仮面ライダーエンズ 第九話 策謀と挑戦とデスゲーム
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現在ロストグラウンド学園は、とある話題で持ちきりだった。

 

内容は、今絶賛人気沸騰中のシューティングゲーム、『インキュベーダーマストダイ』についてだ。プレイヤーは戦闘機のパイロットになって、インキュベーダーという宇宙怪獣と戦っていく、まぁよく言うところのインベーダーゲームのようなものなのだが、バーチャルシステムが採用されているため実際に自分が操縦して戦っているかのような感覚が楽しめ、意表を突かれるような敵の攻撃など、なかなかレベルの高いゲームに仕上がっている。

そもそもインキュベーダーとは、とある魔法少女系アニメに登場するマスコット的な可愛らしいキャラクターの本名なのだが、実際はそのアニメにおける全ての黒幕であり、やっていることも外道そのもの。あまりの外道っぷりにかなりの視聴者が激怒し、『こいつを好きなだけいたぶれるゲームを開発してほしい』という多数の要望のもと、このゲームが開発された。タイトルの意味も、インキュベーダー死すべし、と、そのまんまである。当然ロストグラウンド学園にもそのゲームにハマっている者がおり、攻略情報を交換し合っている者までいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕としてはこのアニメ、かなりの良作だと思うんだよ。」

スザクもまたこのゲームのプレイヤーで、元となったアニメについて、いつものように親友、ルルーシュに熱弁していた。

「なぜだ?俺からすれば、あんなつまらないアニメはないと思うが。」

ルルーシュはそう言うが、スザクは否定する。

「甘いねルルーシュ。いいかい?これまでの魔法少女モノといえば、魔法の杖に使い魔、さらに異形の怪物と戦っていくというのが一般的だった。しかしこのアニメは、実は使い魔こそが全ての黒幕であるということ。戦い続けていけばいずれ主人公も怪物になってしまうということなど、魔法少女モノとしての常識を破壊している。あまりにも設定がありきたりすぎて『飽き』が来ていた魔法少女アニメ業界だが、このアニメの出現はその業界に新たな風を巻き起こすはずだ!世間でこそ鬱アニメと言われているが、僕は新たな革命が起きると信じる!」

「わかったわかった!わかったから落ち着け!!」

いい加減スザクの熱弁にイライラしてしまうルルーシュ。当然だが。

「おっと、つい熱くなっちゃったよ。じゃあ本題に入るね?」

どうやら本題はここかららしい。

「実は今週の土曜日、このゲームの全国大会がこの街であるんだ!それに参加しようと思うんだけど、ルルーシュも参加しない?」

「断る。」

「何でさ?シューティングは、ナイトメア戦で慣れてるだろう?」

「興味がない。」

「う〜ん…それじゃあ皇魔。一緒に参加しない?」

「なぜそこで余に振るのだ!?」

いきなり話を振られて驚く皇魔。

「いいじゃないか。もしかしたら君がデザイアと戦うのに有効な何かを得られるかもしれないし」

「断る。余は興味が「いいじゃない。」…レスティー…」

皇魔とスザクの会話に割り込むレスティー。

「自分は一刻も早く力を取り戻さなきゃいけないから、遊んでる暇なんてない…そう思ってるのはわかるわ。でも、休息だって必要よ?それに、ここ数週間あなたの側にいてわかったけど…」

「…何だ。」

「あなた、人付き合いが苦手みたいじゃない。人付き合いって大切だから、こういうのをきっかけにしてでも慣れていくべきよ?」

「必要ない。余はデザイアと戦うための力さえあれば、何もいらぬ。」

「そう言うなって。俺も行くし」

今度は日向が割り込んできた。ゆりも一緒に言う。

「あたしも行くから。音無くんやかなでちゃんも一緒にね」

「僕も行くことを忘れないでほしいな。」

自己アピールする直井。

「余が行く理由にはならんではないか!」

「そんなこと言わないで。土曜日の大会には、結弦も選手として出場するから。」

言ったのはかなでだが、

「それが何だというのだ!余が行く理由にはならんだろう!」

断固として拒否する皇魔。

「そう言わずに、見るだけでもいいから来いよ。気分転換にはなる」

最後に音無が言い、

「だから、貴様らはなぜ面倒事に余を巻き込むのだ!!」

皇魔は悲鳴にも近い声を上げた。

 

 

 

 

 

 

結局レスティーの、自分のセルメダルをあげるから、という言葉に折れ、皇魔は行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

街を散策していたメイカーは、自分の足元に飛んできたポスターを拾う。そこには、『第一回インキュベーダーマストダイ全国大会開催!!』と書いてあった。

「ほう…これは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

土曜日。

ついに始まった全国大会。ロストグラウンド学園から出場するのは、スザク、日向、音無の三人であり、皇魔、レスティー、ゆり、かなで、直井、ルルーシュは観客席での応援だ。

試合形式は、各ブロック一対一でゲームを始め、クリアまでの得点を競うというものである。クリアできなかった場合はその場で敗北が決定し、両方ともクリアできなかったらその時点での得点を競う。

 

と、ルルーシュは皇魔の様子に気付く。

「どうした?すごいクマだぞ?」

皇魔の目元に、すごいクマができていたのだ。

「…」

皇魔は何も言わない。だんまりを通している。レスティーはルルーシュにテレパシーで伝えた。

(実は皇魔ね、夢を見たの)

(夢?)

(こんな夢よ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇魔の目の前に、小動物がいた。小動物は言う。

『僕と契約して、魔法少女になってよ!』

この小動物こそ、インキュベーダーである。たまにアニメを見るので皇魔は知っていた。しかし、同時に妙にも思う。

『余は男だぞ?契約を迫るのは筋違いなのではないか?』

それを聞いて、インキュベーダーは言った。

『何言ってるんだい?君は女の子じゃないか。』

『何を血迷ったこと…を…?』

皇魔は見た。

 

 

 

 

そして気付いた。

 

 

 

 

自分が、例のアニメの主人公である少女と同じ姿、服装であるということに。

『な…な…』

声まで同じになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

そこで皇魔は目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(で、起きた時間は真夜中だったんだけど、同じ夢を見そうで、今まで眠れなかったの)

(…災難だな)

ルルーシュは皇魔に、哀れみの視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合はヒートアップし、何とスザク、音無、日向は三人とも決勝戦まで残った。決勝戦は残った選手四人によるバトルロワイヤル方式である。といっても、やることは今までと変わらないが。

「結弦、すごい。」

「さすが、音無くんね。」

「音無さんは当然だが、あの二人が残ったのは奇跡だな。」

それぞれ感想を言うかなで、ゆり、直井の三人。

「スザクはかなりやり込んでいるからな。」

ルルーシュは頷く。

「でも相手は…」

ゆりは四人目の選手を見た。その選手の名前は、名島三平(なじまさんぺい)。様々なゲームの全国大会に出場しており、今のところ負けなしというかなり有名なゲーマーである。

「けど、なんだか様子がおかしくないかしら?」

かなでは名島の不審な点に気付いた。目がうつろで、しかも小刻みに震えている。明らかにまともな状態ではないのだが、それでもここまで負けなしだ。さすが天才ゲーマー、と、全員が思っていたが、とある言葉によって、それは驚愕に変わる。

 

 

「さっきからシードの気配がするんだけど、周囲の欲望が強すぎるせいで、うまく居場所が掴めないわ…」

 

 

言ったのはレスティー。それを聞いたルルーシュは驚く。

「シードの気配だと!?」

「まさか、シードに寄生されてるとか!?」

ゆりは再び名島を見るが、名島はなんともなっていない。シードに寄生された場合、身体に包帯のようなものが巻き付いていたり、額に赤いオーブが出現しているはずなのだ。

 

その時、

 

「な、なんだ君は!?うわっ!!」

「ぎゃあっ!!」

司会者と警備員をはね除け、怪人形態のメイカーが現れた。大パニックになる会場。だが、

「静粛に!」

メイカーがマイクで言った瞬間、観客達は黙った。メイカーはそのまま演説する。

「今日はゲームが好きらしいあなた方を、素晴らしいゲームにご招待しようと思います。」

メイカーの発言に、再びざわつき始める会場。メイカーは構うことなく続ける。

「ルールは簡単。彼と勝負をして、勝っていただければいいのです。」

メイカーが指名した相手は、名島だ。

「試合形式は一対一で、挑戦者は自由です。今勝ち残っている方でも、会場からの飛び入りでも構いません。ですが、全ての挑戦者が敗れた場合は…」

メイカーは、何かのスイッチを出す。

「このスイッチを押して、会場に仕掛けてある爆弾を爆破させていただきます。」

「ば、爆弾!?」

「おいおい!観客全員人質ってことかよ!!」

驚く音無と日向。会場からも悲鳴が上がる。

「さぁ、早速始めましょう!まずは誰からですか!?」

それらを尻目に催促するメイカー。名乗りを上げたのは…

「くそっ!!俺だ!!やってやる!!」

日向だった。

「では、準備を始めてください。あと、会場の皆さん。」

メイカーは観客達を睨み付ける。

「当然ながら逃げようとしても爆破しますから、ご注意を。」

 

 

 

 

「準備は終わったぜ!その代わり、俺が勝ったら…」

「わかっています。皆さんを解放しましょう」

そして、ゲームが始まる。バーチャルシステムが作動し、出現するインキュベーダー達。ここまでは普通だ。しかし、日向は異議を申し立てる。

「何だよこれ!!ライフが二つしかねぇじゃねぇか!!」

そう、本来なら五つあるライフアイコンが、二つまでしかなかったのだ。しかし、メイカーはしれっと言う。

「天才ゲーマー相手に、ただやるのではつまらないでしょう?それから、難易度もさらに高いものに上げさせてもらいました。」

「汚ねぇ!!」

「そうでしょうか?彼を見てください。」

メイカーは名島を見る。名島は敵の攻撃を避け、確実に得点を増やしていた。

「マジかよ…うわっ!?」

被弾してしまう日向。

「よそ見をしている暇がありますか?」

「くっそ…!!」

メイカーから指摘を受けた日向はすぐに反撃に出る。しかし、難易度が半端なく、既に一撃喰らっている状態なので、すぐ負けてしまった。

「ゲームオーバーですね。さぁ、次は誰の番ですか!?」

さらなる挑戦者を捜すメイカー。今彼は、こう思っていた。

(いいですよ…観客達の『生きたい』という欲望が高まっています。彼らには、我々の使命の尊い犠牲になってもらいましょう)

メイカーの目的は、観客達の生きたいという欲望を利用して、セルメダルを増やすことだったのだ。

「くそ…まずいぜこいつは…」

音無のところまで来る日向。

「確かにまずいな…」

音無は状況を確認する。難易度は極限まで高い状態で、相手は最高のプレイヤーを味方につけている。その上、挑戦者がいなくなれば大量虐殺…どう考えても不利すぎだ。

(くそ…どうすればいい!?考えろ!!考えるんだ!!)

必死に打開策を考える音無。と、スザクが言った。

「僕が行くよ。」

「枢木!?でも!!」

「僕ならいける。いろいろと慣れてるからね」

音無が止めるのも聞かず、挑もうとするスザク。

 

次の瞬間、

 

 

 

 

 

「余が相手だ!!!」

 

 

 

 

 

会場に声が響いた。名乗りを上げたのはもちろん、皇魔である。皇魔は一度跳躍し、空中で一回転してゲームのコックピットにたどり着く。

「始めようではないか。」

「…ずいぶんな自信ですね。いいでしょう」

承諾するメイカー。音無は慌てて駆け寄る。

「おい皇魔!お前、このゲームやったことあるのか!?」

「ない。だが、操作法は知っている。それだけわかれば十分だ」

音無は、皇魔の言っていることの意味がわからなかった。相手は天才ゲーマーで、自分は全くの初心者。にも関わらず、操作法さえわかれば十分だと言ったのだ。

 

 

 

だが、音無はなぜか安心できた。

 

 

 

皇魔なら、絶対に大丈夫だと。

 

 

 

 

 

やがてスタンバイが終わり、ゲームが始まる。相変わらず天才的なプレイを見せる名島だが、観客達はそれ以上に、皇魔の操作に目を奪われていた。

 

ここで改めて説明しておくが、皇魔の正体は転生したエンペラ星人である。宇宙船の操作は手馴れたものだ。

 

そして、今まで生きてきた数万年分の記憶と経験が、皇魔の中には残っている。

 

「遊びと実戦。どちらの次元が上かと訊かれれば、当然実戦だ。遊びの経験しか積んでおらん小僧に、実戦経験を積み続けてきた余が敗れると思うか?」

そして、ついにゲームクリア。得点は満点。名島の得点は、皇魔に一歩、及んでいない。皇魔の勝ちだ。糸が切れたかのように倒れる名島。

「ちっ…洗脳が…」

メイカーは舌打ちした。メイカーは既に洗脳能力を備えたシードを生み出しており、洗脳が解除される条件として名島の敗北を設定していたのだ。

「遊びは終わりだ。」

皇魔はリフレクターマントを出しながらコックピットから飛び出すと、流れるような動作でメダジャベリンを取り出し、柄を伸ばしてメイカーの手からスイッチを弾き飛ばす。

「本当の意味でな。」

そのままレゾリューム光線でスイッチを消滅させたあと、メダジャベリンを真上に放り投げ、レスティーのもとから瞬間移動で飛んできたエンズドライバーとコアメダルをセット。

「変身!」

 

〈クレアボヤンス!ヤリ!ホノオ!ク・ヤ・ホ♪クヤホク・ヤ・ホ♪〉

 

変身してメダジャベリンをキャッチし、メイカーに向けた。会場から歓声が上がる。

「さぁ、貴様のシードを出せ!」

「…いいでしょう。来なさい!」

エンズから言われ、メイカーは自分が生み出したシードを呼び寄せた。やがてやってきたものを見て、エンズの思考は停止する。

 

 

 

やってきたシードは、インキュベーダーがそのまま人型になったようなシード、インキュベーダーシードだったからだ。

 

 

「…」

エンズは沈黙し、観客達も黙る。すると、インキュベーダーシードはカタコトで、しかも野太い声で、こう言った。

「僕ト契約シテ、魔法少女ニナッテヨ!」

その言葉を聞き、今度こそ弾かれるように逃げ出す観客。ついに観客は、音無、日向、スザク、ルルーシュ、かなで、ゆり、直井、レスティーしかいなくなった。

「僕ト契約シテ、魔法少女ニナッテヨ!」

同じことを繰り返して言うインキュベーダーシード。

「…」

エンズはまだ黙っている。そして、

「僕ト契約シテ「うああああああああああああああ!!!」」

エンズはインキュベーダーシードに襲い掛かり、メダジャベリンで滅多打ちを始めた。

「な、なに!?」

「皇魔くん、どうしたの?」

「錯乱したか!?」

驚くゆり、かなで、直井。レスティーとルルーシュは事情を知っているので、何も言えなかった。

 

 

数分後。

 

 

「ボ…ボクト…ケイ…ヤ…」

必殺技さえ喰らうことなく、インキュベーダーシードは砕け散った。エンズはメイカーを睨む。

「貴様…よりによってなんというシードを生み出すのだ!!」

「えっ!?えっ!?」

エンズの気迫が凄まじすぎて加勢できなかったメイカーは、さらに慌てる。エンズはゲーム中ですら理性を保つのに苦労していたのだから、こんなシードを生み出されたのは、全くもって運が悪いとしか言いようがない。

「レスティー!!!」

「はっ、はいっ!!!」

レスティーは気迫に圧されながらもエンズの要求を察し、メダルを瞬間移動で渡す。

 

〈マグマ!コウセン!ホノオ!マホマホ〜♪マグコーホー♪〉

 

「貴様は…生かして帰さん!!!」

エンズはマグコーホーコンボにコンボチェンジし、光速の十倍で動きながら、反撃も許さぬ攻撃を繰り返す。

 

〈スキャニングチャージ!!〉

 

「ウオアアアアアアアアアアアア!!!」

マグコーホーストライクを放つエンズ。

「くっ!」

対するメイカーは電磁シールドを生成し、正面から受け止める。

 

拮抗する力と力。やがて、

 

「ぐあああああ!!!」

メイカーは敗れて弾き飛ばされ、

「ぐっ…次こそは必ず…!!」

スモークグレネードを使って逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

「…」

皇魔はベッドの上に横になっていた。レスティーは今回の皇魔が可哀想すぎて声をかける気が起きず、自分達の分と海馬に渡す分のセルメダルを分けていた。と、

「…」

レスティーは一枚のメダルを出す。

 

 

それは、灰色のコアメダル。メイカーのコアメダルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。

例のアニメは最終回を迎え、スザクは皇魔に感想を言った。

「やっぱり神アニメだったよ!」

「もう良いわ!!」

 

 

 

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次回、

仮面ライダーエンズ!!

 

カザリ「嫌だって言ったら?」

 

コレク「貴様には知る権利がある。」

 

海馬「デザイアの研究資料!?」

 

 

第十話 取り引きと研究とデザイアの秘密

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今回は、あのネタです
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