魔法少女リリカルなのは〜ザ・ウォーカーズ〜
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   魔法少女リリカルなのは〜ザ・ウォーカーズ〜

 

 

 

  序章「プロローグ」

 

 

 

 

 魔法。

 

 それは、神々が起こす神秘たる奇跡の代名詞。

 

 人の手ではどう足掻いても起こす事の出来ないもの。

 

 神と世界が認めた者のみしか、起こす事が許されないモノ。

 

 故に人は、其処に至る神秘を求める。

 

 そして人間が手にするは小さな神秘。

 

 だがそれは、人が時間と労力えお費やせば至れるモノ。

 

 しかし、これこそが魔法への確かな第一歩であり、神秘と奇跡の体現の一端でもあった。

 

 故に人々は魔法への尊敬と希望を込めてこう呼んだ。

 

 …………『魔術』…………と。

 

 そして、それらに関る知識、技術を『魔道』と呼んだ。

 

 人々は魔道を志し、魔術を昇華させ、魔法へと至ろうとした。

 

 しかし、その道のりは遥かに険しく厳しい者だった。

 

 だが、人は己の欲望の為なら何処までも勇敢に、残虐に、冷酷になれた。

 

 しかし、それでも魔法へは至らなかった。

 

 それでもなお、人々は諦める事はしなかった。

 

 そして、幾年月の年月が流れる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時に新暦六十五年。

 

 第一管理世界ミッドチルダにて、時空管理局本局に吉報が舞い降りる。

 

 闇の書の消滅。

 

 さらに闇の書改め夜天の魔導書の主は管理局に従事。

 

 強力な手駒を手に入れた管理局は、過去の闇の書事件を盾に管理世界を増やしていく。

 

 まるで自分たちこそが闇の書事件解決の立役者であるかのように……。

 

 そして新暦六十六年。

 

 物語は此処から始まった…………らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それより少し昔の話。

 

 ベルカと呼ばれた国のとある場所に、その男はいた。

 

 周囲を機械に埋め尽くされた空間で、ソコの中央だけがぽっかりと空間を作っている。そしてソコに彼はいた。

 

 ボサボサの白髪に腰まで伸びた長い頭髪を首の所で一つに束ね、唇が何処にあるのかも分からないくらい伸びたヒゲ。前髪も目元を覆い隠し、辛うじて眼鏡を掛けているのが分かるくらいである。服装も作業着に白衣と繋がりが無い。

 

 しかし、男の瞳はその中で透き通った銀色をしているのが分かる。

 

 男の周囲には十数個に及ぶウインドウパネルが、恐ろしいほどの勢いでスクロールしている。そして男の手元には二つの操作パネル。男の手の速度も認識するのが難しいほどの速度でパネルの叩く。

 

 それらはすべて何らかしかの数式が写っていた。

 

「やれやれ、ようやくコイツも完成に至ったか」

 

 ウインドウパネルの間から一冊の本に、男の目はいっていた。

 

「魔道書型リンカー術記録端末。まったく注文の多いベルカ王だったこと」

 

 ぼやきながらも、男の口元が笑っているのが髭越しにも分かった。そしてウインドウパネルの数が徐々に減っていく。

 

 どうやら作業ももうすぐ終了のようだ。

 

「そう言えば、まだコイツの名前を決めてなかったな」

 

 本来なら持ち主に付けさせるのだが、自分にこんな事をさせた意趣返しに、付けてしまおう。

 

「そうだな……、『夜天』とでも名付けるか」

 

 男の呟きを聞く者は居ない。此処に居るのは男と魔道書のみ。

 

 そしてそれは、誰の知る事でもなかった……。

 

 

 

 

 

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 第一話「降り立った者」

 

 

 

 第一管理世界ミッドチルダ。

 

 それは、新暦66年の春先に起こった事件だった。

 

 ミッドチルダ首都クラナガンのとある銀行でその事件は起こった。

 

「おらおら! 死にたくなかったらとっとと金を持って来い!」

 

 ミッドチルダにおいて禁忌とされた道具。質量兵器をその右手に持ち、銀行内にいる人たちにその銃口を向けるのは一人の男。左手には銀行の女性職員が捕まっている。

 

 銀行強盗。そう呼ばれる類いの事件である。

 

 そして、男の仲間と思われる人物が三人。

 

 うち二人は自動小銃と散弾銃を片手に銀行の職員を監視する。

 

 残るもう一人はその右手に『デバイス』と呼ばれる魔法発動媒体を持っている。

 

 魔導師。このミッドチルダにおいて、絶対と言っていい力を持った人間だ。そのデバイスの先から放たれる魔法は容易く人を殺せるだけの力がある。

 

 強盗犯は全員頭に覆面を被っているので人相は判明できないが、デバイスを持った男は明らかに場違いな服装をしている。

 

 バリアジャケット。そう呼ばれる魔導師の防護服は拳銃程度なら、その威力を痣が出来る程度に弱める事が出来る魔導師の鎧である。

 

 幸いな事に昼時だった為か、銀行職員以外の人質は四人の男性客のみである。

 

 そして、その男性客四人にデバイスを向け、ニヤニヤと顔を歪ませて笑っているのが魔導師の男である。魔導師の男は自分が魔導師である事からの余裕なのか、男たちを縛ろうともしていなかった。

 

 銀行の防犯シャッターは既に下りており、犯人の逃走を一役妨害していた。

 

 しかし、それに錯乱した犯人の一人が天井に向けて一発発砲。

 

 悲鳴が銀行内を飛び交う中、散弾銃の男が金庫から金を出すように要求。

 

 質量兵器に恐怖した店長が、強盗犯のバッグに金を詰め込んでいるが、恐怖の所為か震えていて入れるのに時間がかかっていた。

 

「しかし、テメェ等も運が無かったな。俺様が銀行を襲う所に居合わせちまったんだからな」

 

 魔導師の男が四人の男性客に声をかけた。

 

「全くだ。折角これから愛しのヴィヴィアンちゃんと『明日の朝までしっぽりニャンニャン今夜は寝る暇も無いほどにハッスル』をする予定だったのに。これではヴィヴィアンちゃんが悲しむ」

 

 男性客の一人。灰色に近い銀髪を腰まで伸ばし首の所で一つに束ね、縁無しの銀蔓眼鏡を掛けた銀眼の男が発したのは、魔導師の男が望んでいた、恐怖に震え命乞いをするモノではなかった。

 

 魔導師の自分がデバイスを向けているのだから、魔力を持たないコイツは恐怖に震えて泣き叫ばなければ成らない。

 

 そう考えていた男は、この銀髪の男が言った言葉に自分が舐められていると感じた。

 

「貴様! これが見えないのか! 俺はAランクの魔力持ちでデバイスを持って貴様に向けているんだぞ!!」

 

 銀髪の男からは魔力は欠片も感じなかった。それどころか他の三人も魔力は一切感じられない。

 

 つまりこいつ等は非魔導師でリンカーコアも持たない存在。自分のような選ばれた存在に媚び諂うべきなのだと、魔導師の男は信じていた。

 

 だが、先程の態度は何だ? 魔導師のはずの自分に生意気にも口を利くどころか、馬鹿にしたような態度をとってきた。しかも今まで恋人が一人も出来た事が無い自分に向かって、女といちゃつける余裕を見せた。

 

 だから、自分を馬事にしたこいつは、選ばれた存在たる自分に、コロサレナケレバナラナイ。

 

 そう思い至りデバイスに魔力を込めスフィアを生み出そうとした。

 

 他の強盗犯たちは何やらヤレヤレと言った表情から、魔導師の男は過去にも何回か似たような事をしてきたのだろう。

 

 銀行の職員たちは銀髪の男が殺されると思い、目を瞑って顔を逸らす。

 

 しかし、デバイスから魔法が放たれる事は無かった。

 

 コンッ。

 

 非常に軽い音を立てて、魔導師の男の手からデバイスが真上に跳ね上がる。

 

「へ?」

 

 ただ茫然と自分のデバイスを目で追った魔導師の男は、次の瞬間に訪れた死ぬほどツライ衝撃に、意識を手放すのであった。

 

 

 

 其処から先は一瞬だった。

 

 銀髪の男以外の三人の男性客は、即座に行動に出た。

 

 すぐ側にあったペン立てに入っていたボールペンをペン立てから抜きざまに投擲。

 

 それら三つの軌跡は狙いを違える事無く、強盗犯たちの右手に突き刺さる。

 

 強盗犯全員が、痛みに銃を放り出す中、銀髪の男以外の三人は一秒と掛からずに間合いを詰め、鳩尾、延髄、顔面に衝撃を受け、意識を手放す。

 

 それはあっという間の出来事であった。

 

 数分後、落ち着きを取り戻した職員が防犯シャッターを解除し、其処から意気揚揚と四人の男たちは出て行った。

 

 その五分後にようやく現場に到着した管理局局員が見たものは、両肩両股関節を外され、四つのバッグに詰め込まれていた四人の強盗犯の姿だけだった。

 

 

 

 

 本来なら新聞の片隅にしか載らない出来事であったが、魔力資質無しの人間が、魔導師を倒したと言う事に時空管理局の魔法至上主義者は顔を歪めた。

 

 魔力資質無しの人間が魔導師を倒してはならない。

 

 その考えに固まった者たち。特に本局の者たちは、直ちにその四人の捜索を地上本部に要請した。

 

 しかし、そんな事に割く人員も費用もない地上本部はこれを一蹴。この事に本局は焦った。魔導師より強い存在は居てはいけないと言う本局は、ある部隊に捜索を命令するのであった。

 

 だが、本局の者たちは別のことで焦っていた。

 

 それは、捕えた魔導師のリンカーコアが消滅していた事である。

 

 これでは折角確保できた駒が戦力にならない。そのため、本局は密かにその四人組を犯罪者として指名手配したのだ。

 

 ただ強盗事件当時、銀行内のカメラはすべて機能を停止しており、魔導師の男のデバイスも記録が一切残ってなかったため、教員たちの目撃証言だけを頼りに彼らを懸賞金にしたのだった。

 

 銀髪銀眼の男:三百万

 特徴。腰まである長髪。眼鏡。ヴィヴィアンという女がいる。身長百八十以上。年齢二十代前半。

 

 黒髪の男:五十万

 特徴。右目が黒、左眼が白のモノクロオッドアイ。アタッシュケース。身長百七十前半。年齢二十代半ば。

 

 金髪の男:五十万

 特徴。琥珀色の瞳。身長百六十後半。年齢十代後半。

 

 茶髪の男:五十万

 特徴。黒い瞳。身長百七十前後。年齢二十代半ばから二十代後半。

 

 事件当時銀行の職員たちも、混乱状態にあったため、これ以上の特徴を思い出す事は出来なかった。

 

 そして、この四人の捜索には、偶然にも本局まで帰還していた、闇の書を消滅させた事件の解決者。アースラのクロノ・ハラオウン執務官が任命された。

 

 そしてこれが、彼らと彼女たちの出会いと戦いの幕開けになるとは、管理局は誰も予想していなかった。

 

 

 

 

 

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 第二話「邂逅する世界渡航者《ワールド・ウォーカー》と時空管理局」

 

 

 第12管理外世界「ダンディルス」。

 

 ミッドチルダの十分の一と言う大気中の魔力の薄さと、三世代ほど遅れた文明。そして何より魔法技術及び文明が無い事からこの世界は、管理局創設の時代に既に発見されていたにもかかわらず、未だに管理外世界となっている。

 

 97管理外世界「地球」の中世を思わせるこの世界の、とある町のとあるカフェに男はいた。

 

 腰まである灰色に近い銀髪を首の所で一つに束ね、縁無しの眼鏡をかけた男だ。

 

 名をシルバルフ・カーナー。この世界に散歩に来ていた所、急にこの場所に呼ばれたのだ。

 

 シルバルフの対面に座るのは、黒いローブで顔を隠した人物。

 

「で? おれを此処に呼んだのは、何か依頼か? ダンディルス」

 

 狼を彷彿させるその瞳は、相手の正体を正確に見抜く。

 

 ダンディルス。そう呼ばれた人物はローブのフードの下で小さく頷く。

 

 正体はこの世界の意思。

 

 世界には意思がある。

 

 誰が言ったのかは分からないが、その存在は高次元体としてシルバルフは認識していた。

 

「貴方にどうしても採ってきて欲しい物があるのです。場所は「レイントス」と言う世界にある。星の息吹の結晶と呼ばれる物です」

 

 フードの下から発せられた声は、とても清んだ女性の声だった。

 

「名前から察するに随分と大層な物のようだが?」

 

 星の息吹の結晶。名前だけなら星の命の一部が詰まっていそうな代物である。

 

「近々、といっても数年ほど猶予はあるのですが、この世界で大規模な地殻変動が起きます。その際に発生する火山活動の動きを緩和させる事が出来るのが、その星の息吹の結晶なのです」

 

 話を聞くだけなら、天変地異を押さえる事が出来る代物である。

 

「採ってくるのはいいのだが、その話はレイントスには?」

 

「いいえ。これから行こうという時に、偶然貴方の存在を感知しましたので、私が行くより貴方に行ってもらった方が世界の負担も少ないので、散歩中のところ悪いとは思ったのですが、声を掛けさせていただきました」

 

 ダンディルスは頭を下げながら理由を話す。

 

「お願いします。この世界も漸くここまで文明を築き上げてきました。今此処で大規模地殻変動ど火山活動が起きれば生物の半数以上が死滅しかねません。どうかお願いします。銀の世界渡航者《ワールド・ウォーカー》、神無 銀狼」

 

 銀狼。それがこの男の本名だ。シルバルフは世界に合わせて名乗った偽名である。

 

「分かった。よっぽどの事がなけりゃ、三日もあれば採って来れるだろう。受け渡しは世界境界間空間でいいか?」

 

「はい!」

 

 フードの下からでも喜んでいるのが分かるダンディルスの声に、銀狼は口元を緩めた。

 

 

 

 

 

 

 その日、時空管理局本局所属の時空航行艦、アースラに一つの指令が届く。

 

「魔導師を素手で倒す非魔導師の捜索!?」

 

 その指令が届いた時、クロノ・ハラオウンは驚愕の表情をする。

 

 偶然その場に居合わせた、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやてとその他大勢も驚きを顔に表している。

 

 魔力を持たない者が魔導師を倒す。これは時空管理局にとっては容認し難い話だった。

 

「馬鹿な! 魔力を持たない人間が魔導師を倒せるはずが無い!」

 

 もしこれが本当なら、自分たちの圧倒的優位が覆される事に他ならない。他の面々もクロノの言葉に賛同するように頷いている。

 

 ただしシグナムとザフィーラはその考えに賛同的ではないようだった。

 

「魔導師を素手でか。一体どれほどの体術者か一度手合わせしてみたいものだな」

 

「主の守護獣の前に、男として拳を交わしたいな」

 

 ザフィーラも素手で戦う者として一部思うところがあるらしい。

 

「何を言っているのシグナムさんにザフィーラさん! 魔導師を素手で倒せる存在がいたら、私たちにとって凄く危険な事なんだよ!」

 

 自分にフェイトという友達と、必要とされる存在をくれた魔法。

 

 これが魔導師同士だったら、魔法で人を傷付けるなんてと少し怒った程度だろうが、その魔法を使わないでとなると、まるで自分の魔法を否定された気持ちになり、なのはは憤慨した。

 

「なのはさんの言う通りです。魔導師を素手で倒せると言う事は、魔導師にとって非常に危険な存在。すぐに捜査を開始します」

 

 もしその人物が魔力資質持ちだったなら、管理局に奉公させれば良かったのだが、情報では倒された魔導師の男が相手のリンカーコアが無いのを確認している。

 

 魔法以外の技術と魔力以外のエネルギーはクリーンではない。よって廃絶しなければならない。

 

 時空管理局本局が掲げる思考に染まった、リンディ達はその四人組の足取りを追うべく捜査を開始するのであった。

 

 幸いにも彼らの行き先と思われる地名はわかっていた。

 

 『パルム』と呼ばれる世界に彼らは向かったようである。

 

 管理局が見つけていない世界ではあるが、無限書庫に勤め出したユーノに資料を請求すれば見つけてくれるだろう。あとは管理局の技術が在ればソコの世界に行くのは容易い。

 

 そう考えてアースラは一路進路を時空管理局本局を目指す。

 

 

 

 

 

 

 それから数日が立ったが、彼らは未だにパルムを見つける事が出来ないでいた。

 

 そんな時であった。

 

「第38観測世界からロストロギア反応!?」

 

 無人であるため観測世界となっている世界「レイントス」。そこで解析不可能なエネルギー反応を感知した、巡回中のアースラは、すぐさまそれをロストロギアと断定。

 

 彼らはソレがなんなのかも深く考える事もせずに断定する。

 

 魔力以外のエネルギーはクリーンではない。そんなエネルギーを使うのは質量兵器かロストロギア以外には考えられない。

 

 魔法に凝り固まった彼らは、魔法以外のエネルギーを理解できないでいた。

 

 それ故、ロストロギアがなんなのであるかも考えもしないのである。

 

 ロストロギアはすべて管理局が回収し管理すべきである。

 

 その考えに毒され染まったなのはやフェイトも、それに賛同するのであった。

 

 一向に進まない捜索を紛らわす為、クロノはなのは達をその世界に向かわせる事にした。

 

 未だにリハビリ中のはやてとそれに付き添うシャマルとザフィーラ以外が、第38観測世界「レイントス」へと転送されていった。

 

 そして彼らはそこで出逢う。

 

 世界を助け、世界を救い、世界を殺す、世界の旅人に。

 

 たった一人の少女の為なら世界を敵に回し、世界の為ならその世界の人類を滅ぼす、その存在に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第38観測世界「レイントス」

 

 ミッドチルダの五分の一の大気魔力と人間が住んでいない事から観測世界となっている世界。

 

 この世界には原生生物以外には、知的生命体は存在していない。

 

 そんな世界に、なのは達は侵入した。

 

「エイミィ。ロストロギアの反応は何処から?」

 

 執務官を目指し始めたフェイトには、指揮訓練を兼ねて今回のまとめ役をしていた。

 

『そこから十キロほど南下した所にある山脈地帯からだね。でもさっきから反応が揺らいでいるの」

 

「きっとロストロギアに何か異常があったんだ。早く行って回収しよう」

 

「うん。ロストロギアなんて危ない物は早く回収しないと」

 

 深く考えずに出てきた回収と言う言葉、しかし、その行為が一体何を起こすのか、彼女たちは理解していない。

 

 なのは、フェイト、アルフ、ヴィータ、シグナムの五人は、反応のあった場所へと飛んでいく。

 

 

 

 

 とある山中で、銀狼はある存在と出逢っていた。

 

 漆黒の鱗に深紅の瞳を持ち、十メートルを越えるその巨体に人間を圧倒する力を内包した、この世界の覇者たる存在。

 

 ドラゴンと人は呼ぶ。

 

 そんな存在相手に銀狼は……

 

「ねぇねぇ、俺に君のその綺麗な鱗磨かせてくれない?」

 

 ナンパをしていた。

 

 ドラゴンもまた両手を頬に当てて、「やだ、綺麗だ何てそんな、照れちゃう」といった仕草でその巨体をくねらせていた。

 

 端から見ればその光景は異様を通り越して非常識に他ならないが、当人たちは割と真面目であった。

 

 銀狼は折角廻り逢えた別嬪に声を掛け、ドラゴンも久方ぶりに出逢ったオトコに少々興奮気味であった。

 

 言わなくとも気付いたであろうが、このドラゴンはまだ五十歳を越えたばかりの若い雌である。

 

 数が多いわけではないが、この世界に生息するドラゴンは雌の個体数が雄の五倍以上である。

 

 繁殖期にならない限り遣って来ない同族の雄以外で、自分を雌と感じさせられた存在。

 

 種族として強い雄の遺伝子が欲しい彼女は、銀狼に一目合った瞬間に惚れていた。

 

 早く巣に『お持ち帰り』したい彼女は、銀狼にその身を寄せる。

 

 と、その時であった。銀狼は遠くから此方に遣って来る存在に気付き、視線を其方に向けた。

 

 ドラゴンもまた、銀狼に次いで顔を遣って来る存在に向けた。

 

 その者達は空からやって来た。そしてこう言う。

 

「時空管理局です。貴方をロストロギア不法所持及び、時空管理局観測世界への無断侵入の現行犯で逮捕します。今すぐ武器を捨てて投降して!」

 

 ココに世界渡航者《ワールド・ウォーカー》と時空を管理したい局《つつもたせ》は邂逅した。

 

 

 

 

 

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   第三話「魔法不要戦闘術VS管理局式魔法」

 

 

 第38観測世界「レイントス」

 

 其処で起こった小さな戦いは、管理局に大きな衝撃を与える事になる。

 

 Aランクオーバーの空戦魔導師五人。

 

 対するはリンカーコア非所持の人間一人。プラス?ドラゴン

 

 結果を見るまでも無く、射撃魔法の一発で相手を倒して終わり。

 

 なのは達は勿論、アースラのクルーも結果は既に分かり切っているものだと、信じて疑わなかった。

 

 対峙した両者に数秒の沈黙が流れる。

 

「ロストロギア? そんな物俺は持ってないぞ。生憎とこの身に、身に付けている者はすべて俺が製作した作品だ。故にお前たちが強奪したいロストロギアは持っていない」

 

 対峙していた男。銀狼が放った言葉は、降参でも抵抗でもなく、否定の言葉だった。

 

「ふざけないで! 貴方からロストロギアの反応があるのは確認済みです」

 

 銀狼と接触した時、フェイト達は即座にロストロギアの反応を感知していた。

 

「その、ロストロギア反応とは何だ? 何をもってロストロギアなのだ? …………相変わらず時空を管理したい局《つつもたせ》は捏造と自作自演と詐称が大好きと見える」

 

 ロストロギア。ソレは管理局が理解、解析出来ない物の総称である。

 

 銀狼は後半の言葉をフェイト達には聞こえないように小さく呟く。

 

「分かりました。貴方に投降の意思が無いなら、公務執行妨害の現行犯で逮捕します」

 

 しかし、その言葉を抵抗としか捉えていないフェイトは、銀狼にフォトンランサーを一発放つ。

 

 たったそれだけで終るはずだった。相手はリンカーコアも持たない人間。対して此方はリンカーコアを持ちAAAランクの魔力を持った『時空管理局魔導師』。

 

 魔導師で無い存在が、勝てる筈が無い。

 

 全員そう考えていた。

 

 飛来する魔力弾。それを銀狼は冷めた眼差しで見つめ、スッと右手を上げる。

 

 ペチン。

 

 まるで虫を払うかのような動作で、フェイトの魔力弾は叩き落とされた。

 

『!!!???』

 

 その場にいた者、モニター越しに見ていた者。その全員が驚愕に目を見開き、動きを止める。

 

 しかしソレも、次の瞬間には彼女たちは更なる驚愕に襲われる。

 

 右手を銃のように無造作に構えた銀狼は、その指先をフェイトに向け、

 

「ばぁん」

 

 お遊びで銃を撃つような動作に、フェイトが上体を仰け反らせる。

 

 まさに一瞬の出来事だった。

 

『フェイト(ちゃん)(テスタロッサ)!!??』

 

 彼女たちは全員『何故』『どうして』という言葉だけが頭を埋め尽くしてた。

 

 自分達はこの犯罪者を魔力弾一発で気絶させて、持っているロストロギアを回収(強奪)して、それで終わりのはずだった。

 

 なのに魔力弾は虫の如く叩き落とされ、気が付けばフェイトが倒されていた。

 

 落ちていくフェイトを尻目に、その間に銀狼は動く。

 

 0.10秒も掛からない時間で、右脇のホルスターに収めてあった一丁の礼装銃を取り出す。

 

 『アストラル』。

 

 『精神』という意味をこめて名付けられた白い銃身に黒い装飾の自動拳銃を左手に、銀狼は狙いを赤いゴスロリ服の少女にむける。

 

 発砲。

 

 銃口からマズルフラッシュが発せられ、そこから発射された三発の弾丸は、狙い違う事無くヴィータの右腕と左わき腹を抉り、デバイスをその手から弾き飛ばした。

 

「ガアァッッ!」

 

『ヴィータ(ちゃん)!』

 

 鮮血を撒き散らしながら地面へ落ちていくヴィータ。それをシグナムが追いかける。フェイトもまたアルフが追いかけていた。

 

 間一髪地面に落ちる前にその身を抱き止めたシグナムとアルフは、なのはの方を見る。

 

 フェイトとヴィータの身を心配した彼女は、銀狼を視界から完全に外していた。

 

 銀狼は既に次の行動に移っていった。

 

 足元に落ちている五センチほどの小石を拾うと、振りかぶる。

 

「魔法のマジカルストレート!」

 

 全く魔法でも、マジカルでもない投げられた小石は、なのはのデバイスをその手から弾き飛ばした。

 

「えっ?」

 

 衝撃に右手を見れば、其処には何も握っていない手。

 

「レイジングハート!?」

 

 慌てて衝撃が来た方向とは逆の方を探し、地面に落ちていくレイジングハートを追いかけてその両手を伸ばす。

 

 完全に銀狼に背を見せていたなのはは、後ろから迫り来るモノを認識出来ずにいた。

 

『なのは(高町)!!』

 

 アルフとシグナムから突然掛けられた声に、なのはは小さく驚くも、その意図を理解できないでいた。

 

 レイジングハートを拾う為地面近くまで降りてきていたなのはの背後に、銀狼はいた。

 

「魔法の……」

 

 その言葉に後ろを振り向くなのはの目に映ったのは、

 

「棒切れ一閃!」

 

 左薙ぎにした枝を握っていた銀狼だった。

 

「高町! おのれキサマァ!」

 

 ヴィータを抱えたまま、シグナムは激昂する。

 

 しかし、そんなシグナムを尻目に、銀狼は枝を上段に振りかぶる。シグナム達の方を向いて。

 

「レバンティン!」「プロテクション!」

 

 アルフとシグナムは攻撃に備えて慌ててバリアを張る。

 

 明らかに原始的で野蛮な男の攻撃。フェイトはどうやって倒されたのか分からないが、既に此方は二人もやられた。しかも、ヴィータは見るからに重症。こんな事はありえないと思った二人だがしかし、

 

 ありえないなんて事はありえない。

 

 この言葉が示すように、ありえない事が起こっていた。

 

「棒切れ、一閃」

 

 振り下ろされた一撃は光となって二人を呑み込んだ。

 

 

 

 

 アースラに乗っていた管理局員は全員、驚愕にモニターから目を逸らす事が出来ずに、動きを硬直させていた。

 

 AAAランク以上の管理局の魔導師(正確には嘱託)三人を、二十秒とかからずに倒し、さらに解析不能の力をもって、シグナムとアルフをバリアごと倒したその力に、リンディもクロノもその思考を停止させていた。

 

 モニターの向こうでは、銀狼は手に持った枝を捨て、革ジャンの左内側に手を突っ込むと、其処から黒い銃身に白い装飾を施された質量兵器(自動拳銃)を取り出す。

 

 その行動に、リンディは思考を取り戻し弾かれたように叫ぶ。

 

「まさか彼女たちに止めを!? いけない! クロノ、すぐに現場に跳んで!」

 

「しかし、今からじゃとても間に合いません!」

 

 おそらくなのは達は殺されてしまうだろう。だが、犯人は捕まえる事が出来る。

 

 しかし、銀狼はその銃口をこちら(モニター越しに)に向けた。

 

「サーチャー2、破壊されました!」

 

 奉仕期間中のヴォルケンリッターの監視の意も含めて、なのは達には五機のサーチャーが付いていた。

 

 とはいえ、サーチャーにはステルスの魔法が掛かっている。しかし銀狼は、空に漂う風船を撃つように、サーチャーを打ち抜いたのだ。

 

 魔導師なら探索魔法で見つけられるかもしれないが、魔力も持たない人間がサーチャーを見つける事など不可能のはずである。

 

 だが、銀狼は次々とサーチャーを打ち落とす。そして最後の一機に銃口を向けた時、その視線を別の方向へと向けた。

 

 銃をしまうと、銀狼は視線の方向に右手を銃のようにして向ける。

 

 誰もがその行動に眉を寄せる中、『ばぁん』とフェイトの時と同じ事をした。

 

「ぐはっ!」

 

 誰もが目を疑った。

 

 リンディが椅子から『何かに』弾かれたように転げ落ちたのだ。

 

『艦長!!』

 

 慌てて駆け寄る局員を視界に収めながら、リンディは痛みのある右わき腹を押さえながら、モニターを睨みつけた。

 

『自分たちが使ってる技術を、魔法とか言ってる割には行動と思考と力と覚悟とおつむが、あまりにもお粗末過ぎやしないか? 時空を管理支配搾取したい世界遺産強奪犯罪組織の方々さんよ』

 

 サーチャーに向かって言い放つその姿は、大胆不敵。

 

 時空管理局に対し、犯罪組織と啖呵を切るその様は厚顔無恥。

 

 魔法を使わずに魔導師を倒したその姿は、管理局にとってまさに不倶戴天。

 

『丁度いい機会だ。自己紹介をしておいてやろう。ありがたいと思え』

 

 銀狼の言葉に全員モニターを睨み付けるように見つめる。

 

『俺は世界連盟政府機関、平穏維持組織、他世界無許可不法介入犯罪組織、時空管理局対策部隊。魔法不要世界制作委員会、第十三副委員長。第八機動艦隊総司令官。『魔導師(マギウス)殺し(マーダー)』の七篠檀上上座乃介天封師権兵衛特務少将である』

 

 この言葉を理解できた人間が果たしてアースラにいたか。

 

『喜べ、時空管理局。待ちに待った貴様らの、最大級の天敵のご登場だ』

 

 銀狼(権兵衛)はモニターの向こうで素敵に笑う。

 

 と、いままで完璧に空気扱いだったドラゴンが声をあげる。

 

『ああ、待たせてごめんよレディ。君のつぶらな瞳に僕は今クマーーーーー!!!』

 

 奇声を上げてドラゴンに向かっていくと、ドラゴンは前足で銀狼をホールドすると、音を立てて飛び去っていった。銀狼の意味不明な悲鳴を残して……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから十分後、現場に転送されたクロノはなのは達を回収し、アースラに収容する。

 

 既にその世界から、ロストロギア反応が無い事から、銀狼が盗み出したと断定する事しか出来ないアースラは、銀狼をS級次元犯罪者として広域指名手配をしたのであった。

 

 しかし、ここで一つの難問が持ち上がった。

 

 モニターに記録されていた銀狼の姿が、其処だけ修正液(ホワイト)をぶちまけたようにモザイクが掛かっていたのであった。なのは達のデバイスの方もすべて同じような状態になっており銀狼の顔を表示する事が出来なかったのだ。

 

 また、彼の言った組織、政府を各管理内外世界で調べ上げたが、ソレらしい情報を掴む事はおろか、噂を聞く事すら出来なかったのである。

 

 時に新暦66年の初夏の出来事であった。

 

 

 

 

 ちなみに銀狼には四千万の報奨金が掛けられた。

 

 

 

 

 

 

 

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  第四話「魔法不要世界制作委員会」

 

 

 第38観測世界「レイントス」での戦いから一週間がたった。

 

 銀狼こと七篠権兵衛によって傷を負わされた、なのは、フェイト、ヴィータ、リンディは本局の病院で大事を取って入院していた。

 

 アルフとシグナムは目立った外傷はおろか掠り傷一つ負っていなかったため、簡易診察だけで入院にはならなかった。

 

 なのはも、銀狼の一撃は腹部への衝撃だけで彼女を気絶させただけの様で、一日の入院だけで済んだ。

 

 外傷が酷いはずだったヴィータは、銀狼の弾丸が内臓を傷付ける事無く綺麗に貫通しており、三日と経たずに傷口は塞がり、一週間で退院出来るほどだった。

 

 逆に酷かったのがフェイトとリンディで、フェイトは首をむち打ちされており、リンディに至っては右のあばら骨を三本砕かれていたのである。

 

 骨というものは折れるとくっ付く時により強靭になって治るように出来ている。(作者も子供の頃に腕を折った事があります)ただ、骨の折れ方が複雑になればなるほど治癒には時間がかかる。今回のリンディの場合は複雑骨折よりも厄介な状態で、まるで自動車のサイドガラスのように骨が砕けていたのである。

 

 なまじ魔法治療に頼り切りで、外傷を塞ぐ程度しかない治療魔法では、内臓系の疾患治療が殆ど出来ない管理局の医療技術では、リンディのあばら骨粉砕骨折に対して手の施しようが無かったのである。

 

 生命操作技術やプロジェクトFの技術恩恵があっても、管理局では他の管理外世界や、科学技術発展型世界に対して、人体工学では遅れをとっていた。

 

 管理局の治療法はあくまで魔法主体で、魔力と表層外傷程度しか治療できないのである。

 

 そのためフェイトは二ヶ月、リンディにいたっては半年の入院を余儀なくされたのである。

 

 

 

 

 

「絶対に許さないの! フェイトちゃんとヴィータちゃんとリンディさんに怪我をさせて、魔法も使えないのに力を振るうなんて絶対に間違っているの!」

 

 アースラの食堂にて、なのはは握り締めた両手をテーブルに叩きつける。

 

 許せなかった。

 

 魔法が使えるようになって初めて出来た親友。自分の事を見てくれる本当の友達。そのフェイトを傷つけた七篠権兵衛。魔法も使えないのに力を振るう。管理局の管理する世界の平和のために力を使わない。

 

 高町なのはは、先日の事件において自分たちから逃げた男を、不倶戴天の仇敵として悪態を述べていた。

 

 そのなのはに賛同と言わんばかりに頷いているクロノ・ハラオウンもまた、その顔を歪ませていた。

 

「管理局の人間でもない者が勝手に力を持って、さらには魔法を使わないで管理局の魔導師を倒すだなんて、こんなのは絶対に間違っている! すぐにでもあの男を捕まえて管理局法で裁くべきだ!」

 

「そうなの! あんな悪い人は今すぐ捕まえて刑務所に入れないといけないの!」

 

「まったくだ! フェイトをあんな目にあわせたアイツは今度会ったら、ぶちのめしてギッタンギッタンにしてやるんだからね!」

 

 ヒートアップしていくなのは、クロノ、アルフを余所に、隣のテーブルでは八神家が席に付いていた。

 

「それで怪我のほうは大丈夫なん、ヴィータちゃん?」

 

「全然平気さはやて! 弾は綺麗に貫通していたから後三日もすれば傷痕もなくなるさ」

 

 そう言って、捲り上げた袖の下の腕は、僅かな色の違いを見せる皮膚が有るだけである。

 

「それにしても、バリアジャケットを貫通するなんて、一体どんな銃を使ったのかしら」

 

「映像を調べようにもすべて白く塗りつぶされてて、解析もまともに出来なかったらしい」

 

 首をかしげながらシャマルが謎を挙げるが、返ってきたのはシグナムの言葉。

 

「あの後現場に落ちていた石や枝も調べてみたが、何の変哲もない石ころと折れた木の枝だったそうだ。石はともかく、枝のほうは絶対何かあると思ったのだがな」

 

「ってことは、あの七篠って人の稀少技能(レアスキル)ってことかいな?」

 

「おそらくはそうでしょう。でなければあの結果は納得がいきません」

 

 稀少技能=レアスキル。

 

 管理局本局が、管理局の人員及び戦力確保をしている裏には、この稀少技能保持者を確保して、その力を管理外世界の管理に企む本局の思惑が有った。

 

 希少性の高い能力を持った人間ほど、選ばれた存在である。だから管理局に入らなければいけない。世界を管理する為にその力を使わなければいけない。そんな考えに凝り固まった、本局の人間たちが掲げる夢想思考。

 

 フェイトとシグナムの魔力変換能力。

 

 はやての魔法蒐集能力。

 

 ヴォルケンリッターの古代ベルカ式。

 

 これらは管理局が、咽喉から手が出るほど欲しい能力の一つであった。

 

 しかも当人たちは、魔力ランクも魔導師ランクも高いと一石二鳥。

 

 されにフェイトに到っては、基礎理論止まりだったプロジェクトFの完成体。しかも、オリジナルとなった人間はリンカーコアを持たない人間。

 

 もしフェイトの技術を利用すれば、リンカーコアのない人間のクローンでも、魔導師として『作り出す』ことが出来る。

 

 高ランク魔導師を戦力として確保したい海の連中は、いちにもなく此れに飛びついた。

 

 母親が生涯を賭け、ただ自分の愛した家族のために完成させた技術を、非人道的な事に使われているとはフェイトは知る由もなかったが……。

 

「にしても、世界連盟政府機関平和維持組織他世界無許可不法介入犯罪組織時空管理局対策部隊。魔法不要世界制作委員会第十三副委員長。第八機動艦隊総司令官。『魔導師(マギウス)殺し(マーダー)』の七篠檀上上座乃介天封師権兵衛特務少将か……、ってか長すぎるわこの名前! しかもなんやねん七篠檀上上座乃介天封師権兵衛って、名無しの権兵衛のパチ名やんか」

 

「高町や管理局の人間は気づいていない様ですが、明らかに偽名だと私は思います」

 

「っていうか、間の檀上なんたらは何なんだ?」

 

「うちもよく覚えてないけど、前呼んだ『日本の偉人』って本の中に、織田信長の本名が似たような名前だった気がするな」

 

 正確には織田弾正上総介吉法師信長になるが、これは官位と別名と幼名が一緒くたになっており、別名と官位の時期が違うので、本当の意味でこの名前は正しくはない。詳しく知りたい人は国立図書館にでも行って資料をあさってもらいたい。

 

 はやての言っている事も少し間違っているのだが、十歳の少女が気付くには少々難問である。

 

「それで上の人達は、この組織をなんて呼称するんやろな」

 

「対策本部は魔法不要世界制作委員会の頭文字をとって『魔不世(マフセ)』と呼ぶようです」

 

「なんや、マフティーみたいやな」

 

「まふてぃー?」

 

「ううん、こっちの話しや気にせんといて」

 

 こうして時空管理局本局は『魔不世』討伐に乗り出すのである。

 

 ちなみに『パルム』に関して発見できたのは、地球産のマルチアイスのパルムだけであり、製作会社に乗り込もうとしたなのはと、それを止めるヴィータの姿があったそうな。

 

 

 

 

 とある管理外世界の宇宙空間。

 

「それで、アイツは俺たちの存在をバラしたのか?」

 

 暗闇の中、複数の人影が会話を交わす。

 

「いや、アイツはそういう事は最後の最後まで取って置くタイプだ」

 

「しかも、死に際とか、去り際にその単語だけ残していくタイプだ」

 

「世界から聞いた話だと、なんでも『魔法不要世界制作委員会』とか名乗ったらしいぞ」

 

「管理局の対策本部は、『魔不世』と呼ぶようだ」

 

「どこの世界撲滅委員会や世界救済委員会だ」

 

「ちなみに名乗った後、ドラゴンの雌にお持ち帰りされたらしい」

 

「……。アイツらしいと言えばらしいが、もう少し如何にかならんのか? あの人外種馬は」

 

「仕方ないだろう? 人外フェロモンの持ち主だぜアイツ。おまけに人外愛護馬鹿だし」

 

「それに関しては放置プレイしとこう。それより問題は管理局だ」

 

「ああ。おそらく管理外世界や反管理局組織のある管理世界に強行武力捜査をしかねない」

 

「さすがにこれ以上他世界に介入されると、世界間のバランスに歪みが生じるぞ。今でさえ結構ギリギリの所で持っているって言うのに……」

 

「ふむ、ではいっそ魔不世を作るか?」

 

「作るのは面白そうだが、何をやるんだ? コズモなんたらか? それともソレスタルなんたらか?」

 

「この次元世界は、管理世界と管理外世界で分けられている。一部観測世界と呼ばれている所も在るが、殆ど管理局の管理世界扱いだ。故に……」

 

『故に?』

 

「管理するに値しない管理外ではなく、管理出来ない管理外。管理不可能世界を作り上げてみては如何だろう?」

 

「……なるほど。管理できない世界。管理不可能世界か」

 

「あるいは管理不能世界、絶対不干渉世界と言ってもいいがな」

 

「んじゃ全部繋げて、絶対管理不可能不干渉世界とでも名付けますか?」

 

「まあ、名前は制作過程で名付ければいい。まずは時空管理局に奇襲を仕掛ける」

 

「目標は奴(やっこ)さん共の船と施設だけでいいかい?」

 

「ああ。魔導師にはしっかりと『気絶設定』の武器で攻撃しておいてくれ。それと同時に奴らの行動を妨害する組織を作る」

 

「それなら名前は『次元を管理させない局』なんてどうだ?」

 

「悪くないな、いやむしろ同じ『管理局』なだけに、奴らを逆撫でさせるには都合がいい」

 

「それで『委員会』と『局』はどうするんだ?」

 

「委員会は俺たちが勤めればいい。局は管理外から勇士を募ろう。なるべくリンカーコアを持たない異能能力者や超能力者、人外の種族がいい。人外の種族に関しては銀狼にやらせよう」

 

「じゃあ俺は兵器と科学を提供しよう」

 

「俺の方は超能力者を何人か連れてこよう」

 

「転生者や憑依者とかの、観測世界の人間が出て来たらどうする?」

 

「敵、味方、中立。このどれかを選ばせる。ただし、味方の場合は一兵卒扱いだ。力と能力と実力と覚悟があって、漸く班長か分隊長と言った所だ」

 

「大抵の転生者って若造が多いからねぇ。下手に理想を掲げられても、口先だけしか語らない奴もいるし。偶に古強者が現れるけどそういうのは中立が多いな。中立者に関しては徹底的に不干渉を貫かせよう」

 

「たとえ能力がどれだけ特殊だろうと、創る世界はそれを『必要としない世界』だ。だが、行過ぎた世界でも駄目だ。ある程度は『才ある者が活躍出来るかもしれない』世界。そんな世界を目指してみよう」

 

「流石にそれって無茶無理無謀のどれかっぽくね?」

 

「指針の一つ程度で構わない。ある程度で妥協しなければ世界は破滅へ向かいかねない」

 

「それもそうだな。じゃあ、まあ……とりあえずは楔約の四人を選びましょうか」

 

誰にも知られる事なく、事態は進行していく……。

 

 

 

 

 

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   第五話「襲撃、策謀、計画」

 

 

 

 時に新暦66年。三つの管理世界で同時刻にある事件が発生した。

 

 三つの管理世界で起こった、時空管理局時空航行艦停泊港襲撃事件。

 

 この事件における被害は、死者ゼロ名。軽傷四百十三名。時空航行艦三十七隻。

 

 管理局の施設のみを狙った襲撃事件である。

 

 管理局史上において、此れだけの被害を一方的に受けた事はなかった。しかも、相手の戦力は合計でたったの四名。

 

 相手の行動は全て時空航行艦の破壊が目的だったようで、犯人は全員共犯者であると本局は断定した。

 

 しかし、甚大な被害が出たにも関わらず、この事件が他の管理世界はおろか、事件が起こった管理世界でさえも事件として取り上がる事はなかった。

 

 自分達の体面と権威と威厳と尊厳と信用を問題視した管理局本局の連中は、各管理世界の地上部隊に圧力を掛け、これを演習における訓練だと報道陣に報告したのだった。

 

 何より彼等は自分達の魔法を否定された。

 

 襲撃者達が、攻撃の際に『気絶設定〜』と叫びながら攻撃をし、誰一人として死者を出す事無く、魔導師を無力化したのであった。非殺傷設定と言う物に心酔している時空管理局にとっては、それは屈辱であった。

 

 そして、彼らの映像もまた、銀狼――七篠権兵衛――の時と同じように、すべて白く塗りつぶされていた為に、その人物像を確認する事が出来なかったのであった。

 

 そのため、人物像は生き残っていた局員の証言を元に復元した、筆写画像を貼付する事しか出来ないのであった。

 

 そして、時空管理局はこの事件を起こした四人をSランク次元犯罪者として広域指名手配するのである。

 

 犯人それぞれの特徴から、鎧を着た男はその剣捌きから「剣士」、賞金三千万。

 

 明らかに人間ではなく機械である、人型にも戦闘機にも変形するロボットを「機械人形」、賞金二千八百万。

 

 魔法も効かない肉体と大剣を使う大男は「魔人」、賞金五千四百万。

 

 質量兵器を何処からともなく取り出す男は「魔銃」、賞金五千二百万。

 

 そしてこの事件を期に、時空管理局は管理外世界に対し、魔法以外廃絶を掲げ管理と言う侵略行為を開始する。魔法以外は在ってはならない。そう称え……。

 

 それが、自分が正義だと確信した妄信だと、信じて疑わず…………。

 

 

 

 

 

 時空管理局本局。

 

「ええい! まだ奴らは見付からないのか!!」」

 

 本局内にある会議室の一室で、一人の局員が机に手を叩きつけながら叫ぶ。

 

 三つの管理世界での時空管理局施設襲撃事件から半月。

 

 襲撃犯四人の情報を、各管理世界に流し目撃情報を求めているのだが、各管理世界からの返答はいずれも「いまだ発見できず」である。

 

 「剣士」「機械人形」「魔人」「魔銃」と名称をつけられた四人の襲撃犯。しかも襲撃したのはいずれも本局の次元航行艦停泊港や駐屯基地。

 

 襲撃のあった管理世界の海の戦力は、その世界の地上部隊から引き抜いているので問題はないが、破壊された次元航行艦は修復不可能の状態なのが事の事態を難解にさせていた。船の動力炉と艦橋は完全に破壊され、格納庫や資材庫、食料庫にデバイスメンテ室も軒並み破壊されていたのである。

 

「例の四人は『剣士』を除いて魔力を持っていないため、見つけるのが困難なようです。ロストロギアで動いていると思われる『機械人形』に関しても、強力なジャミングとステルス能力を持っているらしく、ロストロギア反応で探しても見付かっていません」

 

「各管理世界の地上部隊は何をやっている! 犯罪者の一人も満足に見つけられないのか! これだから陸の奴等は無能揃いの穀潰しで困る。怠慢もいいところだ!」

 

 悪態を吐く局員に賛同して、周りの局員も頷くが彼らは知らない。

 

 各管理世界の地上部隊が、どれだけ苦労して治安を維持しているかを……。

 

 手柄や功績、ロストロギア回収や管理世界を増やす事しか頭にない海の者たちは、治安維持に掛かる労力を紙面でしか捉えていない。

 

 それに高ランク魔導師が少ない地上部隊では、魔導師による犯罪に対して、後手に回らなければ対処できないほど人員も人材も不足している。高待遇で海が無理やり引き抜いてしまうのと、超過労働による過労で殉職が後を断たないのである。

 

 しかし、海はソレを地上部隊の怠慢だと罵る。

 

 しかも、海の部隊は事件が起こる度に事件を横から攫って行く。手柄と犯人だけを連れて。後に残っている事後処理は全て地上任せなのが殆どなのだ。

 

 おまけに事件のたびに地上に協力を要請しながら、地上からの協力要請には「忙しい」の一言で拒否していると言う有り様なのである。

 

「とにかく陸の奴らにはしっかりと命令しておけ。これは管理局の威信に関わる問題なのだから」

 

 あまりに自分本位な考えだが、この場にソレを指摘できる者は存在しない。

 

「この次元世界は管理局が管理してやってこそ、真の平和を与えてやれるんだからな」

 

 傲慢な考え、そして自分たちこそが正義だと信じて疑わず、ソレが他者にとってこの上ないほどに害悪で在ると理解していない確信犯な者達。

 

 その思考が自分たちを破滅へと導く事を、彼らは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミッドチルダ地上本部。

 

 レジアス・ゲイズ少将。そう呼ばれる男がいる。

 

「ええい、おのれ! またしても海の奴等は地上から戦力と人材を攫って行くか!」

 

 拳を握り締め、音を立てて机を叩くその形相は怒りに満ちている。

 

 先日起こった管理世界時空航行観停泊港襲撃事件。その損害における人員補充に、地上部隊の高ランク魔動師を軒並み連れて行かれたのだ。

 

 しかも中には、逆らえば犯罪者にするなどと脅されて、已む無く移動していった魔動師たちもいた。

 

 ミッドチルダの平和を守りたい。ただそれだけのために戦っている者達を、自分達の戦力と言う名の駒にする為に、半ば誘拐紛いで連れて行かれた地上部隊の局員たちの思いを、ソレは代弁しているかのようである。

 

 毎年多くの者が管理局に入り、何人もが地上で働きたいと願う中、魔力ランクが高いと言うだけで、平気で本局に持って行かれるのことに、何度も苦渋を飲まされていたが、流石に今回は我慢の限度を超えるものだった。

 

 地上部隊は高ランク魔動師がいなくなった所為で、違法魔導師犯罪に対して手をこまねいている事しか出来なくなり、この半月で犯罪の検挙率が大幅に下がってきているのだ。しかもソレに比例するかのように犯罪率は上昇。

 

 このままではミッドチルダは無法地帯と化してしまう。

 

 時空管理局のお膝元でありながら、犯罪が闊歩するなどと言う事になったら、目も当てられない。

 

 間の前に打ち付けられた未来に、レジアスは頭を抱える。

 

「ワシはどうしたらいい。ゼスト、アラン」

 

 思わず口にするのはかつて共に夢を語り合った友の名。

 

 一人は今も首都防衛航空武装隊でその実力を発揮し、ミッドの平和に貢献し続けている。もう一人の友は、昔行方不明になって其れっきり音沙汰は無い。アイツの事だからきっとどこかで生きているだろう。そう思っていた。

 

「な〜に、こんな事もあろうかと思って」

 

 そんな言葉が口癖で、いつも二人揃ってアイツに振り回されていた。

 

「ああ、アイツはいつもそんな事を……」

 

 ……まて、今の声は自分の幻聴か?

 

 慌てて顔を上げ、声が聞こえてきた方へ向ける。

 

 分かれた時と全く変わらない。

 

「オ、オマエは……」

 

 いつも口元をにやけさせ、不敵に笑うその顔は今思い描いていた友人。

 

「何、鳩がアルカンシェル食らったような顔をしてやがる? ってか少し見ないうちに太ったんじゃないのか?

 レジアス」

 

 灰色に近い銀色の頭髪。透き通った淡い銀眼。縁無し銀蔓の眼鏡を顔に掛けた人物。

 

「アラン! アラン・スミシー!!」

 

「うおぅ!? いきなり大声出すなよレジアス」

 

 元時空管理局地上本部、特殊資料課、非魔導師。アラン・スミシー一等陸尉(MIA二階級特進)が其処には居た。

 

「鳩がアルカンシェルを喰らったら消滅して顔など判別出来んわ!」

 

「イヤ待て、何故そっちの突っ込み!?」

 

 あまりの突然の再会。今までの感情よりも、思わずあの頃の癖が出てしまっていた。

 

「貴様。死んだのではなかったのか?」

 

「え? 俺死んだ事になってたの!?」

 

 十年以上も昔、友人――いやこの悪友は――ロストロギアの暴走でMIAとして死亡扱いになっていた。

 

「いや、実はあのロストロギア、並行世界へ転移する代物だったらしくてさ、ほんの数日前に漸くこっちの世界に戻って来れたんだよ」

 

 並行世界。其れは在りえたかもしれない可能性の世界。最も近くて最も遠い世界。

 

「エネルギーを貯めるのに二年もかかっちまったよ。しかし驚いたね。たった二年でお前さんが少将になるなんて」

 

「二年? おいアラン。今新暦何年だ?」

 

 ふと引っ掛かった疑問。

 

「何年てアレから二年だから……54年だろ?」

 

「……今は66年だ」

 

「……66?」

 

 茫然とした呟きに、しっかりと首を立てに振ってやる。

 

「うっそおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

 目ん玉と舌が勢いよく飛び出た。眼鏡を突き破って。

 

 相変わらず面白いリアクションを取る奴だったが、向こうの二年で更に磨きが掛かったようである。

 

「マジで! 俺、浦島太郎!?」

 

 誰の名前かは知らないが、おそらく似たような出来事を起こした人物の名前なのだろう。

 

「ど〜〜〜りでレジアスの顔が二年の割には、老け過ぎてて太りすぎてると思ったよ」

 

「まてアラン、何だその判断基準は!?」

 

「だってお前とゼストって、見た目以上に老け顔じゃん」

 

 ぐさり、と少し気にしていた事を言ってくる。

 

「そっか、こっちじゃアレから十四年も経っていたのか。そう言えば奥さんとオーリスちゃんは元気?」

 

「……妻は五年前に他界した」

 

「……そっか。あとで墓の場所教えてくれ。オーリスちゃんはどうなったんだ? 今66年だから18か?」

 

「ああ、オーリスなら……」

 

 ドサリ。

 

 開けられたままだったドアから、書類が落ちる音が聞こえた。

 

「え……? ……ウソ」

 

 入り口に立ったままの女性は驚愕し、その口から声が漏れる。

 

「いよう! オーリスちゃん!」

 

 振り向いたアランは右手をシュタッと上げて挨拶をする。

 

 十四年前と変わらぬ姿で、彼は戻ってきた。

 

 

 

 幼きあの日、母に強請って連れて来てもらった管理局。

 

 そこで出会った父の友人。一人は今も父の良き友人で、今も首都防衛航空武装隊で活躍するゼスト・グランガイツ。

 

 そしてもう一人。母親とはぐれ迷子になっていた時、見たことも無い道具や玩具で、はぐれた寂しさで悲しかった心を慰め、暖め元気付けてくれた青年。

 

 それから、しばらく彼のもとに遊びに行くようになった。彼の所にはいつも、自分が見たことも聞いた事も無い者が沢山あった。そして幼かった心は、彼に淡い恋心を抱いていた。

 

 しかし、それから一年と経たずに別れが来た。別の世界での任務中にロストロギアの暴走に巻き込まれ、行方不明となり、そしてMIAのまま死亡扱いとなり、任務中の死亡により殉職扱いで二階級特進。

 

 父から死んだ事を聞かされた時は、大いに泣いた。泣き止んで訪れた彼の部屋が、既に何も残っていなかった時、寂しくなってまた泣いた。

 

 それから十四年もの間、そんな悲しみをしたくない一心で、男との接触を避けてきた。最近では鉄面皮や冷血冷徹女などと呼ばれているが、下手に仲良くなって死に別れた時に、あんな悲しみはしたくないの思いで他者と距離を開けてきた。

 

 そして、幼き日に見た彼の背中を追いかけたくて、管理局に入った。

 

 父親には反対されたが、せめて彼のような目に遭う人を出させない為に、そしてせめて彼が死んだと言う証拠を見つけたくて、情報資料を扱い管理する資料課に入った。そこで事務能力の高さを見込まれ、将官付きの秘書に命じられた。転属先が父親の下だったのは人事の計らいだろうか? 仕事に合間を縫ってはロストロギアなどの資料に目を通した。管理世界では完全否定されているオカルトの類の資料にも目を通して回った。

 

 ――ありえないなんて事はありえない――

 

 彼の口癖の一つだった言葉を思い出しながら、彼を見つける方法を探した。

 

 中々有用な資料が見付からない中、父親の下に資料を運んで行く途中だった。

 

 開け放しだった部屋の中から声が上がり、何事かと顔を覗かせた時だった。

 

 管理局の制服を着ていなくて、最初は部外者かと思ったが、その後姿は見覚えがあった。

 

 そして何より自分の事を「オーリスちゃん」と言った。

 

 自分の事をちゃん付けで呼ぶ人物など、この管理局地上本部には存在しない。尚且つ年上の男では、後にも先にも彼だけだった。

 

 そして父は彼をこう呼んだ「アラン」と……。

 

「アラン……お兄ちゃん!」

 

 気が付けば足が勝手に走り出していた。

 

 恋しくて、切なくて、愛しくて、彼に向かって抱きついた。

 

 

 今自分の目の前では、十四年前のあの日以来、滅多に泣く事も笑う事もなくなった娘が、大粒の涙を流しながら友人に抱き付いていた。

 

 泣いてはいるが、その泣き声は歓喜の泣き声だ。

 

 娘の気持ちには気付いていた。しかし、それは叶わない物だと何度も言ったが、娘は諦めなかった。せめて死んだという証拠が欲しい。そう言って資料に目を通す日々を送っていた。

 

 事務能力の高さから自分の秘書として転属させてからも、其れは変わらなかったから、ならばと権限と階級を与えとことんやらせようと思った。

 

 自分もどこかで望んでいたのかもしれない。せめて死んだという証拠が欲しいと……。

 

 そんな矢先だった。管理局次元航行艦停泊港襲撃事件が起こり、地上の人員と戦力減少に頭を悩ませていた時だったのだ。彼が戻ってきたのは。

 

「ごめんな、オーリスちゃん。たくさん心配懸けちゃったみたいだな。ありがとう」

 

「いいんです。アランお兄ちゃんが戻って来てくれただけで」

 

 感動の再会に水を差す気は無かったが、何となく自分を忘れられてる気がしてきた。

 

 せめて自分にも、ごめんの一言も懸けて欲しかったな〜、と思った。

 

「しかし、見ない間に随分と綺麗になったじゃないか。オーリスちゃん」

 

「そ、そうですか!? あ、あああ、ありがとうございます! それと私の事はオーリスと呼んでください。もうちゃん付けする歳でも在りませんし」

 

「そうかい。分かったよオーリス。じゃあ、俺の事もお兄ちゃんと呼ぶのは止めてくれ。流石にこの歳にもなってそう呼ばれるのは恥ずかしい」

 

「分かりました。アランさん」

 

 しかし、何だろうか? この腹の底から沸き立つような感情は。

 

 ああ、そうか。これが娘を何処ぞの馬の骨に盗られた父親の心境と言うやつか……。

 

「ウオッホン!」

 

 思わず声を上げた自分は悪くないだろう。

 

「!? お、おおお、お父さん!? 何時から其処に!?」

 

「……最初からワシは此処に居たぞ。というか、此処はワシの執務室だが?」

 

 もう、泣いてイイだろうか? ここで泣いた所でワシ、悪くないよね?

 

 胸の奥で、心の汗をそっと流した。

 

 

 

 

「……話を戻すが、アラン。お前が最初に言っていた、こんな事もあろうかと、というモノを出してもらおうか?」

 

 落ち着きを取り戻したレジアス・ゲイス少将執務室。

 

「あれ? 覚えてたの? まあいいや。モノと言っても資料の類だがな」

 

 テーブルを挟んでソファーに座ったレジアスとオーリスの前に、綴られた紙束が幾つも出される。

 

 何処からとか、何時の間になどと言う突っ込みはしない。アランが何処からともなく物を取り出すのは、二人にとってよく見慣れた光景だし、準備にしたところで彼は元々特殊資料課。書類制作など造作もない。

 

 それぞれ手に取って、ページを捲って見る。

 

『…………!!!』

 

 二人の顔に驚愕の表情が浮かび上がる。

 

「アラン。……これはまさか!?」

 

 もし、この書類に書かれている事が事実なら、今の地上の現状を引っ繰り返す事が出来る。

 

「採用するかどうかはお前の判断に任せる。まあ、他の地上部隊の意見も聞いてみてくれ」

 

「聞くも何も、こいつは即採用だ。これに賛成しない地上部隊は余程の愚か者だ」

 

 人員不足と戦力不足。両方が解決するわけではないが、少なくとも戦力を充実させられる事は確実だ。

 

「おそらく、海や空の連中の批判が激しいだろうが、地上部隊の現状をシッカリと教えて(・・・)やれば、余程の阿呆でない限りは反対できない筈だ」

 

「ああ。だが、問題はこれの有効性と有用性をどうやって示す? 資料や卓上理論では本局連中は首を縦に振らないぞ」

 

「それに関しては俺に一つ考えがある」

 

「考え?」

 

 アランの言う考えに、レジアスは若干悪寒を感じた。

 

「作戦名は『魔法何それ、おいC〜、NO!』作戦だ」(ドヤッ

 

 アランから作戦の概要を聞いた特、その奇策性に思わず頭を抱えたくなった。

 

 だが現状を打開する為には、どうしてもこれは必要な事であった。

 

 そして時に新暦66年夏。

 

 後に『闇の悪夢』として、時空管理局本局魔導師が最も恐れられる存在がここに誕生する。

 

 

 

 

 

 ちなみにオーリスは、再会に浮かれてて、十四年来の思いを伝えそこない、その落ち込みに思わずレジアスは、娘の不憫さにもう一度、胸の奥で心の汗を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミッドチルダ、ベルカ自治領聖王教会。

 

 その年、聖王教会において行なわれた、カリム・グラシアのレアスキル『予言の著書』において、新たな予言が発表された。

 

 ――人間の世界に舞い降りるは、渡り歩く者。

 

 ――世界は彼の者に、安寧の闇を求める。

 

 ――しかし、人間は彼の者を悪夢として恐れる。

 

 ――闇の悪夢はかの地に舞い降りて、無限の欲望を人へと導く。

 

 ――魔法に魅入られた人間は、魔法に固執し、魔法に見捨てられ、魔法に滅ぼされる。

 

 ――渡り歩く者達が織り成す、舞と踊り。奏でる神楽。

 

 ――遊びの刻はやって来る。

 

 しかし、教会と管理局はこの意味を理解できなかった。

 

 百年以上に渡り自分達の技術を魔法と謳ってきた彼らは、魔法と言う言葉に魅入られていることも、固執している事も分かっていない。

 

 キーワードになるのは渡り歩く者、闇の悪夢、無限の欲望、これが鍵を握る人物。

 

 そして彼等は知るだろう。

 

 魔法が何なのか。

 

 

 

 

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  第六話「海鳴市での邂逅」

 

 

 第97管理外世界「地球」。

 

 管理局期待の新星、高町なのはが生まれた世界であり、また、夜天の魔導書の所持者八神はやてが生まれた世界でもある。

 

 時に新暦66年秋。

 

 高町なのはは私立聖祥大付属小学校の四年生の教室で、その思考をリリカルマジカルさせていた。

 

 彼女は管理局の嘱託魔導師ではあるが、それと同時に彼女は義務教育課程を終えていない、小学四年生なのである。

 

「なのは、最近どうしたの? 何か元気無いみたいだし。また前みたいに魔法の厄介ごと?」

 

 休み時間に机に座ったまま、ぼ〜っとしていた所に声を掛けてきたのは友達のアリア・バニングス。彼女の後ろには月村すずかの姿もあった。

 

「あ、アリサちゃんにすずかちゃん。うん、この前任務でちょっとね……」

 

 親友のフェイトは漸く首のギブスが取れて、リハビリ運動中だが、リンディは未だに病院から退院できていない。

 

 親友と自分の能力を必要と言ってくれた人を傷付けた男、七篠権兵衛。この男を捕まえてお話をしたいなのはは、寝る間も惜しんで仮想トレーニングをしており、最近少し寝不足気味なのである。

 

「魔法が使いたいのも、管理局の仕事がしたいのもいいけれど、少しは学校の方にも顔出しなさい」

 

「はいこれ、この前の授業の写し。なのはちゃん最近授業に遅れ気味だから気を付けないと駄目だよ?」

 

「うん、ありがとう」

 

 此処最近のなのはの学力は、算数を除いて下がる一方だった。

 

 しかしそれも、学校をまともに行かずに管理局の仕事に従事していれば当然の結果だった。

 

 学校の勉強なんかより、管理局の任務で魔法を使う方が、今の自分を満たしてくれるから。

 

「また前みたいに、夏休みに補習で登校する事になるわよ」

 

「うにゃあああぁぁぁぁぁ。それを言わないでアリサちゃん」

 

 ちなみに補習は国語と社会。理科は何とかセーフだったが、この二つ、特に国語に到っては壊滅的な点数を取ってしまい、兄からカミナリを貰ってしまったほどだった。

 

「そう言えばそろそろ運動会だけど、二人は何の種目に出るか決めた?」

 

 季節は稔りの秋。食欲、芸術、運動、読書と色々な秋があるが、小学生の彼女たちとっては、すぐ其処まで迫った運動会に関心が行く。

 

 しかし、悲しいかな。高町なのはにとって運動会は、自分の運動能力の低さを公表する、非常に屈辱的な行事なのである。

 

「私はとりあえず借り物競争と二人三脚ね。すずかは短距離走とリレーよね」

 

「うん。それと障害物競走もだよ」

 

 楽しそうに会話をする友達二人。

 

 それを横で眺めながらなのはは、マルチタスクで七篠権兵衛対策の為に、仮想シュミレーションをするのである。

 

 だが、魔法で戦おうとする限り彼には絶対に勝てない事を、彼女は知らない。

 

 名は存在を示すもの。そしてそれが偽りなら、存在そのものも偽り。

 

 彼の名は、名無しの権兵衛。

 

 故に彼は存在そのものが偽りで、彼の言った事もまた偽り。つまり嘘なのである。

 

 あれ以来七篠権兵衛の情報は無い。アースラは今も七篠権兵衛を探しているが、他の次元航行艦の部隊は、先の事件の管理局次元航行艦停泊港の襲撃犯捜索に余念が無い状態なのである。

 

 実際の所は本局の幹部らが、なのは達と「剣士」たちと接触して倒されては困るので、アースラにはリンディのみ、襲撃犯の情報を渡されている。

 

 しかし、現在リンディはベッドの中。そのためなのは達は現在地球で待機状態となっている。

 

 何よりなのは達は、将来有望な時空管理局の駒となると考えている本局上層部は、こんな所で潰されては困ると考えているのである。

 

 夢想家や理想家、野心家が蔓延る時空管理局本局。現実を見ない彼等は、魔法にその幻想を重ねるのである。そしてまた、魔法に魅入られそれしか取り得がないと思い込み固執し、少女もまた魔法に幻想を見るのである。

 

 魔法。なんとも甘美な響きを齎すソレは、容易く人の心を侵食するソレはまるで麻薬のように、しかし、人は一度依存してしまうと抜け出せない。そして、己が破滅へと導く…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって海鳴市八束神社。この神社には一匹の妖狐が住み着いている。

 

 その狐の名は久遠。遥か昔にこの地の霊脈と月の精気が集まり、ソレが意思を持ち姿をとった存在。

 

「くぅ〜ん」

 

 一匹の子狐が、銀狼の膝の上で撫でられる。

 

 アースラを監視がてら弄り遊ぶ為に地球の海鳴にやってきた銀狼は、海鳴の地脈が異様に傷付き乱れている事を知った為、地脈を直す為に霊脈が集う八束神社までやってきたのである。

 

 そこで乱れた霊脈の影響で凶暴化した久遠と遭遇。なんとか沈静化させたら、懐かれたという次第である。

 

 それがおよそ三日前の話。

 

 最初は久遠をよく知る者達は銀狼を警戒していたが、銀狼の戦闘力や術者としての技量、そして何より久遠を全く恐れず、傷付いた彼女の体を癒し、それどころか抱きしめて謝る姿に心を打たれた位だった。

 

 そして銀狼は久遠をよく知る関係者たち、さざなみ寮の者たちに受け入れられたのである。

 

 久遠の毛並みを撫でながら、銀狼は三日前の事を思い出す。

 

 雷を撒き散らしながら力を振るう久遠と対峙した時、狂った瞳の中に彼女が助けを乞う声を聞いた。

 

 誰も傷付けたくない。

 

 誰か自分を止めて欲しい。

 

 誰か私を殺して……。

 

 大地から彼女を助けて欲しいと願う想いを感じた。

 

 天から彼女を救って欲しいと言う意志を托された。

 

 自分には力があった。ソレを成し遂げるだけの知識、技量、経験もあった。

 

 そして何より、こんな娘を助けたいと思う心があった。

 

 ソレに何より、人外っ娘は俺の嫁という下心と煩悩と欲望と願望が湧き上がった。

 

 久遠のことを管理局に感知させる訳には行かない為、結界は厳重に張った。

 

 一時間ほどの死闘の末、久遠を沈静化させ、乱れた霊脈の力を浄化させたのである。

 

 現在は久遠の療養と、地脈の修復の為に神社に足を運ぶ毎日である。

 

 幸いにも管理局は今回の事を感知出来ていない。

 

 その事には安心できたが、逆に久遠が凶暴化した原因の地脈を傷付けたのが、一年程前に立て続けに起こった管理局が関わった事件だと、地脈の記憶を読み取って知り、怒りを覚えた。

 

 しかもソレをやったのが先日邂逅した小娘ども。

 

 事件の解決だけを優先して、その後の事後処理をまともにやっていない。

 

 自分達が使う技術を魔法と称して置きながら、何一つ奇跡を起こせていない事に殺意すら芽生えた程であった。

 

 リンカーコアと呼ばれるエネルギー蓄積生成機関と、プログラムによる運用行使技術。

 

 魔力と呼べない地脈に害を与えるエネルギー。

 

 とても魔法と呼べる物ではなかった。

 

 既に奴等の魔法に対しての対策も出来た。

 

 術式を壊す気功術と、魔力術式分解装置マジックキャンセラー。さらにデバイスの機能を停止させる特殊電磁波発生装置。ついでに作ったイナーシャルキャンセラー(ベルト&ブレスレット型)。おまけに魔力消滅金属を表面加工に施した銃弾三百。

 

 これだけあれば三個大隊を相手にした所で、負けはしない。

 

 もう三日も足を運べば、久遠の療養も、地脈の修復も終わる。

 

 地脈に関しては長期に渡る修繕が必要不可欠な為、それ様の道具を巫女に渡す予定である。

 

 今日はこの後は他の霊脈の修理と、喫茶店翠屋でのシュークリーム購入を予定している。

 

「さてと。それじゃ俺は一旦、他の場所の霊脈も見てくるから、久遠は少しここで留守番しててくれな」

 

「くぅ〜ん。行ってらっしゃい、銀狼」

 

 銀狼の膝の上から体を伸ばし、その頬を舐める。

 

 銀狼はそれに応えるように、久遠の額に接吻をする。

 

「土産にシュークリームを買って来る。待っててくれ」

 

 狐で在りながらも久遠は稲荷寿司などより、大福や饅頭が好きという現代っ娘な狐である。

 

 霊脈を利用しての療養中の久遠は、まだ八束神社の境内から出すわけにはいかない。

 

 その代わり銀狼はここ三日は、八束神社の社で寝泊りしている。

 

 銀狼から溢れ出す霊力もまた、霊脈の修復に利用しているのである。

 

 もっとも、泊まった初日の夜に、美女姿の久遠に唇を奪われたのはご愛嬌だ。無論ディープで……。

 

 帰ったら毛繕いもしてやろう。

 

 そう思い、「蔵」の中から櫛を検索しつつ、銀狼は海鳴の町へと繰り出す。

 

 

 

 

 

 

 オートバイに跨り、海鳴各所の交差点と公園を巡り地脈の簡易修復を終え、駅前で購入した観光雑誌の案内にしたがい徒歩で翠屋を目指す。バイクは蔵の中に収納だ。

 

 途中で誘拐されそうになってた金髪の少女を助け、これまた誘拐されそうになってた紫色の髪の少女を、一緒にいた従者諸共助け、不良に絡まれてた車椅子の少女を助け、横断橋の階段から転げ落ちかけた金髪の女性を助け、河で溺れてた少年を助け、引っ手繰りを捕まえてハンドバッグを取り返してあげて、トラックに轢かれそうだった青年を助け、道に迷ってた三毛猫に方角を教え、ようやく銀狼は翠屋に辿り着く。

 

「なんか此処に来るまで随分と冒険をした気がするな……」

 

 助けた少女、女性、少年に関してはヒーローの如く立ち去り、青年はなにやらテンプレやらなにやら騒いでいたが無視し、三毛猫はお礼にと開闢医院と言う所の診察割引券を貰った。

 

「そう言えばあの三毛猫、猫又だったが……まあ、いいだろう」

 

 残念ながら猫又は雄だった為、銀狼の食指には引っ掛からなかった。

 

 ようやく辿り着いた、喫茶店翠屋。しかし、銀狼はここで視線を感じた。

 

 知覚察知で場所を特定。翠屋正面入り口、高度三十メートル距離五十メートル。エネルギー反応、魔力反応を確認。術式反応ミッド式。管理局の監視サーチャーと確認。

 

 それと同時に、あいだの電線に雀を確認。

 

 振り向きながら雀を探し、視認。

 

 雀に視線をやりながら、視覚範囲内にてサーチャーを視認。

 

 左掌に蔵の門展開。パチンコ球一発取り出し、折り曲げた人差し指の内側に挟み、親指の爪の上に置く。射線確保、目標補足、発射。

 

 ビッ、と小さな音を立てて、親指によって撃ち出されたパチンコ球は、音の二倍の速度で目標を撃ち抜く。

 

 ソレを視覚内で確認すると、銀狼は翠屋に入っていく。

 

 久遠への土産は、シュークリームとショートケーキでいいか……。

 

 

 

 

 

 艦長不在のアースラは現在、その息子のクロノ・ハラオウン執務官が、艦長代行を務めていた。

 

 アースラのキャプテンシートに、その小さい体を押し込みパネルボードを操作しながら、情報を整理していく。

 

 現在のアースラに与えられた任務は二つ。一つは七篠権兵衛の捜索逮捕。もう一つは八神はやての保護観察。

 

 そんな彼等の下に、一つの報告が挙がる。

 

「何? 翠屋を監視していたサーチャーが壊された?」

 

「はい。サーチャーが壊される直前の映像には、男が一人写っているだけなのですが、少なくとも五十メートル以上離れた場所からの監視の為、壊す手段が無いはずです」

 

 ただの人間に、五十メートル以上離れた物体を壊す事は出来ない。そう思ったクロノはその男が魔法を使ったのではないかと考える。

 

 管理局の許可無き魔法の使用は、犯罪であり重罪だ。

 

 クロノはその男を犯罪者として逮捕しようと考える。しかし、その考えは実る事は無い。

 

「魔法を使って壊したのか?」

 

 とりあえずその男が魔導師かの確認を取っておく。後は男を逮捕するだけだ。

 

「いえ、映像に解析を掛けたのですが、男からは魔力どころか、リンカーコアの反応もありませんでした」

 

「じゃあ、質量兵器か!?」

 

 魔法でないなら、質量兵器しかありえない。

 

「いえ、直前の映像にも男が何かを使った様子はありません」

 

 そう言ってモニターに映し出されたのは、銀髪銀眼に眼鏡をかけ、ジーンズとジャケットを着た男。

 

 偶然にも、サーチャーの方向に振り向いた瞬間だ。

 

「この映像の三秒後にサーチャーは破壊されましたが、男はサーチャーを発見したようではなく、原生生物を観察する所だったようです」

 

 それもそうだ。リンカーコアも持たない人間がステルス魔法が掛かったサーチャーを見つける事など不可能だ。

 

 だが、では何故サーチャーは壊れた?

 

 その疑問がクロノの頭に残った。しかし、何も思いつかない。リンカーコアも持たない、ただの人間ごときでは、絶対的な力である魔法を使う時空管理局になす術無しでないと、いけないのである。

 

 なぜなら時空管理局は絶対の存在であり、正義なのだから。

 

「とりあえず、その男を此処に連れて来て話を聞こう。抵抗するようなら攻撃しても構わない。その時は公務執行妨害で逮捕しろ」

 

 自分が正義だと信じて疑わない確信犯のクロノは、局員に指示を出す。局員たちもクロノの判断に疑問を持たなかった。彼等もまた、クロノと同じ考えだからだ。

 

「一応なのはにも連絡を入れておいてくれ。シグナムとヴィータにも出てもらう」

 

 この判断と行動が、一体どんな結果になるのか、知る者は居ない。

 

 この場に居る全員が思っているのだ。何の問題もなくこの男を此処に連れて来れると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久遠への土産のシュークリームとショートケーキを詰めた箱を右手に、銀狼は道を歩く。

 

 テイクアウト用の箱には、夏用にドライアイスを入れる事が出来るので、八束神社までの道程で傷む事は無いだろう。

 

 銀狼が道程短縮の為に公園に入った時であった。

 

 突然周囲から人が居なくなり、空が灰色に変わったのである。

 

「何だ? ……結界か」

 

 周囲を見回し、上空を見上げる。

 

 薄っすらとではあるが、魔力の反応らしきものが、銀狼を中心に敷かれているのが分かった。

 

「中心に俺が居るって事は、……狙いは俺か」

 

 ジャケット内側に左手を入れると、懐から取り出したように見えるように、蔵から伸縮式スタンロッドを取り出す。

 

 手首のスナップで展開させると、逆手に持ち辺りを警戒する。

 

 おそらくこの結界を張ったのは管理局。

 

 公園に入る前から誰かが付けている事は分かっていたが、あまりにも稚拙でお粗末な尾行だったので無視していたのだが、公園に入った所で行動に出たようだ。

 

 上空から接近する三つの気配を確認。

 

 見上げると其処には、なのは、シグナム、ヴィータの三人が佇んでいた。

 

「こちらは時空管理局です。武器を捨てて投降して下さい」

 

 行き成り人を結界で隔離しておいて、こう来たもんだ。

 

「子供がこんな時間にこんな所で何をしている。お前が保護者か? ピンクポニー」

 

「ぴ、ピンクポニー!?」

 

 銀狼の言葉にシグナムが顔を引きつかせる。

 

「今日は休日や祝日でもなければ、土曜日でもない。子供を連れてこんな所で何をしている、と俺は聞いている。この付近の学校は今日は休校日では無い筈だ」

 

「わたし達は管理局です。あなたには重要参考人として一緒に来てもらいます」

 

「戯けた事を抜かすな、小娘(ガキ)」

 

 銀狼の怒気の篭った声に、なのはは思わず怖じろぐ。

 

「この日本に管理局と名の付くものは、国際空港の入国管理局のみだ。そして其処は貴様のような小娘が働ける場所ではなく、空港内のみでしかその権限は持たない。それに何より、俺が貴様等に従わなければならない義理も義務も道理も存在しない」

 

「生憎だが此方にはある。抵抗するのなら公務執行妨害で逮捕するぞ」

 

 怒気にたじろぐなのはの前に、シグナムが庇うように立つ。

 

「貴様等の都合など知ったことか。それに日本では公務に付けるのは義務教育課程を終えた者だけだ。それに逮捕権は警察のみが持つことを許されている。そして、今の貴様等の行いは権力詐称罪だ。警察だと言うなら警察手帳を見せろ」

 

『…………』

 

 銀狼の正論に、何も言う事が出来なくなる三人。

 

「待ってもらおうか」

 

「何だ、ガキ」

 

 銀狼の後方に降り立ったクロノに、振り向かずに挑発的に言葉を投げつける。

 

「……君の言いたい事は分かった。そこの三人では説明は難しいから、僕と一緒にきて欲しい」

 

「断ると言っている。生憎とガキの戯れやお遊戯に付き合っている暇も無い」

 

「既に君は包囲されているんだ。無駄な抵抗は止めて大人しく降伏して投降しろ」

 

 右手に持ったデバイスを突き付け、先端にスフィアを形成する。

 

 あまりに傲慢な物言いに、思わず銀狼はため息を吐く。

 

 左の人差し指を額にやり頭を左右に振り、右手のお土産を懐にしまうように、蔵の中へとしまい右足で軽く、地面を叩く。

 

「貴様ふざけるな! 公務しっこぐはっ」

 

 銀狼の動作に魔法を放とうとした時、クロノの体を何かが突き上げ、その体を宙に浮かす。

 

 ――気功術、外気功放出操作系。土龍地墳蹴(どりゅうちふんしゅう)。

 

 地中を駆け抜け、クロノへと襲い掛かった気の奔流は、バリアジャケットをいとも容易く貫通し、クロノを一撃で戦闘不能一歩手前の状態に落とす。

 

 その瞬間に銀狼は動く。振り向きざまにクロノに詰め寄り、右手で首を掴み地面に叩き付け、クロノが右手に持ってたデバイスにスタンロッドの先端を叩きつけ、デバイスのコアらしき部分を砕くと右足で左肩を踏み付ける。

 

「暴行罪及び危険物所持、並びに脅迫罪と不法入界罪の現行犯だな。他にも叩けば出てきそうだ」

 

「ぐっ、貴様。管理局員への暴行罪で『ゴキリ!』ギャアアァァアァァァッ!!」

 

 まだ下らない事を言おうとするクロノの左肩を、バリアジャケット越しに浸透剄で内側から砕く。

 

「おのれ貴様!!」「テメーこの野郎!!」

 

 あまりの出来事に茫然としていた三人だったが、クロノの悲鳴にシグナムとヴィータは反応して、銀狼に飛び掛る。

 

 砕いた左肩の下に右足を滑り込ませると、ヴィータに向かって放り投げる。

 

 思わずヴィータは、クロノを受け止める為に動きを止めるが、シグナムは気にせず突っ込む。

 

「はあああぁぁぁぁぁ!」(カートリッジロード!)

 

 剣を鞘から抜刀すると、右上段に構え、念話でレバンティンのカートリッジをロードする。

 

 排出音と共に空薬莢が排出される。

 

「紫電……」

 

 対する銀狼も右足をシグナムの方向に下ろす事によって、体制を整えスタンロッドを後ろ溜めに構える。

 

「スタンロッドォ〜〜」

 

 スタンロッドの柄尻にあるつまみを親指で操作し電圧を上げ、気功術でスタンロッドを強化し、更に生体電気をスタンロッドに送り込み電圧を上げる。

 

「……一閃!」「ストラッシュ!」

 

 シグナムの振り下ろしの袈裟切りの一撃と、銀狼の振り上げの逆袈裟の一撃。

 

 スタンロッドとレバンティンが一瞬ぶつかり合うが、ぶつかった瞬間に銀狼はスタンロッドの軌道を、レバンティンを絡め取るように右下へと引き下ろす。

 

「何ッ!?」

 

 抵抗が無くなった所為で姿勢を崩したシグナムは、銀狼のすぐ右脇でその死に体を晒す。

 

 体勢を立て直そうと思ったその時、

 

 ――霞月流(かげつりゅう)――

 

 右回りに捻った右掌が、シグナムの水月の位置に触れる。

 

 ズンッ!!

 

 右足が音を立てて震脚する。

 

 震脚のエネルギーを一部も洩らす事無く、それどころか足首、膝、股関節、腰、背骨、肩甲骨、肩、肘、手首を伝わる毎に増幅させ、そのエネルギーを浸透剄でバリアジャケット越しに打ち込むと同時に、手を左に捻りながら喰い込ませた指先で、シグナムを回転させる。

 

 ――破裏旋掌(はりせんしょう)――

 

 さらに、左足の震脚の力で突き飛ばす。

 

 シグナムはまるでジャイロ回転のボールの如く、吹き飛んでいく。

 

 その先の高町なのはを狙うかのように……。

 

「シグナ……っ!」

 

 気が付けばなのはの目の前まで飛来している、シグナムの体。

 

 レイジングハートがプロテクションを張ろうとするも間に合わず、シグナムはなのはを巻き込んで吹き飛ばされる。

 

 吹き飛んでいく先には、公園のアスレチック。二人は音を立ててソコに激突する。

 

 地面に落ちるも、二人とも動く気配が無い。どうやら気絶したようである。

 

「シグナム! なのは!」

 

 クロノを地面に下ろしていたヴィータが叫ぶ。

 

 ヴィータは今、ありえないものを見ている気分だった。

 

 シグナムの一撃を受け流し、易々と吹き飛ばした。

 

 バリアジャケットがあるから無事だと思うが、ベルカの騎士を一瞬で捌くその技量は驚くべき物がある。

 

 彼は一体、何者なんだ?

 

「余所見をしている場合か?」

 

 すぐ後ろから、声が聞こえた。

 

 慌てて後ろを振り向く。

 

 瞬間、視界の上下が逆転していた。

 

 何をされた!? 投げられた!? 何時の間に!? どうやって!?

 

 一瞬の出来事に混乱するヴィータの目に映ったのは、男の膝下の足一本。

 

 ――『一本?』

 

 次の瞬間には、銀狼の右中段蹴りが、ヴィータの左脇腹に突き刺さっていた。

 

「ガアァッ!?」

 

 止まろうと飛行魔法を発動させようとするが、痛みに意識を取られて発動できない。

 

 ヴィータはそのまま、先程なのはとシグナムが吹き飛ばされたアスレチックに、激突する。

 

「かはっ」

 

 肺から洩れる空気に、思わず声が上がる。

 

 口中で悔しむ中、ヴィータは地面に落ちる衝撃で、意識を手放す。

 

 

 

 なのは、シグナム、ヴィータ、クロノ。この四人を瞬く間に気絶させ無効化した銀狼を、アースラの武装隊は恐怖の眼差しで見ていた。

 

 一分足らずで、アースラの切り札とAAAランクの魔導師とベルカの騎士が、文字通り手も足も出ずに倒された。

 

 しかも相手はリンカーコアを持たないただの人間。

 

 ただの人間ごときが、時空管理局の魔導師を倒せるはずが無い。

 

 そんなはずが無いのに、負けた。

 

 ありえるはずがないのに、やられた。

 

 彼等はただ茫然と、銀狼が公園から立ち去っていくのを見ているしかなかった。

 

 

 

 

 

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   第七話「顔の無い男、最強のATJ」

 

 

 ホテル・ラマダン。

 

 世界五指に入り、日本最大の集客力を誇る超高級ホテル。

 

 不況下においても相場の二倍の金額を取りながらも、客足が途絶える事の無い世界最高峰のホテルである。

 

 最高級のスイートに到っては、噂では億単位のカネがかかるとか、かからないとか。

 

 そんなホテルの本館最上階四十五階。博物館も顔負けの骨董芸術品が並ぶフロアの一室にて、二人の男と一人の少女、一人の女性、そして一匹の子狐がソファーに座り、顔を合わせている。

 

 男たちの名前はそれぞれ、神無銀狼、草刈鷲士。

 

 片や、対峙した相手が使った技全てを見て盗み覚える、戦場生存技巧、見盗覚技(けんとうかくぎ)『霞月流(かげつりゅう)』。自称不滅の二十三歳。

 

 片や、地上最強の陸戦生物にして蝦夷(えみし)の古武道拳法、対仙術武術『九頭竜(くずりゅう)』。相模大に通う三年生、二十歳

 

 世界最高のワールド・ウォーカーと世界最強のトレジャーハンター。

 

 戦力に換算するとざっと三個師団程の戦力になる。たぶん。

 

 一人の少女は結城美沙。株価上昇年率二万パーセントを誇る、フォーチュン・テラー・インダストリーの創設者にして、現在彼女たちが居るホテル・ラマダンのオーナーでもある。ちなみに私立カトレア女学院に通う中学一年生、十二歳。

 

 もう一人の女性は片桐冴葉。フォーチュン・テラーの会長秘書。つまり美沙の秘書である。美女に年齢は聞くものではない。

 

 そして、銀狼の膝の上で金色の体毛を撫でられるは、八束久遠。霊脈と月の精気が集まり、意志を持ち姿をとった存在。人外に歳は無意味。

 

 だが、この場において驚く存在は別にあった。

 

「と、言うわけで鷲士くんと銀さんには今回、岡山のとある山村まで行って来て欲しいの」

 

「呼ばれて着て見れば、またトレジャーハント?」

 

 美沙の言葉に質問する鷲士。

 

 この草刈鷲士と言う男、一言で言い表すならみすぼらしいである。着ている服がみすぼらしい、座ってるソファーさえもみすぼらしく見えてくる。そんな男である。

 

「岡山? 今度は桃太郎伝説か? それとも柾木神社の伝説か?」

 

「え? ちょっと待って銀さん。柾木神社を知ってるの!?」

 

 銀狼が何気に呟いた一言に、美沙は過剰に反応した。

 

「知ってるも何も、あそこは飲みダチが居るからな。そう言えば何年か前に遊びに行った時、ミュージアムやら管理局やら魔法使いがどうのこうのと聞いた記憶があるが」

 

「ねえ、少し教えて貰ってもいい?」

 

「一応機密扱いなんだよ。知っているけど教えられない。そう言う約束だからな」

 

「む〜〜〜。じゃあ、どの位危険なの?」

 

 詳細などは話せないなら、せめて危険度くらいは知っておきたい。

 

「下手にあそこに干渉すると、『星間戦争(スター・ウォーズ)』の帝國に喧嘩を売るようなもんかな?」

 

「げ。」

 

 力を持ちながらも平穏を望む者は、基本的に手を出さなければ何もしてこないのである。

 

「すぐ側の村の住民も、身体能力だけなら鷲士並だが、彼等は平穏な暮らしがしたいだけだからな」

 

 そう言うと、銀狼は冴葉が入れた紅茶に口をつける。

 

「銀狼さんもこう言ってる事だし、今回はやめておいた方がいいと思うよ? 僕も父親として美沙ちゃんが危険な目には遭って欲しくないし。それにそう言う人達には、下手な干渉はしない方が良い」

 

「むうううぅぅぅぅぅ〜〜〜。おとーさんがそう言うなら、今回は諦める」

 

 鷲士が説得するが、美沙はどうにも納得しきれないようである。

 

「相変わらずお前らは親子に見えんな。兄妹と言った方がしっくり来る」

 

 そんな二人を見ながら銀狼は、何時もの事だと思いながらもそんな事を呟く。

 

 親子。

 

 そう、草刈鷲士と結城美沙は親子なのである。それも養子縁組ではなく血の繋がった実の親子なのである。

 

 父親二十歳。娘十二歳。歳の差八歳の親子なのである。ちなみに母親は一つ年下の十九歳。さらに双子の弟も居るのである。

 

「とりあえず、柾木神社には手を出さないようにするわ。銀さんがそう言うんならきっとそうなんだろうけど」

 

「しかし、話の内容からすると、まるで相手が宇宙軍事国家のようですね」

 

「……ぎくっ」

 

 冴葉がいった言葉に、銀狼は思わず動きを止める。

 

 その反応を見逃す美沙と冴葉ではなかった。

 

「じーーーーー。」

 

 わざわざ効果音を口に出して、美沙は銀狼を半眼で睨む。

 

 こうなった場合の美沙は、なかなか頑固で強引なのを知っている鷲士は、助けたいが言い包められるのが目に見えているので何もいえない。

 

 久遠は銀狼の膝上から既に居なく、冴葉が用意したケーキに夢中になっている。

 

「はぁ〜。分かった、少し話そう」

 

 やれやれとため息を吐いた銀狼は、知っても問題が無い範囲で彼女たちに、柾木神社の伝説の話をするのであった。

 

 

 

 

 

 結果として、美沙が柾木神社関係に手を出すのは諦めた。

 

 平穏を望む強者に下手に手を出して、物理的に消滅はしたくない。

 

 しかし、話の途中で銀狼が口にした、時空管理局に大きく憤慨し、手始めに衛星軌道に軍事衛星を打ち上げる計画を立てたのである。

 

 フォーチュン・テラーもオーパーツと呼ばれるロストテクノロジーアイテムを回収しているが、ソレはあくまで美沙が、自分たち結城一族のルーツを知る為である。それと同時にその技術を解析しての技術発展と経済効果の相乗。その他多くの社会貢献の為である。もっとも社会貢献は資金調達の意味合が強いが……。

 

 とにかく、時空管理局が掲げるロストロギア回収(と言うなの強奪盗掘行為)と他世界への介入行為(と言うなの侵略行為)に、地球にあるオーパーツやフォーチュン・テラーの技術産物を、ロストロギアとして強奪しようとしてくるのは目に見えていたからである。

 

 それに質量兵器廃絶主義と魔法至上主義に時空管理局魔導師原理主義。

 

 そして何より、子供を平気で戦場に送り出すその考えに、鷲士がキレた。

 

 なにせ実の娘が中学一年の十二歳である。リンカーコアとやらが無いのは、銀狼が術(すべ)を持っていたので持って無い事を確認済みである。

 

 才能があれば、家族から引き離して仕事をさせ、一歩間違えば死ぬ恐れがある任務を平気でやらせる。

 

 本当なら美沙にだって危険なトレジャーハントは止めて欲しいが、これは彼女がやりたいと言い出した事だし、年季は自分より年上だし、実際現場じゃ自分が足を引っ張ってしまう事の方が多い。

 

 だが、それでも、彼女は自分と一緒にいたいと言っている。

 

 だから、二児の父親として、才能があると言う理由だけで、子供から親と引き離そうとする管理局の考えに、心底怒りを覚えたのであった。

 

 フォーチュンと管理局。

 

 技術力で言えばフォーチュンの方が勝っているが、戦力としては向こうの方にアドバンテージが上がりやすい。

 

 何せ相手は空を飛ぶ事が出来るのである。

 

 戦闘において、三次元軌道の幅の広さは、そのまま戦力差の一つのなる。

 

 いくら鷲士が九頭竜の使い手とはいえ、空に浮かぶ相手に拳は届かない。戦車には勝てても、ジェット戦闘機には適わないのである。

 

 もっとも管理局の魔導師は、ヘリコプターといった感じのほうが強い。空を飛べるとは言っても、その機動性は戦闘機には及ばない。確かにヘリのように前後左右上下と自由に動けるがその速度は精々三百キロ少々がいい所なのである。フェイトのソニック・ムーブですら、音速を超える事は出来ない。たとえバリアジャケットを纏おうとも、音速の壁というのは容易に突破できるものではない。シールドにバリアにフィールドを張れば何とかなるかもしれないが、高機動系の魔導師は基本的に防御技能が低い。故に魔導師の単身での音速突破は眉唾物の話なのだ。

 

 騎士長槍型の突撃槍ならば、或いは突破出来るかもしれないが、ベルカ式は格闘重視で機動性はそこまで高くないし、防御技能が高い魔導師も機動性が低い。

 

 それに魔導師は基本的に、防御しながらの移動をしない。これはバリアやシールドで受け『止める』傾向が強く、受け『流す』ことをしないからである。それにミッド式は近距離戦や格闘戦が苦手であるし、身体能力も低い。高い技術が必要な受け流しは、魔導師の間で出来る者は数知れないのである。

 

 まあ、室内などの限定空間で戦えば、アドバンテージは圧倒的に鷲士に上がる。それに魔導師の射撃魔法は、飛来する弾丸を視認出来る鷲士にとっては、止まっているも同然に見えるのだ。たとえ誘導弾で複数同時に攻めようと、直射弾と比較してもその速度は鈍足の一言。反射神経で勝てない魔導師では、九頭竜の使い手を捕らえることは出来ない。

 

 結局のところ美沙は、管理局に対してこちらから干渉はしない事にしたが、向こうが手を出してくるなら徹底抗戦も辞さない気でいたのである。まあ、それ以前に向こうの魔法を解析してマジックキャンセラーを作って発動させれば向こうは何も出来なくなるので、数回の接触後に天秤はフォーチュンに傾くだろう。

 

 それに魔法は地球では不要な存在だ。マジックキャンセラーを発動させたところで、地球には何の問題もない。それどころか管理局の存在を知る各国か、挙ってキャンセラーを買い求めるだろう。

 

 理由は言わずもがな……。

 

 

 

 

「と、言うわけで今回のダーティ・フェイスのお仕事は、東京都西の小鐘井市に出没すると言う忍者の調査を行なう事になりましたぁ!」

 

 美沙は、最近巷で話題になったと言う忍者の調査に乗り出すことにした。

 

 実はこの話は、美沙より鷲士の方が乗り気だった。彼も大学生で父親とはいえ男。たとえ眉場物の噂話だとは言え、忍者に興味が無いと言われれば嘘になる。それに何より九頭竜の水上歩行は、忍術のような物だ。

 

 ラーメンの具の忍者漫画ではないが、もし居るなら分身の術と変り身の術を見てみたい。そんな少年心を擽られた鷲士は、この話に実を乗り出したのである。

 

 話の流れに付いて行く気の無い銀狼は、早々に久遠とニャンニャンタイムの為に別室に移った。

 

 冴葉も資料を集める為に退室済みである。

 

 美沙も歳相応の好奇心から、忍者調査に意欲を燃やすのであった。

 

 何気に親子揃って初めて気が合った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって第一管理世界ミッドチルダ。

 

 首都クラナガンでは、最近採用したという新装備で犯罪者の逮捕率が、劇的に向上していた。

 

 その装備の性能は凄まじく、魔力のない人間でも魔導師換算でA〜AAAランクの強さを発揮できるのである。何より特筆すべきは防御性能であった。

 

 肩についているアーマーシールドと標準武装のシールドがAAランクまでの魔法を防ぎ、胸部に備わっている魔法プログラム分解装置がAランクのまでの魔法を、魔力ごと分解するのである。

 

 この分解装置のおかげで、魔動師のシールド、バリアはもちろん、バリアジャケットまでもほぼ無効化することが出来るのである。

 

 ちなみに最大稼動すると、バリアジャケットをバクテリア分解の如く消滅させてしまい、女性局員を素っ裸にしてしまうのは、開発研究部と前線部隊の暗黙の情報である。

 

 さすがに一度に分解できる量に限りがある為、AAAランクを越える魔力を分解するには複数の装置が必要であるが、理論上ではアルカンシェルを防ぐ事も可能なのである。

 

 武器に関しては、スタンガンアームとテイザーガン、スタンロッドにネットガン、トリモチグレネードにトリモチバズーカ。スタンロッドに関しては剣型と槍型があり、必殺技にスタンスパーク(全身から放電)がある。

 

 動力に電気バッテリーを使う事によって、クリーンで誰でも簡単に扱う事が出来る仕様である。

 

 最大出力三百馬力を誇り、各部に設置されたギアモーターとサスペンションが装着者にパワー与え、全身を包む装甲が装着者の身を守る。

 

 アーマードトルーパーと名付けられたこのパワードスーツは、瞬く間に地上部隊に受け入れられて行った。

 

 なお、女性用にDD(ディーツー)トルーパーと言うタイプも存在する。こちらは女性的なフォルムに、各所にハードポイントを持ち、武装の変更が可能なタイプである。

 

 DDとはデッドリードライブの略称で、設計者が付けた名前だが本人曰く、「DDは高性能な機体ほど女性のフォルムになるから」と言っていた為らしい。

 

 そして、このアーマードトルーパー(以下AT)の出現により、ミッドチルダの犯罪率は減少傾向になり検挙率が向上傾向に上がっていた。

 

 何より嬉しいのは、外観がカッコイイという理由で入局する者が急上昇した事であった。おまけにリンカーコア所持者でなくても運用できる為、魔力素質を必要としないという点に注目が行ったのである。

 

 おかげで海の連中に、人材や戦力を引き抜かれなくてすむ陸は大いに喜んだ。何せ本局の連中に一泡吹かせる事が出来たのだ。

 

 本局の幹部や上層部は、この装備に大いに反発したが、最高評議会と伝説の三提督、さらに試作実験機を装着した設計開発者本人との『話し合い(死合)』で採用に持ち込んだのである。

 

 海の面々は、まさかAからAAAで固めた二個小隊を、単騎で殲滅されるとは思っていなかった。

 

 負けた海は、ロストロギアか質量兵器だと騒いだが、管理法には違法しておらず、この程度の技術も理解、解析出来ないようでは本局の技術力も高が知れていると言われ、常日頃から『時空管理局本局の技術力は次元世界一』と言っている本局の幹部と技術者達は、何も言えなくなったのである。

 

 本局の連中は、このATを禁止にする法を立案していたが、最高評議会やミッドチルダの政治家や資産家達からことごとく却下され、さらには資金援助も減少された為、現在資金難で活動能力低下中なのである。

 

 時空航行艦は維持をするだけで膨大な金が掛かる。さらに本局の幹部は資金横領や会計不正などで無駄金を平気で使っていた為、備蓄もまともに残っていないのである。

 

 ちなみに地上は少ない資金で遣り繰りをして、翌決算に資金を回そうとすると、海が全て掻っ攫っていってしていた。「金が余っているなら、金が掛かる海に寄越せ。ついでに人も貰っていこう」と言って……。

 

 だが、今年度から資金は海と陸で完全に別にする、と最高評議会で決定が下り、今まで各管理世界の地上から吸い上げていた金が無くなり、各管理世界の資産家たちからの資金援助も減少した海は、その活動が困難になり始めた。

 

 対して地上は、十分に資金が回って来て設備や装備、局員への待遇や厚生を充実させる事が出来るようになったのである。

 

 各管理世界の政治家や資産家は、確りと気付いていた。自分達の平和は地上部隊が築いている事に。

 

 ちなみに空は本局の管轄ではあるが、資金は陸から出ていた為、今回から海が出すようになった。

 

 そして、裏金作りを止めない海の幹部は、真っ先に武装航空隊や教導隊から資金を巻き上げ始めた。

 

 地上の平和より次元世界の平和が大事だ。

 

 そう言って空の局員の給料や資金を巻き上げ始めたのだ。

 

 これに怒った空は独自の管轄に移行。エリート出身と、実践で叩き上げられた実力を持つ者が多い空は、海出身と陸出身とで派閥が出来上がり、内部分裂を起こしたが、歴戦の猛者が多い陸出身の派閥に敗れ、海の派閥の半数は海に転属。残りの半分は素直に陸の派閥に従うようになった。

 

 余談ではあるがこの時、陸出身の派閥筆頭にカイ・キタムラ三等陸佐戦技教導官やゼンガー・ゾンボルト三等空佐戦技教導官などがいた。教導官の九割が陸出身で尚且つミッドのために尽力していたのを、海出身の連中は知らなかったのである。

 

 とにかく、ミッドチルダでは現在新装備ATの出現により、犯罪率と検挙率が劇的に変化していた。

 

 そして何より、この装備を一躍有名にした立役者が、現在ミッドチルダ、クラナガンにおいて英雄扱いされていた。その者の名は……。

 

 

 

「ジャアアアァァァァァスティスゥウ!! 地獄、昇竜拳!」

 

 漆黒の鎧に身を包んだ男が、今一人の違法魔導師をジャンピングスピンアッパーで打ちのめした。

 

 四股に手甲、具足。胸部装甲の中心には紅く光る宝玉。両肩と両腰は軽鎧を身に付け、ベルトには蒼く光る宝玉が埋め込まれている。

 

 二の腕と太股は伸縮性のあるスーツ。背中の肩甲骨の位置には一対の主力推進装置(メインスラスター)。

 

 そして頭部は、フルフェイスヘルメットにV型アンテナとイヤーアンテナを付け、額の部分から真上に伸びる角を付けていた。

 

 男の攻撃はまだ止まらない。

 

 足の裏からバーニアを吹かし、姿勢変更、違法魔導師に頭を向ける。

 

 背中のメインスラスターに火を吐け、右手で掴んで一気に加速し、勢いのまま地面に向かって突撃。

 

 土煙と埃が舞う中、一対のデュアルアイが光る。

 

「この私に、出逢った不幸と不運に、絶望と後悔をし、地獄と味わうがいい」

 

 土煙と埃が晴れた所には、地面に倒れした違法魔導師と、漆黒の鎧に身を包んだ男。

 

「害悪あるモノに悪夢を、助け求むるモノに安らぎと眠りの闇を……」

 

 その呟きと共に、男は北の彼方へと飛んでいく。

 

 その十分後に地上部隊が到着する。彼等は現場に到着し状況を確認すると、全員北の空に向かって敬礼をするのであった。

 

 漆黒の鎧に身を包んだ人物……。

 

 その者の名は『ナイトメア・オブ・ダークネス』。

 

 「闇の悪夢」と犯罪者から恐れられ、本局の魔導師から忌み嫌われる男。

 

 彼の装備の名は、アーマードトルーパーシステム。

 

 ジャスティス地獄アーツを使い、己が信念を貫く漢である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第一管理世界ミッドチルダ。某所。

 

「ふう、鎧は蒸れるのでアル」

 

 フルフェイスのヘルメットを脱ぎ、その下から出てくきたのは、銀髪銀眼の男。

 

「とりあえず、ミッドでの名声は大分広まったな。それに海の連中は、捕らえた違法魔導師にリンカーコアがなくなっているから、奉仕させる名目で戦力にしたくても出来ないから、大分苦虫を噛み潰しているしな。態々Aランク以上の魔力持ちをブチのめしている訳じゃないからな」

 

 メットを小脇に抱えながら左手で顎に手をやり、今までの行動を自己評価していく。

 

 男の名は神無銀狼。このミッドチルダにおいては、アラン・スミシーと名乗る男である。

 

 現在ミッドチルダでは、犯罪を犯した違法魔導師が現れた時、何処からともなく現れたナイトメア・オブ・ダークネスが、瞬く間に倒し無力化するという、まるで正義の味方のような話題が挙がっているのである。

 

 最初の頃は地上部隊も、彼の行動は管理局の信頼と威信を妨げる物として、捕らえようとしたがソコに待ったを掛けたのがレジアスだった。

 

 確かにNOD《ナイトメア・オブ・ダークネス》の行動は。管理局としては認めにくい物だった。しかし、彼もまたミッドチルダの平和の為に闘っているのも事実。それに何よりNODが倒した違法魔導師は、リンカーコアを砕かれて消失している為、違法魔導師として二度と再犯を起こす事が無い。そして、管理局に嘱託魔導師として奉公する事が出来ない為、罪や刑期が軽くなる事はなくなったのだ。

 

 地上部隊の人間も、罪を犯した魔導師が大手を振って地上を歩けているのが、気に入っていない者もいたのである。罪を犯したなら大人しく刑務所に入っていろ。そう言いたかった。

 

 たしかに管理局に奉仕活動をすれば、罪は軽く刑期は短くなるが、それに納得しないのが事件の被害者や遺族達だ。彼等は皆、口を揃えてこう言う。『ソレ相応の報いを』と……。管理局の手伝いをした程度で罪が消えるわけではない。いや、その罪は消してはならない。何より、罪を犯して真っ当な生活をしているのが許せない。こう言った思いが、被害者や遺族にはあった。

 

 そして何より、どうして自分や家族が被害にあったのに、管理局は何の措置もしてくれないのか……。

 

 違法魔導師の被害の中で最も多いのが、子供を庇った親。そして親を無くした子供は、リンカーコアを持っていれば、管理局の保護児童施設か魔導師養成学校。持っていなければそのまま適当な孤児院に送るだけなのである。リンカーコア持ちの子供は、たとえ親戚がいたとしてもほぼ強制的に管理局の施設に送られる。何せ子供なら自分達の望むように教育(洗脳)した、管理局の魔導師にする事が出来るのである。

 

 そして、その傾向がミッドチルダ以外の管理世界で多い。

 

 ミッドチルダではレジアスが実権を握るようになってから、孤児がそのような目に会う事はなくなったが、管理外世界で事件が起きた時は、現場の人間は躊躇なく子供を、保護と言う名の名目の元に拉致誘拐してくる。管理外世界は野蛮で危険だから、自分たち時空管理局が保護すると言って、強制連行してくるのだ。さらには管理外世界だから其方の法に従う必要は無いとまで言って、…………子供が泣き叫ぶのを無視して。

 

 ミッドチルダでも、被害者の遺族の子供がリンカーコア所有者で、そのリンカーコアがランクが高いと、本局の連中は強引にその子供を連れて行こうとするが、先程も述べられたようにレジアスが実権を握ってからはそのような事は出来なくなっていた。

 

 だから本局の連中は、捕まえた違法魔導師に目を吐けていた。

 

 しかし、此処最近はNODの活躍の所為で、その魔導師も使えなくなってきていた。

 

 地上から人材を引き抜こうにも、殆ど低ランクの魔導師ばかりで海では使えない。高ランクがいたとしても飛行適性が低く、海では活動できない者ばかり。

 

 しかも最近は活動資金難の所為で、高待遇で他から局員を転属(拉致)できなくなってきている海は、以前にも増して、活動困難な状況に陥っていた。

 

 とは言えそれでも強大な時空管理局本局。上層部の腐った高官や幹部達は、自分達の意に従わない者達から、切り捨てていく事で、金を回していた。これが自分達の首を締めている事に殆ど気付かずに……。

 

 そんな本局とは裏腹に、地上は今までに無い活気で満ちている。

 

 ATの副産物による技術で、幾つも特許を獲得し、最近の治安の向上、入局者の増加。人も金も入ってきた事もあり、レジアスは階級を中将へと昇進させた。

 

「く〜っくっくっくっくっく。海の連中のお偉方が、悔しがる顔が目に浮かぶぜ。く〜っくっくっくっくっく」

 

 黄色いビン底メガネのケロン星人のような笑いをしながら(ただし、声はしっかり子安)銀狼ことアランは、顔をにやけさせる。

 

 見る者がいればこう言ったであろう。

 

 ――相変わらずイイ性格してやがる――と。

 

「さてと、次はスカの所に言ってトーレ達の戦闘訓練だな。しかし最近、トーレとチンクとの間で喧嘩が多い。そりゃ男としても戦士としても慕われてるのは嬉しいが、もう少し、こう……独占欲を制御出来ないもんかねぇ」

 

 腕組みをしながら、レジアスと再会する前に少し世話になった、マッドなサイエンティスト広域指名手配犯罪者の娘たちを思い浮かべる。

 

「最近の二人の戦績はほぼ五分だから、優劣を付けたいのは分かるが、だからと言ってウーノやクアットロまで巻き込んで欲しくないよな……。その度に事務処理を俺とスカがやらなきゃいけないし」

 

 現在管理局に潜入任務中の二番は、オーリスと何かを企んでいる。

 

 最近稼動した六番と十番はよくベッドに忍び込んでくるようになった。

 

 近々稼動予定の九番と十一番は、もう少しまともに情操教育を行なおうと思う。

 

「とりあえず、そろそろセインとディエチに基礎戦闘を仕込むか……。ディエチは砲撃系の武装を準備するとしといて、問題はセインだな。武装は最小限、それでいて潜入、陽動、かく乱を補助できる武装。ガンズトンファー辺りでも与えるか。それと指先にカメラでも付ければ潜入は問題ないか。使い捨てで手榴弾でも持たせるか? いや、いっそのことATを着せて……」

 

 誰もいない部屋の中で、NODの装甲を片付けながら、アランは思考に耽る。

 

 此処は時空管理局地上本部、第八特殊資料課機動戦闘部隊、通称『第八特資課』。現在の部隊人数一人。別名『一人部隊(ワンマン・アーミー)』。

 

 レジアス直轄の機動部隊として設立されたが、入隊条件の難易度があまりにも過酷過ぎて、アラン以外いないのが現状であった。

 

 その入隊条件は

 

『地上本部を占拠したテロリスト三百人を魔法を使わずに制圧』

 

 という、とんでもないモノなのである。

 

 そのため、魔導師は書類審査の時点で不採用。特に空戦魔導師や砲撃魔導師は絶対に、第八特資課には入れない。

 

 屋内戦や室内戦において、彼等の能力は不要で邪魔の一言にしかならないからである。

 

 現在銀狼は、NODとして出動がてら人材をスカウト中だが、中々御眼鏡の適う存在が見付からないのだ。

 

 それに、居たとしても訳有りで入隊できない者が殆どだ。彼らを無理に入れた所で意味がない。

 

 頭の隅で、古い知り合いに声を掛けてみるか、と考えているがそれは最後まで取って置くつもりだ。

 

 セガールかスタローンかジャッキーかシュワちゃんみたいな人居ないかな〜。

 

 そんな事を考える銀狼がいた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ATに関して。

 

 名前に関してはあまり考えずに付けました。

 太股は前と外側だけ装甲を展開。二の腕は外側に装甲が展開してある。

 各関節駆動にモーターギアを内蔵させ、装甲によるモノコックシステムで装着者を衝撃から身を守り、四肢と腰、背中、肩のハードポイントにより、武装を変更可能。

 頭部はバイザー、フルフェイスの二種類のヘルメットが選択可能。バイザー型は骨伝導マイクなので、インカムみたいになってません。

 制御装置は首の付根。其処で脳から発せられた電気信号を読み取る事で、動きをサポートする。

 装甲に関しての防御力はシールドがAAまで本体はBまで防御可能。

 魔法プログラム分解装置はAランクまでならヴァリアブルショットも完璧に防げます。AMFと違って外側から結合を解くわけではないので、Aランクなら砲撃も防げます。見た目はIフィールドとかビーム撹乱幕のような感じで。

 魔法プログラム分解装置=M(マジック)R(リゾルブ)S(システム)。

 AMFも魔法の一種なのでMRSで無効化可能。

 MRSは電磁波の類なので出力を上げれば念話も妨害可能。

 効果範囲は半径五メートルから十メートル。最大出力で三十メートルまで。

 バリアジャケットも問答無用で分解でき、デバイスによってはインテリジェントも待機モードに……?

 なおランクは魔力量の方なので、なのはのディバインバスターはシールドでしか防げません。

 ATを使いこなすものは、ATJ(ジョッキー)とも呼ぶ。

 

 

 

 なお、矛盾が生じる場合はご都合主義で通す場合が、“多々”あります。

 

 

 

 

説明
にじファン消滅のため退避してきました。
世界渡航者《ワールド・ウォーカー》
そう呼ばれる存在がいた。
世界を助け、救い、殺す者。彼らは時に世界の代行者であり、時に世界に刃向かう者。その存在は時空管理局といえども知る者は居なかった。
時に新暦65年。管理局に吉報が舞い降りる。闇の書の消滅。そしてこれを期に管理外世界の『管理』を強行する本局。
そして、彼らは対峙する……。
あ、この作品は原作キャラアンチが有りますのでご注意を。それとヒロインは人間キャラじゃないので、それが気に入らない方はブラウザの閉じるを押してください。
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コメント
続きを楽しみにしてます!(biohaza-d)
復活、待ってますm(_ _)m(達人王)
なんか送信とまってるけど次の話まってます^^(達人王)
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