魔法少女リリカルなのは光と闇と真実を求める者 第一話
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 第86管理世界ラタンクンガ

 

 

 この世界は、首都のキトを除きこの地域は固有の自然環境が多く残されている世界。

 首都のキトは、近代化が進んでいてアウトドアを楽しむための観光客が、キトから郊外に向けての鉄道移動の中心点となっている。環境保護の観点から鉄道以外の移動手段は路線バスしかない。

 管理局は、首都に駐留部隊の本隊を置き各主要駅のある町に小規模の部隊を配置している。

 

 

 

 

****************

 

 

 

 

 キトから56キロにある町クリール

 この町は、大陸鉄道の立ち寄り地点。

 ここで乗客たちはここで休憩や軽食を取るため街の飲食店や売店を利用するその為住人達は観光客相手商売で生計を立てている。

 立ち寄り地点である為に管理局はここに小規模な駐留部隊を配置し治安維持を主任務にさせている。

 

 

 

 

駐留陸戦魔導師隊第121小隊の詰め所。

 

 

「隊長〜。平和ですね」

 

 

 などと机に突っ伏している隊員のミケルは、欠伸をしながら呟いた。

 ミケルは、見た目では十代後半だが21歳の成人だ童顔で栗色の癖のある髪だからよく十代に間違われる。

 

 

「平和が一番だ、やっぱり」

 

 

 隊長のカイトはミケルに同意し時計に目をやると正午前そろそろ昼飯の時間だ。

 

 

「レオとトールがパトロールから帰ってきたら飯だな」

 

 

 一方隊長のカイトは、金髪を後ろで無造作に束ねていて無精ひげを生やしている。

 街では、休暇のときには町で観光客を相手によくナンパをすることで有名である。

 

 

「あっ、いいですね!でも今日の昼食当番って、レオさんじゃなかったですか?」

 

「そうだった、…レオが帰って来るまで待つしかないな」

 

「そうですね。はぁ〜早く帰ってこないかな〜」

 

 

 詰め所の中は平穏な様子だ。

 

 

 

 クリールの中央市場は道の両側の店や屋台が所狭し軒を連ねている。

 その道を二人の警邏用の制服に身を包んだ局員が並び歩いている。

 二人とも長身のしっかりした身体つきをしている。レオポルドとトールである。

 お互い同時期に配属された、二人とも18歳だ。

 

 

「なぁ、トール。串焼き奢ってくれないか?」

 

「えー、レオこの前のツケだって払ってないじゃんか」

 

「いいじゃんか。頼む」

 

「詰め所で作れ!以上、行くぞ!」

 

「ケチ!」

 

 

 と、他愛もないやり取りを屋台のおばちゃんやおっちゃんは、笑いながら見ている。

 

 

「レオポルド!これ持ってけ」

 

 

 その様子を見ていた串焼き屋の店主は軽快に笑いながら小隊の員数分の鳥の串焼きを渡す。

 

 

「ありがとう、おっちゃん!」

 

「いいってことよ!街のもめ事を止めてくれてるんだ」

 

「ありがとう!」

 

 

 笑いながらレオは返す。

 しかし同僚はそれを眺めながら嘆息し詰所のほうに向かって歩き出す。 

 

 

「先戻ってるぞ」

 

 

トールは、人ごみの中をすたすたと進んでいった。

 

 

「じゃあ、またなおっちゃん」

 

「じゃあ、隊長さんによろしくな」

 

 

 レオも串焼きが入った袋を持ちながら先に行った同僚を小走りで追いかけながら詰め所に向かった。

 

 

 

 

 詰め所に帰ったレオポルドたちは、急いで飯の支度を整えた。

 

 今日の昼のメニューは、屋台のおっちゃんにもらった串焼きの鳥と野菜をレオポルド手製のタレで炒めたのをご飯に乗っけた丼物だ。このたれは、小隊の隊員達には人気だ。

 

 

 

 昼飯を終え、一息入れていた時その連絡は突然来た。

 

 

「なんだ?!」

 

「警報だと!?」

 

 

 小隊長のカイトの前にウィンドウが現れ、首都の本隊の通信手が状況を伝えた。

 

 

《クリール北東五キロに大型の魔力反応発生!至急現場に向かってください》

 

「了解した」

 

 

 ウィンドウを閉じ、全員に向き直る。

 

 

「聞いての通り大型の魔力反応が出た。今からそれの調査に向かう、場合によっては

戦闘になるかもしれない気を引き締めて行くぞ!!」

 

「「「了解!」」」

 

「さっさと終わらせて飲みに行きましょうよ!隊長」

 

「じゃあ、ミケルの奢りな!」

 

「えぇー、隊長奢ってくださいよ」

 

「ボヤくなって、さっさと行くぞ!

 

「りょーかい」

 

 

 

 

****************

 

 

 

 

時間は少し遡り

 

クリール北東五キロ地点

 小高丘陵地帯の一角にミッド式でもベルカ式でもない転移魔法の魔法陣が展開された。

 そこから現れたのは、博士を殺し魔導書を奪ったヴァニタスだ、彼はクリールの方角を見た。

 

 

「後は、実戦でのテストだけ」

 

 

 手にしていた魔導書の起動の文言を唱える。

 

「我、汝の力を欲せし者。汝の力を今ここに示せ…!」

 

 

 黒に白十字の魔導書、『悪魔の書』が開きそこから禍々しい魔力が溢れ出す。

 

 

「これが『悪魔の書』の魔力・・・・!?」

 

 

 ヴァニタスはその溢れだす魔力に震えた、それ程までに禍々しすぎる魔力なのだ。

 冷静を取り戻しヴァニタスは、召喚魔法を使う。

 

 

「汝はの全てを破壊する力。召喚せよ白き騎士―ビアンコ・カヴァリエーレ―!!」

 

 

 すると、ヴァニタスの前に三つの魔法陣が展開した。

 そこから出てきたのは、三体の白い鎧だった。その手のは、右にランス左に大盾を持つ騎士のようだ。

 

 

「では、お前たちの力見させてもらう」

 

 

 それに白い鎧の頭部の甲冑の隙間に蒼い光が燈り無言で歩き出した。

 そして跳躍し大盾が、背中に装着され展開し翼になった。蒼い魔力光の尾を引きながら町の方角へと飛んで行った。

 

 

 

 

**************

 

 

 

 

 クリールの詰め所を出発してから十分。

 カイトは、前方から来る何かに気が付いた。

 

 

「何か来る!警戒しろ!」

 

 

 素早く部下たちに指示を飛ばす。

 ミケル達も素早くカイトの左右に展開した。

 

 

「ミケル!数は?」

 

「魔力反応数は、3です!高速でこちらに飛行中!」

 

「報告のあった大型魔力反応と関係があるか?とにかく呼びかけてみる」

 

 

 カイトは、前方から向かってくる者に念話で呼び掛ける。

 

 

【こちらは、管理局クリール駐留第121小隊隊長カイトです。前方からこちらに向かって来る魔導師に警告します。ただちに停止しなさい!停止しない場合は捕縛します】

 

 

 機械的になおかつ威圧的に警告した。

 しかし移動中の魔導師は警告を聞かず、カイト達に進路を向け地面すれすれ急接近してきた。

 辛うじて目視で捉えたその姿は背中に翼を生やした槍騎士の様だった。

 カイト達は、接近中の白い騎士たちにストレージデバイスの杖を向ける。

 

 

【最後警告をします、停止しなさい。停止しない場合は、攻撃します】

 

 

 カイト達が手にしているデバイスに魔力が集まる。

 しかし、白い騎士たちは止まらない。

 彼我の距離が、50メートルを切った。

 

 

「砲撃、撃ぇー!」

 

「「「バスター!!」」」

 

 

    ―轟・轟・轟・轟―

 

 

 カイト達の直射型砲撃魔法が、白い槍騎士に向かっていく。

 突然、白い槍騎士たちは飛行を止め着地し動かない。

 

 

「!?」

 

 

 トールは白槍騎士のその行動に驚いた。

 

 いくら非殺傷設定とは言えあの砲撃をまともに受ければ、すぐにダウンする。

 そう“まともに受ければ”の話だ。

 白槍騎士たちの背中の翼が、変形し大盾に変わり前面に構えた。

 前面に構えた大盾に砲撃魔法が当たるように見えたが、大盾の前面が光だしその手前で

 

 

    ―散―

 

 

 砲撃魔法が“霧散してしまった”。

 

 

「AMFか!?」

 

「AMF反応はありません!」

 

 

 AMF―アンチマギリングフィールド―JS事件時に主犯のジェイル・スカリエッティの開発したガジェットドローンに搭載されていた対魔導用の装備。

 

 ミケルは、素早くAMFの有無を確認するが、AMFは一切展開されていなかった。

 しかし展開されていなくても確かに砲撃魔法を無効化されたのだ。

 

 

「じゃあ、なんで消えたんだよ!!」

 

 

 レオポルドは焦り気味でミケルに問う。

 それだけ身の前で起きた現象は不可解だった。

 

 

「知りませんよ!なんなんですか、あいつ等!?」

 

 

 カイトは、白騎士を見つめる。大盾を構えたままさっきから動かない。

 

 

「生体反応がない。とにかく散開して再度砲撃。散れ!」

 

 

 素早くレオポルドたちは左右に散ろうとしたが、白騎士たちが大盾の構えを解き、今度は右手のランスをレオ達に向けて構える。

 ランスの先に蒼い魔力が集束され、放たれた。

 

 

    ―轟―

 

 

「なんだよ!?」

 

 

 レオ達は、素早く防御した。 

 しかし、レオ達の防御力はAランクだがそれをもってしても徐々に後ろに下がる。

 カイトは、砲撃後の硬直体勢の白騎士に砲撃を叩き込むがすぐに大盾を構え防御される。

 

 

「ちッ!」

 

 

 カイトは、短く舌打ちした、大盾を構えていた白騎士の影に隠れていた二体が盾を変形させ翼にしランスを腰溜めしていた。

 

 

「しまった!?レオ、トール!!」

 

 

 二体の白騎士は、翼から蒼煙吐き出しトールとレオに向けて突撃した。

 しかし、二人もそれに気付きサイドステップで回避するが、白騎士はその回避を追尾する。

 

 

    ―激―

 

 

 プロテクションで突撃を受け止められ互いに拮抗を保っている。

 ランスが蒼く光りだすと、穂先がプロテクションに少しずつ食い込む。

 やがて、そこに障壁がなかったようにランスがプロテクションを完全に抜けた。

 

 

「なに!?」

 

「そんな!?」

 

 

    ―貫―

 

 二人は驚愕した、ランスが光だしたと思ったら魔力障壁を貫通し自分の胴体に突き刺さっていた。

 

 

「ぐふっ!」

 

「がはッ!」

 

 

 貫通したランスには血がべったりと付いていた。

 二体の白騎士はランスを体から抜ぬく、するとレオとトールは支えをなくし((跪|いたひざまず))ところを血のついたランスで横に薙ぎ払った。

 二人の体は力なく地面二、三回跳ね埃を巻き上げ落ちた。

 

 

「レオ!トール!!くそがッ!」

 

 

 二人はぐったりとし微動だにしない。

 それを見たレオは激昂し己のデバイスを白騎士に向ける。

 

 

「このッ!バスター!!」

 

 

    ―撃!!―

 

 

 動かない白騎士に砲撃を放とうとしたが、カイトの所にいた白騎士がミケルに肉迫する。

 低威力の砲撃をした為レオは硬直によって半瞬、回避が遅れた。

 その一瞬で勝負が決まった。

 

 

「くそ!」

 

 

 防御しようとしたが白騎士が突き出した鋭いランスの一撃はレオの腹部を綺麗に捉え、貫いた。

 

 

「がッ………!」

 

 

 レオの口から鮮血が吹き出した。

 

 

「ミケル!!レオ、トール!」

 

 

    ―撃・撃―

 

 

 魔力弾を放ちながら白騎士を牽制しミケル達から引き離す。

 カイトはミケルの元に駆け寄った。

 

 

「しっかりしろ!」

 

 

 ミケルの傷口を手で抑え込み出血を押さえるが開けられた穴から止めどなく血が溢れて来る。

 

 

「た、……隊長…しくじりました………うっ…」

 

 

 再び、ミケルの口から血が吹き出る。

 

 

「しゃべるな!」

 

「……早く、逃げて…ください」

 

「できるか!みんな一緒に帰るんだ!!これが終わったら飲みに行くんじゃなかった

のか?」

 

「約束……守れそうにないで――」

 

 

 そこまでで喋っていたミケルは息絶えた。

 血がべったりとついた手でカイトはミケルの体をゆする。

 

 

「クソッ!!ミケルおい!!」

 

 

 血で濡れた手でデバイスを力いっぱい握る。

 そしてこちらを観察するかのように微動だにせず佇む白騎士に向け構える。

 

 

「この野郎!」

 

 

 杖の先にカイトの最大出力の集束がされる。が、前方には“二体しか居ない”咄嗟にサイドスッテプで左に跳躍、もといた場所に後方から強烈な突きが地面を穿つ。

 

 

    ―突―

 

 

 今度は前方に佇んでいた白騎士が翼を展開し距離を詰めランスの突きを繰り出して来る。

 カイトはそれを横に跳び退き回避する。

 

 しかしその異変に気付く。

 

 

    ――後、一体はどこだ!?

 

 

 突きを放った、二体の白騎士たちはそのまま翼を変形させ大盾にし、カイトの砲撃を警戒し防御態勢に入った。

 

 残りの一体を探すため周囲を素早く見回しその姿を探すが、上空にすら居ない。

 

 

    ――どこへ消えた?!

 

 

 その問いの答えはすぐに返された。

 

 カイトの背後に魔法陣が展開しそこから繰り出されたランスの突きによって。

 

 

「ッ!!後ろから!?」

 

 

    ―刺―

 

 

 距離を取ろうとしたが僅かに反応が遅れ強烈な一撃がカイトの胸部を貫いた。

 

 

「がッ!!いつの間に……!?」

 

 

 自分の背後を見ると召喚魔法陣から返り血で濡れた上半身を出した白騎士がいた。

 背後の白騎士は、カイトからランスを引き抜くと防御体勢の二体と合流し、足元に展開された大型の魔法陣の中へと消えてゆく。

 

 

「くそっ……ま……て………」

 

 

 手を伸ばすが、そこでカイトの意識は闇の中に落ちた。

 

 

 

 

 応援の部隊が到着した時にはランスで貫かれて絶命した四人の遺体だけが残されていた。

 

 

 

 

説明
さて、ようやく一話開始です。
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