。

 

お前らどんだけ暇なんだよ。学生だろ?勉強とかしろよ。

 

「とりあえず、逃げずに来た事は褒めてやろうじゃないか」

 

「自分より弱い奴に逃げる理由が無い」

 

こんな安い挑発に、ギーシュが薔薇を強く握り締める。

 

「このっ……!ま、まあ、いいだろう。では、始めようか!」

 

「ああ」

 

ギーシュが薔薇を掲げるように、俺も剣を取り出し、構える。

 

「ふっ」

 

その時、ギーシュが余裕綽々で笑い、薔薇を振った。

 

花びらが一枚、宙に舞い……地面に落ちて……

 

パァ……

 

地面が光ると、ギーシュと同じぐらいの身長の金属人形が現れた。

 

あれは―――『ゴーレム』か?

 

「決闘の作法として、一応名乗っておくよ。僕の名はギーシュ・ド・グラモン。

二つ名は『青銅』――『青銅』のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』が

お相手するよ」

 

「俺はヴェル、二つ名は無い」

 

あるっちゃああるんだが……言うのが恥ずかしいな

 

ちらりとギーシュが作り出したゴーレムを見る。

 

ゴーレムは、顔は目と鼻しかなく、手もキッチンミトンみたいな大きな手。

鎧や兜も大した装飾が施されている訳でもない。本当に出来の悪い人形だ。

 

「……何だよ、一体だけか?」

 

「君のような平民に本気で行くわけないだろう?」

 

皆の前でゴールドを作ったから、多少は怖がると思ったけど……平民だからか?

 

「行け!ワルキューレ!」

 

ギーシュは、俺に向かって杖を振り下ろした。

それが引き金だったのか、ギーシュのワルキューレは人外の速度で疾駆し、

俺にその青銅の剣の切っ先を向ける。

 

―――遅いな。

 

上から振り下ろされる剣を、左手で握る剣で弾き飛ばす。

青銅の剣は、空高く吹っ飛び、少ししてからギーシュの隣に突き刺さった。

 

うわぁ!という情けない悲鳴が聞こえるが、誰でもそうなるだろう。

俺でもそうなる。

 

「い、行け!」

 

再びギーシュが杖を振り下ろし、ワルキューレが動く。

ワルキューレは、拳で襲い掛かってくる。

右手でのストレートをしてくるが、弾いて上段から剣で叩きつける。

 

ワルキューレが物凄い勢いで地面に叩きつけられ、粉砕された。

 

「なっ……!」

 

観客やギーシュから、驚きの声があがってくる。

 

「どうした?もう終わりか?」

 

「くっ……!まだだ!」

 

ギーシュが杖を振り、六対のゴーレムが出てくる。

 

ゴーレムたちは、作戦もへったくれも無かった。

それぞれが剣を構えて、突撃してくるだけ……

 

「めんどくさい!一気に終わらすぞ!」

 

懐から、巻物を取り出し、魔力を入れる。

 

「行け!『ドラゴン』!」

 

輝く光が周りを包み込み、巻物からドラゴンが飛び出してきた。

周りから悲鳴が聞こえてくるが関係ない。

 

「派手にぶちかませ!」

 

シルバードラゴンは、頷いた後、真っ白いブレス……いや、冷気を吐き出した。

周りが見えないくらい真っ白なブレス……

それが消える頃には、ゴーレム達も氷像になっていた。

 

「ど、ドラゴン……!?」

 

ギーシュが座り込み、後ずさる。

周りの生徒も逃げたり悲鳴を上げたり……少しうるさい

 

「トドメに一発!」

 

シルバードラゴンは、腕を高くあげる。

ギーシュが目を瞑った。

シルバードラゴンは腕を振り下ろして……。

 

―――氷像を粉砕した。

パキィン、と砕け散る音が響き渡る。

 

「……あ、あれ?」

 

ギーシュが、硬く閉じた目を開ける。

 

「お疲れさま、ゆっくり休んでくれ」

 

シルバードラゴンが、静かに鳴いて、消えた。

 

「おい、ギーシュ」

 

「ぼ、僕の負けだ……」

 

ギーシュが俯いて、小さく呟いた。

 

「んじゃー勝者の権限で一個だけ命令するぞ」

 

「……分かった」

 

素直にギーシュが立ち上がった。

……マジで素直だな。

 

「初めに、メイドの子に謝ってやれ」

 

「……香水を拾った子かい?」

 

「そうだ、後は……二股とかやめたほうがいいぞ?」

 

「……できるだけ気をつけてみるよ」

 

「あぁ、んじゃ―――解散だな」

 

 貴族の学生の観客達は見たい光景が見られなかった不満を漏らしながら

殆どが帰っていった。ギーシュは、さっそく女の子に謝りに行った。

残っているのはタバサ達や当事者達だけだった。

 

「あれってどんな魔法なのよ!」

 

ルイズが近寄って、問い詰めてくる。

才人は「ファンタジーだな」とか呟いてた。

 

「召喚魔法?」

 

いつのまにか隣にいたタバサが呟いた

 

「そ、お前達の言う、東方の魔法だ。」

 

「東方……」

 

ルイズが小さい声で呟いた。

 

「あ、お昼休みがいつまで続くんだ?」

 

「まだ大丈夫。決闘に時間はかからなかった」

 

「そうか、んじゃまだ食べる時間はあるか?

動いたせいで腹減った」

 

 

俺達は、食堂へと戻っていった。

 

説明
8話『決闘』
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異世界 最強 チート ゼロの使い魔 

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