語られし者たちとIS 世界樹大戦 第2話 女の子の別れと出会い
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ジュディスがこの世界に来てから二ヶ月くらいが経ち、もうすぐ一夏は中学三年になる

 

世界樹大戦で判明したことがいくつかある

 

まずブローチの力のことだ。

 

一夏が持っている時は、彼が異世界に行くことができる。一方、ジュディスが持っている時は彼女の意志で他の人には見えなくなり、何か言っても聞こえなくなるらしい。もちろん、姿を現すこともできる。彼女曰く、一夏が特訓に行った異世界にいるようなものらしい

 

しかし世界樹大戦の参加者には見えるし聞こえる。ちなみに一夏は参加者にはまだ会ったことがない

 

一夏とジュディスは世界樹大戦については誰にも言わないようにした

 

もちろん、千冬にも

 

無関係の人を巻き込みたくない。一夏の意見だったが、ジュディスもそれには賛成してくれた

 

そして彼の日常が少し変わった。バイトを増やしたり、彼女と料理を作ったりとしているが何よりも一番の変化は夕食後、彼女に稽古をつけてもらっていることだ

 

まだ一時間くらいしか動けないが、それでも最初の頃よりはましになったはず……と思っている

 

授業が終わったため、すぐにバイトに行く準備をしている一夏

 

そんな彼に話しかけてくる女の子がいた

 

「ねえ、一夏。ちょっといい?」

 

話しかけた女の子の名前は鳳鈴音。一夏とは小学校五年からの付き合いだ。去年まではずっとクラスが一緒だったが、二年の時はクラスが違った

 

「悪い、バイトが間に合いそうにないから……ごめん」

 

そのまま、急いで教室を出た。一夏が校門に向かう途中、いろんな女の子に話しかけられていた。彼はどうしてかよくわかっていないようだ

 

「あなたって随分人気があるのね? モテモテじゃない」

 

「いや、ないですよ」

 

一夏は結構人気がある。千冬の弟という理由もあるが、助っ人で手伝いをしているため、多くの人に彼の人の良さが伝わっているらしい

 

「鈍感ね。それよりもあなた自身、恋愛とか興味ないの? 一夏くらいの年齢の子なら好きな子の一人や二人いてもいいと思うのだけれど?」

 

(二人もいていいのか?)

 

そんな突っ込みを心の中でしながら一夏は答える

 

「そうですね……恋愛とかはまだよくわからないんですよね。今は自分のことでだけで……」

 

そう返事をすると彼女はそう、と答えるだけで会話は終わってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一方、取り残された女の子、鈴は考えていた

 

(……一夏の奴、どうしたのかしら? ここ最近、うちの店に来なくなったし、放課後すぐに出て行っちゃう……)

 

彼女も一夏に対して恋愛感情を持っている。小学5年くらいから仲良くなり始め、実家が中華料理屋ということで食事に招待したりなどそれなりに頑張って攻めてきたつもりだった

 

しかし最近、彼はどうにもそっけない

 

何か聞こうにもクラスが違うし、担任のホームルームの時間が長いから放課後間に合わない

 

(アホの弾に聞いても知らないって言うし、蘭に聞く気がしないし……)

 

彼女の友達の男子とその妹のことである。特に妹の蘭も一夏のことが好きなのだから困っている

 

(……一夏に言いたいことがあるのに……)

 

最近になって鈴自身の料理の腕が上達したと自覚できた

 

自信がついた今なら言いたいことが言える。そう思っていた時、鈴の携帯が鳴る

 

(親からだ……何だか嫌な予感がする)

 

「……え?」

 

彼女の予感は当たった……両親が離婚が決まり、中国に帰らないといけなくなった

 

一週間後には出発してしまう。それまでに自分の想いを伝えないと……彼女は焦っていた

 

……だが結局伝えることができなかった。とにかくタイミングが悪かった

 

親の都合で引っ越すという風に説明して、鈴は後悔しながら国に戻った

 

中国に戻ってから数日、部屋でいじけていた

 

(どうして言えなかったんだろう……家に押しかけてでも……いや、多分無理。言えない気がする)

 

そんなことを思うたびに深くため息をつく。何度目かもう数える気にもならないほどに

 

明日から中国の学校に通う。もう寝ようかと思った時

 

(い、痛い!! 何……? この感覚……?)

 

彼女の左手の手のひらが焼けるように熱くなっていた……気が付くとそこに果実の模様がついた

 

そして目の前に青いジャケットを着た、まるで炎のような赤い髪をした鈴と同い年くらいの男の子が現れた

 

「キミが僕のパートナーかな? 僕はマオ! よろしくネ」

 

突然の出現に鈴は驚き、叫んだ。

 

その叫び声を聞いて彼女の母が部屋に来たが、出てきた少年の姿は見えないらしい

 

夢でも見たのでは? と疑われて部屋を出て行った

 

「驚かさないでよ〜、僕の話を落ち着いて聞いてほしいんですけど」

 

……鈴はもう一回叫ぼうと思ったけどとりあえず、聞くことにした

 

どうやら彼女は世界樹大戦という全世界でかなり有名な物語の登場人物になったみたいだ

 

話は大体覚えているからついていけるけど、なんだか信用できない。鈴がそんな目でマオを見ていると何か思いついたのかマオはポケットから何かを取り出した

 

「そうだな〜じゃあ、このブローチをつけてヨ」

 

マオに渡されたブローチを鈴が服に付けるといきなり周りの景色がのどかな原っぱに変わった

 

「どう? 少しは信じてくれるかな? ちなみにさっき君のお母さんが僕のこと見えてなかったけど、ブローチの力だヨ。でも、同じ参加者には見られるんだけどネ」

 

ブローチをマオが回収すると、すぐに元の部屋に戻った。ここまでされたら信じないわけにはいかない

 

「ええ、あなたのことは信じるわ」

 

「ありがとう……えっと」

 

名乗ってなかったことに気が付いてすぐに自己紹介をする

 

「鈴、鳳鈴音よ」

 

「鈴、君の願いは何かな?」

 

それを聞いて彼女はすぐに思いついた

 

……もう一度一夏に会いたい……いや、一夏を自分のものにしたいと

 

マオにそのことを話す。けど彼は

 

「その人のことを僕は良く知らないし、恋愛なんてわからないけど、君はそれでいいの? 何かの力で人の心を変えるなんてよくないと思うな。人の心は自分の力で変えた方がいいと思うよ」

 

鈴は彼の言葉に驚いていた

 

(……返す言葉もない。確かにそんなことで得た一夏に何の価値もない……マオの眼を見ていると余計にそう思える)

 

「そうね……まあ、考えさせてもらうわ。そういえばあんたご飯とかはどうするの?」

 

「う〜ん、まあ旅をしていたことがあったからさっきの空間で野宿かな? さすがにもう一人分ご飯を頼むのも悪いしね」

 

その答えになんだか納得がいかない鈴、すぐに何か思いついたのか提案をした

 

「じゃあできる時はあたしが作ってあげる。それでいいかしら」

 

「えへへ、ありがとう、よろしくネ。リン」

 

二人は握手をした。その後、さっき叫んだことを母親に謝っていた

 

その時、鈴はある学校を勧められた……ISについて学ぶことができる学校

 

自分の母親に楽をさせることができるうえ、これならマオの力になれる……

 

そう考えた鈴はすぐに了解した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキット

 

ご飯

 

「ねえ、あんたの名前だけど……こっちでは猫って意味なのよ」

 

「ええ!? 僕の名前ってそういう意味なの?」

 

「そうよ。じゃああげるご飯はキャットフードかしら?」

 

「鈴、冗談にしてほしいんですけど」

 

「わかっているわよ。安心しなさい。おいしい物作ってあげるから」

 

料理を作っている鈴、しかし久しぶりに作ったせいか失敗して鈴が慌てている

 

そんな彼女を見てマオは少し不安になっていた

 

「……大丈夫かな? 本当にキャットフードの方が良かったのかも」

 

説明
第2話です
中学2年の3月という設定です
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